BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
6年前。ラクーンシティで一つの誘拐事件が起きた。旅行者の子供が、白昼堂々車で連れ去られると言う事件だった。そこに居合わせたのが当時新人警官だったアリサ・オータムスとクイーン・サマーズ。二人は目撃するや否や飛び出し、人間離れした身体能力で瞬く間に誘拐犯を制圧。誘拐された少女を救いだした。その助けられた少女の名は、レベッカ・チェンバース。後のS.T.A.R.S.だった。
私はレベッカ・チェンバース。16歳だが飛び級で大学の学士課程を優秀な成績で卒業し、化学や薬品の精製・調合の腕を買われて最年少の警官としてR.P.D.に所属している。私には憧れの人間がいる。6年前、ラクーンシティに遊びに来ていた時に誘拐された私を颯爽と助けて見せたクイーン・サマーズとアリサ・オータムス、当時からラクーンシティのヒーローとして有名だった先輩たちだ。
二人に憧れ、二人の様になりたいと本来ならあと二年かかるところを努力して16歳で卒業した時に私の熱意が耳に届いたアイアンズ署長の推薦でR.P.D.の特殊部隊S.T.A.R.S.に配属され、憧れの二人と同僚になった。かっこいいだけじゃなく意外と天然なアリサ先輩と、粗暴だけど仲間思いな一面を持つクイーン先輩の一面も知りつつ、幾度か共に任務を熟していたある日の事、それは起きた。
「…クイーン、先輩?」
『あ』
「………レベッカ」
『ごめん、警戒するの忘れてた』
爆発テロ犯をクイーン先輩の活躍で逮捕し、連行していたところでクイーン先輩がいないことに気付いて戻った私が見たのは、クイーン先輩が焦ったかのように手から謎の粘液を大量に出してドラム缶を包み込んだ瞬間、粘液の中で爆発が起きたのが封じ込まれた信じられない光景。私に気付いて何故か憤怒の形相を虚空に向けたクイーン先輩は、手をヒラヒラさせながらそっぽを向く。
「落ち着け。これは私の汗だ」
『アホかな?』
「汗にしても異常な量出てません?それに汗なんかで爆弾を処理できるわけないでしょ!?」
『それはそう』
思わずツッコむ。誤魔化すにしてももう少し何かあるだろう。そうこうしていると、先程エンリコ隊長が呼んでいた爆弾処理班が上って来て、止める間もなく部屋に入って行ってしまう。不味い、この異様な光景を見られる。
『誰かいっぱい来た!多分爆弾処理班!』
「っ…エヴリン!」
『かしこまり!』
入ってきた爆弾処理班に誰かの名を呼びながら手をかざすクイーン先輩の手から、目を凝らさないとよく見えない黒い線の様なものが幾重にも伸びて爆弾処理班全員のこめかみに突き刺さる。驚く間もなく引き抜かれ、爆弾処理班は何事も無かったかのように粘液塗れのドラム缶を持っていってしまった。
「クイーン先輩、なにが起きてるんですか!?爆弾処理班の人たちも反応すらしてませんでしたし!なにをしたんですか!」
『どうする?レベッカも処す?』
「ぐ、うううう…よせエヴリン、手は出すな。レベッカ…お前を信用して話す。だから、皆には黙っていてくれないか」
「…信用」
まっすぐと見つめてくるクイーン先輩に、6年前の光景を思い出す。何時もの先輩と変わらない、芯の入った真っ直ぐな瞳。白昼堂々車に連れ込んで私を誘拐しようとしていた誘拐犯の走行中の車に、躊躇なく飛び付いてしがみつき誘拐犯を引きずり出したクイーン先輩と、窓ガラスとフロントガラスに拳を突っ込んで叩き割り、掴んで引っ張り無理やり車を転倒させて停車させたアリサ先輩の人間離れした活躍の秘密を知りたいと思っていた。彼女たちは人間じゃないのかもしれないが、私にとってはヒーローだ。どんな秘密があろうが、受け入れて見せる。
「…わかりました。聞かせてください」
『本当にいい子だねえ』
「ここじゃ不味い。場所を変えよう」
そう言ってクイーン先輩はエンリコ隊長になにやら無線で話すと廃ビルから出て行き、私はそれを追いかけるのだった。
ラクーン警察署近くのバスケット場裏に存在するレストラン『清酒 松浪』の個室。ジャパニーズ文化が取り入れたいわゆる料亭であり、畳敷きの座席に靴を脱いで上がるのはなんとも慣れない。クイーン先輩曰く行きつけの店であり、この個室は内緒話に最適なんだとか。あと酒が美味しいらしい。
「先輩たちが、アンブレラの生物兵器…?」
「他言無用だぞ。ウェスカーに知られたらお前も消されてしまう」
『ウェスカーだけはやばい』
「生物兵器と言うのも気になりますが、何でウェスカー隊長…?」
「ウェスカーはアンブレラの一員で私の父を殺した一人だからだ」
「!?」
とんでもないカミングアウトに目を見開いて飲んでいたお茶を噴き出す。あ、あのウェスカー隊長が!?
『ひゃあ。かかったー!?』
「アリサはウェスカーの被害者の一人だ。私とエヴリンが助け出してから、行動を共にしている」
「エヴリンって、さっき言っていた?」
「ああ。エヴリンも生物兵器で、爆発処理班を一時的に操ったのもこいつで……信じられないだろうが、ここにいる。お前の噴いたお茶が擦り抜けてわちゃわちゃしている」
「ええ…?」
『わちゃわちゃ言うなー!?』
クイーン先輩の促す先には虚空があるだけでなにもいない。クイーン先輩が狂ってるとかじゃなければいるんだろうけど…?
「…それで、クイーン先輩は…人間、じゃない?」
「…ああ。リサと違って元人間でもない。蛭の集合体だ」
『うーん、端的に言ってキモい』
そう言って右腕を巨大な蛭の塊に変えて見せて自嘲気味に笑うクイーン先輩。すぐに粘液に包まれて人の手に戻る光景を、呆けて見つめるしかない。本当に、人間じゃないんだ…。
「…目的は、なんなんですか?七年間も警察を続けていられるんですよね…?」
「誓ってラクーンシティの人間を害するつもりはない。私達の目的は、我々の家族を奪ったアンブレラの破滅だ」
『洗脳とかはしてるけどねー』
「復讐ってことですか…?」
「そうとも言う、な。幻滅したか?ヒーローなんて言われている我々の正体に」
「それは……」
本音を言えば、少し幻滅した。私の理想像だった清廉潔白なヒーローは実はいなかったのだと知って、がっかりしなかったと言えば嘘になる。だけど、目的が復讐だとしても……あの時、打算無しで私を救ってくれたことは明白だ。だから。
「私にとっては、クイーン先輩とアリサ先輩は永遠のヒーローです。それは、決して変わりません」
「レベッカ…いいのか?」
「ウェスカー隊長にも、みんなにもこのことは黙ってます。それと、私が助けになれることがあったら言ってください。協力させていただきます!あ、でも悪いことは駄目ですよ?」
『レベッカ、いい子すぎない?』
「あ、ああ……」
しっかり釘をさすとクイーン先輩は戸惑いながらも頷いた。と、そこにどたばたと忙しない足音が。引き戸が開くと荒い息のアリサ先輩が顔を出した。
「遅れた!ごめん二人とも!…あれ、何この空気?」
「話なら終わったぞ」
「終わりましたよ」
『リサはリサだねえ』
数日後、ラクーンフォレスト内の地下洞窟を利用して作った産廃処理施設、通称「処理場」にて。アンブレラの「掃除屋」二名に黒い袋にすっぽり包まれ頭と脚を抱えられて連れて来られたその人物が廃液の溜まっている貯水場に投げ捨てられる。
「ぐ、う……」
「掃除屋」が去って行ったそこで、袋を突き破った鋭い先端の尻尾が壁に突き刺さって袋を持ち上げ、岸まで引き上げる。そして袋を突き破って出てきた甲殻類の鋏が頑丈な袋を引き裂いて、中身……プロトネメシスの名すらはく奪され廃棄処分にされた生物兵器、セルケトが出てきた。既に乾いているが血塗れで、傷跡が生々しい物のプロトタイラントから受けた傷は再生していた。
「……本当に、捨てられたのか。バーキン博士にとってはその程度の…ははは、はははは……」
フェンスに寄りかかり、汚れた壁を見つめて乾いた笑い声を上げるセルケト。ひとしきり笑った後、天を仰ぐ。空は見えない、汚れた天井だけだ。
「私は、なんのために……そうだ、ウェスカー博士…あの人、なら……」
ろくな食料も摂取してないため満足な回復もできていない身体で立ち上がり、よろよろと歩き始めるセルケト。その行く先は希望か絶望か。
まだバイオハザード事件も起きてない上に「ヒーロー」であるためクイーンたちを受け入れるレベッカ。クイーンとリサに助けられて運命が変わった一人です。
そして廃棄処分され処理場を彷徨うセルケト。彼女の行く先は…?
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