BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
長かったカードキー奪取編も終幕です。この激闘、カードキーを手に入れるためだけにやってたんですよね。楽しんでいただけたら幸いです。
爆音に次ぐ爆音と破砕音が地下駐車場の方から響いてくる。手持ちの包帯でプサイの止血をしてクイーンたちを待っているところに聞こえてきたそれに、マービンと共にハンドガンを構える。
「なんだ…?何が起きている…?」
「さっきの大男……クイーンが言うタイラントが生きてるってことと関係あるのか…?」
息を荒くしているマービンの言葉に、先ほどプサイの頭の上の子機ヒルちゃんとやらから聞こえてきた情報を整理しようとしていると、プサイが起き上がる。動こうとしたため脇腹に巻いた包帯が赤く染まっていく。
「ぐぬっ…いかねばならぬ……!」
「プサイ、動けるのか!?無茶をするな!」
「なんのこれしき…!タイラントは……洋館事件にて、我らが相対した強敵でござる。全員で力を合わせて勝てたやつが、強化されていた…!気配でわかる、クイーン殿が一人で戦っておられる…!おそらくオメガ殿たちにもなにかがあったでござる。拙者だけでも、加勢せねば…!」
「だからって今動いたら出血多量で死ぬぞ!動くなプサイ!マービン、手伝って……マービン?」
「……え、あ。なんだ?レオン」
力づくでプサイを引き留めようとしていたが、心ここにあらずに呆けていたマービンに嫌な予感がよぎる。…急いでくれ、クイーン、エヴリン…!
「ヴァァアアアッ!」
「ちい!」
筋肉の化け物になったタイラント・マスキュラーの肥大化した右腕に握られた拳を、粘液糸を天井に伸ばして足を広げて跳び箱でもするかのように紙一重で回避するクイーン。そのまま首に両足で絡みつき、締め上げようとするが筋肉の鎧はビクともしないどころか、筋肉が膨れ上がって筋繊維が触手の如く四方八方に展開され、突き飛ばされて天井の角に張り付いて壁に張り付いて着地…着壁?するクイーン。
「なんて質量だ…!質量保存の法則はどこ行った!」
『まるでカーネイジだね!ぐろい!』
アレも確か肉体自体が変異した触手とかだったはずだ。ローズの事件が起きた時代だと古い映画だけど公開時に見に行った時はホラー映画かなんかかな?と思った記憶がある。すると筋繊維触手を蠢かせながらじたばたと両腕を動かしてもがくタイラント・マスキュラー。
「ウグググッ……グオオオヴァァアアッ!!」
『……なんか本人も制御できてないみたい?』
「適応に脳の認識が追い付いてないのか?そこをつけばいけるぞ!」
その場でじたばたと暴れるタイラント・マスキュラーに呼応して、伸縮する触手がイソギンチャクかなにかみたいに蠢いて、咄嗟に粘液糸を飛ばしてその場を逃れて高速で天井を駆け抜けるクイーンを追いかけてコンクリートの壁を粉砕していく。あんなもの喰らったら瞬く間にぐちゃぐちゃの肉塊になってしまう。怖い。
「ここを、こうして……!」
しかしクイーンもただ逃げてるだけじゃなかった。逃げる先で粘液糸を繋げ、それをタイラント・マスキュラーの頭上を交差するように重ねていき、巨大な蜘蛛の巣のようにしていくクイーン。すると粘液糸の蜘蛛の巣がタイラント・マスキュラーの筋繊維触手に絡みつき、その場に拘束していく。
「こいつでどうだ…!」
「ウオオォァァァァァッ!!!!」
すると両腕を振るって力むことで引っ張り、筋繊維ごと粘液糸の拘束を引きちぎっていくタイラント・マスキュラー。ブチブチブチッ!とちぎれていく光景は端的に言ってぐろい。そして封印が解かれるように拘束から完全に解放され、タイラント・マスキュラーは目が見えない口だけの顔を動かしてクイーンの位置を正確にとらえると、両拳をアスファルトに叩きつけて大ジャンプ。
「おいおい、嘘だろ!?」
『
コンクリートの壁を粉砕しながら壁にめり込むタイラント・マスキュラーから逃げるクイーンに、タイラント・マスキュラーの背中から伸びた筋繊維触手が絡みついて引っ張られ、背中から落ちるクイーン。
「ぐえっ」
『あ、馬鹿言ってる場合じゃない奴だねこれ』
タイラント・マスキュラーは逃がさないとばかりに飛び降りて、アスファルトに小さなクレーターを作りながら着地。自身の筋繊維触手と繋がったままクイーンを殴り飛ばし、ヨーヨーの様に跳ねて戻ってきたクイーンの顔面にさらに一発。ふら付くクイーンにタイラント・マスキュラーは容赦なく猛ラッシュを叩き込み、そのまま何度も何度も殴り飛ばされサンドバッグにされてしまう。チェーンデスマッチだ。
『やめてー!クイーンがミンチになっちゃうー!?』
「ぐっ、がっ……」
全身に粘液硬化して拳の直撃こそ弾いているが、衝撃までは殺しきれていない。圧倒的なまでのフィジカルと全身筋肉のバネから放たれる猛ラッシュは目にもとどまらぬ速度と、殴り飛ばされたクイーンが壁を粉砕するほどの威力であり、見ていて背筋が凍るとんでもない猛攻だ。というかこんなに殴っているのにちぎれない筋繊維はなんなんだ。
「隙さえ、あれば……ぐうううっ!?」
『だ、誰か助けを……でも、誰を…?』
オメガちゃんは胸部を貫かれて其のまま振り回されて酷い傷だったし、ヘカトちゃんは腕をもがれて咀嚼されて回復も間に合ってないし、プサイちゃんは脇腹を刺されて持ち上げられて傷口が広がっていたし……レオンとクレアやマービンにはそもそも意思を伝える手段がないけど、人間の三人じゃ確実に死ぬ。エイダはどこ行ったか知らん。どうしようー!?頭を抱えてグルグル回るしかない。
『私のことが見えないみたいだから私はなにもできないし……こうなったら合体だ!クイーン、意識飛ばして!そしたら暴走しないから!』
「こんな激痛で、意識を飛ばしてられるか…!」
『それもそうだね!もう暴走するしかないんだこれ!』
「……いや、まだ手はある…!」
粘液硬化も砕けてしまいズタボロになりながらも不敵な笑みを絶やさないクイーン。その姿は、どんなピンチでも諦めなかった私の最愛の父親を思い出して。
「要は此奴にお前の存在を知覚させたらいいんだろう…!?隙を作るぐらいならできるだろ!」
「ウガッ、ウガァアアアアッ!!」
『多分できるけどどうするのさ!?』
「大口だけは残っているだろう!こいつでも喰らえ!」
すると殴り飛ばされ、引き戻された勢いを利用して右腕を突き出し、タイラント・マスキュラーの咆哮している大口にズッポリと突っ込むクイーン。なにを、と思う前にクイーンの右腕を噛みちぎり、威嚇なのか咀嚼して見せるタイラント・マスキュラー。そうか、そういうことか…!
『態度も身長も胸もお尻も顔も全部クソデカオバサンを思い出すなあ!』
私の声に反応し、クイーンを繋げたまま筋繊維を右腕に集束させ、巨大な剛腕として伸ばしてこちらに殴りつけてくるタイラント・マスキュラー。しかし私に当たることはなく、空ぶって体勢を崩す。
『リッカーと同じなら、眼が見えない分別のところの感覚は発達してるはずだよね!例えば嗅覚……例えば聴覚!!スゥウウ……ワアアアアアッ!!』
「ヴァアアアアアッ!?」
突撃してタイラント・マスキュラーのぐろい筋肉ののっぺらぼうみたいな顔の耳(?)に顔を突っ込み、虎の子である超至近距離鼓膜絶叫を発動。悲鳴を上げ、クイーンを開放して頭を押さえながら後退するタイラント・マスキュラー。クイーンがズタボロの身体に鞭打って粘液糸をタイラント・マスキュラーの頭上に伸ばして舞い上がり、四方八方に粘液糸を飛ばし始める。
「質量には質量だ!生物の肉が決して勝てない物質を知っているか…?鉄と、炎だ!」
四方八方に飛ばした粘液糸が繋がったのは、地下駐車場に止められている炎上するすべてのパトカー。クイーンとその真下のタイラント・マスキュラーを中心に張り巡らされた粘液糸は、クイーンがその中心部を殴りつけるとゴムの様な伸縮性を発揮し、一斉に中心部に縮まっていく粘液糸に繋がれたパトカーたちが、全方位からタイラント・マスキュラーに勢いよく激突していく。
「お前は強かったよ。マスターリーチなんか目じゃない」
「グゥゥゥ……グォオオオオ―――ッ!?」
そしてクイーンが傍らに着地した瞬間、押しつぶされ圧縮されたタイラント・マスキュラーの首から上が断末魔を上げて吹き飛んで、ギロチンされた頭部の様に転がっていき、ひとまとめになったパトカーは大爆発。タイラント・マスキュラーの首から下も木っ端微塵に吹き飛んだのだった。
『…やっぱり脳筋でしょクイーン』
「なんのことだか、わからないな」
ズタボロながらもそしらぬ顔でそっぽを向くクイーンに、私は思わず笑ってしまうのだった。
ぶっちゃけギロチンするのがタイラント・ハーキュリーの唯一の攻略法だったりします。迂闊に瀕死に追い込むとパワーアップして手が付けられなくなるからたちが悪い。
本編でも言及してますがカーネイジやハルクもモチーフに入っていたタイラント・マスキュラー。これでタイラント・ハーキュリーの一形態でしかないという悪夢。でもこの章、タイラントの章じゃなくてG生物編なんですよね……。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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