BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
2012年12月24日。政府側と反政府側での内戦が起きている雪が降りしきる東欧の国、イドニア共和国。その市街地を二分する渓谷に架かった古い鉄橋の高架橋を見下ろせる場所に、私は立っていた。傍らにはエヴリンがいつも通りふわふわと浮いている。世間ではクリスマスイヴだというのに私達は今日も今日とて仕事だ。先日もとある学園で起きたバイオハザードの鎮圧に向かったばかりだと言うのに。
「マルハワ学園の次はイドニアか……クリスも人使いが荒いな」
『見逃してもらってるんだから強く言えないよねえ』
「メラ、ついたぞ。クリスとピアーズによろしく言っといてくれ。仕事を始める」
BSAAの知り合いに通信機越しに報告し、粘液を凝縮して作りだした糸を伸ばして高架橋に取りつける。糸を使えるようになった頃と比べれば強度も飛距離も雲泥の差のこれはこう手放せないな。目指すは高架橋の上の線路で幅を利かせている自走列車砲だ。操っているのはこの間の学園の事件で初めて確認された新種のB.O.W.ジュアヴォと化した反政府軍だ。
「そいつはやりすぎだろう!」
『明らかな反則に物申す女!その名もリーチウーマッ!!』
「それはださいからやめろ!?せめて親愛なる隣人にしろ!」
コンクリートの足場を蹴って糸を握り跳躍、大きくスイングして射線上の上空に移動し、放たれた砲弾を両手から出した糸の網でキャッチして空中で縦に一回転。勢いはそのまま反転させて自走列車砲に叩きつけて着地。同時に周りのジュアヴォの構えたアサルトライフルに糸を伸ばして奪い取り、高架下に投げ捨てる。我ながら完璧に蜘蛛男ムーヴを習得したな。
「
「悪いな、セルビア語は分からないんだ。だから、拳で語ろうか!」
『わーい脳筋』
粘液硬化した右腕を振るい、ナイフを手に突進してきたジュアヴォの腹部を殴りつけて鉄骨にブチ当て崩れ落ちさせる。するとワラワラと集まってくるジュアヴォ達。
『
「大歓迎だ、嬉しいね」
…任務はクリスたちが来るまで時間稼ぎだったか。やってやろうじゃないか!
同時刻、イドニア共和国市街地。反政府軍に集められた傭兵たちが屯するそこで、黒髪の高校生ぐらいの少女と金髪の20歳前後の女性という一見年若いコンビが物陰に隠れながら、栄養剤と言われて配られた注射を次々と自らに打ち込んでいる傭兵たちの様子を窺っていた。
「…? クイーンの気配がする……」
「え、お尋ね者なのにまた暴れてるの?また誤魔化すのも無理があるのに……困った姉貴分ね」
悶え苦しむ傭兵たちを余所にそんな会話を交わしながら奥に進む二人。止められなかったものは諦めるしかないと、痛感していた故だった。そして出くわしたのは、短い赤毛の強面の男が、目が無数に増えて複眼の異形、ジュアヴォに変貌した傭兵仲間を素手で圧倒し撃退する光景だった。その傍らには件の注射器が転がっていた。
「その注射、使ったの!?」
「なんともないの!?本当に!?」
「あ、ああ。お前らも傭兵か?興味があんのなら下にいる姉ちゃんに言いな。…俺は勧めないけどな」
いきなり出てきた美女二人にどもつきながら、消滅するジュアヴォに肩をすくめる男に、黒髪の少女も苦笑いで頷く。
「うん、最高に身体に悪そうだね」
「やっぱり。アリサさん、この人には抗体が……っ!?」
「そいつはどうも…っ!?」
何かに納得したらしい金髪の女性が、なにかに気付いて拳銃を引き抜いて構える。男も、それに気付いて銃を掲げ、黒髪の少女は袖を振って二本の棒を手に取り、シャンシャンと軽く振るって30㎝ほどに伸ばすと連結。さらに伸びて彼女の専用武器、ロッドバトンを作り上げると構えたその先には、知人の顔を持つ女がジュアヴォに変貌した傭兵たちを従えて立っていた。
「…エイダ?じゃないね」
「あら、私はエイダ・ウォンよ。どうしてそう思うのかしら?アリサ」
「…生憎と、私と同じ顔を持つ妹たちがたくさんいるからね……あなたがそうなのはわかるよ」
「私を貴方たち「リサ・シリーズ」と一緒にしないでもらえるかしら」
そう言ってエイダと呼ばれた女性が手を振るうと、ナイフやマチェット、スタンバトンを手に襲いかかるジュアヴォ達。金髪の女性が拳銃を連射、黒髪の少女はロッドバトンを振るって次々とジュアヴォを叩きのめし、男も掌底をジュアヴォの顔に叩き込んで怯ませると長い脚を使って蹴りを叩き込み、他のジュアヴォの元に吹き飛ばす。
「それで?何の話だよ。強い別嬪さん二人が揃って俺に」
「あなたが世界を救う鍵なのよジェイク・ミューラー。さあ入って」
「なにがどうなってんだかな……はいはい、わかりましたよ」
言いながら、下に通じるダストシュートを開ける金髪の女性が、牽制で撃ちながら男…ジェイクに促すと男は肩を竦めながら入り、金髪の女性もそれに続く。黒髪の少女はそれを確認するとロッドバトンを三節棍の如く変形させてジュアヴォの首に引っ掻けると、フルスイングして投げ飛ばし、自身も続いてダストシュートに入ってその場を逃れる。
「…RT-ウイルスの母体にG-ウイルスの被験体…ジェイク・ミューラーと共に絶対捕らえなさい」
エイダと呼ばれた女性はそう通達し、その場を去って行った。
下水道まで滑り降りて何なく着地するジェイク。あとから滑り落ちてきた金髪の女性は尻餅をつき、頭から飛び込んだらしい黒髪の少女はそのまま金髪の女性にぶつかってもみくちゃになる。
「…なにやってんだ?」
「…見ての通りよ。どいて、アリサさん」
「めんぼくない…」
ジェイクから冷めた目を向けられ、金髪の女性に怒られた黒髪の少女は立ち上がり、拗ねた顔で手にしたロッドを軽く振って二本の棒に戻して袖にしまうと、懐から身分を示す手帳を取り出し、金髪の女性もそれに続く。
「私はアリサ・オータムス。アメリカ合衆国DSOのエージェントだよ」
「シェリー・バーキン。同じくDSOのエージェントです。私達は貴方に……」
「皆まで言うな。アメリカはこんな子供まで雇っているのか?」
「なっ……うう、私こう見えて59歳なのに……多分ジェイクの父親よりも年上なのに……」
「知っていても信じられないからしょうがないわよ…」
落ち込むアリサを慰めるシェリー。しかしそれを冗談に思ったのかジェイクは出口と思われる方向に向かいながら視線で促す。
「冗談は後にしろよ。逃げるのが先だ。来ないのか?」
「……行こうか、シェリー」
「ええ。ちゃんと話は聞いてもらうからね!」
溜め息を吐き、ジェイクについていくアリサとシェリーであった。
そして2013年6月29日。アメリカ、人口7万人の中小都市トールオークスにて。アメリカ合衆国大統領のアダム・ベンフォードが、世界中で勃発するバイオテロに歯止めをかけるべく、トールオークスの大学でラクーン事件の真相の公表を行おうとしていた。アダムの友人であり、事件の生還者でもある大統領直轄のエージェント、レオン・S・ケネディもその場に居合わせていたが、講演当日に示し合わせたかの様に大規模バイオハザードが発生。アダムがゾンビ化、レオンは同僚のヘレナ・ハーパーと共に対峙する。
「それ以上、近づかないでくれ……!大統領!……やめろ!アダム!」
物言わぬ動く死体と化し、ヘレナに襲いかかろうと歩み寄るアダムに、ハンドガンの銃口を向けるレオン。警告の声を上げるも聞くことはなく、たまらずヘッドショットを叩き込んで沈黙させる。その瞬間、扉が開け放たれて第三者が現れ、現状を確認して怒りの形相を浮かべるとレオンに掴みかかった。
「なぜ、殺したの!」
アダムを撃って放心していたレオンに足払い、倒れ込んだところに鋭い刃を叩き込むその人物の攻撃は、銃撃を受けてギリギリレオンの頭から逸れて床に突き刺さる。ヘレナのハンドガンだ。
「お願い、やめて」
ヘレナに宥められたその人物は激昂、レオンの胸ぐらをつかむとボーリングの様に机に投げ飛ばし、咄嗟にハンドガンを乱射したヘレナの銃撃を全て右腕を掲げて弾くと背中から伸びたそれでヘレナを締め上げ、持ち上げる。
「アダムは、私の恩人よ。それを殺したレオンを殺すのを邪魔するなら…貴女から殺す」
「待て…、スプリングス捜査官。…よく見てくれ、アダムはゾンビ化したんだ」
ヘレナを締め上げるスプリングスと呼ばれた同僚に、アダムの死骸を促すレオン。スプリングスは事情を呑み込めたのか、ヘレナを解放するとそのまま泣き崩れてしまった。
「アダム……どうして、どうして……!」
「…わからない。気付いた時にはすべてが終わっていた」
「……私が、やったの。私が……この事態を引き起こした」
「…なんですって?」
ヘレナの言葉に怒りが再燃するスプリングス。レオンもまた懐疑的な視線をヘレナに向け、そこに通信機の着信音が割り込んだ。
贖罪。救済。復讐。エヴリンを基点に歪んだ三つの運命は、こうして重なり合う。
―――【EvelineRemnantsChronicle】file6【混沌編】
なにがどうしてこんな立ち位置になっているかは敢えて語らない方向で。
・ロッドバトン
DSO特注のアリサ専用武器。二本の棒を伸ばして連結させ、アリサの怪力でしか扱えないロッドに変わる。三節棍に変形させることが可能。シェリーのスタンバトンとお揃いなのでアリサは気に入ってる。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。