BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はついに登場マザー・ミランダ。楽しんでいただけると幸いです。
とりあえずあからさまに目立っている、奥に見える赤く輝く巨大な菌核を目指す私達。途中で服装まで私と瓜二つな私を見たり、城の時と同じように黒い私の死骸が落ちていたりとこちらの感情を揺さぶってくる。
「…ローズの偽物も気になるが、燃えている村は初めて見たな」
「クリスの話で聞いたイーサンがもう一度死んだ後の村と似てるかも?」
「はっ、いいねえ。奴を崇める村が燃えているのは」
「…エレナを思い出すから俺としては複雑だがな」
「来るよ!ローズは下がってて!」
黙っている私を元気づけるかのように会話しつつ、黒い私の死骸が動き出したゾンビ…多分フェイスイーターと戦う三人。父さんがハンドガンで撃ち、姉さんが衝撃波で吹き飛ばし、カールが大鎚で叩き潰す。頼もしい、と安心していると抜け出したフェイスイーターの一体が掴みかかって来て。咄嗟に右手から白く輝く力を放って吹き飛ばす。
「お前たちは本当になんなのよ…!」
「今のローズに手を出すな!」
未だに謎な黒い私のことに苛立っていると、姉さんが衝撃波でフェイスイーターを天空に打ち上げる。助かった……私の精神に呼応しているのか、ゼウ・ヌーグルを相手にしていた時ほどの出力が出せない。
「…私、足手まといだ」
「気にしないでローズ。…本当に気にしちゃダメだよ、あんなのアイツの戯言だ」
姉さんが言っているのは第二層でゼウ・ヌーグルが正体を現す直前に人形たちから言われた言葉だろう。聞きたくないとばかりに耳を押さえて蹲る。気にするなって言われても…無理だよ。
「私、もしこの力を捨てて現実に戻れても……何も解決しないんじゃないかって、怖くて。アイツに取り込まれちゃえば楽になれるんじゃって…」
「あんな奴に負けたらダメだよローズ!…何があっても私達がついている、それじゃ駄目かな?」
そう言って小さい体で私を抱きしめてくれる姉さんに、涙がこぼれる。ダメじゃない、何時でも触れたらいいのに…こんな地獄じゃないと、温もりを感じられないなんて。
「…イーサン、ローズなにがあったんだ?」
「…いじめに遭ったんだ。それを散々見せつけられたらしい」
「ミランダより性格悪いなあのカミサマ」
「どっこいどっこいだと思うぞ。…このローズの偽物、アイツがいるであろう場所で湧いて来るってことはアイツの仕業だろ」
「だろうな。俺もここまで来たのは初めてだから知らないがろくでもない香りはするぜ」
そんな私達を見守っていた保護者二人が静かに怒りを溜めているのを感じた。泣いてばかりじゃいられない、行こう。姉さんたちと一緒に、現実に変えるんだ。
「だから、邪魔しないで!」
「吹っ飛べ!」
巨大な菌核目前で立ちはだかるフェイスイーターの群れに、私は右手をかざし、姉さんは力む。白い輝きと衝撃波が合わさって大きく渦を巻き、フェイスイーターたちを一掃した。
「やったね、姉さん!」
「白と黒が合わさり最強に見える!」
「なあハイゼンベルク。俺達、いるか?」
「奇遇だなイーサン。俺も同じこと思ったぜ」
菌核のあるところの真下、地下に通じる穴が開いているそこを降りて行く。ゼウ・ヌーグルの言葉が正しければここにあるはずだ。先に進んで見つけたのは、赤く輝く胎児の様な真っ白な菌根と、それから吊り下げられ胎児の様に丸まったたいくつもの人の様ななにか。たった今吐き出されたそれは、胎児の様に丸まって眠っている素っ裸の少女。あれは、私だ。黒い私はここで生み出されていたのか。
「なんだ、この悍ましい場所は…」
「教会の下に当たる場所だなここは。…ミランダの研究室がある場所だ」
「じゃあここで、ローズのコピーを研究して量産してたってこと?なんのために!」
「…多分、これだと思う」
すぐ傍の机に置かれていたのは悍ましい真実の書かれた文書。全ての生物の「記憶」を吸収する菌根の性質を利用した、ただ一人の大切な人間の記憶を抽出する受け皿となる「器」―――実績のあるローズマリー・ウィンターズ、つまり私の完全な複製を形作り「器」を完成させる計画。
しかし完全なコピーは作れず、生まれるのは動く人形の様な無垢な抜け殻ばかりだったため、私本人をここに連れて来て生への執着とその能力を全て捨てさせて「器」にしようとした。―――コピー達も何らかの刺激を与えれば本物の私と同じように機能する可能性もあったため、仮面の公爵を用いてストレス実験を行うことにしたとのこと。多分これがあの城の惨劇だろう。
「……こんなものがあるから沢山のローズが苦しむんだ」
悲痛な表情を浮かべて衝撃波を放ち、白い菌根をひしゃげさせて完全に破壊する姉さん。…コピーとはいえ沢山の私が同時に死んでいった。思うところはあるが、進むしかない。
「…生への執着、ゼウ・ヌーグルもそれを捨てさせて私を乗っ取ろうとしていた…」
「つまりローズが生きようとさえ思えば、ミランダもゼウ・ヌーグルの思惑も叶わないということか」
「おっ
「もしかしてローズの力って乗っ取りを抗うためにも必要なのかな?いやでも、結晶を見つけて力を失くしても…私達が何とかするから安心して」
「うん…凄い力を感じる、多分結晶はこの奥にあるんだ」
奥まで進むと青い光に満ちた祭壇の様な場所に出て、そこに奴はいた。祭壇に向けて何やら祈っている様子だった。
「満ち満ちて総べたる黒き神よ。今こそ新たな世を創り賜え。黒き叡智による恵みを再び授け賜え。失われて散ったいとし子がこの地に落ちた血によりて虚ろの眠りから真に目覚めすべからく救われんことを。
赤ん坊の頃の記憶がフラッシュバックして思い出す。こいつがマザー・ミランダだ。私を庇うように前に立つカール、父さん、姉さん。それを見て分かりやすく舌打ちするミランダ。
「よう、お母様。今度こそ殺してやるよ」
「死んでもローズを狙うとは、覚悟はできているんだろうな?」
「今度こそ完全に…殺す!」
「お前たちにできると思っているのか?矮小な存在の分際で…!」
そう言ってゼウ・ヌーグルの様な六枚の黒い翼を背中から生やし、三人を吹き飛ばすミランダ。吹き飛ばされた三人は天井にぶつかって落ちて行く。そんな、一撃で…!?すると右手に青白く輝く結晶体を出現させ差し出してくるミランダ。一目で分かった。本物の浄化結晶だ。
「さあローズ。これを受け取れ。成長して力を付けたお前を、もはや私には封じることはできなかった。だからこそ自分の意思で力を捨てる様に、ケイとやらの幻覚を使ってこの世界に呼び寄せた。辛かっただろう?だがもう大丈夫だ。力を全て捨て去り、我が娘エヴァの「器」として完成するのだ。それがお前の幸せだ」
「私、わたしは……」
その輝きに魅せられる。ああ、力を全部捨てて楽になりたい。だけど、だけど。今ここでそれを受け取れば、父さんと姉さんとお別れになってしまう。そんなのは、嫌だ。
「嫌だ」
「…なんだと?」
「私は、貴女の指図どおりにはならない」
「馬鹿な、心は壊されたと神託が…」
その時だった。心に響くような声が聞こえてきた。姉さんを成長させたかの様な声、アイツだ。
《「マザー・ミランダ。私が壊したローズの心が修復されている。貴女に我が力を託す。お前の娘のために、ローズの心を壊せ」》
「ああ、神託を受け取りました我が神よ!」
恍惚とした表情を浮かべたミランダに、周囲から湧き出した菌根が次々と突き刺さり、取り込まれていく。そのたびにミランダの身体が膨れ上がり、悍ましく筋肉が膨張していく。黒衣が破け、漆黒に染まった膨張した筋肉が盛り上がる。顔はもはや面影すら消えていた。
「おお、おお!素晴らしい!神が私に力を与えたもうた…!」
「何が力よ。そんな力、私はいらない!」
「ならば捨てよ!「器」には不要な力だあ!」
野太い声を上げながらフゥフゥと興奮しているかのように荒い息を吐いたのは、漆黒の巨人としか形容できない怪物。三メートルを優に超えた筋肉達磨で、女性だったとは思えない。背中からちょこんと生やした六枚の黒い翼と、胴体の中央に付けられた胎児の様なエンブレムがそれがミランダだったと証明していた。
《「名付けるとしたら
「助けを請え!怯声をあげろ!絶望の海で溺れることが唯一の救いだ!」
「誰が…!」
「ローズ、逃げるよ!ここじゃ分が悪い!」
すると背後から衝撃波が放たれるも、マザー・タイラントは拳の一振りでそれを消し去ってしまう。見れば姉さんが駆けて来て、私の手を掴んで走り出した。
「逃がさんぞ、ローズゥウウウウッ!」
「ローズから離れやがれ!」
「娘から離れろ!」
大きな体に邪魔な壁を拳で粉砕しながら迫ってくるマザー・タイラントに、父さんがショットガンを撃ちながら、カールが大鎚を振り上げて突撃する。一瞬動きが止まるが、一撃で父さんを殴り飛ばし、カールの顔を掴んで壁に埋めてしまうマザー・タイラント。
「俺の家族に手を出すな!」
「今回ばかりは負けられるか…!」
しかし父さんが背中にしがみ付いて頭部にハンドガンの銃口を突き付け連射。弾丸をまともに受けながらも暴れるマザー・タイラントにしがみ付きながら攻撃を続ける父さん。カールも埋まったまま大鎚に掴まって操ることで飛び出し、勢いのまま胴体を打ち付ける。
「父さん!カール!」
「ここは二人を信じて、行くよ!」
「逃れられると思うか、ローズゥウウウウッ!」
それでも追いかけてくるマザー・タイラント。…なんだろう、知性が感じられなくなった。もしかして力に飲まれかけてる?そんなことを考えながらも姉さんに連れられて、洞窟を抜けて光源に飛び出す私達。朝になった雪が降り積もった広場が広がっていて、父さんとカールも出てきて、私達は身構える。するとよろよろとふらついたマザー・タイラントが追いかけてきた。
「か、神よ……これ以上の力は、耐え…られ…ウグボォ!?」
口から血の様に黒い液体を吐き散らすマザー・タイラント。膝を突き、両手を地面に付けながらゼーハーと荒い呼吸を吐きだす。するとミシミシと言いながらその身体が再び膨張を始めた。
「な、なにを!?や、やめろ!私が塗りつぶされる…!ここで消えるわけには…!?」
《「せっかく私の力を与えてあげたのに耐えられないだなんて…期待外れもいいところだわ。せめて私の糧となれ」》
そんな非情の声と共に、マザー・タイラントの背中から右腕が伸びる。そしてまるで脱皮するかのようにマザー・タイラントを食い破ってそれは現れた。
「んんっ、悪くないわね」
伸びをするその存在は、姉さんとよく似た女性の姿をしていたが一変していた。シンプルな黒いドレスを身に纏っていて背丈は三メートルを超えていながらすらりとしていて、出るところは出ていて引っ込むべきところは引っ込んでいる理想のプロポーション。地面につきそうなぐらい長い純白の髪と、深紅のツリ目は神々しさすら感じた。
「…ゼウ・ヌーグルなの…?」
「フフフッ…黒き神としての力を見せてあげるわ。大人しく取り込まれなさい。それでハッピー、エンドよ」
見かけ倒しにも程があるミランダことマザー・タイラント。さすがに全部の記憶を統合して生まれた神の力を受け止めるには器が足りなかった。
・マザー・タイラント
暴君たる母親。ゼウ・ヌーグルの力を注ぎこまれてタイラントの様に変貌したミランダ。しかし力が強すぎて制御しきれない見かけ倒し。モチーフは「Helck」の暴走人造勇者。
そして一話も経たずに再登場、ゼウ・ヌーグル。エヴリンのガワではなく自らデザインした神が如き姿でミランダを食い破って顕現。ローズ編のラスボスとなります。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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