BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
「フフフッ…」
「喰らえ!」
粘液糸を天井にくっ付けて宙に舞い上がり、スイングキックを叩き込むが、首を逸らして避けられて回し蹴りを叩き込まれて地面に蹴り飛ばされる。無様に倒れる私を悪辣に嗤いながら、レベッカとビリーの弾丸をまともに受けながら意にも介さず掲げた両掌から次々と変異ヒルをとめどなく溢れださせていくマスターリーチ。
「私に敵うとでも思っていたのか?今までは遊んでやっただけだ。私も私のできることを把握しておきたかったのだよ。大体わかった。もうお前たちは用済みだ」
その身体にどれだけ潜ませていたというのか、溢れだしたそれは地面にボトボトと落ちて人型を形成、壮年の我が父の姿に擬態した擬態マーカスが新たに四体、出現する。エヴリンを除けばこれで5VS5、数の差は互角だ。
「ついでだ、ハンターΩ。そいつらをやれ」
「否」
「む…?」
『残念だったねマスターリーチ!オメガちゃんはもうお前の言うことは聞かないよーだ!』
そのまま不敵な笑みを浮かべながらオメガに命令を下すマスターリーチだったが、オメガはぷいっとそっぽを向き、エヴリンが空中で逆さまになりながら踏ん反り返る。
『オメガちゃん、他の有象無象は無視だ!あいつをとにかく切り刻めえ!』
「了承!」
「なにをしたのか知らないが、敵に鹵獲された時点で対策を考えてないとでも?」
そのままエヴリンがオメガにぴったりくっついて指示、首、腕、肩、胴体、脚、頭部を輪切りにと次々と斬り裂いて行くがしかし、マスターリーチは即座に再生。そのまま巨大な塊に肥大化させた右腕を振るおうとしたので、私が前に出て両手で受け止めると、マスターリーチは「Laa~!」と歌い出すと二体の擬態マーカスが両腕を伸ばして一体ずつでオメガの四肢を拘束すると締め上げてしまう。残りの擬態マーカスはムカデ腕を振るおうとしていたヘカトを粘液の壁を形成して閉じ込めていた。
「う、あああああっ!?」
『オメガちゃん!?』
四肢と首と胴体を締め上げられて表情を歪ませ苦悶の声を出すオメガに、エヴリンが悲鳴を上げる。銃撃は効かない身体だが締め上げるのは普通に効くのか…!?レベッカとビリーが銃撃でオメガを締め上げる腕をちぎらんとするが、ハンドガンだろうがショットガンの銃撃だろうが即座に再生していき締め上げる力は緩まれない。なら私が…とマスターリーチの右腕から腕を外して粘液糸を伸ばさんとするが、逆に粘液で両手を右腕に拘束されてしまっていた。
「ぐっ…!?」
「フハハハ!私は、お前の性能よりすべてが上だあ!」
「がああ!?」
そのまま右腕を岩盤に叩きつけられ、私はサンドイッチにされて崩れ落ちる。見れば、オメガは今にも失神しそうだった。エヴリンも泣きそうだ。
「…それは愛じゃないわ」
瞬間、硬質なものが砕け散る音が聞こえて。見れば、右のムカデの腕を螺旋状に変形させドリルの様に回転させて粘液硬化の壁を打ち砕いたヘカトがいた。そのまま左腕を勢いよく伸ばしてオメガを縛っていた二体の上半身をでろでろに溶かしながら吹き飛ばしてオメガを解放させるがしかし、崩れ落ちた二体を構成していた変異ヒルが集まって、一回り大きな巨人に変貌。
「そんなに
「あぐっ…!?」
マスターリーチが吠えて、ヒル巨人がムカデ腕の節足を両手で掴むと粘液で固定。引っ張ってヘカトを引き寄せると、鋭く槍状に伸びた右の前蹴りがヘカトの胴体に突き刺さり、そのまま膝を顎に叩き込むヒル巨人。ヘカトは右腕の螺旋状のムカデ腕を振り回すが、当たった瞬間その部位だけ構成が崩れて受け流され、勢いよく地面に叩きつけられてクレーターを生み出した。
『ヘカトちゃんを助けて、オメガちゃん!』
「了承」
「無駄だ」
エヴリンがオメガに命じてヘカトを助けようと試みるが、先程までヘカトを足止めしていた擬態マーカスの一体が、両腕を粘液硬化しさらにそれを刃状にしてオメガの斬撃を受け止め、もう片方の刃を振るってオメガを弾き飛ばす。もう一体は変幻自在に両腕を触手化させてレベッカとビリーの相手をしていた。ダメだ、完全に抑え込まれてる。私が何とかするしかない…!
「うおおおっ!」
「そればっかりか。芸が無いな元統率個体ィ!」
なんとか倒れたまま手を突き出し、粘液糸を伸ばしてマスターリーチの首を締め上げようとするも、ぬるりと首を糸が擦り抜けて空を切ると、右足が振り上げられてギロチンのようになって首に叩きつけられる。全体重を乗せた斬撃が、咄嗟に粘液硬化した私の首を強烈に圧迫した。
「が、あああああっ!?」
「防御だけは得意だなあ!死にぞこないが!」
そのまま蹴り飛ばされて仰向けにされ、肥大化しさらに粘液を固めた棘を生やした右腕が勢いよく振り下ろされるのを、咄嗟に両腕を突き上げて受け止める。掌に棘が突き刺さって激痛が走る。ここまで力の差があるのか…!
「なんでだ、なんでお前はこんなにも強い…!?」
「あの記録を見たならわかるだろう?我らの本質は「学習」して「適応」し「進化」する力だ。情報さえあれば我等は無限に進化する。故に私は自我を持ってからのこの2年、学習を怠らなかった。だがお前は10年もありながらなにをしてきた?現状に満足し「停滞」していた、元統率個体が聞いて呆れるなあ?」
そのまま粘液で固定されて持ち上げられ、横に振るわれて投げ飛ばされた私は飛び石の様に地面を跳ねて崖まで転がり落ちそうになるのを、粘液糸を伸ばして間一髪助かった。それを見て嘲笑いながら歩み寄ってくるマスターリーチ。
「私の「学習」したことを話そうか?まずはレベッカ・チェンバース。戦闘力も耐久力も並み以上でしかない、頭脳と薬学知識こそ目を見張るものがあるがそれだけだ。まるで脅威にならない」
擬態マーカスに首を掴まれて持ち上げられるレベッカを見ながらそう称するマスターリーチ。次の視線を向けたのは、擬態マーカスの腕を掴んでレベッカの拘束を外そうとしているビリーだ。
「ビリー・コーエン。体力、戦闘力共に優秀だ。ゾンビになれば手駒としてほしいな。だがそれだけだ、頭脳が足りないとでもいいかな。精神的にも難がある。現に今もレベッカを救うことに気を取られすぎているな、取るに足らない」
そうやれやれとでも言いたげに首を振ったマスターリーチが視線を向けるのはエヴリンとオメガだ。
「エヴリン。詳細はまるで分らんが、お前らの司令塔だ。レベッカとビリーには見えてないな、見えてる者の共通点は……T-ウイルスか?まあいい、本人の戦闘能力は強力とも言い難い大声のみ。最大の弱点は触れることができないところだな。放っておけばただ五月蠅いだけの餓鬼だ」
『なんだとお!?』
「ハンターΩ。攻撃、防御、敏捷、知能、連携、全てが優秀な素晴らしい個体だ。奪われてしまったのが実に口惜しい。弱点は命令を何でも聞く……のは改善したらしいが、リーチの短さと攻撃に使える爪が右腕にしかないことだろうか。攻撃手段がそれしかないのだから受け止められてしまうと弱い。それを補うハンター軍団だったのだろうが……それがないなら怖くもなんともないな」
そして、と辟易していた様子でヘカトに顔を向けるマスターリーチ。不快だと顔に書いてあった。
「
ぼそっと本音がこぼれた。さっきの壁を破壊されたのは想定外だったらしい。だがそれすらすぐに対応するとは……。
「そしてお前。クイーン・サマーズ。変異ヒルの集合体にして我らの元統率個体。再生能力と怪力、粘液硬化にもの言わせたインファイトが主な攻撃手段。粘液を糸に変えて遠距離に飛ばせるが、それだけ。他の連中に比べればあっさりしてるなあ?弱点は炎に弱いのと、菌根が神経になって張り巡らせている点ぐらいか。欠点しかないな。お前はその程度だということだ!」
なんとか這い上がった私の頭を踏みつけて見下してくるマスターリーチ。なんだ、この違和感。なにか、致命的な勘違いを感じる。……それはなんだ?くそ、考えている暇がない。まずは、この最悪の状況を打開しなければ…!
クイーンと違って即分離して回避できるのが強いマスターリーチ。手数もパワーも桁違いの強敵です。オメガちゃんとヘカトちゃんすら圧倒されてる時点でヤバい。
なにより恐ろしいのが「学習」して「適応」し「進化」する点。つまりこれまで負けてきたのも全部経験値になってたわけで。実質無敵です。でもクイーンが感じる「違和感」と言う弱点があります。それはなんなのか…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。