BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回は詰め込みまっせ。楽しんでいただけたら幸いです。
空中で体育座りして蹲り、くるくる回る私を見つめる五つの影があった。帽子を被ったでかい影。人形を持った小柄な影。ずんぐりとした人間とは思えない影。ハンマーを担いだシルエットだけでカッコイイ影。六枚の翼を有している知らなければ天使と間違えるかもしれない神々しい影。それは私にしか見えない、私の弱い心を菌根が形にした影だった。
―――――「一人じゃ何もできない子供のくせに、あの男と同じことができると思ったのかしら?」
うるさい。私だって、イーサンの娘でローズの姉だ。私にだって、何か変えられるはずなんだ。
―――――「ヴェェエエエエイ!ザマァ!……って言いたいところだけど、あんまり哀れすぎて同情するぜ」「過去に囚われた私達にはなにも変えられないわ」
やめて。同情はやめて。私はお前たちとは違う。あの滝の傍の屋敷に囚われてままごとをしていたお前たちとは。
―――――「お前も俺様と同じだ!親がいないと、泣き叫ぶことしかできない!」
違う。同じじゃない、お前と同じなわけがない。私は、私……は……。
―――――「もう諦めちまえ。そっちの方が楽だぜ」
やだ。マダオも、カールも諦めないで自由になったんだ。プサイちゃんとも約束したんだ、諦めないって。
―――――「足掻いても無駄だ。お前はあの男ではない。奇跡は起こせない。そういう意味では、私の娘だな」
うざい。今更母親面するな。私の親はイーサンとミアだ。お前じゃない。……だけど、だけど。100年以上もかけて、成し遂げられない悲願と同じと言われたら……否定、できない。
「「「「「「お前には無理だ」」」」」」
四貴族と聖母全員の声が重なり、ずしっとのしかかってくる。あの時。脱線した瞬間。私はこの時間軸でアネットを倒すことを諦めた。また、やり直そうとした。でもできなかった。まるでゲームでコンティニュー回数を使い切ったかのように、うんともすんとも言わなかった。そこで思い出す。368巡目、つまり今回。最後のコンティニューの際、頭の中で響く声がバグっていたことを。そして察する。少なくとも今の私に、コンティニューは使えないのだと。もしかしたらもう二度と使えないかもしれない。
『ごめんなさい、ごめんなさい……』
救えなかったことの懺悔。すぐに、アリサたちの力を借りようとしなかった私の思い至らなさへの懺悔。クイーンたちを救えない私の不甲斐なさへの懺悔。強大な敵を生み出しといて何もできないことへの懺悔。プサイちゃんに約束は守れそうにない、という懺悔。謝ることしかできない。意味がないとわかっていても、謝ることしかできないんだ。
「あなたのせいじゃないわ、エヴリン。やり直したから敵が強くなるなんてそんな証拠何処にもない」
列車に轢きつぶされて四肢を潰され、じわじわと再生中で動けないリサがそんなことを言ってくる。リサだからこそ言えることなんだろうけど、私はそうは思わない。
『……モールデッド・エンプレスになった時に私と記憶を同化したなら知ってるでしょ?戦うたびに強くなっていた。アネットだけじゃない、みんな!みんな!……モリグナだって、最初はリサを取り込めるだけの強さはなかった!あなたが死にかけたのは、私のせいで……こうなったのも、私の……』
「……それは違う。きっと違う。ボタンの掛け違いみたいな些細なことが違うだけで、大きく変わってしまうだけ。私が死にかけたのも我儘を貫き通したからよ。貴女のせいじゃない。貴女はできることを全力でやった、だから謝ることはないわ」
そうなのかもしれない。私のせいじゃないのかもしれない。だけど、だけど…!
『でも、アリサも、ジルも、ガンマちゃんも、カルロスも、ダリオも、ミハイルも、ニコライも……みんな、みんな死んじゃった。もうやりなおせない、取り戻せない!もうどうしようも……』
あの脱線して吹き飛んだ列車が爆発、炎上する光景がフラッシュバックする。いくらしぶといアリサでも、間違いなく木っ端微塵に吹き飛んでいるだろう爆発だった。モールデッド・エンプレスになってた影響で受けた余波だけで少しの間意識を失ってたのだ。爆心地にいたみんなは……考えたくもなかった。
「……さすがに市民はどうしようもないとは思うけど、アリサたちがそう簡単に死ぬと思う?」
『はえ?』
リサの言葉に、呆ける。……それは、それは…………いや、でもさ?あの爆発は死ぬよ?やばいよ?あの村消滅させた爆弾ほどとは言わないけどさ。爆発って普通死ぬんだよ?
「まだ生死を確認してないし、死んでるって思うより生きてるって信じる方が建設的じゃないかしら」
『いや、でも…………そうかなあ。そう、かなあ……』
涙が出てくる。もしも、もしも生きてるんだとしたら……信じたい、な。そう、涙をぬぐった時だった。
「すたぁず……」
「『!』」
聞き覚えしかない声が聞こえて、私とリサの顔が引きつる。リサは首だけ動かして、私は体ごとその声の聞こえた方を向いて、絶句する。そこには、随分少なくなったものの黒い羽毛に包まれた大男が、立っていた。
『嘘でしょ……まだ生きてたの、モリグナ!?』
「スタァアアアズ…!あの程度で、死んでたまるか……!」
そうは言いつつ見てわかるぐらい満身創痍だ。アリサのぶん投げたチャーリーくんはしっかり効いてたらしいが待ってほしい。今リサは四肢が潰れて再生途中なのだ。いくら満身創痍だろうが勝てるわけがない。私は咄嗟右手で帝釈天の印を結び、前髪を左手でかき上げる。一か八かだ!
「リサに手は出させない!偽・領域展開!なんちゃってむりょーくーしょ!』
ハンターπはハンターΩ…オメガちゃんを基にした量産型Ha-RTである。そもそもHa-RTの姉妹はオメガちゃんとハンターΨ…プサイちゃんだけではない。失敗し名を与えられなかったHa-RTシリーズは実は結構多い。ハンターを生み出すノウハウと、アイザックスの得意とするクローン技術、そして再生・適応に特化したRT-ウイルスが組み合わさり生まれた奇跡の生物兵器。アイザックスは自我を始めとして言語能力や再生能力、ハンターと同じ遺伝子の量を犠牲にすることでリソースを割いてその量産を可能とした。そのため喋ることはできないし、オメガやプサイの様な鱗の防御力を持たない。しかしそれでも、一つだけオメガたちよりも優秀なところがあった。それは自我を持たないゆえの、“ためらいのなさ”だ。
「はあ!」
アリサの菌根で硬化した右腕と、ハンターπの右手の爪が激突し火花を散らして弾かれる。ここでオメガならば体勢を立て直すことを優先する、しかしハンターπにそれはない。愚直に、ひたすら愚直に。命令の遂行を優先する。
「……」
「ぐっ!?」
ハンターπが合理的な思考で選んだのは、ごり押し。アリサがあくまで背後のダニエルを狙ってることをいいことに、人間と大差ない左手の指を尋常ではない怪力によりアリサの腹部にめり込ませ、大きく抉っていく。
「はなして!」
「……」
ホットダガーを引き抜いてハンターπの背中に突き刺すアリサだったが、ハンターπは痛覚すらないのかフードの下の顔を一切歪ませることなく指を沈み込ませる。
「があああああああっ!?」
そしてゴキッと、鳴ってはならない音が鳴り響く。背骨の一部を無理矢理引っこ抜いたのだ。尋常ならざる激痛に絶叫を上げ、崩れ落ちるアリサ。その手から、血まみれの左手でホットダガーを手に取るハンターπ。そして躊躇なく、アリサの背中に何度も何度も突き立てる。
「覚悟しなさい、ダニエル!」
「隊長たちの仇だ!」
一方、アリサがハンターπを引き受けたのでダニエルを狙っていたジルとカルロスだったが、ダニエルは射線をハンターπと戦っているアリサと被らせるように動いて銃撃を阻害し、ならばとナイフを手に接近戦を仕掛けていたものの、電撃を帯びた警棒…スタンロッドを手にしたダニエルにジルのナイフを叩き落とされ殴りつけられ、カルロスが応戦するも打ち合えば電撃が襲い、二対一なのに逆に追い詰められてしまっていた。
「いいのか?仲間がピンチだぞ?」
「アリサ!」
咄嗟に拳銃を引き抜くジルだったが、ダニエルに指摘されアリサの苦悶の声を聴いて、カルロスと共に振り向く。それが致命的な隙となった。
ピピピピッ!と電子音が鳴り響き再びダニエルに視線を向けると、背負っていた大型の銃の様な武器を構えていて。足元を見れば、赤い光を放つ大きな弾丸が突き刺さっていた。瞬間、爆発。ジルとカルロスは吹き飛ばされる。
「片付け屋をなめるなよ?」
自分の生み出した四貴族+聖母の幻影に苦しめられ、自分を責めるエヴリン。
30年地獄を味わっただけに達観しているリサ。
まだ生きてたしぶといモリグナ・ネメシス。
わりかし洒落にならない重傷を負うアリサ。
ためらいのなさを持つハンターπ。
用意周到な武器を扱うダニエル。
多分二話ぐらいに分けられる内容があってちょっと詰め込み過ぎた気がするけど反省はしない。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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