BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はセルケト視点。VSヨーン・エキドナです。楽しんでいただけたら幸いです。
ハンクの存在で命を拾った私の中にふつふつと湧き上がってきたのは、膨れ上がるかのような怒り。絶望に隠れて表に出てくることはなかった、創造者二人への怒りだ。ネメシスプロトタイプである程度制御されていた思考が憤怒で染まる。
―――私は結局「傑作」などではなくその程度の存在なのか
――――なら何故私を生み出したのか、私に心を持たせた
―――――こんなにも信愛を捧げた私をなぜ裏切ったんだ
布団だった襤褸切れで首から下の右半身……赤みを帯びた黒い甲殻に覆われ、右腕と右足は鋏になっていて、臀部からは背骨と繋がっている蠍の尾が伸びている、以前は特性の鋼鉄コートで覆っていた部位を隠して、奇異のものに向ける視線を一身に受けながらラクーンシティをさ迷い歩く。警官が来て不審者としてウェスカーのいるR.P.D.に連れて行ってもらえば御の字。そうでなくともこのままNESTを目指してウィリアムの元に向かい……向かい、私はどうするのだろう。
「…まずは聞きましょう。それからでも遅くはない」
「よう、別嬪さん。R.P.D.のケビン・ライマンだ。通報があってな?連行させてもらうぞ」
意気込んでいたところに近づいてきた警官に、両手を上げて降参の意を示し、私はR.P.D.に連行され……アルバート・ウェスカーが隊長をしているS.T.A.R.S.がラクーンフォレストの事件を調べに行ったと聞いて、窓を突き破って脱走。夜の闇の中を身体能力による跳躍と尻尾を用いて人目も気にせず宙を舞う。目指すはアークレイ研究所、ラクーンフォレストの洋館だ。プロトタイラントにやられた私をただ治療せず廃棄しただけのウィリアム・バーキンよりも許せないのは、私を殺そうと依頼し直接手を下そうともしなかったアルバート・ウェスカーだ…!
「アルバート・ウェスカー…!ウィリアム・バーキン…!首を洗って待っていなさい、そのそっ首掻き切ってやる!」
例え再び手を差し伸べられても、私の憤怒は途切れることはない…!
「…セルケトがラクーンシティで目撃されただと?」
NESTに帰ってくるなり、右腕である男からとんでもない報告を受けて固まるウィリアム。つい先刻、友から始末したと伝えられていた厄ネタの生存報告に、ピキピキと青筋が浮かぶ。
「…あのグラサン馬鹿……!始末したというならちゃんと自分で確認してから言え…!ハンクがしくじったのか?…いや、あの男は仕事は必ず完遂する。つまりは……上層部、それもかなり上……総帥、スペンサー卿が動いた可能性があるな。どうするのが正解だ…?迂闊に処分することもできないぞ……だが放っておいてもシェリーが危ない……くそっ、こういうときに限ってアリサ・オータムスとクイーン・サマーズがいないとは!」
「如何いたします?私としてはRT-ウイルス被験体第二号であるセルケトは確保しておきたいですが…」
物腰の低い30代ぐらいの白衣を着た金髪を撫でつけた様な髪型の男がウィリアムにそう進言する。この男こそサミュエル・アイザックス。アークレイ研究所の主任研究員にしてウィリアムの右腕であり、RT-ウイルス研究の第一人者だ。
「いいや、奴は私を恨んでいる。つまりシェリーの身も危ない。早急に排除しなければならん。奴の血液と遺伝子データのサンプルは残してあるから殺しても問題ないと上層部には言い訳するとしよう」
「そうですか…残念です。G-ウイルスの苗床でもあった肉体は興味深かったのですがね。…報告によれば郊外に向かってラクーンシティの街中を跳び回っていた様です。行く先は…ラクーンフォレストでしょうか」
肩を竦めながらも口答えはせずに報告を告げる一番の部下に、ウィリアムは満足げに頷きながら思考を巡らせる。すると視界に、培養液の中に浮かんだ人型が目に入る。それは、NESTまで逃げてきたアイザックスと協力して、G-ウイルスを利用し生み出した新たな生物兵器だった。
「…苗床と言えば、だ。…ソレは動かせるか?」
「まだ生み出してからひと月もたっていませんが、肉体年齢は規定値を越えました。ヨーロッパ支部から届いた完成型NE-αを装着しさえすれば何時でも動かせます」
「…G-ウイルスの性能確認にもちょうどいい。こいつとヘリで輸送して洋館まで運べ。ゾンビとB.O.W.を殲滅し我らの支配下に取り戻す。そのついでにセルケトもやってくれたら御の字だ」
「了解しました」
「それで?名は、どうする?」
「――――ギルタブリル。Gに冠する、彼女の後継機につける名はこれしかないでしょう」
アイザックスが部下に言って準備を進める中で、ウィリアムは両手を掲げて目の前の全身装甲に包まれていて顔も見えない己が作品に、両手を掲げて笑みを浮かべる。
「そうか。素晴らしい…ギルタブリル。お前の出番が来たぞ」
そうしてラクーンフォレストを駆け抜けて、知識だけ知っていたケルベロスやサーベラスを蹴散らしながら突入した洋館。邪魔する動く死体をぶち抜き、引き裂き、両断しながら廊下を進んでいると通せんぼする様に暴れる私とよく似た顔の下半身が大蛇の女がいて。邪魔だったので鋏を閉じた右足で後頭部を蹴り飛ばすと、丸呑みされていたのか男が吐き出されて足元まで転がってきた。見下ろしてみると見覚えがある顔だったので問いかけてみることにした。
「あなた、S.T.A.R.S.のクリス・レッドフィールド?単刀直入に聞くわ……アルバート・ウェスカーは何処?」
「ウェスカー?……あいつなら、死んだ」
「は?」
すると返ってきたのは信じられない言葉で。思わず威圧するとクリス・レッドフィールドは気まずそうに人差し指を向けた。それは洋館の正面入り口。私が入ってきたテラスとは反対方向だ。
「ウェスカーはリサ・トレヴァーと名乗ってた怪物に胸をぶち抜かれて死んだ。エントランスホールに死体があるはずだ」
「…いいわ、案内しなさい。嘘だったらお前を殺すわ」
「待ちなさいよ……そいつは私の獲物よ!」
瞬間、立ち直って高速で蛇行してきた蛇女が振りかぶった右ストレートを凄まじい勢いで叩き込んできたが、尻尾を動かして腕に巻き付かせ受け止める。蛇女は腕を引き抜こうとうんうん唸っているがビクともしない。
「ヨーン・エキドナ…!」
「それがコイツの名前?大したことないわね」
「なんで、なんでよ!?ビクともしないなんておかしいでしょ!?」
涙目で泣き喚くヨーン・エキドナ。当たり前だ。その巨体を自在に蛇行させるぐらいだから結構な筋力を有しているのだろうが、こちらは常人の30倍にもなる筋繊維密度による超人的身体能力を有しているのだ。そんな私から逃れられるわけがない。
「このお!」
「効かないわよそんなもの」
驚異的な柔らかさで首を動かして、如何にも毒がある牙で右肩に噛み付いてくるヨーン・エキドナだったが、右半身のみとはいえマグナム等の高威力の銃弾すら通じない強固な装甲に弾かれる。明らかに柔らかい左を狙えばよかったのに、そんなに頭は良く無さそうね。
「私の鋏で斬れないなんて頑丈じゃない、褒めてあげるわ」
お返しに鱗で覆われた首を右腕の鋏で挟んで切断しようとするも、斬れなかったので諦めて挟み込んだ首を締め上げる。この鋏は手足共に鋼鉄すら容易く切断するのが自慢だったのだが、しょうがない。ヨーン・エキドナの腕から尻尾を放し、勢いよく後方に伸ばす。
「あッ、ぎいいいいいいいいいいいっ!?」
「元祖傑作をなめるな」
そして勢いよく戻した尻尾をその腹部に叩き込み、鋏を放して腹部に大穴を開けて廊下の彼方まで吹き飛ばした。伸縮自在でありレンガの壁をぶち抜く威力を誇る自在に動く尻尾の一撃だ。むしろ貫通しないとは見下げ果てた頑丈さである。
「さあ、貴方もああなりたくなかったらウェスカーの所に案内しなさいクリス・レッドフィールド」
「あ、ああ………」
呆けていたクリス・レッドフィールドを尻尾を動かして無理やり立たせて廊下を歩かせる。…なんだろう、人の顔をじろじろ見て。そんなに珍しいのだろうか。
戦闘能力だけなら作中トップクラスなんですよねこの蠍。
ついに本人登場、サミュエル・アイザックス。見た目は実写版の彼を若くしたような。ウイリアムと共に「ギリタブリル」なるG-ウイルスの生物兵器を作った模様。こいつ本当にろくなことしないな。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。