BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
旅行者はたずねた。
「あの男、自分自身に課せられた判決を知らないのですかね?」
将校は答えた。
「教えてやっても意味はないでしょう。なにしろ自分の身体に刻まれるわけですから」
フランツ・カフカ 『流刑地にて』より
「お前たちに勝ち目などないわ!」
力を与える私と対ともいえる、力を奪い去る浄化結晶の力を得た白き神として覚醒したローズと、アナザーエヴリン、真エヴリン、エヴァを名乗る三人の平行世界のエヴリンと対峙した私は、菌根を通じて平行世界にアクセスして菌根に連なる
「…思ったよりも強いわね」
菌根を辿って彼女たちの記録は一瞬で閲覧した。いずれも興味深い道を辿ったエヴリン達だ。ローズが育つまでは私の器として最適だった存在だ、可能性の塊と言えよう。
「お願い…力を貸して、ベイラ!ダニエラ!カサンドラ!」
アナザーエヴリンは死後残留思念がイーサンの元ではなく菌根を通じてあの村に来てしまいミランダの一派と絆を結んだエヴリン。そちらの世界の私に利用されて家族を喰らい羽化直前まで行ったところをイーサンに倒された「成長しなかったエヴリン」。固有能力は喰らったミランダ一派のより精度の高い能力の行使、特にドミトレスク三姉妹の蟲の群れ化を好んでいるようだ。
「衝撃波の扱い方なら私の方が一日之長がある」
エヴァはエヴリンのオリジナル。ベイカー邸での死闘ののち菌根に閉じ込められ、己の前世を自覚し三年間も行き場のないイーサンと己への怒りを溜めていた「我慢し続けたエヴリン」。エヴリン…幻影エヴリンと和解したのちに一体化し消えたと思われていたが、どうやら共にミランダと戦った世界線が存在したらしくそこからやって来た様だ。固有能力は三年間することなかったために研鑽し続けた衝撃波のより精度の高い行使か。
「へ~んしん!どりゃあ!」
真エヴリンはあの爆発の直前に今回と同じように菌根を遡って過去へ飛んでいたらしい幻影エヴリンが救った三年前のエヴリンの本体その人。ルーカス・ベイカーから奪った薬品で老婆から少女の姿に戻り、イーサンとミアの長女として三年間を過ごした「生きて成長したエヴリン」。天真爛漫な問題児の悪餓鬼に育ったらしい。固有能力は三年前のイーサンとの死闘で変貌したミランダとよく似た戦闘形態への変身。こちらのモールデッドに干渉して武器として扱っているのを見るに、ふざけているが戦闘力だけなら一番高いかもしれない。
「たとえ私の知らない形で力を発展させたとしても、全てこの私から生まれた有象無象よ!」
近づいて私の力を吸収しようとしたローズを斧で薙ぎ払いながら考える。そうだ、いくらそれぞれの世界線で私の力を極めたと言っても有象無象だ。私の敵ではない。なんなら取り込んでしまえば私の力は「完璧」の次のステージに行くだろう。
「エヴリントルネード!」
「馬鹿の一つ覚えね」
翼を自分を包み込むように畳んで高速回転しながら突撃してくる真エヴリンの放っていた竜巻の様な衝撃波を、右手から発生させた反転させた衝撃波で押さえこんで受け止める。その隙を突いてライカンの特徴を得たローズが右手を構えながら飛びかかってきたが、左手を伸ばして首を掴み空中に持ち上げる。
「平行世界から御足労感謝するわ。私に力を明け渡しなさい」
「やっ、嘘っ…待って!?」
待つわけがない、隙を晒したそちらの落ち度だ。真エヴリンを衝撃波で閉じ込めて圧縮し、右手の平から菌根を液状に放出して取り込む。んん、悪くないわね。一番戦闘能力の高いやつはもらったわ。
「姉さん!?」
「真エヴリンがやられた…!?」
「こんの!」
エヴァが右手に集束させて投擲した衝撃波の砲弾を、モールデッドを複数集めて右手に集めて作り上げた巨大な砲弾で受け止め、モールデッド砲弾を発射してエヴァにぶつける。
「しまっ…離れろ!?」
「引きずり込んであげるわ」
このセカイは菌根、即ち私の体内も同然。砲弾からほどけたモールデッドの群れに拘束されたエヴァの足元の足場を構成している菌根を液状化させて沈ませる。エヴァは衝撃波を連射してもがくがモールデッドの拘束はほどけず、共に沈み込んで私に取り込まれた。あと一匹。
「…なんで私が最後なんだろう。でも、ローズを守らなきゃ……私にはその責任がある!」
「そんな責任なんて捨てて私に取り込まれれば楽になれるわよ?」
蟲の群れと化して私を逆に貪らんと襲いかかるアナザーエヴリンを、衝撃波で散らす。一匹一匹を衝撃波で包み込み、合体できないようにした上で右手から出した液状の菌根をネットの様にして一匹残らず捕獲する。
「やっぱり、私なんかじゃ……」
「貴女は良くやったわ、安らかに眠りなさい。緻密な衝撃波操作もなかなか便利ね」
「そんな…」
隙を窺っていたものの三人の姉が倒され、立ち尽くすローズ。いくら再起しようとも、自分から希望をさらけ出したのだ。それを奪ってやれば心を折るなんて容易い。
「どうしたの?今のあなたならいくらでも味方を出せるでしょう?ほら、出して見なさい。悉く私の贄にしてあげるから」
「っ……」
光り輝く右手を構えようとして、やめるローズ。いくら出しても私に敵わないことを理解したらしい。…正直、四人がかりで一斉に来られたら負けていたかもしれない。だがそれはIFだ。ローズの心は折れた。諦めてはないらしいが、先程の寄生でローズが痛みに慣れてないのは分かっている。
「諦めない悪い子は、貪り食われて死になさい」
「え…?きゃああああああっ!?」
私の肉体を蟲の群れに崩してローズに殺到。その肉体を貫き、噛みちぎり、捕食していく。ローズは痛みに耐えきれず、精神を崩壊させて私に取り込まれて行った。
「安心しなさい。貴女が殺したかった奴等は私が殺してあげるから」
現実に出てきてローズに成り代わり日常を過ごしていたある日。とある路地裏に呼び出された私は、ルーシーとキャサリン…第二層で私がローズを追い詰める時に名前を使ったいじめっ子に早速絡まれた。最近自信に満ち溢れている私が気に入らないそうだ。
「誰の、何が汚いですって?」
「汚い」そう口にしたキャサリンに菌根である私を馬鹿にされたと感じた私は路地裏のレンガの壁にキャサリンを叩き付け、あっけなく潰れて圧死したキャサリンに呆然としているルーシーの頭を掴んで握りつぶして、崩れ落ちた首から上を失った身体を一瞥する。怪死事件として処理されるだろうか。
「ルーシーと…キャサリンだったかしら。貴女達は喰らう価値もないわ」
返り血を菌根で綺麗にしながら路地裏を出る。親指についたままだった血を舐めとりながら、私はローズの顔で心の底から嗤う。ああ、スカッとした。
「最ッ高!ざまあみなさい!」
そう口にしたのは私じゃない。私の中のローズの心が手に取るようにわかり、それを代弁したのだ。ああそうだ、人間誰しも悪意を抱えているものだ。例えローズの様な「いい子」でもそれは変わらない。人は「変身」する。人の悪意がある限り、それは伝播し続ける。そして私はそれを喰らって成長する。素晴らしい永久機関だ。
「ああ、素晴らしきこのセカイ!滅ぼすのももったいないわ」
骨の髄までしゃぶりつくしてやるから覚悟しなさい。ハウンドウルフに知られたら面倒だし、ローズ・ウィンターズとして私はこのセカイで生きてやる。
フランツ・カフカの引用は世界観を同じくする拙作Fate/Grand Order【The arms dealer】の監獄塔編から。
今回は「四人纏めて相手しなかったら」というIFでした。勝ち方で心境に変化があるゼウ・ヌーグル。余裕がある勝ち方をすれば余裕たっぷりに生を謳歌し、負けそうになってなお乗っ取られて起死回生した際は後先考えない世界の破壊を。わかりやすい感情の怪物です。
次回はハッピーエンドルート。本編エヴリンが復活した理由も明らかに。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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真エヴリン(7編の老婆エヴリン)
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16年後の本編エヴリン30代(ローズ編)