BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。小説情報からUAを確認して一喜一憂するのが日課なんですが、前回を投稿する直前からたくさん読んでくれてるな…と思ってたら、日刊ランキング25位に入ってました。ありがとうございます!

今回はエヴリンの秘策発動。楽しんでいただけたら幸いです。


file3:32【モールデッド・シュタール】

 ずっと、頭の中に声が響いていた。声にならない、だけど決して抗うことのできない命令の様な声。心臓の代わりに鳴り響くキンキンとうるさい金切り声。そんな二つの声に、悩み苦しまされていた。

 

 水面の見えない深い深い水底をもがいているような感覚だった。自由に息継ぎできない、水の重さに囚われてただもがくしかない感覚。抗えない、逃げられない。ただ導かれるままに、終わりの見えない水中を上がり続けるしかなかった、そんな感覚だった。

 

 ついには胸にぽっかり空けられた大穴に得体のしれない何かが巣食い、体の自由すら奪われて、勝手に身体を動かされて水底に閉じ込められたような感覚に陥った。声すら奪われて、助けを求めることもできない。操り人形として自分の意志もないままに支配され続けるしかないと思った。

 

 

 そんなとき、苦しみがいきなり消えた。何かに引きずり込まれる感覚はあったと思う。そして暗闇で先が見えないはずだった水面に月光が差した。水中に沈んでいく己の大きな手に、小さな手が差し伸べられた。その持ち主は、聖母の様な優しい笑みを浮かべていて、いとも容易く、永遠に続くと思われた苦しいだけの水底から引っ張り上げてくれたのだ。

 

 

 もう命令なんて聞かなくていい。自由だと、そう言ってもらえて。困った。本当に困った。己は命令なしで生きることを知らないのだ。だがあんな苦しみに戻るのはごめんだ。ならば、答えは1つだ。決して返せない恩がある。この人のために生きよう。あなたに忠誠を誓おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………力を貸して、カール・ハイゼンベルクッ…!』

 

 

 右手で拳を握るエヴリン。その拳に握られた見えない鎖を引っ張るように動かして、菌根の記憶をこじ開ける。見えない鎖で手繰り寄せるように引き出したのは、ローズの傍にいるはずの本物とは違う、怪しげな工場長の記憶、その残滓(レムナンツ)。ただし、エヴリン本人もぶっつけ本番で始めてやるから何が起こるかわからない。そしてそれは、最悪の形で現れた。

 

 

『っ、あぁあああああっ!?頭が、痛い……』

 

「エヴリン?」

 

 

 存在しないはずの脳が熱を持ち焼かれるように痛む感覚に、脂汗を垂れ流し目を見開くエヴリン。全身にバグったようにノイズが走り、その姿が……正確には服装が書き換わっていく。その様子が目に入り目を見開くアリサ。

 

 

『ああ、なんだ…?何が起きている…?』

 

 

 目元に丸いサングラスを掛けて、首には吊りはかりとペンダント、ドッグタグをかけて、黒いソフトハットとオリーブ色のロングコートを着用した姿に変わったエヴリンは、痛む頭を帽子越しに押さえながら、サングラスの下の眼を見開く。そして目の前で暴れ狂うグレイブディガー・ヒュドラに視線を向けるとにやりと嘲笑を浮かべた。

 

 

『これはこれは…面白え。ミランダが見たら喜びそうだ……いいぜ!全員が楽しめるショーを見せてやる!』

 

 

 両手を広げて、そう宣言するエヴリンに、彼女を知覚できるすべての存在が惹きつけられる。アリサが、リサが、ネメシスが、リヒトが、グラが、ヨナが、オメガちゃんが、そしてグレイブディガー・ヒュドラまでもがその一挙手一投足にまで注目する。無視したら死ぬ、そう思わせるだけの生物としての格の違いが、今のエヴリンから醸し出されていた。

 

 

『だがそれを始めるには肉体が必要だ!俺の電圧に耐えられる肉体がな!』

 

「ど、どうしちゃったのエヴリン……」

 

『お前じゃダメだ!タフだが電気に慣れてねえ!』

 

 

 動きが止まったグレイブディガーに困惑しながらも、豹変したエヴリンを心配するアリサの言葉を一蹴し、エヴリンは踊るように空を舞い、次々と自分が見えるリサ、リヒト、グラ、ヨナ、ガンマちゃんと見繕っていく。

 

 

『お前も駄目だな。電気の檻で閉じ込められてたんだろう?』

 

「は?」

 

『お前たちは論外だな。電気に弱すぎる』

 

「マザー…?」

 

「電気はやめてほしいのだ……」

 

「喧嘩売ってるのなら買うけど」

 

『お前は……電気無効にしちまいそうだから、駄目だ』

 

「なにがー?」

 

 

 そして、まるで子供の様に楽しげに値踏みするかの如く向けられていた視線が、一人に向けられる。リヒトの上で困惑しているネメシスだった。

 

 

「スタァズ?」

 

『そうだ、お前だ。お前の肉体なら耐えられる!俺を受け入れろネメシス!』

 

 

 ネメシスは、エヴリンに絶大な恩義を感じている。それこそ自分の生殺与奪の権利さえ差し出す覚悟を。エヴリン(?)に求められて、その身を差し出さない理由はなかった。

 

 

「え……わあ!?」

 

「『フハハハハハハハハアッ!』」

 

 

 エヴリンとネメシスが重なったかと思うと、水底に沈んでいた残骸が浮かび上がってきてその上にネメシスは飛び乗り、高笑いと共にリヒトを持ち上げて岸までぶん投げたかと思うとネメシスが身体を中心に放電が発生。サーキュラー川に浸かっているグレイブディガー・ヒュドラを問答無用で感電させると途轍もない磁力が発生。鉄の残骸がネメシスに集束して、鋼鉄の鎧を作り上げていきネメシスを覆うように溢れた菌根が内側で強固に固めている。

 

 

「『3(スリー)2(ツー)1(ワン)……ショータイム!!』」

 

 

 そしてグレイブディガー・ヒュドラの腕を形成しているグレイブディガー一匹の上に飛び乗ったのは、鋼鉄の戦士だった。ゾルダート・パンツァーに酷似しているが、モールデッドの特徴である黒カビが内側に敷き詰められておりゾルダート化したモールデッドを思わせる。

 

 

「『名づけるならモールデッド・シュタール。少々物足りないが完成だ。さあ、この鋼鉄の肉体にひざまずけ!』」

 

 

 残骸を空中に浮かばせ、それを足場にしてトンットンットンッと重量を感じさせない足取りで空中を駆け抜け、タイヤの外れたホイールに尖った鉄片をくっつけ作り上げたドリルにした右腕を、グレイブディガー・ヒュドラの胴体に叩き込む。

 

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼」

 

 

 しかし放電のショックから立ち直ったグレイブディガー・ヒュドラはびくともせず、右腕の五匹のグレイブディガーを叩きつけ、モールデッド・シュタールは足場の残骸を蹴って回避、別の残骸に飛び乗ると宙返り。今度は鉄の残骸で巨大なハンマーを作り上げると直接グレイブディガー・ヒュドラの側頭部を殴りつけ、ぐらりとその巨体が揺れた。

 

 

「『ハッハアア!これ最高だろ!?』」

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼」

 

 

 初めて表情を歪めて怒りを見せたグレイブディガー・ヒュドラが両腕と背中のグレイブディガー14匹を、前後左右上下、全方向からモールデッド・シュタールに叩き込み、鉄の残骸が飛び散った。

 

 

「『その程度か?デカブツ』」

 

 

しかし、シュポンッという音と共に鎧の磁力を反発させて空に打ちあがった、むき出しの歯と潰れた片目が特徴の漆黒の大男……モールデッド・ネメシスは再度鉄の残骸を集めてモールデッド・シュタールに戻ると急降下。右手の先端に取り付けたタイヤのホイールを利用した回転する鉄拳をグレイブディガー・ヒュドラの顎に叩き込んだ。

 

 

「『狙いは良かったが、ダメだ』」

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼」

 

 

 ぐらりと揺れて、サーキュラー川に倒れ込むグレイブディガー・ヒュドラ。むかつくと言わんばかりに頬を膨らませると、グレイブディガー14匹すべてをサーキュラー川に突っ込み、水を取り込んで嘴状に先端を変形させる。しかしモールデッド・シュタールはまるで気にせず人差し指を立てて挑発する。

 

 

「『さあ撃ってこい』」

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼」

 

 

 水流レーザーが14門が一斉に放出される。しかしモールデッド・シュタールは再度放電。円形に放出された電撃がバリアの様な役割を持ち、水流をすべて弾いていく。菌根でネメシスの体内に再現した発電器官から発生させた電気だった。

 

 

「……すごい」

 

《「ヘリが引き込まれないように操縦するだけで精一杯だ!」》

 

「でも、エヴリンだけどエヴリンじゃない」

 

「…マザー」

 

 

 そんな神話と見紛う戦いを、見ていることしかできないジル達。特にエヴリンと付き合いの長いアリサは鋼鉄の鎧の下で脂汗をにじませているエヴリンの姿を幻視する。

 

 

「……大丈夫、だよね?エヴリン……」




記憶を引き出して無理矢理使うという無茶をぶっつけ本番で使った結果、ハイゼンベルクになってしまったエヴリン。エヴリンの声そのままでハイゼンベルクみたいに喋ってます。ハイゼンベルク本人ではないですし、エヴリンでもない状態です。近いのはプリズマ☆イリヤの夢幻召喚かな?ただ無償ではないようで…?

ネメシスの身体を使っていつものモールデッド合体、にさらにハイゼンベルクの力を引き出したモールデッド・シュタール。名前はそのままドイツ語で鋼鉄という意味。電気を操り、磁力に変換して散々グレイブディガー・ヒュドラに破壊された鉄類の残骸を利用した形態。これまでのモールデッド形態にはない防御力と変幻自在の攻撃が持ち味。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

一番好きな3編オリジナルB.O.W.は?

  • ネメシス(完全武装)
  • グレイブディガー・ハスタ
  • モールデッド・エンプレス
  • モリグナ(本体)
  • ハンター・アーマード
  • モリグナ・ネメシス
  • ハンターy(ガンマちゃん)
  • ハンターπ
  • ネプチューン・ルスカ
  • ブラインドストーカー
  • ペイルキラー
  • グレイブディガー・ヒュドラ
  • モールデッド・シュタール(ネメシス)

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