BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
俺とジル、レベッカは研究所屋上に出て信号弾でブラッドに迎えに来てもらい、無事ヘリに乗り込んで空に離脱。しばらくしたあとに眼下で爆発が建物を崩壊させていくのを見て、ふとクイーンたちは無事だろうかと洋館の入り口付近に視線を向けて……それを見た。
「っ!?…ブラッド、あっちに向かってくれ!」
「どうしたんだクリス?このままラクーンシティに戻って応援を呼ぶんだろ?」
「クリス?なにかあったの?」
「何かが爆発する洋館を飛び出した!嫌な予感がする!クイーンたちが危ない、頼むブラッド!」
「よし来た!今度は逃げねえから安心しなあ!」
俺達を置いて逃げ出したことに引け目を感じていたらしいブラッドは意気込んで操縦桿を動かし、ヘリは急旋回して空を突き進む。……もう一人、逃げだした男のことがふと頭によぎる。バリー……お前は本当に、俺達を見捨てて裏切ったのか…?
伸ばした爪を地面に突き刺し、縮む勢いで吹っ飛んできたのは、爆発をもろに受けたのか角はねじれて折れ曲がり、長い髪の先端やコートのような服が炎上しているイブリース。両手を横に伸ばし、炎を纏った爪をめいっぱい伸ばして ブンブンブンブン振り回して炎を纏った斬撃の嵐を叩き込んで木々を切り刻み火事を引き起こし、ケルベロス達も薙ぎ払う。ほとんど全滅したんじゃないかな、あれ。
「我輩の許しなく立ち去るのは許さんぞ…!」
「っ、逃げなさい!」
「こいつは私たちが…!」
セルケトが吠え、リサが叫び、私たちの方に振るわれた爪を鋏と鎖を巻いた拳で上に弾いて防御。しかし一旦縮んだ爪がまっすぐ伸びて刺突、貫かれたセルケトの体まで火が燃え移って炎上してしまう。
「ぐうっ…!?」
「セルケト!」
「ヒャハハハハハハハハハハハハッハッ!」
黒焦げとなり倒れるセルケトごと爪を縮めて引き寄せ、蹴り飛ばして木に叩きつけるイブリースが笑い声をあげ、次々と爪の伸縮を繰り返して高速で移動しリサに斬撃を連続で叩き込んでいく。リサは斬り裂かれた傍から傷口から菌根を伸ばして斬られた部位を繋げて無理矢理再生することで耐えているが、じり貧なのは目に見えていた。
『オメガちゃん!プサイちゃん!』
「「了承!」でござる!」
エヴリンが呼び掛けて、オメガちゃんとプサイちゃん木々の隙間を駆け抜けて突撃するが、燃えるイブリースはそれに視線を向けてニヤァと三日月のような笑みを浮かべると両手を下に向けて爪を伸ばし、その反動で高く高く跳躍する。それを追いかけて複数の木を交互に蹴り舞い上がるオメガちゃんとプサイちゃんに、それは降り注いだ。
「刮目せよ!我輩が見せる地獄を!」
「「ぐああああああっ!?」」
それは、頭上で爪を強くぶつけ合わせたことでひび割れて砕け散った、爪の破片。焔を纏ったそれは流星群の様に降り注ぎ、オメガちゃんとプサイちゃんを撃墜し、ダウンしているセルケトや疲弊しているリサごと大地を穿っていく。その中に涼しい顔で着地するイブリース。首を傾げて三日月の様な笑みを浮かべて瞳孔が開いた眼でまっすぐ見つめて来るその視線は、私とヘカトちゃん、エヴリンに向けられていた。ゾッと恐怖が支配する。
「こ、来ないで!」
咄嗟にサムライエッジ・ルヒールを連射するが、イブリースは肩に当たろうが額に当たろうが気にせず瞳孔が開いた眼を向けながら歩み寄ってくる。
「熱い、熱いなア……お前らも、道連れだ」
そして燃えながらゆらゆらと揺れ動くイブリースを見て、そのことに気づく。炭化していく先から再生していき、いつまでも炎上し続けている。生き地獄そのものだった。文字通りのやけくそだ。今のイブリースに、正常な思考が存在しているとは思えない。
「アハッ、ハハハッ!刮目せよ、その目に焼き付けろ!我輩は、これからお前たちも味わう地獄そのものだ!」
狂った笑い声をあげて嗤うイブリースが、爪を伸ばして地面に突き刺し、縮めて急速に近づいてきた。私はそれに合わせて拳を振るうもイブリースは顔面に受けながら三日月の様な笑みを崩さず、私を押し倒して右手を振りかざしてきたので手にしたサムライエッジ・ルヒールを至近距離で腹部に連射。しかしイブリースは身じろぎ一つしなかった。
「なにかしたか?」
「ひっ…」
「怖いか?支配を受け入れぬからだぞ?支配されたままでいれば苦しむこともなかったんだ」
『アリサから離れろ!離れてよー!』
完全に正気を失っているイブリースの右手の爪がじわじわと伸びて眼前に迫る。ヘカトちゃんは怯えてジョセフとリチャード、クイーンだった変異ヒルたちを抱えたままぶるぶる震えているし、エヴリンは抗議するも意にも介されていない。リサ、セルケト、オメガちゃん、プサイちゃんも倒れ、虫の息だ。誰か…!
「アリサ!」
そこに突風が吹き荒れて炎を吹き飛ばし、炎上から逃れたイブリースが忌々しげに視線を上に向けると、そこには森の上空に滞空するヘリコプター。その後部の扉が開いてクリス、ジル、レベッカが顔を出す。そしてクリスの手には、とんでもないものが握られていた。
「ロケットランチャー!?」
「アリサ、避けろ!」
言われて渾身の力を込めて、腕の力のみで跳躍しイブリースの下から抜け出す私。次の瞬間、イブリース目がけてロケット弾頭が発射される。やった、と確信できるほどの切札。
「王に危険物を向けるな」
「なんだと!?」
だがしかし、イブリースは爪を伸ばして振るうことでロケット弾頭を切り裂いて空中で爆発させて防いでしまった。爆発の煽りを受けて姿勢が崩れるヘリコプターにクリス達は必死に掴まり、ブラッドが姿勢制御して立て直したところにイブリースの爪が伸びてヘリの下部に突き刺さる。
「王たる我輩を見下ろすな!図が高いわあ!」
「だめ!」
そのまま引きずりおろそうとするのを見て、殴りかかって阻止する。ヘリから引き抜いて縮めた爪を伸ばしながら振るい私を迎撃するイブリース。ロケットランチャーすら効かないなんて、どうすれば……見逃してはくれないだろうし、もう勝ち目が……そう、気を逸らしてしまったが運の尽き。伸ばした爪の一撃を受けて私はバラバラに切り裂かれて地面を転がっていた。
「があっ…!?」
「我輩は王だ、王の邪魔をするとは死にたいらしいな?」
そう言って私の胸部を足蹴にし、瞳孔の開いた眼で見降ろしてくるイブリース。再生は、できる。生きても、いる。だけどもうなにもできない。詰みだ。そう、覚悟して目を瞑った時だった。
『…なにが王だ!お前、王に向いてないよ!』
「…なんだと?」
突如、エヴリンがボロクソに貶し始めて額に青筋を浮かべながら振り返るイブリース。エヴリンはあっかんべーしながら空中で跳ねていた。
「誰が王に向いてないだって?」
『こんなに大声で叫んでいるのに耳が節穴なの?独りじゃ王様とは言えないよ!そんなこともわからないなんて馬鹿なの?!』
「貴様ッ…!」
怒って爪を振り回し、エヴリンを狙うイブリース。時間稼ぎのつもりか?と思っていると、すぐに違うと気付く。エヴリンが視線で私に訴えている。その視線の先には…!?そうか、そういうことか…!なら!
「赦さん…ッ!?」
「…手だけで近づくのは、しんどいなあ」
私の切断された肘先から菌根を伸ばして、繋げた右腕の指を動かして移動させ、イブリースの足首を掴んで動けなくする。今の私にできることはこれぐらい、だけど…!木の陰に隠れて様子を窺っていた仲間が、動いた。
「お願い、バリー!」
「俺の仲間に、手を出すな!」
恐怖を押し殺し、勇気を振り絞って、バリーが立つ。サムライエッジ・バリーモデルを構えたバリーの弾丸が、イブリースの右胸を撃ち抜いた。すると目に見えて苦しみだすイブリース。
「がっ、あああっ!?」
「バリー、なんでこんなに効いているの…?」
「…はあ、はあ。こいつもタイラントなんだろう?なら弱点も、同じのはずだ…!」
「馬鹿な、この我輩が……!?」
今の今まで隠し、守っていたコートがエヴリンが煽ったことで暴れた為にはだけて出てきた、右胸に露出している心臓。それを撃ち抜かれてイブリースは苦しみ悶えながら、力なく崩れ落ちて。魔王は滅びた。
第三形態、再生し続けるが故に炎上して角も使い物にならなくなり、瞳孔が開きっぱなしでブチギレている姿。形態というよりは満身創痍の姿ですね。皮肉にもマスターリーチの目的だった地獄を表しているっていう。煽り耐性は皆無なので支配も効かないエヴリンは天敵でした。
セルケト、リサを退け、流星群みたいな諸刃の剣でオメガとプサイを下し、救援に駆け付けたクリス達のロケットランチャーも防ぎ、その怖さからヘカトを戦意喪失させ、アリサをバラバラにする強さを発揮するイブリース。その決まり手は、仲間のピンチに見過ごせず帰ってきた男、バリーの一撃。サムライエッジ・バリーモデルはマグナムレベルとまではいかないけど高威力のカスタムハンドガンなので致命的な一撃だった。
次回はエピローグ。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。