BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
と言う訳で今回はライカンとの初遭遇までの珍道中を描きます。楽しんでいただけると幸いです。
『パパ、パパ。あそこに建物があったよ。ベイカー家みたいなボロ小屋』
「お前、誰のせいでベイカー家がああなったと思ってるんだ…」
『私に感染したまま整備もしなかったジャックたちの問題だと思う』
烏の死体が大量に転がり、宙吊りで血抜きされた烏がいくつも吊り下げられている不気味な道を明かりを頼りに通っていると、偵察してくると浮かんで行ったエヴリンがそんなことを言ってきた。……こいつ、俺の認識している空間しかいられないと思ったら、普通に視界外の俺の知らない空間のことまで把握できるってどんな幻影なんだ……幽霊って言われた方がしっくり来るぞ。
『廃屋みたいだし勝手にお邪魔してしまおうよ』
「エヴリン、お前なあ……まったく」
まるで元気いっぱいの愛娘を追いかけてる気分だよまったく。エヴリンを娘だと言ったらまた調子に乗りそうだから黙っておくが。廃屋と思われる小屋に入り、寒さを和らげながら先を目指して地下に進んでいるとなにか地上から暴れる音が聞こえてきたので慌てて奥に抜け、ぶち破られた壁から外に出る。まだ新しい血が床に落ちていたけどまさかな。
『ぱ、パパパパパパ!なんかいる!上になんかいた!』
「落ち着け。なんかいたってなんだ」
『暗くてよく分からなかったけど、人みたいななにかがいた!すごく怖かった!』
「そ、そうか……あんな怖い子供部屋で俺を脅かした奴の台詞とは思えないな」
『あれはイーサンに見せた幻覚だから!私本体はあそこにいなかったから!』
三年前のベイカー邸別館で脅かされたことについて言及すると、存外怖がりなのだということがわかった。あんな化け物どもを生み出しておいてよく言う。変なところで子供なのは笑うしかない。フッと鼻で笑ってやるとプンスカ怒るエヴリン。
『もう!笑わないでよ!イーサンだって怖い癖に!』
「正直ホラーより怖い家族と戦ったから、ホラー映画程度の脅かしじゃ怖くないぞ」
『正直あの家族狂った後はすごく怖かった…特に、私は何も言ってないのに、私に怒鳴りながら生爪を剥がして笑ってたルーカスは本当に怖かった』
「お、おう」
ルーカスだけエヴリンの影響から抜け出てたらしいから、エヴリンとしては怖かったのかなるほどな、と変なところで納得しながら、森を抜けて周りを見渡す。どうやらいつの間にか朝になった様で明るくなったそこには、濃霧に包まれた巨大な城とそれなりに広い村があった。
「ここは一体どこなんだ…?」
『ホグワーツかな?』
「おいおい。小説の中にでも入ったってのか?」
『中世みたいな雰囲気だし、タイムスリップしていたりして』
「冗談はやめてくれ。マジでそれっぽいから」
『しょ、しょうがないから私、あの城まで様子見てこようか?』
「いや、一緒について来てくれ。得体の知れない何かがいるなら警戒してくれると助かる」
『しょうがないなー!お姉さんにまっかせなさい!』
「お前、実は一人で行くの怖かったんだろ?」
『そ、そんなことないもん!』
ここに来てからあからさまに俺にくっ付くようになったエヴリンを連れて村に入る。馬の死体が落ちていたり、割れた卵が散乱していたりするが、どれも腐ってないし、どの家も古びてはいるが明かりが灯っていたり生活感を感じる。妙だな。車が横転していたり、なにかに襲われた形跡はあるものの人の姿はない。調査し終えた家から出ると、さっきまであったはずの馬の死体が引きずられるようにして消えていき、思わずエヴリンと一緒に硬直する。
「なあエヴリン。あの閉鎖されている家の中を見て来てくれ」
『いやだ!』
「誰かいるかもしれないだろ?」
『絶対に!い!や!だ!』
「……しょうがない、他に開いている家を探すか…」
エヴリンという壁を擦り抜けられる偵察役がいるから活用したいのに当の本人がビビって行こうとしない。少しでも情報が欲しいんだがなあ。とりあえず明かりの灯っている家に入ると、ナイフを発見した。これでまあなんとか戦える、かな?すると側の木箱に頭を突っ込むエヴリン。…何がとは言わないが丸見えだがいいのか。
『イーサンのえっち』
「ナチュラルに俺の頭を覗くな。俺にそんな趣味はない」
『こんな可愛い子供を連れ回しといて言う台詞?それよりこの木箱壊せそうじゃない?中に小瓶があったよ』
「可愛い子供ってのがどこにいるのかは知らないがそれはナイス情報だ」
『なんだとー!』
言われるなりナイフを振るって木箱を破壊し、回復薬と書かれた小瓶を手に入れてポケットに入れる。これでなんかに襲われても傷を治せるな。襲われないに越したことはないが。
『言っとくけど、あんなばしゃばしゃ薬かけたぐらいで治るのイーサンぐらいだからね?』
「誰のせいだ誰の」
そんなことをぼやいていたら、奥から物音が。無言でエヴリンと頷き合い、奥の部屋のカーテンを開けると、発砲された。間一髪で頭の横すれすれを弾丸がエヴリンの方に飛んだ。
「よせ、撃つな!撃つんじゃない!」
『撃たれた!死んじゃう!死ぬのやだー!…あ、私実体ないんだったやったー!』
てへぺろと1人コントをやってるエヴリンは無視し、撃った人間を見やる。猟銃を手にしたくたびれた老人だった。何かに怯えたように憔悴しきっている。
「誰だ?誰がよこした?話し声がしたが他にも誰かいるのか?」
『私との会話聞かれてるのは笑う』
「いや、俺一人だ。俺は誰って…道で事故に遭って……」
すると聞こえてきた何かの叫び声。ビクッと空中で硬直するエヴリン。悲鳴とかじゃない、まるで狼が仲間を呼ぶような咆哮…?すると目に見えて狼狽えだし、俺の口を塞いで周りを見渡し、猟銃を手に窓を確認する老人。
「なんだ?どう……」
「シーッ!しまった、奴らだ」
『おじさんが銃を撃ったせいじゃん!責任とれ!とってよ!怖いんだから!』
「奴等?今のは何なんだ?」
エヴリンが騒いでいるが今はそれどころじゃない。銃は持ってるかと聞かれ否定すると、老人は上を警戒しつつハンドガンを手渡してくれた。ありがたい、クリスに教わった通りにマガジンを確認する。……クリス、なんでミアを殺したんだ……
『パパ!感傷に浸ってる場合じゃないよ!なんか怖いのが上にいる!』
「何が来るっていうんだ!おい、聞いてるのか、おい!」
屋根に頭を突っ込んで外を確認していたらしいエヴリンがそう叫んできたのでハンドガンを構えると、窓の外に発砲する老人。慌てて見やるがそこにはなにもいない。なんだ?エヴリンが言う「怖いの」とはなんのことだ?すると次の瞬間、弾込めしていた老人は屋根から突き破って現れた腕の様な物に掴まれて上に連れて行かれてしまった。思わずエヴリンと無言で顔を見合わせる。
『な、なに今の……』
「なんなんだ…!?」
一体何が…と言う暇もなく、俺も床下から伸びた腕に掴まれて引きずり込まれてしまった。そこにあったのは、老若男女の死体の山。こんなにも犠牲者が…!?
『わーきゃー!イーサン、大丈夫!?』
「ああ、エヴリン。大丈夫…!?」
エヴリンに受け応えようとした瞬間、物陰に隠れていた何かに左手を噛み付かれる。鋭い痛みが走り、咄嗟に右手に持ったナイフをそいつの脳天に突き刺すが硬くて刃が通らず、左手の薬指と小指部分を噛みちぎられてしまった。
「ぐあっ……」
『わー!イーサンが噛まれたー!?だ、大丈夫?』
「これが大丈夫に見えるかよ……がっ!?」
さらに胸倉を掴まれ、壁を突き破って外まで放り出される。視界にふわふわ心配そうな顔で付いてくるエヴリンが見えた。
『え?なに?暗くてよく見えなかったけど、また左手やったの?ママの時といいルーカスの時といい、パパの左手って呪われてる?ジャパニーズでお祓いした方がいいよ?』
「いつも目の前に悪魔が浮いているからそのせいかもな……なんて、言ってる場合か!」
右手にハンドガンを持ち、投げ飛ばした俺を追いかけてきた人狼を彷彿とさせる怪物に向けて構える。クソッたれ、やってやる!
怖がり強がり愉快なエヴリンさん。一番怖いのはルーカス。これはホラーじゃない、ほのぼのホラーコメディだ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。