BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
それは、何時も通りの、父が我々の研究を行っていた日常の最中。エヴリンが相変わらず逆さまで胡坐をかいてふわふわ浮いているのを見ながら、父にT‐ウイルスを注入されその効果を確かめるためにメスで切られて中を確認される、といういつもの実験だった。終わりは突如訪れた。
『え?』
エヴリンが呆けた声を上げて、何事かと見てみれば突如実験室に入ってきた完全武装の男二人の
〈父!?〉
奇声にしかならない悲鳴を上げるも、父が倒れた際に手がぶつかって床に落ちてしまい、這う這うで父に駆け寄る。ダメだ、見ればわかる。父がいつも実験で殺している者達に銃撃する際に見た、致命傷だった。ならばやるべきは復讐。直前に注射されたT‐ウイルスで上がったと実感していた身体能力で床を高速で這って突撃する。目指すは襲撃者の腹部だ。
「な、なんだこいつは!?」
「情報にあった変異ヒルだ!殺せ!」
『クイーン、逃げて!』
〈父を殺されて置いて退けるかあ!〉
エヴリンが必死な顔で私の傍に近寄って戯言を吐くが、無視して全力を持って跳躍。襲撃者の一人に噛み付いて
『うわあ、えぐい…』
「ぐあああああっ!?た、助けてくれええええ!?」
「く、くそっ!こんなに強いやつがいるなんて聞いてないぞ!ウェスカーさん!バーキンさん!」
〈なに?〉
瞬間、実験室に入ってきた白衣にサングラスの男が足を揃えて膝で軽くしゃがみ、踏み出して私の入っている男の足を引っ掛けて下方向に向かって背中で体当たりしてきて、吹き飛ばされた男の中から排出される。内部にまでダメージが来た…何なんだ今のは!?
『
〈おのれ!〉
「おっと」
ならばとサングラスの男……アルバート・ウェスカーに飛びかかるも、間に入ってきた金髪の男の手にした注射器を突き刺され、中身を注入されて私は力が抜けてそのまま床に転がってしまう。動けない、なんだこれは…!?
『クイーン!?どうしたの!?』
「マーカスを仕留め損ねたら使うつもりだった筋弛緩剤だが役に立ったな、ウェスカー」
「油断するなバーキン。こいつはT‐ウイルスを生み出した実験体だ、何が起きてもおかしくない」
〈ぐああああっ!?〉
そう言ってウェスカーの靴に踏み潰される。これは駄目だ、私は蛭だ。硬い甲殻など持ち合わせてない。耐えるなど不可能だ、ここまでか……。
『どうしよう、どうしよう……』
「さて所長。スペンサー卿の命令でね。あんたには死んでもらう」
「私の娘に手を出されても困るのでね。T-ウィルスは私が引き受けますよ。フッハッハッハ!」
「ウェスカー・・・・・・。バーキン・・・・・・」
そう父を見下ろして笑うウェスカーとバーキンに父が力なく手を伸ばしているのが見えて、怒りが募る。父はこの二人を信頼していた。確かにスペンサーとかいう父の友人とは父はなにか仲違いして争っていたが、父ではなくスペンサーを選んだこいつらを許せない。ブチュブチュッと液体の入った繊維が潰れる音が聞こえた。私の身体が限界を迎えているらしい、悔しい。
『あ、そうだ!お願い、言うことを聞いてみんな!』
その時だった。エヴリンがなにやら叫んだかと思うと、ウェスカーがいきなり何かに殴り飛ばされて私は解放された。そして私を拾い上げたのは、人型の異形だった。黒い触手が複数の同胞たち…変異ヒルを結合させて、人型に形作って蠢いている。いつの間にかエヴリンの姿が消えていたかと思えば、エヴリンの声がその人型から聞こえてきた。
『うぇえ、気持ち悪い……けど、これしかなかった!名付けてリーチ・モールデッド!』
「な、なんだこいつは……変異ヒルなのか…?いや、だがこの黒い部分は……菌根か!」
「私は知らないぞ、こんな形態をとれるなんて!撃て!殺せ!」
するとバーキンが恐れ戦いて腰を抜かしながら指示を出し、残った完全武装の兵士がサブマシンガンを乱射。しかしリーチ・モールデッドは変異ヒルから分泌した粘液を全身に纏って弾丸を受け止め、腕を伸ばして兵士を一撃で打ちのめすと、その隙に私を体内に取り込んだ。同胞たちが集まって来て、粘液で私の傷を癒していく。
〈エヴリン、なにをした?〉
『みんなの体内の
見れば今にも崩れそうな肉体を菌根で縛って無理やり形を保っていた。無茶をする……だが、こいつはウェスカーとバーキンと違い信用できるらしい。
『よーし、このままやっちゃうよ!』
〈いや、無理だ!ウェスカーは強い、父を連れて逃げるぞ!〉
『え!?いいの!?』
〈我々なら傷を癒せるかもしれない!急げ!〉
私の傷を治せたなら父にもできるはずだ。私の言葉に頷いたリーチ・モールデッドは左腕で父を担ぎ、もう片方の右腕を伸ばしてウェスカーとバーキンを押しのけると、そのまま研究室を出て廊下を走って行く。
「待て!全館に連絡!実験体が逃げ出して所長が殺された!総力を持って潰せ!」
『なんの!ライカンの群れとかモールデッド軍団に比べれば怖くもなんともない!』
〈父に傷を増やすな!絶対だぞ!〉
『ラジャー!』
どうやらバーキンがアンブレラ幹部養成所全体に通達したらしい。目の前に次々と武装して現れる人間たちを腕を伸ばして薙ぎ払いつつ廊下を進んでいくリーチ・モールデッド。このまま外の世界に脱出する!
「…追わないのか、ウェスカー」
「なに。どう足掻いてもマーカスは致命傷だ。なにもできん。それに……面白い事例が見れた。菌根、アレは化けるぞ。さっそくスペンサー卿に許可をいただいて洋館のRTに投与してみるとしよう」
息絶え絶えになりつつアークレイ山地の森の中まで逃げてきた私達。マーカスを木に寝かせると、限界が来て菌根が
『クイーン、大丈夫?』
〈まだ動けないが……指示は送れる。頼むぞ同胞たち、父を救え〉
クイーンの指示で変異ヒルがマーカスに群がって粘液に沈める様は見ていて身の毛がよだつ。……だけど、多分無理だ。クイーンもわかっていただろうけど……。
『…もう、死んでるよ…』
〈いや、まだだ。傷を塞げばあるいは……〉
『死体を元に戻しても……生命は戻らないんだよ』
〈嘘だ〉
『私は教育の過程で医学を学んだからわかるけど、この傷は……』
〈私を騙そうとしているんだろ、そうだと言え!〉
『落ち着いてクイーン』
〈これが落ち着いていられるか! 私も致命傷から治ったんだ、父だって…!〉
『……クイーン。私達とマーカスは違うんだ』
〈っ………う、あああ……〉
絞り出すような声を上げるクイーン。涙こそ流せないが、泣いているように見えた。
数時間後。私の目の前には少女がいて、マーカスが寝かされている木に背もたれて腕を組みつつ私を睨んできた。複雑な気分である。
「私達は奴等に、アンブレラに復讐する。そのためには情報が必要だ。スペンサーの居場所、目的…それをくじく方法。知りたいことはいくらでもある」
『うん、そうだね。そのために擬態が必要なのはわかるよ? だけどさ』
「なんだ。父が最後に投与してくれたT‐ウイルスで我らの力は覚醒した。お前のおかげで人型の構成の基礎もわかった。この程度造作もない」
『そうじゃなくてね?』
私の目の前には、私と瓜二つながら険しい顔を浮かべた少女…クイーンと変異ヒルたちの擬態した姿がいた。しかも素っ裸にマーカスの白衣を羽織っただけの姿である。
『なんで私なのさ』
「お前が一番イメージしやすいんだからしょうがないだろう」
『そこはマーカスにしようよ…』
「偉大な父の姿を真似られるわけがないだろ」
『私に尊厳が無いとかそう思ってるのかなあ!?』
もう一人の私といい、真エヴリンといい、ゼウといい、そっくりさんとばかり相対している私の身にもなってほしい。
現在の時系列:1988年、6月28日。まだ間に合う。
ウェスカーとバーキンによる暗殺事件。今作ではその罪をヒルたちに押し付けてます。
逆転の一手のリーチ・モールデッド登場。今後の主戦力となります。そして擬態としてエヴリンの姿を取るクイーン。本物との違いは表情となんかぬめっているのとぶかぶかの白衣以外何も着てないところ。まだ擬態の精度が悪いからしょうがないね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。