BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はボス戦「ママ」人形。楽しんでいただけると幸いです。
出てきた「ママ」のマネキン人形の巨大さと不気味さにビビってた私達だけど、操っているのが天の声だからか見当違いな方を探している。あ、思ったより怖くないかも。同じことを思ったのか姉さんも斧を構えた手に力を込めて壁に背をつけ様子を窺う。構えだけなら歴戦のハンターのそれである。
「巨大アンジー人形を思い出すけどあれよりましかな。でかいけど脚を崩せば行ける…!」
「でもばれたら終わりよ。…私が囮になる、だから姉さんがその間に…!」
「それは駄目。ローズに危険なことはさせられない。私がやるからここにいて」
ヒソヒソ声でそう会話し、私が止める間もなく飛び出す姉さん。駆け出した足音ですぐさま巨大マネキン人形は気付いて手を伸ばすも姉さんはちょこまか足元を動き回って回避。腕と足がこんがらがってその巨体が引っくり返る。
「今だ!」
《「こっちだ!来い!」》
そこ目掛けて跳躍した姉さんが斧を振り上げマネキン人形の顔に叩きつけんとするも、奥から高速で移動してきた人形がその間に割り込んで防御。人形の頭に斧が突き刺さり、倒しきれなかったそれは背中の鎌を伸ばして攻撃しようとするも、姉さんは斧を持ったまま人形の胴体を蹴って離脱。そのまま人形は床に手を付けて立ち上がろうとしたマネキン人形の腕に押し潰されて粉々に砕け散った。その破片がこちらまで転がって来て慌てて避ける。
「自分の部下を壊すとかどこに目ぇつけてんのさ!」
《「いくらでも替えが効くおもちゃなんか気にするわけないじゃん!」》
「友達とか言ってたのどこのどいつだ!?」
それはそう。あの天の声、自分で言ってた設定をまるで気にしてないらしい。馬鹿かな?
《「友達なんて踏み潰すもんだよ?だよねえ、ローズ?」》
「っ…!」
私の位置がどこかわかってないのかキョロキョロと周りを見渡しながらそう尋ねてくるマネキン人形から聞こえる天の声に、「お人形遊び」がフラッシュバックする。そんなことない、とは言えなかった。
「ローズの友達が欲しいって願いを踏みにじるな!」
そこに足元を駆け抜けた姉さんが足首を斬り裂きながら走って翻弄する。捕まえようとする手から逃げて斬り裂くヒット&アウェイを繰り返しながら姉さんは続けた。
「悪い子は許さないけどいい子だっている!そんな子とローズは出会えてないだけなんだから…!」
《「友達の事なんて何も知らない癖に。無理やり作った家族も、苦しみを共にした姉妹も踏み潰してここまで来た貴方が言うの?エヴリン」》
「っ!?」
表情を歪めた姉さんの動きが止まる。そこを右手で掴み上げ、眼前まで持ち上げ口を大きく開くマネキン人形。すると姉さんは立ち直ったのか頭突きを鼻面に浴びせて、拘束から抜け出して着地する姉さん。
「…ベイカー家もクランシーたちのことも、…D型被験体たちのことも。許してもらおうとは思わない。だけど、背負ってでも私は生きて行く!死んでるけど!」
《「残念だけどお前はもう終わりだよ!ここから先は通行止めだ!」》
巨大マネキン人形が左拳を振り上げるも、姉さんは急ブレーキして飛び退き机の下に隠れることで回避。床に拳が叩きつけられ、砕いて床に埋まってしまった腕の手首に、飛び出した姉さんが斧を振り上げて勢いよく振るうも深々と突き刺さってしまい慌てて手を放して飛び退いたところに右手が叩き込まれる。危ない。
「しまっ…」
《「残念だったねえ!武器がなければお前なんて無力で怖くもなんともない!」》
「姉さん!」
ズドンズドンズドンと、次から次へと叩き込まれる両手の攻撃を何とか後退して避けていく姉さん。あれじゃ駄目だ、どうにか…どうにかしないと。でもあんなでかいのに私の力が通じるとは思えないし……その時、カランと音を立てて足元に何かが当たった。
《「終わりだ!お前を取り込めば私は完璧に…!」》
「くっ…!」
廊下の壁まで追い込まれてしまった姉さんに、魔手が伸びる。考えていてもどうにもならない!
「姉さん!これ!」
そう言って私が投げたのは、先程マネキン人形に潰されて破壊され、転がってきた人形の破片である鎌。しかし姉さんに投げ渡すはずだったそれはすっぽ抜け、大きく弧を描いてこちらに首だけ回して振り向いたマネキン人形の右目に突き刺さった。
《「ギィアァアアアアアアアア!?」》
「おっと」
「姉さん、こっち!」
おどろおどろしい悲鳴が上がり、振り回した腕から斧がすっぽ抜けて廊下に突き刺さったのを姉さんが回収。私は走って悶絶するマネキン人形の横を通り抜けて姉さんの手を掴み、廊下を突き進む。ここを抜ければキッチン、そしてベッドルームだ!
「ローズ、無茶をして!…でもありがとう、助かった」
「姉妹でしょ、助け合いだよ!」
走る私達。立ちはだかる人形たちは姉さんが斬り、落ちていたホワイトセージを拾って残弾を回復した私の「力」で消して、突き進んでキッチンまでやってくる。ホワイトセージが落ちてるってことは少なくとも私だけでも進める様にしてる?だったらアイツの狙いは……。
「また足音!来るよローズ!」
「うん、姉さん!」
《「いかせてたまるかぁあああっ!」》
ベッドルームに続く扉を蹴り飛ばして入ってくる巨大マネキン人形。さっきと同個体なのか右目が潰れている。あれなら右が死角かも。なら今度こそ。今は背が小さいから天井にぶつかることはない筈。
「いっけえ!姉さん!」
「うわああああああっ!?…っ、このお!」
姉さんをひょいっと持ち上げ、グルグル回転してぶん投げる。ぶん投げられた姉さんは呆気にとられていたもののすぐに意図に気付いて斧を両手で持ち、振りかぶって首に叩き込んだ。
「足り…ない!?」
《「自分から飛び込んでくるなんて馬鹿だねえ!」》
しかし投げられた勢いでは力を込められなかったのか突き刺さっただけで刎ねることができない。首に突き刺さった斧にしがみ付いた姉さんに魔手が伸びる。なにかないかと周りを見渡すとホワイトセージが落ちているのを見つけて手に取り咀嚼。マネキン人形に右手をかざすと白く輝いて動きが止まる。
「今だよ!姉さん!」
「ナイス、ローズ!どおおおおりゃああああああああ!」
動きが止まったマネキン人形に足を置いて踏ん張り、力の限り振り抜き、回転しながら着地する姉さん。
《「ギャアァアアアアアアァァァァァァ……」》
首を刎ねられ、宙を舞ったマネキン人形がボロボロと崩れて行く。どうやら黒領域でできていたらしい首から下も消え去り、私と姉さんは一息つく。
「やったね、姉さん」
「うん。アイツも懲りたでしょ。急ごう、ベッドルームに」
「…でも姉さん。アイツの目的は多分、かくれんぼで姉さんを排除しながら私をベッドルームに行かせることだと思うの」
先を急ごうとする姉さんを引き止める。このままいけば罠の中に飛び込む様なものだ。しかし姉さんは笑って首を横に振る。
「つまりそれは私も一緒にベッドルームまで行くことを想定してないってことだよ。引っ掻き回すのは大得意だから大丈夫」
「姉さんが言うと説得力あるね」
「でしょ?」
そんな会話をしながらベッドルームに続く扉に入ると、暗闇が支配していて。姉さんと繋いだ左手に力を込めるとぼんやりと少しだけ明るくなり、周りの光景が見えて思わず小さな悲鳴が漏れる。顔だけで私と二倍ぐらい大きな人形たちに取り囲まれていた。
《「みんなローズが嫌い」》
《「だって化け物だもんね」》
《「変な力を持ってるし」》
《「誰もいないところを見てひとりで喋ってるし」》
《「白い汗も出る」》
《「きたないよね」》
《「あれカビなんだってさ」》
《「きたないきたなーい」》
「…うるさい」
人形たちの視線が注がれ、次々に紡がれる罵詈雑言に姉さんの手を放して両手で耳を塞ぐ。やめて、やめて。聞こえないふりをしてきたの。知らないふりをしてきたの。姉さんが斧を振るって人形の顔を破壊するけど、いくら壊しても湧いてくる。決して消えはしなかった。
《「ローズのお父さんと同じだ」》
《「ローズのお父さんも化け物なんだって」》
《「頭を潰されて生きてる人間がいるはずないもんね」》
《「カビ人間だよね」》
《「ゾンビじゃん。殺さないと」》
《「だから友達がいないんだ」》
《「可哀想だけど好きにはなれないよね、だって私達とは違うんだし」》
「うるさい、うるさい、うるさい!」
《「ほんとうのことだよ」》
《「わからないふりをしているの?」》
《「ローズは怖いんだよ!ほら!」》
《「自分が変わっちゃうから!」》
《「父さんと姉さんを嫌いになりたくないから!」》
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
耳を押さえて蹲る。……姉さんの声で言われているのが、一番きついかもしれない。
「…いい加減にしろ」
瞬間、衝撃波が円形に放たれて人形たちを纏めて吹き飛ばした。…姉さん、力を取り戻したの?すると崩れ去った人形の奥から、大きな人影が現れる。それは、成長した姿の姉さんだった。
「すごいすごい!怒りが振り切って枷を外すなんて!もう無理かなと思って回収しようと思っていたけど、取り越し苦労だったね!ローズは予定通り心が折れたみたいだし、私やられ損じゃん!」
キャッキャッと邪気たっぷりに手を叩いて笑う巨大な姉さんに、姉さんは斧を突きつけて鋭い視線を向けた。
「お前が私に力を与えて奪ってたやつでしょ。ローズをいじめる時点で私じゃないし、ミランダの馬鹿なら私に力を与えたりしない。……お前は誰だ」
姉さんの問いかけに、巨大な姉さんは首を傾げて考え込むように視線を動かしてにんまり笑う。
「私?…そうだなあ、名乗るとしたら………
というわけで天の声の正体はアナザーエヴリン編のラスボス「
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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