BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はハイゼンベルクとの対面。楽しんでいただけると幸いです。
工場に入り、ごちゃごちゃした中を進んでいくと、作業場と思われる部屋について。奥にあったぼろいカーテンを開くと、そこにはミランダに、バッテンがついたドミトレスク・ドナ・モロー、それにミアやローズにクリスの写真が貼ってあった。
「なんだこれは?」
『他のは分かるけどなんでミアの写真まで…?』
「辛いよなあ?」
甘い匂いと共にアイツの声が聞こえたので、ハンドガンを手に振り向く。そこには吸っていた葉巻を投げ捨てるハイゼンベルクがいた。いつぞやのハンマーは手にしていない。
「当ててやろう。他の奴等と同じように俺を倒せばローズを救える、と思っていたんだろう?」
「娘は治ると聞いたんだ」
『デューク情報だけど』
「いいか?わかってねぇようだが…クソッ、うるせえな…」
するとどこからかエンジンの駆動音の様な物が聞こえ、ハイゼンベルクが顔をしかめて近くのハッチを開いて怒鳴り散らした。
「おい静かにしてろ!今大事な話してんだよ!…悪かった。まあ座れ」
『ちょっと見てくる』
「ああ」
機嫌を損ねたくないので、ハッチの側に置かれた椅子に素直に座る。同時に、エヴリンが床に沈み込んでいき…血相を変えて出てきた。
『イーサン!なんかいる!プロペラエンジンを胴体に付けたよく分からないなにかがいる!』
「それでだな…おい、どうしたしかめっ面で」
「俺が手を組まなかったら突き落として下にいるプロペラエンジン野郎に襲わせるつもりだったのか?」
「ほう。驚いた。たしかにそのつもりだったが意味ねえようだな。どこから知った?」
「言っただろ。俺にはエヴリンがついている。実体がないからどこにでも擦り抜けられるんだ」
「そいつは便利だな。エヴリンはどう言っている?俺の自信作にして失敗作のシュツルムは」
「プロペラエンジンを胴体に付けたよく分からない何かだと。お前、正気か?」
「お前!紅の豚知らねえのか!あの唸るエンジンの美しさ…」
「何年前の映画だよ!?お前はマンマユート団にいそうな顔だけどな。因みにママ怖いよって意味らしいぞ」
「よーし、そのイラつかせる口を今すぐ閉じろ。さもなきゃここから蹴り落としてシュツルムと戦わせてついでに全兵力をここに集めてお前に嗾ける」
「俺が悪かったから許してくれ」
椅子を蹴飛ばそうとしてきたので謝る。そんなのとさすがに戦いたくない。すると冗談だったのか、椅子の金属を操り真ん中まで引っ張り笑うハイゼンベルク。
「冗談はさておきだ。エヴリンについてだが…俺にも見える様にできないか?モローの野郎はどうしてか見える様だったが」
「……」
『血…かなあ?』
ハイゼンベルクにそう言われて、考える。そしてナイフを取り出し、掌を薄く切って血をにじませて突き出す。
「飲め」
「は?」
「いいから飲め。俺の血肉を取り込めば見えるらしい。ドミトレスクもモローもそうだった」
「なるほどな。じゃあ失礼して」
エヴリンが楽しそうに観察する中で指先で血をくっつけ、口に含んだハイゼンベルクが嫌な顔をする。
「うげっ、いくらなんでも不味すぎないか、おい?」
『クソデカオバサンも同じこと言ってたなー』
「…お前がエヴリンか。俺も狂ってしまったか?まあいい、始めましてだ。カール・ハイゼンベルクだ、お見知りおきを。お嬢ちゃん?」
帽子を外し、エヴリンに向けて一礼するハイゼンベルク。中々様になっていた。
『さすがマダオ。まさにダンディな男だね!』
「なんだそのあだ名…もしかしてクソデカオバサンってドミトレスクのことか?ハハハハハッ!ナイスネーミングだ嬢ちゃん。ドナやモロー、あとミランダの馬鹿はどう呼んでんだ?」
『黒づくめ陰キャとマザコンブサイク、マザーナントカ変態仮面』
「ハハハハハハハハハハッ!そいつはいい、傑作だ!中々センスあるぜ、嬢ちゃん」
『それほどでもー』
エヴリンの謎センスあだ名に大笑いするハイゼンベルクと、頭に手をやって照れるエヴリン。仲いいなお前ら。
「それで、本題だ。いいか。お前はミランダに踊らされている。まずフェアになるために教えといてやる。あのゴリラ野郎に殺されたのはお前の妻じゃねえ。ミランダだ」
「なんだと!?」
『ゴリラ野郎ってクリスのこと?』
ハイゼンベルクから語られた驚愕の言葉に、開いた口が塞がらない。だがあれは、確かにミアだった。いつも通りに会話して、いつも通りに過ごして…なのに、あれはミランダだったって?
「奴はいくつも持つ能力の一つでどんな姿にでも擬態できる。ローズを誘拐するためにミア・ウィンターズと成り代わっていたわけだ」
『なるほど…だからあの時のミアはどこか違和感があったんだ』
「待て…なら、本物のミアは何処だ?」
「俺も知らない。殺されているか監禁されているか…後者だといいな?それで、ゴリラ野郎はミランダの馬鹿が死体にも擬態できるって知らなかったんだろうな。殺し損ねて…ミランダは目論見通りローズを手に入れて、お前も巻き込まれた。ミランダの新しい家族にふさわしいと見込まれてな。あの…図体のデカいクソ女に、ブサイクなサイコ人形…ウスノロの怪物。そして最後にこの俺でめでたく入れ替えだ。わからねえか?試されてんだよ、ミランダの家族になる資格があるかどうか」
これまでの死闘は全て、あの女に仕組まれていたって言うのか。冗談じゃないぞ!
『私を差し置いてイーサンを家族にとか許せないなあ』
「俺がアイツの家族に、だと?俺はそんなものになるつもりはないぞ」
「ああそうだ。俺だってそうだがこのザマだ!ミランダは正気じゃねえ!この村の…俺も含めた化け物は全部アイツが生み出した!イカれた特異菌の実験場だ!」
「特異菌って…」
『やっぱり、私と同類だったんだ』
エヴリンの言葉に頷く。やはり気のせいじゃなかった。エヴリンとルーツを同じにしているのがあのカドゥなんだろう。
「知ってるか?村人のほとんどにはカドゥが埋め込まれている。全員が実験体さ!何時だって変異させ、殺せる。ローズを手に入れて用済みになった村人共にライカンを嗾けて殺したのもミランダさ。ドミトレスクも一枚噛んでたっけかな?」
「じゃあ、エレナも…」
「そいつが誰かは知らねえがどっちにしろミランダに傅くだけで死ぬ運命だったんだ。気にするな。それよりも今は、どうミランダを殺すかだ。ミランダはローズを奪いにあの聖杯の場所へ必ず来る。そこが狙い目だ」
『ローズを囮にするってこと!?』
「お前、それは聞いてないぞ!?お前が必要だって言うからあの聖杯とかいう台座に…」
「なに。取られる前に動いちまえばいい。俺だってミランダにローズを取られるつもりはねえ。そもそも、俺も欲しかったしな」
「なんだって?」
「あの餓鬼は…おっと、失礼。ローズはヤベえ力を持ってる。ミランダもビビるくらいの……いい加減にしろよ!何度言わせんだ!?」
また下からシュツルムとやらの爆音が響いてきたのでハッチに向けて怒鳴るハイゼンベルクに、エヴリンと顔を見合わせて笑う。…なんというか、今までの奴に比べて人間臭い奴だな。
「おいおい、笑うなよ。それでな、本当はローズの力を使ってミランダを倒そうと思っていたんだが…気が変わった」
「そりゃよかった。ローズを人殺しの道具にする気ならここでお前を撃っていたところだ」
『ローズをバラバラにした張本人からそんなこと言われたら容赦しないよ』
「やめとけ。俺には当たらねえ。そうさお前だよ、イーサン。そしてエヴリン。お前たちの力に俺は希望を見出した。俺と組まねえか?俺の工場で作ったミランダの支配を受けない機械兵団と、ミランダからもらったこの異形の力。それにお前たちの力が合わされば無敵だ!ミランダを倒せばローズを元に戻してお前に返してやる。どうだ、悪い話じゃないだろう?俺達から何もかも奪いやがったミランダを一緒にぶち殺そうぜ!」
そう提案するハイゼンベルクに、俺とエヴリンは顔を再度見合わせる。…断る理由が無くなったな。ローズの力とやらを利用する気なら断固反対したが、ハイゼンベルクが今求めているのは俺達の力だ。悪くない提案だ、そうだろう?エヴリン。
『私は賛成、かな。マザーナントカに勝てる保証もないし、マダオが本当にローズを元に戻してくれるって言うなら』
「そうだな。その提案、乗ったぞハイゼンベルク」
「そいつはいい!最高だ!これからよろしく頼むぜ、相棒。そして嬢ちゃん」
ハイゼンベルクの差し出した手を力強く握る。奇妙な共闘戦線。以前戦ったエヴリンもそうだが、俺は敵だった奴と手を組む運命にあるらしい。ローズを救えるなら悪くはない、そう思った。
本来クリスがする説明を全部言っちゃうハイゼンベルクさん。ミランダに勝てそうな戦力見つかってご機嫌です。手を組むなら情報開示は大事よね。
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