BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
「グオオオオアアアアッ!!」
頭から激突した壁を引き裂きガラガラと崩しながら、起き上がったワニ女の巨体が動き出す。ガブガブと噛みつきながらでたらめに両腕と尻尾を振り回し、確実に殲滅しようという動きで突撃してくるワニ女。なんか可愛いな。一撃でミンチになるから可愛くないけど。
「そんな見え見えの攻撃当たるか!」
両腕から粘液糸を天井に飛ばし、引っ張ってくるりと宙返り。攻撃の隙間を避けてワニ女の背中に着地するクイーン。そのまま粘液硬化で左腕を背中に固定し、振りかぶって粘液硬化した右腕で頭部をガツン!と殴りつける。
「ぐうっ!?」
打撃の衝撃は響くのか怯むワニ女。クイーンはこれ幸いとばかりに振り回されながらも左手でくっつき、連続で右腕で殴りつけるも、ワニ女は尻尾を巧みに動かしてクイーンに巻き付けて無理矢理引きはがし、空中に放り投げると爪で何度も何度も切り裂いていくがクイーンはヒルの結合を緩めて斬撃された部分を受け流して回避。器用なことするなあ。
「なんなんだおまえはあああっ!」
下水に落ちるたところに両手を何度も叩きつけるワニ女だったが、クイーンは右手を伸ばして粘液糸を後ろの壁に向けて伸ばして回避、壁を蹴って跳躍し、空中回し蹴りを叩き込んで蹴り飛ばすと天井に逆さまに立って両手にゴクとマゴクを引き抜き乱射する。
「ぐっ!?ごっ!?ぐあっ!?」
弾丸の衝撃を頑強な皮膚で受けて怯んで後退するワニ女。一発が右目に炸裂して血飛沫を上げるが、クイーンを睨みつけてきた右目は既に再生していて。とんでもない再生能力だな。
「俺は死ねない!死ねないんだ!」
「…本当に有効打がないな。どうしたもんか…!」
そう肩を竦めて言いながらマゴクをしまった左手から飛ばした粘液糸で下水道に浮かんでいたガスボンベを引っ張り上げ、ワニ女目掛けて放り投げるクイーン。
「プレゼントだ。受け取れ!」
「ぐああああああああああっ!?」
そしてワニ女の眼前にガスボンベが迫った瞬間、右手で握ったゴクの引き金を引いて弾丸を放ち、着弾。同時にクイーンは足の粘液を解いて下水道に落下、次の瞬間爆発が下水道を揺らし爆炎が広った。
『ちょっとクイーン!ヘカトちゃんまで危なかったじゃん!ギリギリ!』
「それは悪かった、な…!?」
「捕まえたあ!よくも好き勝手してくれたなあ!」
下水から浮かび上がってきたクイーンを、爆炎から飛び出した鱗に覆われた巨大な右手がぐわしと握りしめ、焼け爛れている全身を再生させながら爆炎から出てきて、グググッと力を入れるワニ女。クイーンは「ぐあああっ…」と苦悶の声を上げ、目前まで持ち上げられる。
「言っただろう、俺は死なない!死にたくて自分を斬り裂いても死ねなかった!俺は好き勝手されるのが大嫌いだ!人間に飼われたかと思えば捨てられ、この下水道で生き抜いてきた挙句にサミュエル・アイザックスを名乗る人間に体を弄繰り回され、何よりも恨んでいる人間の身体にされた!その憤りがわかるか!人でないくせに好きで人間の形をとるお前にわかるか!何がアリゲーター・ステュクスだ!くそくらえ!」
『アイザックス…!』
アリゲーター・ステュクス。それが彼女の名前か。まさかとは思ったけどまたアイツか。しかも、アリサみたいなアイザックスの犠牲者だ。ヘカトちゃんみたいに偶然そうなったのでもなく、オメガちゃんやヘカトちゃん、ヨーン・エキドナやネプチューン・グラトニーみたいに「そう在れかし」と作られたわけでもない。
ごく普通の…いやそれでも最低な日常を過ごしていたのに、目を付けられて実験体にされたワニなんだ……それで大嫌いな人間みたいな姿にされて、いやそればかりか、この一人称。もしかしなくてもオスじゃないのか。そんなの、可哀そうすぎる。ヘカトちゃんの状態が安定しているのを確認し、離れる。この子を見捨てることなんて、私にはできない!
『アイザックスは、私達の敵だよ!私達が戦う必要はないよ!』
「ぐっあ……エヴリン、なにを…?」
『うるさいクイーンは黙って!ねえ、落ち着いて。私達はあなたの敵じゃない』
「嘘だ!俺を騙そうとしてもそうはいかないぞ!お前みたいな人間になにがわかる!おまえみたいなチビ、喰ってやる!」
「ぐああああっ!?」
クイーンを壁に叩きつけて投げ捨て、私目掛けて大口を開けて四つん這いで突進してくるアリゲーター・ステュクスの噛みつきを、リサの例もあるのでひらりひらりと躱していく。
『お願い、話を聞いて!』
「うるさい!うるさい!人間なんてもうたくさんだ!」
駄目だ。人間への憎悪に囚われている。それはまるで、世界を憎悪していたかつての私と同じだ。……うん、決めた。避けるのをやめて、むしろ受け入れるように手を広げる。……リサと同じで私に触れるんだったら、痛いんだろうなあ。でも。そんなことよりも。私は、この子を救いたい。
『いいよ、おいで』
「グオオオオオオッ!!」
「エヴリン!?」
そして、ばくんと。一口で私は食べられてしまった。
沈む、沈む。ローズと共に落ちていった、あの感覚。目を覚ますと、私は見覚えのある湖の上の残骸に乗っていた。モローの人造湖だ。目の前には、何が起きたかわからないという表情で狼狽えている、アリゲーター・ステュクスが半身を水に沈めて湖面に浮かんでいた。
「なんだ…?何が起きた…!?」
「ここは菌根の世界。RT-ウイルスに使われている菌根の欠片から繋がっている、精神世界だよ」
「お前の仕業か!俺をどうするつもりだ!」
「私はただ、あなたを救いたくて……」
瞬間、湖面を泳いで噛みついてきたのを、跳躍して隣の残骸の飛び移ることで回避。デスロールで粉砕される残骸に冷や汗をかく。この世界だと私にも物理攻撃は通じる。この子と話すのは、命懸けだ。
「俺を救うだと!?ふざけるな!俺を殺せないから懐柔して、また裏切るんだろう!そうはいかない!もう人間の勝手で振り回されるのはごめんだ!」
「レオンとクレアは人間だけど、それ以外のクイーン、オメガちゃん、ヘカトちゃん、プサイちゃん、そして私達は人間じゃない!あなたの仲間だよ!」
「嘘を付け!奴と違って、お前はどこからどう見てもただの人間だ!」
そう言って噛みついてくるアリゲーター・ステュクスの攻撃を、両腕を菌根で覆って武装して受け止める。湖に浮かぶ残骸は押されてしまって止まらなかったけど、自分の牙を受け止めた私に目を丸くするアリゲーター・ステュクス。
「人間じゃ、ない…?」
「これでわかった…?私は人間に似せられて作られたバケモノだ。……ごめん、考えが足りなかった。ただのワニから怪物にされたあなたと同じ、だなんて言えないけど……でも、あなたの気持ちはわかる!」
「お前に何がわかる!俺の何が…!」
「愛して、ほしかったんだよね」
力が強まる噛みつきに耐えながらそう告げると、アリゲーター・ステュクスの力が弱まるのを感じた。明かに動揺している。やっぱり、そうか。
「本当に心の底から恨んでるってことは、捨てられたことが悲しかったんだよね。拾われたのに実験体にされて、期待を裏切られて悔しかったんだよね。あなたは愛してほしかった、それだけだった」
「そうだとして、お前に何がわかるっていうんだあああ!」
噛みつきが強まり、牙が食い込む。その痛みに耐えながら、私は続ける。同じだから。
「私もそうだった!愛してほしかった、それだけのために私は心身ともに怪物になった!独りなのが嫌で、愛がわからなくて、無理矢理愛してもらおうとして何人もの人生を犠牲にした!でも愛してもらって、私は変われたんだよ!」
「ならどうしたらいい!俺は、こんな人でもワニでもない、図体がでかい怪物の俺が!誰かに愛されるわけがない!恨み続けるしか、ないだろ!」
噛みつきは止まっていた。アリゲーター・ステュクスは感情のままに吠えていた。そんな人生、悲しいよ。せっかく意思疎通ができるようになったのに、恨み続けるなんてダメだ。
「なら私が愛してあげる!あなたの親になってあげる!菌根で繋がっているあなたも、私の家族だ!私が与えられたものを、あなたにも分けてあげる!それじゃダメ、かな…?」
ドクドクと黒い血が傷口から流しながら、両手を広げて安心させるように笑みを浮かべる。ああ、と掠れた声が上がる。大きな腕が、他者を傷つけるだけだった爪を有する手が、おそるおそると私を、抱きしめた。水滴が頭に落ちる。見上げれば、アリゲーター・ステュクスは泣いていた。
「ずっと、そう言ってもらいたかったのかもしれない……」
「うん、うん。これからは私が愛してあげる。ちょっと重いかもだけどね?」
小さな手で抱きしめ返す。…大きな娘、いや息子かな?イーサンとミアに与えられた愛を、この子にも分けてあげよう。
原作の撃退方法であるガスボンベの爆発すら再生してしまうアリゲーター・ステュクス。その悲痛の叫びを聞いたエヴリン、お母さんになる。……字面だけ見ると意味わからんな?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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