BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
俺はウェスカーに脅されていた。事の始まりはラクーンフォレストにクイーンたちチームブラボーが向かった直後のこと。妻と子供たちを人質に取られたことを伝えられ、リーダーとして少なからず信用していた奴の本性を知ると同時に従わざるを得なくなった。
ウェスカーがアリサを襲っているのをジルと目撃した時は占めたと思った。ここで奴を仕留めれば家族に手出しされないのではないか。そう思ったのもつかの間、ウェスカーはリサ・トレヴァーに殺された。
仲間を裏切ることなく、解放されたと思った。しかし寄宿舎でジルと二人チームでクリス達と分かれジルと手分けして探索していたところに、其れは現れた。金髪をオールバックにしたサングラスをかけたアリサ、というべき容姿の女は血まみれで胸元に穴が開いた見覚えのある服を着ていて、嫌な予感がした。すると女はウェスカーを名乗り、復活したことを告げられて俺は逃げられないことを悟った。
その後ジルを捕らえたいというウェスカーに協力し、そのままジルがいなくなったとしてアリサたちと合流。突然変異で生まれたB.O.W.の実践データを得たいと言われたので誘導し、そのまま命令のままに離脱した。あとで回収するから外で待機しておけという命令だった。ケルベロスやサーベラスもついでに始末していてくれ、と。
言われるままに待機していると、ウェスカーが洋館から出てきたのを確認したが、ウェスカーは何かに恐怖するように全力で逃げ出していて。俺のことを気にすることなく去って行ってしまった。解放されたのか、と安堵したのもつかの間。アリサたちが出てきて、俺は咄嗟に隠れた。糾弾されるのが怖かったし、気まずかったのもある。そして何より、アリサたちを追ってきた少女の姿をした怪物が怖くて、踏み出す勇気が出なかった。
だけど、バラバラにされそれでも生きようとするアリサを見て、腹を決めた。ここで見捨てたら俺は娘たちに誇れなくなる。S.T.A.R.S.でもなんでもない、ただの屑だ。
―――ああ、俺は。お前たちに誇れる父親になれただろうか。モイラ、ポリー…。
「…バリー」
「…アリサ」
なんとかばらけた体を菌根で繋ぎ合わせて、立ち上がる。我ながら人間業じゃないなと苦笑する。視線の先には気まずそうなバリーがいて。
「…いろいろ言いたいことはあるけど、ありがとう。戻ってきてくれて、よかった」
「悪かった。本当に……お前たちに、申し訳が立たない…!」
「家族を人質に取られたんでしょ?しょうがないよ。気づけなくてごめんね」
「アリサ……」
言いたいことを言えてすっきりした。ずっと引きずってたからね。
『仲良きことは美しいかな、って言いたいところだけどそれどころじゃないよアリサ!炎が!』
エヴリンが慌てて指をさしたので見てみれば、イブリースから引火した炎がこっちまで回ってきた。やばい、勢いが強い。自然鎮火は望めないか…。
「リサ、セルケト!オメガちゃん、プサイちゃん!起きて!やばいから!」
「アリサ、バリー!」
駆け寄って起こしていると、風が炎を吹き飛ばす。見上げれば体勢を立て直したらしいヘリコプターが。クリスが後部席から身を乗り出している。
「いったい何が起きた!?奴は倒せたのか!?」
「うん!でも、クイーンがやられて、今回復中なの!ジョセフとリチャードも気絶してて!二人を抱えてたら、この炎じゃ逃げられない!」
『あ、そうだ』
「なら乗せれるだけ乗せる!ブラッド、寄ってくれ!」
「ああ、だけど炎がすぐ回ってくる!急げクリス!」
「おちおち寝てもいられないわね…」
「同感…」
「で、ござる…!」
するとリサが起き上がり、セルケトを担ぎながら長い腕を振るい、木を叩き折って炎の行く手を塞いだ。オメガちゃんとプサイちゃんも続き、木々を斬り倒して即席のバリケードを作り上げる。
「これで少しは時間を稼げるわ」
「ありがとう、リサ!でもこのヘリじゃ全員乗せられない…!」
「なら乗らなきゃいい話だろう」
聞き馴染みのある声に振り返ると、そこには何とか人型を取り戻したクイーンがヘカトの傍に立っていた。復活できたんだ…!
「エヴリン、助かった」
『リーチ・モールデッドを応用すればすぐ治せるってことに気付くの遅かったわ、ごめん』
「ヘカト、二人をヘリに運んでくれ」
「わかった!」
ムカデ腕を伸ばして、リチャードとジョセフをヘリの中のクリス、ジル、レベッカに渡すヘカトちゃん。するとクイーンはこちらを向いて、微笑んだ。
「アリサとバリーもだ」
「りょーかい!」
「え、なんで」
「クイーン!?なんのつもりだ!」
言われるままに私とバリーにも巻き付き、ヘリまで持ち上げるヘカトちゃん。後部座席に乗りながら、笑っているクイーンを見下ろす。なんで…!?
「生憎と人数ギリギリ、これ以上は重量オーバーだ。そうだろブラッド?」
「それは……」
「私が残る、こいつらを連れてラクーンシティに戻るから安心しろ。イブリースの死体も、痕跡が残らないところで処分しないとな。利用されるわけにはいかない」
「だったら私が…!」
「いいや、私は始まりのB.O.W.だ。私から生まれたこいつらの面倒を見る責任がある。お前もその一人なんだが……シェリーを頼む。私は厳しかったらしいからな、優しいお前の方がいいだろう。私が戻るまであいつを頼む。なあ、こんなことお前にしか頼めないんだ。アリサ」
その笑顔に覚悟を見て。私は、喉まで出かかっていた我がままを飲み込んだ。
「クイーン……わかった、わかったよ!でも必ず生きて、帰ってきて!待ってる、から!」
「ああ、約束だ。クリス、レベッカ。みんな。アリサを頼むぞ」
「…本当に残るんだな?」
「ああ。迎えもいらない。運が良ければまた会おう」
「さよならは言わないぞ。出してくれ、ブラッド」
そうして私たちは飛び立っていく。眼下では、イブリースの死体を抱えたヘカトちゃんを中心にして移動し始めるクイーンたち。再会することを希望とし、私たちS.T.A.R.S.はラクーンシティに帰還する。…私はこの時知らなかった。再会どころじゃなくなる、だなんて。
―――――――1998年7月23日“洋館事件”発生。洋館の炎上によって周辺の森に火災が発生し、州兵や地元消防団の必死の消火活動も効果は薄く、広範囲の森が焼失した。
猟奇殺人事件の調査に出ていたS.T.A.R.S.のうちアルバート・ウェスカー、エンリコ・マリーニ、ケネス・J・サリバン、エドワード・デューイ、フォレスト・スパイヤー。臨時ヘリコプター操縦士ケビン・ドゥーリーの未帰還を確認。死亡したものとする。
生き残りの隊員の報告と状況証拠からブライアン・アイアンズ署長の判断で洋館事件の主犯を逃亡したと思われるS.T.A.R.S.隊員のクイーン・サマーズと断定。凶悪犯として指名手配に処する。
B.O.W.組を連れ、イブリースの死体を回収して離脱したクイーン、指名手配。6編で政府組織に入ってなかった理由の一端がこれだったりします。
設定を挟んでから2編に入ります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。