BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
【あの事故から四日後。あの事故で失踪したリンダ・エバートンは相も変わらず消息不明だ。その事故が起きたポイント42のドライアド42と命名した植物の成長速度には目を見張るものがある。最初はプラント42と名付けられていたが、あの事故以降女性の形を取るようになったためこう名付けられた。どちらかといえばアルラウネだろうが、本体の球根から独立して動く姿は精霊の様にも見えるためいいネーミングだと思う。気のせいだろうがリンダ・エバートンによく似ている女性の姿を取っているのは擬態だろうか?
ドライアド42は、他にも事故で変異したプラントに比べ、T-ウィルスの細胞変異と、RT-ウイルスの適応能力の強い影響を受けており、もはや宿主の植物が何であったのか想像することすら困難である。その形状に見合う生態は、地球上のどこを探しても存在しない。女性の姿に擬態する植物などどこを探してもないだろう。
ドライアド42の栄養源は、二種類ある。一つは、地下室まで達した根から得ている養分だ。現在、地下エリアは事故があった直後、発狂した研究員が、地下の大水槽を破壊した為、地下エリアは水浸しだ。そこに流出している何らかの薬品成分が、ドライアド42の急速な成育を促している事は想像に難くない。
また、ドライアド42の一部は、地下室からダクトを通り、一階の天井にまでその勢力を広げ、そこに本体が球根状となってぶら下がっている。その球根から伸びている何本ものツルが、もう一つの養分の入手手段となっている。
ドライアド42は獲物を感知すると、女の擬態ならぬ義体を用いて対象、特に男性を誘惑。イカの触手の様に枝分かれできる下半身の根っこを獲物に蔓を巻きつけて拘束し動けなくしてから、蔓の裏についている吸入器官で血を吸うのだ。
しかも、それなりに知能があるらしく、最近は図書室に出没して本を読んでいるという報告も入っている。さらに義体をしまっている睡眠中は、蔦を扉にからませ、外敵の侵入を防いでいる。既に数人の職員がその犠牲となった。注意喚起はしているのだが、巧みな話術とあどけない演技で簡単に騙されてしまうのだ。どこから調達したのか白衣を着ているせいで同僚だと勘違いしやすいのもあるだろう。
生きて戻ってきた者の話を総合すると、花弁が開く際に、隠されていた部分が露出し、一段と攻撃性が増すらしい。ある者の報告によると、まるで何かを守っている様だと言う。そこに、何かの秘密があるように思えるのだが、なにぶん植物の考えることは、人間には理解できるものではない。
May 21,1998
ヘンリー・サートン】
アイザックスの部屋を後にした私たちは、バリーが物音を聞いたという大部屋に来ていた。天井に植物が根を張り巡らされてる異様な部屋だった。中央の天井には巨大な球根がある。ヘカトちゃんがムカデ腕を伸ばして突っつこうとしたのをオメガちゃんが止めた。
「…この部屋だけ異様だな。アイザックスの部屋がかわいく見える。オメガ…ちゃん、何か感じるか?」
「本当なら寄宿舎の談話室かなにかなんだろうな」
「バリー、本当にここから物音がしたの?」
「ああ、間違いない。それも結構大きい音だった」
…バリー、さっきから何か変だな。ジルがいなくなった時のことをぼんやりとしか覚えてなかったのに、そんなちょっとしたことは覚えてるなんて。ジルと二人行動してた時に何か起きたんだろうか。聞いてみようと、近づいた時だった。
「ほら、お兄さん。こっちよ」
「え?」
なにかがぼとっと高いところから落ちた音と、聴きなれない女の声に続けてジョセフの間抜けな声が聞こえ、振り向くとジョセフが振り返った先、背後にそれは立っていた。
「私、綺麗?」
「お、おう…?」
女好きのジョセフが見惚れて動きが止まってしまったのもわかる美貌だった。というよりは、今の今まで出てきたのが化け物か私の顔ばかりだったから油断していたのもあるだろうか。緑色のワンピースと白衣を着ていて緑がかった長い金髪で、整った顔の女性。緑色っぽい肌をしていて、足先が無数に枝分かれして根っこの様に床に立っていること以外を診れば絶世の美女研究員だった。
「ああ、綺麗だ…」
「ジョセフ!そいつから離れて!」
「ありがとう、嬉しいわ!馬鹿な人間で♪」
「うわああああああっ!?」
「ジョセフ!」
咄嗟にクイーンが粘液糸を飛ばして、私は飛びついてジョセフを救出しようと試みるが、次の瞬間には下半身を構成していた根っこがほどけて大きく伸び広がり、まるでドレススカートか球根みたいに膨れ上がったそれから伸びた根っこがイカの触手のごとくうごめいてジョセフを捕らえて絡みつき、失敗。粘液糸は引きちぎれ、私は根っこで蹴り飛ばされて床を転がる。
「敵!」
同時に異常に気付いたオメガちゃんがヘカトちゃんを背負ったまま斬撃を叩き込むが、斬られた傍から傷口から伸びた植物繊維が繋げて再生。バリーはハンドガンを構えるも、それに気づいた女が振るった右腕が枝分かれして伸びた複数の蔓でオメガちゃんともども薙ぎ払われて壁に叩きつけられる。
「お前はいったいなんだ…!」
「私?私は観測場所ポイント42の樹木の精霊。ドライアド42、らしいわよ?」
「樹木…?」
見る。…植物なんだろうが樹木じゃないよね…?すると囚われたジョセフの様子がおかしい。顔色が青ざめていき、抵抗する元気もなくなっている。何かを吸われてる…!?
「助けないと!きゃあ!?」
「わかっている!ぐうっ!?」
「ヘカト、離れるな!がっ!?」
私が、クイーンが、オメガちゃんとヘカトちゃんが、次々と腕が変形した蔓で薙ぎ払われていく。蔓を掴んで力任せに引きちぎろうとしたら、足元から伸びてきた根っこに足を巻きつかれて引っ張られることで体勢を崩されてしまう。クイーンは刃の様に粘液を固めた両腕でオメガちゃんとともに対抗しようとするが、切り払っても切り払っても再生してきりがない。駄目だ、勝てない…!
そんな攻防を続けているうちに、あることに気づく。気づいてしまった。
「バリーはどこ…!?」
「あいつ、なにか隠しているとは思ったが私たちを見捨てたのか!?」
いつの間にかバリーが消えていた。そんな、うそでしょ!?
「ほらほらほらほら!」
動揺した私たちの隙をついて、根っこの触手による乱舞が叩きつけられ、私たちは根っこに捕らわれて壁に叩きつけられる。まずい…!
「あなたたちも私の養分となって果てなさい!」
「…ジョセ、フ……!」
ドライアド42の下半身に囚われてぐったりとしたジョセフの姿が見えて、フォレストの遺体がフラッシュバックする。もうこれ以上、あんな思いをしてたまるか…!
「うおおおおおっ!」
力任せに両腕を伸ばして根っこを引きちぎる。再生する片っ端から引きちぎり、手でわしづかみにしてまとめて背後に投げ捨てていく。再生するものが遠のいたからか回収するために明らかに再生が遅れている。でも根っこが床を完全に埋め尽くして近寄れない。だけど今しかない。足場がないなら作るまで。
「ヘカトちゃん、腕を伸ばして!」
「わかったー!そーれ!」
私の呼びかけに答えて、オメガちゃんと壁にサンドイッチにされていたヘカトちゃんが両腕のムカデ腕を縦横無尽に伸ばしてドライアド42の根っこの上に張り巡らせ、私はそれに飛び乗り駆け上る。目指すは、あいつが落ちてきたであろう天井の球根だ。
「っ、それはダメ!」
慌ててジョセフを開放して全部の根っこと蔓を伸ばしてくるドライアド42だったが、横から銃弾の雨を浴びてズタズタに引き裂かれる。ゴクとマゴクを手にしたクイーンだ。
「いけ、アリサ!」
「くーらーえー!」
間延びした掛け声を上げながら、跳躍。天井の球根目がけて拳を叩き込み、拳を中心にひび割れていき粉砕。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」
爆裂して緑色の液体をまき散らした球根を中心に植物は急速に枯れていき、ドライアド42も呼応するように断末魔を上げながら枯れていき、崩れ落ちたのだった。
ドライアド42は撃破するも、ジョセフダウン、バリー失踪とかなり戦力を失いました。
ドライアド42はリンダ(原作で名前だけ出てた。職員かは不明だけど今作では女研究員)を取り込んでDNAを取り込みRT-ウイルスの効果で適応、擬態して生まれたクリーチャーでした。弱点がはっきりしてる分結構楽な部類です。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。