BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
あれは、ウィリアムと共にアンブレラ幹部養成所に向かっていた時のことだ。アークレイ研究所のウイルス漏洩による壊滅、マスターリーチの出現などにより、S.T.A.R.S.に潜入中にであるにも関わらず駆り出された私と、ラクーンシティの地下に建造されたアンブレラ社の極秘研究所「NEST」の研究員でT-ウイルスとG-ウイルスの研究を進めているにも関わらず駆り出されたウィリアム。以前マーカスを殺害した際にアンブレラ幹部養成所の責任者を引き継いだゆえだろうが、久々の再会だった。
「そうだアルバート。念のためにこいつを渡しておく」
「これは…?」
渡されたのは、赤く透明感のある液体が入れられた注射器。受け取ったそれをまじまじと見つめていると、ウィリアムは自慢げに語る。
「アイザックスがNESTまで持ち逃げしてきたRTの腕から抽出した、純粋な混じりっけなしのRT-ウイルスだ。まだ人体実験こそしてないが、「再生」に特化している。致命傷だろうが恐らく治せるはずだ。君との友情の証として渡しておくよ」
「お前の事だ、
「ばれたか。まあ実際に致命傷を治せるはずだからお守り代わりに持っておくといい。それを使ったら言ってくれよ。経過観察したい」
「そんなことにならないのが一番いいがな。やはりお前は狂ってる。あの環境下で子供を作ったぐらいだからな」
「お前こそ、どこぞのミューラーとかいう女との間に子供作ったんだろう?人のことは言えないぞ」
「…待て、話してない筈だぞいつ知った」
「噂になってたぞ。あの堅物ウェスカーを射止めた女はどんな奴なんだろうって」
「誰だか知らんが噂を流した奴許さん……」
注射器をポケットに胸ポケットに入れながら、ふと思い出したことを尋ねる。今の己より研究職のウィリアムの方が詳しいだろう事柄だった。
「そういえば、アークレイ研究所が壊滅したということはRT-01はどうなったんだ?」
「ずっと地下に幽閉されているはずだ。アイザックスが直々に作った、通るたびに道が変形稼働する代物だ。出口に近づくことも難しいだろうな。…いや本当にもったいないが。奴が大人しくしていてくれたらどれだけ研究が進むことか」
「RTを逃がしたのが痛かったな……いたからと言って大人しくしているかと問われたら否だろうが」
そんな会話をした数日後。私は、そのRT-01に致命傷を負わされ……保険のつもりで持っていたそれを使うことになった。
俺はクリス・レッドフィールド。S.T.A.R.S.の隊長ウェスカーの命令でジョセフと共に洋館右側の探索をしていたのだが、ウェスカーとアリサの態度に違和感を感じ、嫌な予感がして戻ってみれば、背中からなにかを生やしたアリサと、その髪を掴んで持ち上げているウェスカーの姿を見て、迷うことなく銃口をウェスカーに向けた。アリサがバケモノだろうが悪人であることはありえない。ありえるとすれば、実績が上のアリサとクイーン、エンリコを差し置いて隊長に就任したこの男だ。
「私の名はリサ・トレヴァー。帰ってくるのを待っていたわ、マガイモノ」
それから一悶着の後に突如現れ、アリサを捕まえていたウェスカーの胸を背後から貫き壁に投げ捨てたのは、醜悪な異形の怪物。前傾姿勢で見下ろして名乗ったリサ・トレヴァーと言う名前に、倒れたままのアリサが過剰に反応する。目を見開き、動悸が激しい。どうしたんだ?
「リサ・トレヴァー?誰だ?」
「ウェスカーが殺され……いったいどういうことなの!?」
「…ち、違う!リサ・トレヴァーは私だ!」
焦躁のままに頓珍漢なことを言い出したアリサが背中からの触手を使って立ち上がり、拳を振るう。風切り音と共に大気が割れた様にも見える衝撃。あれがアリサの本気なのか、と驚くのもつかの間。リサ・トレヴァーは髪の毛を蛸の触手の様に伸ばしてアリサを拘束、持ち上げて締め上げるとデスマスクから覗かせる赤い目をギョロギョロと動かしてアリサを睨みつける。。アリサが可愛く見えるぐらいのバケモノだ……。
「マガイモノがおかしなことを言うわね……生意気ね、可愛くない、気に入らないわ。やっぱり殺そうかしら」
「アリサを守るぞ、撃て!」
「「「おう!」」」
この場で最年長のバリーの号令で、俺、ジル、ジョセフが銃を構えて銃撃。しかしリサ・トレヴァーはアリサの拘束をほどいて自由になると驚異的な脚力で跳躍すると長い腕で手すりに手を駆け宙返り、さらに放たれた弾丸を空中で振り回した手枷の鎖で弾き飛ばすと吹き抜けの二階の通路に降り立ち、右目をギョロギョロと動かして俺達全員に視線を向ける。
「邪魔…!」
「とっておきだ、喰らえ!」
瞬間、跳躍して天井に裸足をつけると、凄まじい勢いで俺とジョセフの間に着地。手枷の鎖を振り回して俺達二人を薙ぎ払い、そこにバリーが愛銃であるコルト・アナコンダ……44マグナムを叩き込むも、頭部を撃ち抜かれながらもリサ・トレヴァーは止まらず、突進。
「っ、ジル!」
咄嗟に一番近くにいたジルを背中から触手を伸ばして引き寄せるアリサ。しかしバリーに鎖の一撃を浴びせたリサ・トレヴァーはそのまま標的を二人に変え、右腕を床に叩きつけると亀裂を発生させ、二人はそれに巻き込まれて落ちてしまう。
「アリサ!ジル!?」
「……疲れた。どこにいるの?お母さん……」
すると暴れ疲れたのかリサ・トレヴァーは静まり、右の扉を開けて奥のに入って行き姿を消した。追いかけることも考えたが、今は仲間の安否を確認するために亀裂に駆け寄る。
「アリサ!ジル!無事か!?」
「ええ、なんとか無事よ!」
「地下道が広がってるみたい!なんとか脱出してみる!」
「わかった!俺達は脱出路を探る!」
呼びかけると結構遠くから二人の声が聞こえ、無事を確認できて安堵する。…アリサには聞きたいことはあるが、それはあとだな。
「……ウェスカー。なんでこんなことをしたんだ……」
部屋の隅に転がっているウェスカーに視線を向ける。胸部の中心に風穴が開いている。おそらく即死だろう。俺達のリーダーだった男。あの時、アリサとウェスカーどちらを信用するか迷ったが、アリサとクイーンとは配属した時からの仲だ。どうしても疑うことはできなかった。
「安らかに眠れ」
俺とバリー、ジョセフはウェスカーの死体を一瞥してから、バリーにケネスがやられたことを伝えられ確認するべく左の扉から食堂に入って行く。……ウェスカーの手に握られた、空の注射器にはついぞ気付くことはなかった。
地下に落とされた私たち。一緒に落ちたジルから懐疑的な視線を向けられていることに気付いて、あわわわと両手を振り回す。
「あ、あのね?騙してたわけじゃなくて、いや騙してたんだけど、私はアリサじゃなくてリサ・トレヴァーで、この洋館で実験されていた生物兵器で、クイーンとエヴリンに助けられて、皆と出会って、好きになって、でもウェスカーは私を実験した悪い奴で、あいつはリサ・トレヴァーを名乗ってたけどそれは私の事で……」
「アリサ、落ち着いて。私も混乱しているの。噛み砕いて教えてくれる?」
「え、あ、うん……」
ジルに諭されて、できるかぎり要約して全部
「…クイーンとかエヴリンについては後回しよ。つまりアリサ・オータムスは偽名で、貴方の本当の名前はリサ・トレヴァー。だけどアイツが名乗って混乱してる……こういうことね」
「そういうこと、です」
「それでここは貴方が掴まって研究されていた研究所が隠された洋館で、アンブレラが所有している。ウェスカーもその一味の一人……私達は騙されていたのね。言ってくれればよかったのに」
「…レベッカに二年前にはクイーンがドジして全部話してたんだけど……」
「貴方たち新人になに重い物押し付けてるの?」
「面目ない……」
縮こまるしかない。……これからどうしよう。私ひとりじゃ考えられないよ……。
おや、ウェスカーの様子が……?
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