BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
――――目を覚ます。横たわらせてベッドに寝かされていた状態から、起き上がって己の人間の腕と異形の腕を視界に納める。確か私は、ラクーンシティの郊外でウェスカー博士を待っていたところにいきなり襲撃してきた完全武装した男に銃で怯まされたところを背後に回りこまれて……首を、折られて……なんで、生きている?
「目が覚めたか」
「お前は…!?」
扉を開けて入ってきたのは、完全武装した男だった。咄嗟に伸ばした尻尾を手にしたナイフで斬り弾き、一瞬で距離を詰めて眼前に突きつけられる。殺される、そう思ったが、ナイフは引っ込まれる。男は手持無沙汰にナイフを弄んでいる。
「なんのつもり…!」
「上層部の命令でな。お前に恩を売って生かせとのことだ。アルバート・ウェスカーから依頼されたのはお前の始末だが……俺は金払いがいい方につく。運がよかったな」
「なんですって……?ウェスカー博士も、私を………」
伝えられた言葉に、思わず呆ける。また、涙が溢れる。私は、生みの親二人から捨てられたのか……。
「……お前は戦士に向いてないな。行け、どこへなりとも」
そう言って扉をナイフで促す男。涙を流したまま首をかしげる私に、男は続きを述べる。
「俺が受けた命令はお前を生かせ、だ。その命令は折った首を元の位置に戻して再生を待つことで達成した。そのあとの事は知らん。上層部に恩を感じるかどうかはお前次第だ。装備は外の部屋にある。もし恩に報いたいというのなら俺についてこい」
「っ…!」
上層部、つまりアンブレラ。もう利用されたくないと、感情のままに布団を手に取り異形の半身を隠しながら扉に手をかけて、振り返る。
「…あなたの名前は?」
「名乗る名などない、がこう呼ばれている…“死神”ハンクと」
「…ありがとう、ハンク」
「やはり、お前は戦士に向いてないな」
そうして、私は外の部屋で装備を整えてから、その場を後にしたのだった。
ズルズルズル!と巨大で長大な下半身を引き摺って蛇行しながら、グシャアバキィ!と次から次へと部屋を彩る調度品が粉々に砕け散っていく音が響き渡る。机や棚、電気スタンドなんかを盾にしてなんとか逃れようとする俺を、ヨーン・エキドナが次々と拳を振るって破壊していく音だった。アリサと似たような容姿の細腕からは考えられない怪力だ。……いや、アリサも馬鹿力だったかそう言えば。
「腕があるって楽しいわねえ!餌を簡単に追い詰められる!移動にも便利!」
「嘘だろ…!?」
なんとか外に出た俺を追いかけて、扉を粉々に尻尾で粉砕したヨーン・エキドナが、ドア枠に両手を駆けて腕のバネを引き絞りパチンコの如く超加速して突っ込んでくるのを、咄嗟に横の扉を蹴破って転がり込むことで回避する。
「ヴァァアア…」
「またか!?」
しかし扉を潜った瞬間、中にいたゾンビが襲いかかって来て、咄嗟に掴みかかってきた腕を受け止めてまるでダンスでも踊っているかのように場所を入れ替え、机の下に隠れる。瞬間、扉を開けて入ってきたヨーン・エキドナの大きく開けた口に頭から丸呑みにされてしまうゾンビ。
「やった!やったわ!…もぐもぐ、…あれ、でもそんなに死体と味が変わらないわね……期待外れだわ」
どうやら俺を食べたと勘違いしているらしい。目はそんなによくないのだろうか。ゴクリ、と音を立てて胴体に飲み込まれていくゾンビ。筋肉の動きだけで胴体内を移動させて飲み込んでいる、とんでもない筋力だ。しかも次から次へと喰らっているところから見ても強力な消化器官を有していると見れる。飲み込まれたら終わりだ。すると顔を青くしたかと思えば口元を押さえるヨーン・エキドナ。
「…うぷっ、さすがに食べ過ぎたわ……ヴェエ!」
胴体を膨らませ、こみ上げる様にしてその場に吐き出して撒き散らしたのは、とんでもない数の人骨。俺の身体が埋もれて思わず悲鳴を上げかけるも何とか口を押さえて息をひそめる。なんて数だ……目の前で食われたゾンビの数を優に超えている。少なくとも10人以上の人骨がそこにあった。見覚えのある装飾品が腕の骨にくっ付いている。ケネス、ゾンビと化した仲間のものだった。…俺達が逃げ出した後で、こいつに食われたのか……。ケネス、仇は絶対取るぞ……!
「ふへぇ……あー、すっきりした。骨は溶けなくてやーね」
そんなことをぼやきながらヨーン・エキドナは顎をポリポリと掻き、振り返って尻尾も翻してビタンビタンと床に打ちつけながら出て行こうとする。今がチャンスか…?背後から襲いかかってナイフで首を掻っ切れば勝機はある…!
「逃げた二人を追いかけるか……なんて、見逃すとでも思った?」
瞬間、隠れていた机が尻尾で薙ぎ払われて、柔らかい関節を捻って海老反りの逆さまの体勢となったヨーン・エキドナと目が遭う。慌てて逃げ出そうとするが、いつの間にか横に来ていた尻尾を脚に巻きつけられてしまい転倒してしまった。そのまま肩まで巻き付かれてヨーン・エキドナの目の前に持ち上げられる。
「くそっ、なんでだ…騙されたんじゃなかったのか!?」
「私を馬鹿にしているの?確かに最初はお前を食べたと思ったけど、私にはピット器官ってのがあるらしいのよね。私を育ててた研究者が自慢げに語っていたわ。私、目がぼんやりとしか捉えてなくてまるで役に立たないんだけど、このピット器官のおかげで例え目を覆われても獲物を追跡して捕食できるの。すぐに隠れているのが分かったわ。油断させて確実に捕らえるためにお芝居したの。どう?ちゃんとできてた?」
「くそっ、くそおおおおおっ!」
さっきと同じように上手くできていたか問いかけてくるヨーン・エキドナに、騙された悔しさから咆哮を上げると、首を掴まれて尻尾の拘束を外され、蛇の胴体を持ち上げて天井近くまで高く吊り下げられる。苦しい、もし脱出できても大ダメージ必至だ。
「答えなさいよ、つまらない餌ね。まあいいわ、ごちそうであることに変わりないもの」
ヨーン・エキドナは肩を竦めると、満足げな顔で口を大きく開いて足から味わうようにして飲み込んでいく。ぬるぬるとした感触と共に、ズルズルと滑り台でも滑るかの如き勢いで落ちて行く。ジル、君との約束は守れなさそうだ………頭まで飲み込まれるその瞬間、ケネスの装飾品が視界に入った。
「っ……お前にだけは、殺されてたまるかあ!」
「むぐうっ!?」
最後の力を振り絞る。咄嗟にヨーン・エキドナの下顎の牙を掴んで、飲み込まれるのを防ぐ。喉元に俺が引っ掛かり下顎まで牙を取っ手にされてしまったヨーン・エキドナが悶え苦しみ、壁にぶつかる衝撃が伝わる。
「大人しく、飲まれなさいよお!」
力づくで俺の手を外そうとしているのか、廊下に飛び出て何度も何度も自身の身体を壁に打ち付けるヨーン・エキドナ。喉を通して開いたままの口から見える視界がジェットコースターの如く目まぐるしく移動する。酔ってきた、吐きそう。しかもぬるぬるしているからドンドン手が滑ってきている。万事休すか……そう、諦めかけたその時。
「邪魔よ」
「げはあ!?」
とてつもない衝撃と共に、視界が宙を舞う。ヨーン・エキドナが何かに吹き飛ばされたのだ。頭部に一撃もらったのかその勢いのままに俺は吐き出され、よだれまみれで誰かの足元に転がり、そしてその足が異形のものであると気付いて思わず顔を上げる。
「あなた、S.T.A.R.S.のクリス・レッドフィールド?単刀直入に聞くわ……アルバート・ウェスカーは何処?」
そこにいたのは、やはりアリサとよく似ているなれど蠍の特徴を持つ異形の右半身を持つ女だった。
強敵にも程があるヨーン・エキドナ。蛇って普通に強い生物ですよねって。手足が無いのに食物連鎖の結構上にいる事実がヤバい。
そして死神ハンクの助けで生きていたセルケト、大復活。蠍と蛇が激突です。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。