BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
ミアの人形に備えられた血塗れの指輪を始めとした数々の仕掛けや、入ってきた扉にいつの間にか付けられていたダイヤル錠やら、家にあるはずの大事な思い出のオルゴールと同じものやらの謎を解いていく。
≪「イーサン、ごめんなさい…」≫
『ヒエッ…もう!さっきから何度ミアの声を聞けばいいの!さすがに嫌いになってくるよ!?』
「一々驚いてられるか。…だけどミアが俺に何かを隠していたのは間違いなさそうだな」
時折ラジオから聞こえてくるかつてのミアの声や、かかってきた電話から何かを懺悔するミアの声にいちいちビビるエヴリンを無視しつつ、最深部にあった井戸に行き配電盤の鍵を手に入れると、どこからか何か硬い木製のものが壊れる音と破水の音の後に赤ん坊の泣き声が聞こえてきて。
「ローズの声って言いたいのか?生憎だがローズの泣き声はもっとかわいいぞ!」
『もうやだー!おうちかえるー!でもイーサンから離れられないよー!』
バタバタ手足を動かして泣き叫びながら離れようとするエヴリンを連れながら戻ると、真っ暗でほのかな明かりしかない部屋からミアの人形が消えていて。ラジオからはミアの不安げな声が流れ、血と羊水の様な物で汚れた台座からへその緒か腸の様な臓器が廊下に続いていた。
「『……』」
思わず二人揃って押し黙り、その臓器を追っていくと、物陰からずるりと音を立てながらそれは現れた。それはこの世に生まれ落ちることを否定しかねない、赤ん坊を模った醜悪な肉の塊だった。
「なっ…!?」
ぱ ぱ ぁ ~ !
『ヒエッ』
ジョバーと横から何か聞こえた気がするが、踵を返して逃走を開始する。アレは駄目だ、捕まったら死ぬ。そう思わせるには十分すぎるほど悪意の詰まった巨体に、無邪気さと本性がない交ぜになっているような鳴き声。這い寄るその様は、気に入ったオモチャ──自分以外の命を壊さんとしていた。
『こっ、こっ、こっ、怖いよぉおおおお!!あと漏らしちゃったよぉおおおお!』
「濡れたままついてくるな、汚い!」
『酷いよイーサン!?幻影だからイーサンは濡れないでしょ!置いてかないでよ!勝手について行くけど!?』
「お前はいいよな、疲れないから!ちょっとは働け!後ろ見張ってろ!」
パ パ ァ゛ ァ゛ !
『やだよ怖いよ直視したくないよ!イーサンには見えてないだろうけど、あの赤ん坊のようななにか足が反対にくっ付いているからね!?べとべとだし、肉塊だし、右目は潰れてるし、声は不気味だし、気持ち悪いし怖いよぉおおおお!』
「詳しく説明するな、嫌でも想像しちまうだろ!ミアの人形が消えて現れたってことは、こいつはローズだとでも言いたいのか!ふざけるな!うちの子はこんな化け物じゃないぞ!」
『言ってる場合!?いやあれをローズマリーとか言うなら私も許さないけど!…あれ?止まった?』
「なに?」
一直線の廊下で引き離したかと思えば、止まったと言うので振り返る。暗くてよく見えないが、確かに奴…ベビーは動いていなかった。もしかして一定距離しか動けないのか…と思った矢先。奴はグググッと身を縮めると、エヴリンが言うには反対にくっ付いているらしい両足をバネの様にして、凄い速度で突っ込んできた。
『ギャァアアアアアアアアアア!?来るよぉおおおおおお!?』
「クソッたれええ!?」
お ぎ ゃ ~ !
慌てて飛び退くと、廊下の突き当りにあった電話の乗った台を粉砕し、壁に激突。痛いのか悲鳴を上げて寝転がるベビー。今のうちにと奥のダイニングと思われる部屋に入り、机の下に隠れた。
「ここなら…」
『わ、私は見えないから大丈夫だよね…?』
机の下で息を潜める俺と、机の上で横になり頭を抱えてガタガタ震えるエヴリン。そしてゆっくりと扉を開けて入ってくるベビーは机の周りを歩き、何かを見つけたようで笑い声を上げる。
ウ ェ ヒ ヒ ヒ ヒ !
『あれ?私のこと、もしかして見えてる?』
ダ ー ダ ー ダ ー ダ ~ !
「うわあああああ!?」
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』
机の上にいるエヴリンを見据えたのか、例のダッシュで机ごと俺を吹き飛ばして壁に激突させたベビーはそのままエヴリンに襲いかかり、足首に吸い付いて絶叫が上がる。エヴリンは足を振り回しポカポカベビーを殴るが一切怯まない怪物は、ズルズルとエヴリンを飲み込んでいく。
『やだ!やだ!やだぁああああ!なんで私が見えるの!?なんで私に触れるの!?だめ、だめ、食べないでぇえええええええ!?』
「くっそ…エヴリン!」
『イーサン、助けて!助けて!私、まだ消えたくない!こんなところで死にたくない!死にたくないよお!イーサンにやっと家族だと見てもらったのに!ローズをバラバラにした奴を殺さないといけないのに!やだ、やだやだやだ!やめて、やめて、やめてよお!私は美味しくないよぉおおおお!?…………』
お゛ い゛ し゛ い゛ い゛ ~ !
机と壁に挟まれて身動きが取れなくなってしまい、手を伸ばすも目の前で命乞いしていたエヴリンが足からベビーに食べられてしまうのを見ていることしかできなかった。……エヴリンが、死んだ?アイツは幻影でも食べることができるって言うのか…?渾身の力で机を蹴り飛ばしてベビーにブチ当てて怯ませつつ、立ち上がる。砕けて散乱した机の脚を手に取り、歩み寄る。
「このクソッたれのベビーめ…よくもエヴリンを喰ったな!」
ぱ ぁ ~ ぱ ぁ ~ !
「俺はお前の父親じゃない!ローズと、エヴリンの父親だ!」
まるで半身を失った気分だ。こいつはここで殺さないと気が済まない。先端が尖った机の脚を握りしめ、突撃。渾身の力を込めてベビーの潰れてない左目に炸裂させ、さらにハサミも取り出して脳天に突き刺した。この世のものとは思えない絶叫が上がる。
お ぎ ゃ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ~ ! ?
「くそっ、何か殺す手段は…?」
ハサミを抜いてナイフの様に構えながら考える。持っているのは配電盤の鍵だけだ。ここから脱出してデュークから武器を買って戻ってくるしかないか?そうと決まれば両手で目を抑えてゴロゴロ転がって痛がっているベビーを無視して明るく光っている部屋に向かうとそこには配電盤があって、鍵を開くとそこにはヒューズが。
「そういえば昇降機のヒューズが消えていたな…」
これで昇降機から脱出できる。ヒューズが抜けたことでまた暗くなった地下を抜けて昇降機に向かおうとすると、廊下の先からベビーが現れる。例のダッシュの構えだ。万事休す。ここじゃ逃げ場が…!?
「クソッたれ…!?」
ぱ ぱ ぁ ~ ! ぶ べ っ ! ?
ぶべっ?俺に触れるか触れないかと言った瞬間、変な声を上げたかと思うとベビーの醜悪な体が膨張したかと思うと爆散。血肉が廊下の壁や天井に飛び散った。ベビーの爆散した跡から出てきたのは、見知らぬ黒髪の女性。
『ぜー、はー……』
「お前、エヴリンか!?生きていたのか!」
それは以前見せた少女の姿より大きくなった大人の姿になったエヴリンで。涙目で顔を赤らめ肩で息をしているのと黒いワンピースがボロボロに溶けているからギリギリだったのだろうことがわかる。
『…あいつ、どういうわけか幻影の私に触れるみたいだから、姿を奴の体に密着するぐらい大きくして、衝撃波を放ったの』
「衝撃波?」
『うん、これ』
そう言って不可視の風の様な物を放つエヴリン。だが俺も廊下もビクともしない。三年前のミアのビデオでタンカーを破壊し、俺との直接対決でも使っていたあの衝撃波か。俺には影響しない攻撃として放てるみたいだな。そう言えばさっきもポカポカ殴っていた拳が当たっていた。どういうわけか幻影の攻撃が効く怪物だったようだからなんとか倒せたのか。
『うぇー、ベトベト…もういやだぁ……あ。見て見てー。パパやママと同じくらいの年齢になってみたよー。ホレる?ねえホレる?』
血肉と涎でベトベトな自身の体にげんなりしていたエヴリンだが、何かに気付くとひらひらと黒のワンピースを翻してそんなことを言ってきた。…まあ、スタイルはよくなったな。
「美人は美人だが中身知ってるからまるで靡かないな。あとミアの方が美人だ」
『いきなり惚気ないでよ…血肉が滴るいい女だよ、私』
「スプラッタ映画のヒロインみたいだな」
『美人が多いやつ?あ、それって褒めてる?褒めてる?』
「うるさい。さっさと出るぞ、こんなところ」
『それは同感』
元の子供の姿に戻ったエヴリンを連れて、昇降機を目指す。ドナめ。どこにいるかは知らないが、会ったらただじゃおかないぞ。
ダッシュ攻撃を得た、捕まったら即死のベビー。ハサミしか装備がないのに立ち向かうイーサンと丸呑みされたのに咄嗟の機転でベビーを爆散させたエヴリン。本当に恐ろしいのはどちらでしょう?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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