BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
「姉さん、大丈夫?」
「だいじょばない……この、くっつくな!」
私が下ろした縄梯子を伝って上がってきた姉さんに手を貸す。全身にしがみついていたマネキンの腕を取っ払う姉さんに、これから残酷な事実を教えなきゃいけない。
「ところで姉さん」
「なにかなローズ。さっきからどんどんとうるさいけど」
「姉さんにはこれから、逆だるまさんがころんだをしてもらいます」
「は?」
かくかくしかじか。ドンドンドンドン!と激しくなる耳障りな音を聞きながら、姉さんと逸れた後のことのあらましを説明する。
「私の姿に化けるとかふざけてるね。でもなんで気付かなかったのさ?」
「いや、大人しいとは思ったけど怖くてテンション下がったのかなって…」
そう言うとにっこり笑う姉さん。私もにっこりと笑顔で返す。
「いいこと教えてあげる!私は怖すぎるとテンション振り切るタイプだよ!ギャー助けてイーサーンー!!!!」
「我慢の限界だったんだね…」
「ただでさえ怖いのに!マネキンの残骸と一緒に狭くて暗い井戸に閉じ込められたら誰でもこうなるよ!!!」
「考えたくもない。……でも実際どうしようかな」
ドンドンドンドン!からガチャガチャガチャガチャッ!とドアノブを捻る音が聞こえる。ドア先輩のおかげで助かってるけど時間の問題っぽい。それがわかっているのか井戸の周りをグルグル回りながら頭を抱えて泣き叫ぶ姉さん。
「どーしよどーしよ!せめてせっかく手に入れた力を失ってなかったらあんな奴怖くないのにー!」
「落ち着いて姉さん」
「逆にローズはどうして落ち着いてられてるの!?」
「私もパニック状態だけど私よりパニックの姉さん見てたら落ちついちゃった」
「それはよかったね!あーもう、だるまさんがころんだってなにさ!確かにローズが小さい頃に遊んだけどさ!触れなくても遊べるし!また私の記憶から読んだな!」
うがーっ!と頭をかきむしる姉さん。うん、懐かしいね。途中で鬼の姉さんがずっと私を見続けて、それで一時間近くも睨み合いをしたこともあったっけ。………うん?
「姉さん。だるまさんがころんだと言えば、負け続きの姉さんが大人げなく私をずっと見続けて、私が泣き出したから姉さんが父さんに怒られたことなかったっけ」
「おおう…よく覚えてるね。あったねえ、そんなこと。………うん?」
「私と同じこと思いついたみたいだね、姉さん」
「…いやまあ私の記憶から作られたなら効果あるかもだけど…ちょっと気が引けるなあ。ま、いいか!」
打開策を見つけたからなのかぺかーと輝く笑顔を浮かべる姉さんを、私は両手で担いで抱き寄せると、姉さんが私の背中に手を回してしがみ付く。
「見た目はカッコ悪いけど!」
「対だるまさんがころんだの構え!行くぞオラァ!」
姉さんがしがみ付いた状態で私は突進。鍵を開けて扉を開けると、姉さんの恰好をした小柄なマネキンと目が合い、手が伸びてくるが固まる。私と視線が合ったせいだろう。だが今まで通りなら背を向ければまた動き出して終わりだ。…一人なら。
「…!?」
「今の私達は二人!」
「即ち、前後に目を向けられる!」
「お前はもう、私達に近づけない!」
「動かないと分かってるなら恐くないもんね!」
そう。私達は今二人だ。姉さんが私に抱き着いて背中越しに視線を背後に向けることで、私はずっと前を向いて移動できる。もう怖くない。
「急ぐよ姉さん!掴まって!」
「もちのろん!絶対放したりなんかするもんか!」
後ろを見ることなく、姉さんの温もりを感じながら全速力でダッシュ。ドリフトしながら廊下を曲がり、全速力でエレベーター横の部屋、さっきハサミを見つけた書斎であろう部屋を進んでいく。目的地は最初に来た時にしまってた扉だ。
「姉さん、どう!?」
「曲がり角を曲がるたびにすんごい速い速度で追いかけてきてるけど大丈夫だよ!滅茶苦茶怖い!」
「我慢して!目は逸らさないでよ!」
「ひゃい!」
姉さんに後ろの様子を聞きながら件の扉の前に辿り着き、蹴り開けてちょっとした階段を下りて行く。ここは…キッチンか。武器になりそうなものを探している暇は無さそうだ。奥に進むと、ここだけ明るい部屋に出た。
「ここは、寝室…?」
「忘れもしない、ベビーに見つかった部屋だ…!」
「嫌なこと言わないでよ…」
奥にあった配電盤からヒューズを手に取ると明かりが消える。なんか嫌な予感が…
《「ばーか!自分から安全圏を消してやんの!」》
「え!?あ、そっかヒューズを外したから!」
「姉さんキョロキョロしないで!」
「ってギャー!?ドア開けてきたー!?」
「勘弁してよね…」
どうやらマネキン人形は暗闇の中しか動けないらしい。明かりが消えた途端開けて入ってきたのが、私が視線を向けることで動きが止まる。本当に怖いな!?
「だけど、横を通り抜ければ…!?」
「え、どうしたのローズ!?前が見えないんだけど何かいるの!?」
「……増えた」
「え」
今姉さんが見ている最初の、姉さんの様な格好のマネキンとは別に、その前に見た姉さんが蹴飛ばしてた普通のマネキン人形が廊下に立っていた。……ああ、そう言えば井戸にマネキンの残骸が山の様にあったっけ。あれか。
「つまりそうか、二人じゃなかったら即死だった?」
「死ぬとは限らないけど絶対ロクな目に遭わないよね…行こう!」
固まっているマネキンの横を通り抜け、ちょっとした階段を上って開けた扉の先にまたいて、ビビりながらも来た道を逆走していく。
「あれぇ!?三体目!?」
「絶対まだいる!気を付けて姉さん!」
言いながら入ったハサミのあった部屋……書斎の出口に四体目のマネキン人形が陣取っていて、思わず駆け出した。
「姉さん!しっかり掴まってて!」
「え、え、え、え、加速して何を…ってぎゃああああ!?」
そのまま跳躍、飛び蹴りを四体目のマネキン人形に叩き込んで扉ごと蹴り飛ばす。姉さんが視線を外してしまったせいか後ろからドドドドドドドッ!と足音が。
「姉さん!見てて!」
「ふえええ、目がまわるぅ…」
目を回している姉さんをエレベーター前に置いて、ヒューズを配電盤に取りつけて、姉さんの手を引いてエレベーターに転がり込むとボタンを叩く様に押した。
「なんで、動かない!」
「どうして!?動け!動いてよ!?」
《「ククククッ…いや、まさかの方法であっさり攻略されちゃって焦ったけど…ま、まあ計画通りだし!?」》
何度ボタンを押しても反応しない。ならばと姉さんがげしげしと壁を蹴る、その間にもどんどん近づいてくるマネキンたち。天の声の虚勢の声と共に扉が閉まり、エレベーターが動き出した。マネキンたちが入ってくるギリギリだった。
「こんなことして何の意味があるの!?」
「本当に怖かったんだぞ!?」
《「意味ならあるよ。もっと恐れろ、恐怖しろ。全然足りない、足りないんだよ!…結晶が欲しいんでしょ?ローズのために友達を用意したよ。ちゃんと遊べたら教えてあげる」》
そしてエレベーターが止まり、扉が開くと信じられない光景が広がっていた。大量の人形たちが並べられているのもそうだが…明らかに、部屋自体が大きくなっていた。と言うよりは私達が縮んだかのようだ。
「…なにこれ、どうなってるの?」
「私達、縮んじゃった?」
怖いってレベルじゃない。いくらなんでも、これはない。姉さんと握った手をぎゅっと握りしめる。
《「今度のゲームはかくれんぼ。お友だちに見つからずに私のところに来れるかな?奥のベッドルームで待ってるよ。じゃあ、せいぜい逃げ惑って遊んでね?」》
二人で一人なら楽勝なだるまさんがころんだでした。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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