BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回の題名は某王様戦隊の最近の展開から。民と一つになって戦う王様かっこいいよね。

今回は無茶をしたクイーンのその後。あんなことして無事で済むはずが無かった。楽しんでいただけたら幸いです。



file0:21【女王であろうと、独りじゃない】

 クイーンの渾身の粘液の糸でスピードを抑えられた状態でレベッカとビリーの協力プレイでブレーキが作動したものの、加速し続けた黄道特急はそう簡単には止まることはなかった。デルタチームの工作で封鎖されていた線路に引き込まれ、トンネルのバリケードを突破し線路の端まで粉砕した挙句に脱線し横転した列車は炎上。投げ出されたレベッカとビリーは互いの無事を喜ぶも、一番先頭に立って文字通り粉骨砕身で踏ん張っていたクイーンは無事ではすまなかった。

 

 無茶をした両腕は肘辺りから伸びた菌根で辛うじて繋がっているものの千切れかけ、投げ出された衝撃で両足はねじれてあらぬ方向を向き、受け身も取れなかった上に糸を握っていた反動で全身に裂傷ができているものの、血を一切流れていない異様であまりに痛々しい姿で、瓦礫にもたれかかるようにして意識を失っている。

 

 

「先輩!クイーン先輩!しっかり、しっかりしてください!」

 

「おい、嘘だろ…嘘だと言ってくれ!」

 

 

 そんなクイーンに涙目で必死に呼びかけるレベッカと、天を仰ぐビリー。医療に心得があるレベッカにはわかってしまった。息をしていない、身じろぎすらしない。それはつまり……死を意味している。マスターリーチの思惑はこうして達成された。二人の仲間を守って女王は息を引き取ったのだ。

 

 

「…レベッカ。行こう、奴を止めるんだ」

 

「…ええ、先輩のためにも…絶対に!」

 

 

 泣いてばかりではいられないと、立ち上がり未来へと歩みを進めるレベッカとビリー。その先はアンブレラ幹部養成所、皮肉にもクイーンの生まれた場所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――「ははは。お前たちは賢いなあ。さすが愛しい愛しい我が子供たちだ」

 

 

 夢を見る。懐かしい、夢を。父が生きていた頃、私達に始祖ウイルスが投与されて間もなくの時期。血は繋がってないものの、まるで実の子の様に愛してくれた父と、それに応える様に進化を続ける私達変異ヒル。幸せだった。途中からエヴリンも加わり、父以外と触れ合う楽しさを知った。だがそれは一瞬で崩れ去った。奪われた。

 

 

――――「さて所長。スペンサー卿の命令でね。あんたには死んでもらう」

 

――――「私の娘に手を出されても困るのでね。T-ウィルスは私が引き受けますよ。フッハッハッハ!」

 

――――「ウェスカー・・・・・・。バーキン・・・・・・」

 

 

 我が父の、下手人にすがるように手を伸ばした光景が今でも鮮明に思い出される。ああ、許せない。許せるわけがない。私から全てを奪ったあの二人は絶対に許さない。それは真理で、恐らく同胞の全てがあの時同じ思いを抱いたはずだ。それを愚直に遂行しようとしているのがマスターリーチで、それを止めようとする私の方が異端で……。

 

 

「…私は、何してるんだろうな」

 

 

 両腕は肘辺りが菌根のみで千切れかけ、全身に裂傷が刻まれ、列車から投げ出されたのだろうか…両足はねじれてあらぬ方向を向き、されども血を一切流していない異様であまりに痛々しい姿で、暗闇の中で横たわり、一人ふわふわと浮いている私。現実じゃないことはすぐ分かった。現実の、菌根が馴染み人の肉体とよく似た構造となった肉体の痛みに耐えきれず、ショック死かどうかは知らないが死の瀬戸際を彷徨っているのだろう。もしくはもう死んで地獄にでも落ちたか。後者だとすればあまりにもさびしい場所だな。

 

 

「…本当に、私は何をしているんだ」

 

 

 仇の一人の…ウェスカーの命令を聞いてノコノコとこんな地獄までやってきて、父でも同類のリサでもない者のために同胞が傷つくのも構わず無茶やって、死にかけて、そしてこの様だ。マスターリーチ……かつての同胞に見限られても仕方ないかもしれないな。

 

 

「…それでも私は」

 

 

 私はもう、独りよがりで孤独な変異ヒルの女王(クイーン)じゃない。エヴリンと出会って、リサと出会って、シェリーと出会って、レベッカと、クリスと、ジルと、エンリコと、ケネスと、リチャードと、フォレストと、エドワードと、バリーと、ジョセフと、ブラッドと、…そしてビリーと仲間になって……私は、クイーン・サマーズとして、一人の人間として生きている。復讐を忘れた訳じゃない。復讐のためだけに生きるのは、楽しくない。そうだろう?

 

 

「マスターリーチ……お前はかつての私だ。父を殺されたあの時の時間のまま停止して、前を向いて進もうともしない…独りよがりな復讐鬼だ。それが例え父の望みであろうと、私が止める」

 

 

 そう決意を固めていると複数の視線を感じる。……エヴリンの助力で変身できたリーチ・モールデッドをエヴリンを模した姿に擬態させて、子供の姿から大人の姿のクイーン・サマーズになってから8年。手の先などの一部しか擬態を解くことなく常に人型を構成していた、今回新たに取り込んだマスターリーチの配下とは違う、ずっと私について来てくれた変異ヒルたちの視線だった。

 

 

「……ああ、言いたいことは分かっている。奴に…マスターリーチについて行きたいならそうしろ。お前たちには選択肢がある。もう、私だけじゃないんだ」

 

 

 私がミスして肉体が傷つけば、中枢の私ではなく彼らが傷つき、中には死んでいった者達もいる。それでも彼等はついてきてくれたのは、ひとえに私しか統率する個体がいなかったからだ。新たに生まれた統率個体マスターリーチについていくかどうかは彼らの勝手だ。私やマスターリーチ程ではないが彼等彼女らも小さいながらも自我を持ち、考えることができる。中にはぬるま湯に浸かっていた私に不満を抱いていた者すらいるだろう。今回の無茶で、その数も著しく減ってしまった。もうこれ以上付きあわせる訳にはいかない。

 

 

「なに、心配するな。私一人だけになろうとも戦う。もし敵対することになっても恨みっこはなしだ。お前たちはお前たちの道を行け」

 

 

 そう告げると、同胞たちは一匹も去ることなく、集って人の形を取る。それは、意思表示。現れたのはマスターリーチの様な我が父の姿ではなく、見慣れたクイーン・サマーズの姿だった。……この姿が心地よかったと、そう言っているのか。…そうだな、そうだ。思えばお前たちも、私と一緒にクイーン・サマーズとして8年もの間生きてきたんだったな。今更出てきた若造の言いなりになんかなりたくないって?私も言うて実年齢20歳の若造だぞ。相手は実質2歳?奴の言い分が正しければそうか。なら、人生の先輩としても奴に教えてやらねばな。

 

 

「…悪いな同胞たち。これからも無茶をするが……付き合ってくれ」

 

 

 ちぎれかけた手を伸ばすと、それを補うように同胞たちが集って行く。肉体が再生していく。現実で、炎に巻かれて散っていたヒルたちが集まるのを感じる。仮初の心臓が跳ねる、鼓動を鳴らす。そして私は、微睡みの中にいた意識が覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…はは、やっと起きた……寝坊助な女王だなあ』

 

「エヴリン!?なにがあったんだ?二人は…」

 

 

 目を覚ますと、そこには明らかに疲弊した様子のエヴリンがいて。問いかけると、疲労困憊のエヴリンは笑って応える。

 

 

『二人はクイーンが死んだと思って先に行ったみたい?私の事は心配しないで、リーチ・モールデッドの要領でクイーンの身体が完全に崩れない様に保っていただけだから……ヒルの苦手な炎のダメージがダイレクトに伝わってきて辛かったけど…帰ってくるって信じて頑張ってよかった』

 

「…お前のおかげで命が繋がった。ありがとう」

 

『クイーンが素直に謝った!?明日は雨かな?』

 

「雨はいいな、最高の環境だ」

 

 

 そんな軽口を叩きながらも立ち上がる。…ここは知っている。私たちが逃亡した際に通ったことがある。アンブレラ幹部養成所、私の生まれ故郷……。

 

 

「二人が心配だ、急いで合流するぞ」

 

『りょーかい!』

 

 

 そして、アンブレラ幹部養成所に潜入し二人の痕跡を辿った私たちが出くわしたのは、まるで人間の腕の様な形状の脚でレベッカを捕らえた10メートルほどの巨大なムカデと戦うビリー、という光景だった。




死んだと見せかけてからの復活。ガチで女王ヒル本体の生命活動は停止してたのをエヴリンが必死につなぎとめてました。

クイーンを構成するのは統率個体の女王ヒルだけじゃない、と言う話でした。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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