BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
「馬鹿な、信じられん……マーカスを殺害した際に逃げ出した変異ヒルの一団があの若造の正体だと言うのか。ありえん!」
「ああ。記録によればマーカス自身に擬態したというものがあった。成長して人間並みの知能を得ていたのならばあの芸当も可能だろう」
そんな会話をしながらアンブレラ幹部養成所の地下四階の通路を歩くのはウィリアム・バーキンとアルバート・ウェスカー。ウィリアムは用紙の束を手にしている。そこには、マーカスによる変異ヒルの研究記録が描かれていた。
「だが、もし事実だとすればアンブレラは終わりだぞ…!アークレイ研究所を襲ったのも奴なら、機密情報が山とある。それを公表されれば…!」
「奴の手で過去の秘密が暴かれれば、スペンサー会長もただではすむまい。それは私達も同じだ。奴の目的は我らとアンブレラへの復讐らしいからな。この辺りが潮時だな」
「…どうするつもりだ、アルバート」
エレベーターに一人乗り込むウェスカーに、バーキンは神妙な顔で尋ねる。親友がなにをしようとしているのかわかってしまった。ウェスカーは悪びれずに肩をすくめる。
「アンブレラとおさらばする。T-ウイルスを用いた究極の生物兵器は完成間近。あとは実戦データを手に入れるだけだからな。あの会社への手土産を用意したら当分は雲隠れするとしよう」
「そんな、ふざけるな!私の研究はどうなる!?T-ウイルスは既に完成したが、T-ウイルスもRT-ウイルスも研究途中で、さらに強力なG-ウイルスにいたってはあと一歩で完成間近なんだぞ!」
相変わらず自分本位な相棒にウェスカーは呆れたように笑う。
「好きにすればいい。アークレイ研究所の主任研究員でお前の右腕のサミュエル・アイザックスがNESTに逃れたんだろう?私は予定通りS.T.A.R.S.を洋館に引きずり込む。奴らなら必ずいいデータを提供してくれるはずだ。…一番戦闘力を見たかった二人のうち一人がここにいるのはいただけないがな」
変異ヒルに監視カメラを乗っ取られてあれ以降の様子を窺えないことに苛立ちを覚えるウェスカーに、バーキンは諦めかの様に溜め息を吐いた。
「…わかった。とはいえ、奴をこのまま放っておくことはできない。このままではシェリーにまで被害が及ぶ。たしか、養成所の地下には自爆装置があったはず。面倒なことになる前に、建物もろとも奴には消えてもらうことにするよ」
「そうか。残念だ、レベッカにクイーン……優秀な部下を失うことになる」
「私も残念だ。クイーンが死ねばシェリーが悲しむ。幸運を祈るよ、親友」
「お前も研究が上手く行くことを祈ろう。またな、親友」
そう言ってウェスカーはエレベーターの扉を閉じて、バーキンは踵を返して、その場をあとにした。
「先輩、無事ですか!?」
「今行くから持ちこたえろ!」
上から二人の声が聞こえて目が覚める。見れば、右腕の部位を形作っている同胞たちが勝手に動いて人差し指と中指に粘液を纏って崩れた床の鉄柵を掴んでいたらしい。ここは…拷問室の下の階層、見るからに作業現場跡か。一緒に落ちたエリミネーターはこの穴に落ちたか……しかし参ったな、落ちる前に左腕の神経を斬り裂かれた。菌根は再生に時間がかかる。さすがに片腕じゃ上がれない。左腕が使えれば糸を飛ばすなりで脱出できたんだが。
『わあ!どうしよう、どうしよう!下を見てきたけど奈落の穴だよ!落ちたら助からない!』
「…お前、マスターリーチはどうした?」
片手でぶら下がりながら、目の前の壁から顔を出したエヴリンに問いかける。奴の居場所を見つけることができたら脱出は難しいにしても止めることはできる。そう言う考えだったのだが、エヴリンはブチギレた。
『馬鹿!あんなアホの行方よりクイーンの安否の方が大事だよ!ぶっちゃけすごく迷ったけど!』
「お前は、一言多いな…ったく」
人差し指と中指だけで支えているが、さすがに限界が近い。また生き返るとかいう奇跡が起きても無駄だろうな、と下の暗闇を見ながら溜め息を吐く。
「…心地よい暗闇だ。このまま落ちてもいいかもな」
『冗談でもやめてよね。今にレベッカとビリーが来てくれるから、踏ん張って!』
「………それは無理そうだ」
それは、エヴリンの背後で天井を破壊しながら現れた。顔面が両面で癒着した四本腕でところどころが血痕なのか赤い白銀の毛並みの大柄な猿だった。頭頂部に変異ヒルが一匹癒着しておりマスターリーチの手の物だとわかる。エリミネーター、いや違う。明らかに別格だ。するとどこからか声が響く。スピーカー、マスターリーチか。
《「聞こえるか統率個体。一度は生き延びた君だ、念のために同胞に調べさせたら案の定生きているじゃあないか。君のために主任研究員アイザックス
「アイザック…?」
『アイザックってたしかヘカトンケイルを制作した人間の名だよ!』
サーベラスとはあの列車で戦った三つ首犬だったか。エヴリンが言うにはヘカトンケイルも……発想の悪辣さは確かに彷彿させるな。
《「君は知らないだろう。かつて我々が解放したRTの遺伝子から生まれたRT-ウイルスの存在を。再生能力に特化したウイルスだ。その特性を用いて二匹のエリミネーターを融合して生まれたのが、個体名:エリミネート・スクナだ。その
「「ウキャキャアッ!」」
『で、でも目は見えない筈だから勝手に落ちて自滅するんじゃ…』
二つの頭で一声吠えると跳躍し、希望的観測を言うエヴリンを余所に左腕二つで壁を指で抉って掴んでぶら下がるエリミネート・スクナ。しかしその目がギョロギョロと動いてこちらを見やるとにんまりと前方の顔が嗤う。普通に見えているだと…!?
「「ウキャキャア!」」
「っ!?」
私の目の前に着地すると襟元を掴まれて、驚異的な力で振り回されて壁に背中から叩きつけられる。そのまま壁を右の二本腕で掴むと岩盤をくり抜いて投げつけてくるエリミネート・スクナ。咄嗟に私は動く右腕を前方に構えて粘液硬化、直撃して吹き飛ばされ引っくり返る。
「がはっ…」
『ま、まあ落下の危機からは逃れたから……?』
「このまま殴り殺されるのとどっちがマシだろうな!」
首を掴まれて振り回され、さっきまで私のいた穴の縁に咄嗟に粘液硬化した頭をぶつけられてそのまま天井に投げつけられ、叩きつけられて落ちてきたところに右の二本腕のパンチを腹部に喰らって殴り飛ばされる。
『こ、こんのお!なんか私が見えるみたいだし喰らえ!スゥウウ……ワアアアアアッ!!』
エヴリンがメガホンを手で形作って近づいて超至近距離鼓膜絶叫を叩き込もうとするが、後ろの顔がそれに気付いて跳躍して回避。マスターリーチが操っている様だから二度目が効くわけなかったか…だがおかげで回復できた。左手も動く。行ける!
「「ウキャキャ!」」
「無駄…だっ!?」
一度壁にくっ付いてからの飛びかかりながらの右腕二本による拳を、粘液硬化した両腕で受け止めるも、左腕二本によるアッパーカットで腹部を殴りつけられて、壁を粉砕して隣の部屋まで転がる。そこは動物たちの剥製が展示されている部屋で、ちょうどやってきたビリーとレベッカが驚いていた。
「「ウッキャ!」」
「っ…!?」
追い付いてきたエリミネート・スクナは部屋内を一瞥すると鹿の剥製を持ち上げ、その鋭い角を私に向けて振り下ろそうとして来て、咄嗟に角を両手で掴んで阻む。四本腕の怪力で振り下ろされるそれは強力で、耐える事しか出来ない。
「うおおおっ!」
そこにビリーが体当たり。エリミネート・スクナは後ろの顔でそれを確認すると鹿の剥製を手放して天井に逃れ、左腕二本で天井をうんていの如く移動すると、右腕二本で天井を破壊してそこから逃げて行った。
「逃がしたか…!」
「無事ですか!?先輩!」
「ああ、無事だ……だが疲れた」
『あんだけ殴られたらそりゃそうだよ』
ダメージをもらいすぎた、そろそろ休みたいものだな……なんか全身のヒルが危険を察知して落ち着かないんだが、何か起きているのか…?
ガバッてなかったマスターリーチ。さすがに一度失敗したら学んでました。
そして判明、主任研究員サミュエル・アイザックス。誰?って人に説明しておくと、実写版でアリス計画なるちょっと気持ち悪い計画を主導していた研究員です。この人が変貌するアレが実写版タイラントなのは納得いってない。そのIFとなります。
そしてアイザックスの作品の一つ(サーベラス系統)、エリミネート・スクナ登場。モチーフは両面宿儺(呪いの方じゃなくてそのモチーフの方)です。リサの遺伝子で失っていた視力を取り戻してとんでもない視野と筋肉断裂してもすぐ再生するのを利用した圧倒的フィジカルを有します。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。