BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。四日連続更新となります。ようやく反撃開始。遅すぎた気もするけど。

今回は一人残されたローズVSゼウ・ヌーグル。楽しんでいただけると幸いです。


ダイブⅢⅩⅣ【白き神の奇跡】

 姉さんが消された。カールも殺された。父さんも死んだ。私は一人、仇を前にしてなにもできずに頭を抱えて現実を否定する。さっきまであんなに満たされていたのに…一瞬で奪われてしまった。目の前で心底愉しげに嗤っている悪魔、黒き神(ゼウ・ヌーグル)に。

 

 

完全に心が折れたようね?さあローズ・ウィンターズ。貴女の力と共に、現実の肉体を私に明け渡しなさい。そうすれば楽になれるわ

 

 

 そう言って取り出した浄化結晶を私の目の前に掲げるゼウ・ヌーグル。ああ、これに触れれば楽になれる……こんなに苦しむこともない。普通になれる。普通になっても解決しないであろう現実の辛さは、この神が引き受けてくれる。それはなんて、魅力的な話だろう。

 

 

「…ごめん。姉さん。父さん。カール。私は、勝てないよ……」

 

 

 私を守るために散って行った大事な人たちに謝りながら、浄化結晶に手を伸ばす。ゼウ・ヌーグルに菌根の力を返却させるための装置。元々これを探していたんだ、手に取るのは悪い事じゃない。

 

 

そうよ。押し付けるんじゃ意味がない。貴女から触れることで、力と一緒にその肉体も…忌々しいエヴリンの手で失われた私の肉体が、手に入る!フフフフッ!どうしてくれようかしら!この渇きが癒されるまで人間どもの血肉を貪る?ローズが虐められたという背信者共を駆逐する?全人類の記憶を得るのも悪くないわね?胸が躍るわ!

 

「どうでもいい。全部、どうでもいいわ」

 

 

 ご機嫌なゼウ・ヌーグルが差し出した浄化結晶を両手でおそるおそる手に取る。青い輝きが私に侵食してきて、私の両手に浮かんだ根の様な文様を消し去って行く。ああ、これが普通の感覚……父さんと姉さん、カールと一緒に味わいたかった、喜びを分かち合いたかったな……母さんやクリスやケイも喜んでくれたかな。そこまで考えて思い至る。こんなやつを現実に解き放ってしまったら…母さんも、クリスも、ケイもみんな死んでしまう。そもそも私がミランダの作りだしたケイの幻影に騙されてここにきてしまったからこんなことになったんだ。そもそも私が生まれてきたから……。

 

 

「……私は、生まれて来ちゃいけなかったの…?」

 

 

 力を奪われ、存在を奪われていく感覚を感じながら思わずそうこぼれる。すると浄化結晶がひときわ明るく輝いて、聞きなれた声が木霊する。それは、姉さんから奪われた記憶の欠片だった。

 

 

――――――――「そんなことは絶対にない!ローズが誕生して、私や、イーサンや、ミアがどんなに喜んだか!全然わかってない!ローズマリー、あなたは望まれて誕生した!例えローズでもそんなことを言うのは絶対、絶対ぜーったい、許さない!!わかった!?」

 

 

 いつぞや同じ弱音をこぼした時に、姉さんが言ってくれた言葉だ。涙がこぼれる。そうだよ。私は、生まれてきてよかったんだ。こんなところで、こんなやつに、私の全てを奪われるわけにはいかない。

 

 

あら?おかしいわね、もうとっくに受け渡しは完了しているはずなのに……ローズが、抗っている?まだ矮小な希望を抱えているみたいね。四肢でももいでおけば絶望するかしら?

 

「……私は、絶望なんかしない!お前に私は渡さない!こんなところで終われない!」

 

足掻いても無駄よ、浄化結晶に力を返却した貴方に抗う術は…!

 

「こんなもの…!」

 

 

 気力を振り絞って浄化結晶を持った両手を振り上げ、一気に振り下ろす。放り投げられた浄化結晶は地面に叩きつけられ、あっけなく砕け散る。まさか破壊するとは思わなかったのか、終始余裕の笑みだったゼウ・ヌーグルの表情が歪む。

 

 

…無駄よ。そんなことしたところでこの最奥の最下層ならば何度でも作り直せる。貴女を絶望させた後でまた…!

 

「…その「また」はもう来ないよ。私は、もう絶望しない」

 

 

 砕け散った浄化結晶から溢れ出た青白い光が、私に集束していく。消えた根の文様も戻るどころかさらに濃く浮かび上がる。

 

 

「このセカイでは精神の強さが力に直結するんでしょう。なら心さえ折れなければ戦える…!」

 

その程度の力でこの私に立ち向かえると?愚かな背信者ね…!

 

 

 空間が歪むほどの衝撃波がゼウ・ヌーグルの両手に集束され、放たれる。それを、右手を構えて集束し発射した「力」で相殺する。

 

 

「今までの私と同じだと思わないで!ミランダが恐れた私の本当の力を見せてあげる!」

 

なぜ人間が恐れたものを恐れないといけないのかしら。私はカミサマよ?それに、仮に生き残ったところで貴方に何が残る?常にともにいた家族は消え、助けてくれた守護者も消え、バケモノだと罵られる貴方に!

 

「それでも生きる!姉さんと約束したんだ!」

 

 

 「力」で外側から押し付けてゼウ・ヌーグルの動きのを止めたところに、父さんが落としていたショットガンを手に取り乱射する。グシャリ、グシャリと音が鳴ってその身体に穴が開く。やっぱりだ。ゼウ・ヌーグルはこちらの攻撃を全て防ぐか受け流していた。普通に攻撃自体は通じるんだ!

 

 

くっ……菌核を消滅させる忌々しい力ね…私の防御が打ち消される。それでもあなたに勝ち目はないわ!

 

「っ…!?」

 

 

 瞬間、ゼウ・ヌーグルがハンドルを切る様に腕を動かすと世界が引っくり返って、私は天に落ちて行く。そんなでたらめな…!?さらに右腕を斧に、左腕を剣に、背中から六枚の黒い翼と細長い触手を数本生やし、同じく落ちて来ながら連撃を仕掛けてくるゼウ・ヌーグル。咄嗟に右手で斧を受け止め、力を集中。すると斧が砕け散って、その破片が右手に吸い込まれた。これって…!?

 

 

なんですって!?

 

「…こう、かな!」

 

 

 頭の中で斧をイメージ。右手から溢れた白い汗…いや、目の前のゼウ・ヌーグルよりも力の強い白い菌根…言うなれば白領域が溢れて右手に斧を形成、空中で振りかぶってゼウ・ヌーグルに斬撃を浴びせる。奴の力を、吸収した!?これって、浄化結晶の…!

 

 

天から落ちよ!

 

「うおおおおお!」

 

 

 世界がまた引っくり返って通常に戻り、斧を下にして地面に叩きつけられて痛みに呻く。白領域が崩れて戻った右手をかかげながら立ち上がり、凄まじい速度で伸びてきた翼と触手を纏めて握りしめ千切る様に奪い取る。背中から白い触手が伸びてゼウ・ヌーグルを貫いて地面に叩きつけ、私は白い六枚の翼を広げて空に舞い上がり、体当たりを浴びせて怯ませる。…いける!

 

 

その力、まるで白き神…!?認めない、私以外の菌根を支配する神など認めないわ…!

 

「カミサマになんてなるつもりはない!私は人間だ!」

 

 

 連続で放たれる衝撃波を吸収して返して相殺するのを繰り返す。背中から伸びる触手を同じく背中から伸びた触手で絡め取る。斧と剣をぶつけ合わせる。ついにはあの村そのものの巨人を繰り出してきたけど、翼で飛んでその場を逃れる。不味い、このままじゃ負ける。なにか、なにか逆転の一手が欲しい。諦めないと決めたけど実際問題ゼウ・ヌーグルが強すぎるのは変わらない!

 

 

――――――「手伝わせて」

 

 

 その時だった。私の右手が光り輝いて、黒いワンピースを身に付けた少女が出てきて衝撃波で村の巨人の一撃を受け止めた。それは、なんかボロボロでやつれているようにも見えるけどまさしく…!

 

 

「姉さん!?」

 

「…私にそう呼ばれる資格はないよ」

 

 

 どこからどう見ても姉さんだが、嬉しそうに綻ばせてから何かを後悔した顔で否定したその姉さんは背中から黒い六枚の翼を出して触手の様に変形させ村の巨人の振り下ろした拳を受け止めたかと思えばどこからともなく悍ましい蟲を呼び出して村の巨人の手首を貪り食わせて破壊した。そんな攻撃をする姉さんを私は知らない。

 

 

「…姉さんじゃないの?」

 

「私は…この世界線の私じゃない。言うなればアナザーエヴリン、別の世界線であの黒き神(ゼウ・ヌーグル)に唆されて全てを失った哀れな怪物だよ。…菌根は記憶を遡ることで魂だけなら過去や未来に干渉できる。そうだよね?救われた世界線の私」

 

「そうみたいだね。厳密には私じゃなくてここの私がやったんだけど」

 

 

 そう言いながら私から重なっていたのが離れる様にまた別の姉さんが現れる。その姉さんはスクールに通う年頃に見えた。

 

 

「わあ!ローズが成長してる!可愛いなあ!あ、私は真エヴリン。気に食わないけど呼びにくいからそう呼んでいいよ。それでエヴァ、どうすればいい?」

 

「あのゼウ・ヌーグルは菌根そのもの。いくらローズが力を奪えても際限なく湧き出してくる。勝ち目は正直言ってないけど…奪い尽くせばあるいは?」

 

 

 そう言ってまた重なっていたのが離れるように出てきたのは、なんかクールな印象の姉さん。エヴァってミランダの娘じゃなかったっけ。あれ?

 

 

「私はエヴァ。貴女の知るエヴリンの本体…と言えばいいのかな。あの時はエヴリンに託したけど、せめて今だけは」

 

「「「お姉ちゃんが、ローズを守るから」」」

 

 

 三人の姉さんが口を揃えてそう言った。私は嬉しくて、溢れてきた涙を左手で拭い、翼を広げて右手を構える。

 

 

まさか、菌根を辿って異なる世界線のエヴリンが集結したの…!?いや、それなら私も利用するまで。カミサマには敵わないことを教えてあげる。(すべ)て、(すべ)て、(あまね)(すべ)て、我が糧となりなさい…!

 

 

 背後に村の巨人を控えさせながら歩いてきたゼウ・ヌーグルが両手を天に掲げると、地面に出現した黒領域から溢れだすクリーチャーたち。フェイスイーター、エクスキューショナー、ローズデッド、ローズガーディアン、デューク・ビースト、ミアスパイダー、人形たちにマネキン人形…マザー・タイラント。他にもいる。

 

 

「ライカン、モロアイカ、ベビー、ヴァルコラック、ゾルダート、シュツルム…四貴族にミランダまで…」

 

「モールデッド各種にジャックたちベイカー家の変異体…スワンプマンまでいる?」

 

「うわ、アサルト・モールデッドにフューマー、ママ・モールドにブライドデッドまでいる。よりどりみどりだな!」

 

「…姉さんたちの世界線のクリーチャーも呼び出したってことね…」

 

 

 別の世界線と繋がる菌根の力。見るだけで恐ろしい奴等ばかりだ。でも、なんだろう。負ける気がしない。




ローズが「白き神」として覚醒、さらに各ルートからそれぞれのエヴリンが参戦!ハイゼンベルク生存ルートのエヴリンは残念ながら別の出番があるので今回は参戦ならず。エヴリン版アベンジャーズ、即ちエヴリンレムナンツ(の残滓たち)です。

・アナザーエヴリン
「四貴族編」においてあっちの世界線のゼウ・ヌーグル(不完全体)に唆されて家族だったはずのドミトレスク三姉妹や四貴族を喰らってバッドエンドを迎えたエヴリン。あちらの世界線ではローズを襲っていたが反省し、イーサンに救われ浮遊霊になっていたところを、せめてものと助けに来た。自虐的な性格。

・真エヴリン
「7編」において本編エヴリンの過去介入で救われ、死なずにイーサンの子供になった老婆エヴリンその人。こっちの世界線のミア救出後にうっかり菌根に触れてこの世界線を知り恩返しにと助けに来た。愛情に囲まれて育ったため自由奔放ですぐ問題を起こして引越しさせる家族を愛する問題児になってる。本編以上にはっちゃけている性格。

・エヴァ
本編におけるもう一人のエヴリンこと幻影エヴリンのオリジナルの魂が菌根の世界に閉じ込められていたのをイーサンが救って本編エヴリンとウィーアー!した彼女…ではなく共にミランダと戦い、エヴァだと告白した方。死んだことで前世であるエヴァだと自覚している。クールな性格。

次回、最終決戦。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

どのエヴリンが好き?

  • 本編の幻影エヴリン
  • 原作エヴリン
  • エヴァ(もう一人のエヴリン)
  • アナザーエヴリン(純粋)
  • アナザーエヴリン(悪堕ち)
  • アナザーエヴリン(改心)
  • 真エヴリン(7編の老婆エヴリン)
  • 16年後の本編エヴリン30代(ローズ編)
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