BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
※8月8日4:27 セルケトの口調を変更しました
それは1993年のこと。街中を飛び回ってアンブレラに関する情報を集めて行く中でそれを見つけた。
「地下に研究所だと?」
「バーキンを街中で見かけて着いて行ったらそんなのがあったの?」
もぐもぐもぐ、とラクーン警察署のドーナツを頬張りながら私の報告に眉をひそめるのはクイーン・サマーズ。最近のお気に入りらしい日本茶で一服しながら首をかしげるのはアリサ・オータムス。ラクーン警察に入って五年、完全に馴染んでいて笑える。
『うん、駐車場でバーキンとアイアンズ署長が会っていてなんか密約交わしていたの見たよ。研究所はそこからさらに先、迷宮みたいな下水道を通った先だから行くのはおすすめできないかな』
「…ふーん。つまりアイアンズはアンブレラ側か」
「でも署長にはなにもできないよね。…研究所を調べる?」
『クイーンだったら行けそうだけど下水道が迷宮みたいで最悪帰れなくなるからやめておいた方がいいかな』
「そんなに広いのか」
「調べるにしても対策が必要だね」
「何の話をしてるのかね?サマーズ、オータムス」
『げっ』
そこにやってきた人物を見て思わず苦虫を噛み潰したような声を出してしまった。件の署長である、デューク程ではないが恰幅のいい偉そうな男、ブライアン・アイアンズ。咄嗟にクイーンとリサは立ち上がって敬礼する。
「はっ!……えっと」
「さ、最近見つけた怪しい場所を調べようと言う話をしていたんです!署長こそどうしたんですか?」
言いよどむクイーンをカバーする様に愛想よく尋ね返すリサ。するとアイアンズは眉をひそめる。質問に質問で返したから気に障った様だ。
「おほん!残念ながらその調査はまた今度にしてくれ。君達には特別任務を与えたい」
「特別任務、ですか?」
『夜の相手をしろとかだったら遠慮なく蹴り飛ばしちゃえ』
「ああそうだ。私の友人から預かった子供の世話をしてほしいのだが、頼めるか?」
「子供?」
「誰の子供ですか?」
「それは秘密だが…シェリーだ。ほら、こっちに来るんだ」
すると廊下の向こうから怯えた様子で歩いてくる少女がいた。赤いカチューシャを付けた金髪ショートヘア碧眼の美少女だ。…シェリーって言いました?
『シェリーって、バーキンの娘だよ!ほら、マーカスも誕生を珍しく祝ってた!』
「…バーキンの」
思わず口に出た台詞にクイーンが反応する。幸いにもアイアンズには聞こえていなかったらしい。やばい、バーキンに復讐する手段が目の前にあるのにクイーンは我慢できるか…?ああもう、そんなに怖い顔で睨まないで。シェリーが怖がってるじゃん。慌ててリサが間に入る。
「シェリーって言うんだ。私はアリサ・オータムスって言うんだ。こっちのこわーい人はクイーン・サマーズ。ところで何歳なのかな?」
「…七歳」
「そっか、七歳なんだ!幼いのにいい子だね!」
「…パパとママがいい子でいなさいって。いい子でいたら一緒に過ごせるからって」
…パパ、ウィリアム・バーキンとママ、その妻か。クイーン、落ち着いてよね。この子は何も悪くないんだから。そんな意を込めた視線を向けると「ぐっ」と怯み、深呼吸してぎこちない笑顔を作るクイーン。
「悪かった、私は近眼でよく顔が見えなかったんだ。できれば仲良くしてほしい」
「パパとママの言うことを聞いてえらいね。こっちで遊ぼう?お姉さんたちとかくれんぼしよう!」
「そうだな、私が鬼をしてやろう」
『かくれんぼはちょっとやめてほしい』
ゼウの仕掛けたトラウマになっている出来事を思い出してプルプルと身震いしてついていく。
「…子を育てる女性は美しいと聞く、今後が楽しみだ」
…そんなクイーンとリサの背中を見るアイアンズの気持ち悪い発言は聞かなかったことにしようそうしよう。
シェリーと仲良くなり、一週間が経とうとしていた頃。片方が見回りしてもう片方がシェリーの面倒を見ると言う形で仕事を行っていたリサとクイーン。今日は休暇であり、ラクーンシティダウンタウンのクリスタルプロムナードにやってきていた。
「どうする?ラクーン動物園にでもいくか?」
「うーん、シェリーはどうしたい?」
「ドーナツ食べたい!」
そう言ってシェリーが指差したところにはMOON's DONUTSと書かれた月を模したドーナツの看板が上にあるのが特徴の店があった。いいなあ、私も食べたい。イーサンがいればなあ。…思えばモールデッド・ギガントの頭部でご飯食べるのマジでヴェノムだったなあ。了承した二人が通りを歩いて店に向かおうとしていた、その時だった。
パラパラパラ、と音を立ててリサに向けて飛んできたなにかを、咄嗟に粘液で覆って固めた右腕で払いのけるクイーン。地面に落ちたそれを見てみれば、鋭い針が三本落ちていた。明らかに、リサを殺そうとした攻撃だった。
『襲撃!?どこから!』
「エヴリン、敵を探せ!アリサはシェリーを安全なところに!」
「うん、わかった!ドーナツはまたねシェリー、こっち!」
「な、何が起きてるの?」
困惑するシェリーの手を引いて路地裏に逃げ込もうとするリサに再びパラパラパラと音を立てて襲いかかる針を、盾になる様に間に立ったクイーンが粘液を纏った右手で受け止めると、今度は固めず半固体にして刺させることで針を受け止め、飛んできた方向に投げつける。その先は、MOON's DONUTSの看板で、月を模したそれに突き刺さる。すると居場所が割れたのを察したのか、看板の裏から誰かが飛び出した。白いフードを被った黒いコートで身を隠した細身の人物だ。
『待てー!』
「待てと言われて待つわけがない」
私は空を飛んで追いかけるが、なんとその人物は左手を向けると針を私に向けて発射してきた。見えていることに動揺して動きを止めた私に突き刺さる…訳もなく、擦り抜ける。下からはクイーンが走って追いかけてきていたので、一度合流する。
『クイーン!あいつ、私が見えていた!』
「つまりお前の混じったウイルスを使っている奴と言う事か!十中八九アンブレラだ!」
『私が混じったいうのはやめてほしいかな!』
好戦的な笑みを浮かべて、粘液を纏った掌と靴裏で壁にくっ付き駆け上るクイーン。見れば、いつぞやのリサ見たく建物上を走って逃げて行く件の人物を見つけた。こちらを見てギョッとしている。
『リサを狙ってたみたいだけど、クイーンのことまでは気付かなかったみたい?』
「逃がすと厄介だ!絶対捕まえるぞ!」
『じゃあ変身だ!』
「一般人に見られたら面倒だ、瞬殺するぞ!」
久々にクイーンに重なり、リーチ・モールデッドに変身。腕を伸ばしてフードの人物の足を掴んで引き寄せる。赤みがかかった黒い髪と細い左手がちらりと見えた。
「クイーン・サマーズの正体は変異ヒル、ね!報告が増えたわ」
『女?』
「生憎と報告されることはなにもないぞ。情報を吐いてもらう」
「そいつはお断りね」
次の瞬間、私達の右腕は手首から切断されていた。見れば、黒コートに隠れていた奴の右手…いや、鋏が閉じられていた。あの鋏って…!?そう思った刹那、黒コートの下から伸びてきた鋭い針の尻尾に貫かれて私達は宙に持ち上げられる。見覚えしかないなあ!?
『こいつ、スティンガーだ!いや人型だけど!?』
「あいつなら殺したはずだぞ!?それが人型で、なんで生きている!?この!」
右手の傷口から溶性の粘液を放出するクイーン。すると鋼鉄製だったのか黒コートがジュージュー音を立てて溶解、たまらずフードごと脱ぎ捨てるその人物を見て、私達は固まる。
『うそ…?』
「…リサ、だと…?」
そこにいたのは、赤みのかかった黒髪を短く纏め右目を前髪で隠しているもののリサの顔。しかしその姿は異形だ。左半身は黒い革製のボンテージ染みたスーツ…多分装甲服?とブーツを身に付けているが、首から下の右半身は赤みを帯びた黒い甲殻に覆われ、右腕と右足は本来の物より小型化しているけど鋏になっている。そしてその臀部からは背骨と繋がっていると思われる蠍の尾が伸びていた。あの尻尾とか異形の右半身を隠すためのコートだったのか。尻尾は多分折りたたんで収納していたな。
「…私はリサ・トレヴァーじゃない。残されたRTの腕の遺伝子と試作B.O.W.type-y139スティンガーの遺骸を掛け合わせて作られた傑作B.O.W.……コードネーム:セルケト。またの名をプロトネメシス。貴女の優秀な後輩よ、失敗作の大先輩さん」
聞いてもいないのに名乗ってきた上にクイーンを煽ってきた。だいぶ傲慢で自信家な性格らしい。私みたいな喋って知能のあるB.O.W.の方が珍しいとクリスが言ったたけど…じゃあなんなんだこいつは。聞いてないよクリス!
スペンサーが馬鹿やったせいなのか旧作版とREが入り混じってるラクーンシティ。
まだ幼いシェリー登場。そして参戦、スティンガーの後継機セルケト。世にも珍しい知能があって喋ることができる傲慢な性格のB.O.W.です。自分を傑作と呼んでいますが…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。