BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
洋館地下アークレイ研究所の最深部。培養液で満たされ人影が見えるカプセルが立ち並ぶ研究室の本来の主を失った主任研究員用の椅子に座り、身長160ぐらいのサイズの合っていない青いシャツと防弾ジャケット、黒い
「アリサ・オータムスの身柄を確保するつもりが、この身がそうなるとはな」
アルテ・W・ミューラー否、ウィリアム・バーキンから渡されたRT-ウイルスにより死の淵から復活した元アルバート・ウェスカーその人である彼女は、採決した己の血液を検査。その肉体特有の特性である「全てのウイルスに適合する遺伝子」のデータを取っていた。RT-ウイルスを脱皮などの能力を持たない人間に打てばどうなるかはわからないが、ウェスカーはその唯一無二といっても過言じゃない遺伝子により適合して見せた。血液サンプルの実験シミュレートでT-ウイルスにも適合するとわかり、残っていたサンプルを打ち込んで経過観察ついでにパソコンのMOディスクに纏めているところだった。
「まさか俺の身にここまでの利用価値があるとは……俺自身が実験台にならないように気を付けねば。並大抵の人間に負ける気はしないが」
そう言いながら思い出すのは、つい先刻の出来事。探索のためにクリス達と、さらにコンビを組んでいたジルと離れて単独で行動していたバリーとの接触だった。
―――――「バリー。君が無事でよかった。なにかあれば大事な手駒を失うことになっていたからな」
「ウェスカー…なのか?生きていたのか……」
「お前の裏切りで死に瀕したが復活した副作用でな。…さて、あの時私を裏切った代償だ。君の家族には一人、犠牲になってもらおう」
ウェスカーは洋館事件を調査するにあたり、バリーの家族に部下をつかせて人質に取り、バリーを脅して自分の傀儡になるように仕向けていた。しかしアリサとのいざこざで、バリーはジル達側につくしかなかった。もし庇おうとすれば関係がばれていたことだろう。しかしこれは幸いにとウェスカーは新たな脅迫材料にしたのだ。
「ま、待て!それでは全然話が違う!あの時はお前と敵対するしかなかった!それにこの事態はなんだ!?俺はお前に協力して仲間の戦闘データを取れと言われただけだぞ!S.T.A.R.S.を全滅させるつもりか!?」
「大人しく言うことを聞け。さもなければ…モイラ…だったかな?お前の娘を誘拐してウイルスの実験台に…」
「俺の家族に手を出すな!」
「おっと」
向けられたバリーカスタムのサムライエッジから眉間に向けて放たれる弾丸を、柔らかい体躯を活かして足を伸ばして体勢を低くして紙一重で回避するウェスカー。明らかに上がっている動体視力に、笑みがこぼれた。
「そうかそうか、そんなにモイラを犠牲にしたいか」
「…ただし俺次第ってことか…くそっ。なにをすればいい?」
「ジル・バレンタインを捕らえたい。実行犯はよこすから手伝え」
「…ぐっ、わかった」
――――そんな会話を思い出す。…そういえばどこかの女が身籠った子は今も生きているのだろうか。ふとそんなことが頭に浮かんだが、ウェスカーはすぐに頭の隅にその考えを追いやりエンターキーを押した。
「家族を持つとは大変だ。…なあ、ジル・バレンタイン」
「ぐっ……」
そう回転する椅子を回して背後をむけば、3メートルほどの体躯を持つ巨人二体に女性が膝を床について押さえつけられて拘束されていた。ジル・バレンタインその人だ。意識が朦朧としていたジルは首を横に振り、なんとか正気を取り戻して前を見て、パシパシと目を瞬かせる。
「起きたか。手荒に連れてきてすまないな。騒がれて気づかれるのも面倒だった」
「アリサ…?いや、その恰好……ウェス、カー…なの?」
「信じられないのも無理のないことだがさすがの洞察力だ。こんななりになったがアルバート・ウェスカーだとも。今はアルテ・W・ミューラーと名乗ってはいるが好きに呼ぶといい」
「死体が消えたからてっきりゾンビになったのかと……」
「お前たちが去ったあのあと、私は隠し持っていた友人からもらったRT-ウイルス……ああ、君は知らないか。アリサ・オータムスことリサ・トレヴァーの遺伝子をもとに生み出されたウイルスを我が身に投与した。結果私は適合し、この肉体となったわけだ。不本意だがな。性別まで変わるのは想定外だ、女の身は邪魔なものが多すぎる」
ウェスカーは己の長く伸びた髪と、Fはある胸に手をかざして吐き捨てる。バリトンの効いた低い声だった男の時とは異なる、アリサのものとも違うその声に違和感を抱きながらも、ジルは自分になにが起きたか思い出す。バリーの見つけたという手掛かりを探そうと気を取られていたところに、背後から強烈な力で殴られ気を失ってしまった。最後に見たのは、申し訳なさそうに顔を歪めたバリーとその傍に立つ巨人の姿。そう、今自分を捕らえているそのもの……そこで己の現在の状況を確認して、身をよじる。
「こいつらは…なに!?放しなさい!」
「おっと。暴れないほうがいい。腕の骨が折れても知らないぞ。美しいだろう?それはT-002型タイラント。T-ウィルスの名を冠するに相応しい生物兵器として
タイラント。セルケトを瀕死に追い込み、マスターリーチの肉体として猛威を振るったT-001プロトタイラントの完成品が二体、そこにいた。ウェスカーはまるで自慢でもするかの如く長い髪を振り乱し、サングラスの下で目を見開き両手をわなわなさせながら力説する。
「人間へ擬態し溶け込む能力を持ち、複雑な任務を遂行することが可能なだけの知能と圧倒的な戦闘力を備えた『完璧な兵器』の完成を目指した末に生み出された傑作!心があるゆえに失敗したセルケトとは違う、心なき無慈悲で冷酷な破壊者!アイザックス博士はRT-ウイルスに、ウィリアムはG-ウイルスに憑りつかれていたが、私はT-ウイルスの完成形たるこの存在にこそ美しさを見出す!ああ、素晴らしい!アンブレラに……あの老害に渡すなどもったいない!今はアイザックス博士考案、試作型の対B.O.W.電磁波に指向性を持たせることで制御しているが、いずれはこれなしでも言うことを聞く完璧で究極のB.O.W.が……」
「美しい?どこが?まだあんたの方が直視できるレベルで醜いわ!」
「…そうか、ジル。君にはこの美しさがわからないか。残念だ……だが驚くのはまだ早いぞ」
そう言ってカチカチとキーボードを操作し、二つの画面を映し出すウェスカー。そこには、ドライアド42と戦うアリサ、クイーン、オメガとヘカト、そして捕らえられたジョセフ。ネプチューン・グラトニーの猛攻から逃げるクリスとレベッカ、フォレストの姿があった。
「みんな!」
「ネプチューン・グラトニー……ついぞ制御が叶わなかったトップクラスに凶暴なB.O.W.…だが話は通じる。外の世界に連れ出すという取引で期待通りにセルケトを殺してくれた。奴にはそれなりのポストをくれてやろう」
「あんな怪物を世に解き放つつもり…!?」
「奴だけではない。これから世界の裏の市場はB.O.W.が支配する!新世界の始まりだ」
元々の目的であるアンブレラのライバル会社への手土産となるB.O.W.の戦闘データは十分に集まった。
「あとは、基本的なゾンビのデータだ。お前にT-ウイルスを打ち込み経過観察を録画させてもらう。何、運が良ければ抗体を持っているかもしれない。それなら私は取越し苦労だが、それも貴重なデータになるだろう。準備ができるまで牢に閉じ込めておけ」
「「(コクッ)」」
「みんな…無事でいて」
タイラント二体に連れられ部屋を後にするジルを見て、ほくそ笑む。己が覇権を握る日も近い、その確信を込めて。その後ろの壁の向こうに、眠っている存在には気づくことはなかった。
というわけで様々な真実開示です。
裏切りのバリー、囚われのジル。不本意ウェスカー。増えるタイラント。眠る何か。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。