BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はVSアルテの結末。楽しんでいただけたら幸いです。
目覚めたら、肉の中だった。なにを言っているかわからないだろうが私も何言ってるかわからん。ただヨーン・エキドナに締め上げられて、気を失ったかと思えば四方八方肉の中にいて、目の前には忌々しいリサ・トレヴァーの顔がある。ここは地獄か?
「いらっしゃーい」
肉と下半身が一体化しているらしい真珠色の短い髪を持つ子供は人懐っこい笑みを浮かべると、私の右腕を手に取ったかと思えば曲がらない方向に向けて折り曲げ始める。
「っ、ぐあああああああっ!?」
一瞬理解が及ばず、襲い掛かってきた激痛に悲鳴を上げるも一切躊躇を見せず、子供とは思えない剛力で完全に関節を砕かれ折り曲げられ、さらに肉壁に閉じ込められて自然と丸まっていた身体にも手をかけられる。この後、私がなにをされるのか理解してしまった。
「ま、まさか……やめっ」
「えいっ」
バキッボキッガキンゴキンメキッグシャッドガッ
およそ人体からは聞こえないと思っていた音が自分の身体から響き渡っていき、とんでもない激痛に意識が遠のいていく。ああ、私はここで終わるのか………
―――――「まだ現実が見えないのか?はっきり言うぞ。……シェリーは切り捨てろ、ウィリアム。お前の溺愛っぷりは知っているが、お前は家族だろうと冷酷に切り捨てられる人間だ。今優先すべきはお前の身柄を無事に外まで送り届けることだ」
親友に言われた言葉が走馬灯のように浮かぶ。ああそうだ、長い時間を共に過ごしたパートナーすら、死にかけたらすぐに切り捨てG-ウイルスの実験台にした。親友であるアルバートだって、平気で見捨てるだろうクズだ。だがシェリーは、そんな私に愛を教えてくれた大事な一人娘なんだ。切り捨てることなど、選択肢にすら上がらない。
―――――「…ふっ、お前はとんだエゴイストだな。自分の妻にとどめを刺した人間の言葉とは思えん。矛盾しているとは思わないのか?」
思うさ。だがシェリーのことは理由も外聞もなく、ただひたすらに愛していたんだ。およそ人の尊厳を無視した肉塊に変えられながらも、思い浮かぶのは愛娘の安否だけだった。同時に思い浮かぶのは、シェリーが心底楽しそうな笑みを浮かべながら語ったベビーシッター二人のことだった。ああ、わかっていた。わかっていたさ。家族の時間より研究を優先した私たちよりも、彼女たちと一緒に過ごす時間の方がシェリーは望んでいたことは。嫉妬しなかったかと言えば嘘になる。だがどうしようもなく、シェリーの心が私たちより乖離してしまったのは理解していた。
「―――――ああ、シェリー。どうか、幸せに……」
あの二人なら、シェリーを守ってくれる。そんな確信と安堵を胸に、私は意識を手放した。
「ウィリアムを返してもらおうか…!」
「残念だけど、そうはいかないわ!」
ウィリアムを咀嚼しもぐもぐと口を動かすガンマちゃんを狙って両手首から放つ触手で貫こうとしたアルテの攻撃を、ヘカトちゃんがガンマちゃんを守るように、リヒト、ヨナ、グラも包み込んだムカデ腕を防壁の様に展開して防御。ムカデ腕の陰から飛び出したリヒトが両手の爪を振り回して突撃。アルテは触手を手首に戻すとバックステップで回避していく。その直後、人体からは聞こえない擬音が響いてウィリアムの生存は絶望的だと察する。
「逃がさないのだ!」
接近戦を仕掛けたリヒトから逃れたアルテを、グラが口をもごもごさせて放った抜けた牙の連射が襲い掛かる。リヒトも横に飛びのいて回避した、飛んでくる牙の弾幕を最初は高速移動で避けていたアルテだったが、なにかに気付くと高速移動するのをやめて静止。右手だけを高速で動かして牙の弾幕をすべて掌で受け止めていき、グラは様子がおかしいと気付いて攻撃を止める。
「効いてないのだ…?」
「……ただの牙なら避ける必要もないと言うことだ。ウィリアムの事は残念だが、死んだものは仕方ない。……この身体の有効活用法の実験に付き合ってもらうぞ」
そう言ったアルテが逆さにしてゆっくりと拳を開いた右手から、ポロポロと大量の牙が零れ落ちる。その隙を突いてリヒトが噛みつきを仕掛けるも、裏拳を顎に叩き込まれてひっくり返る。ヘカトちゃんに守ってもらって再生していたヨナはそのことに戦慄する。その様子をサングラスの下で眺めていたアルテは嘲笑する。
「ヨーン・エキドナ。アイザックスからの報告で知っているぞ。リサ・トレヴァーの存在に怯えて逃げ隠れていた臆病者。聡いな。決して敵わぬ者の前には決して出てこない。利口だ。最もRT-ウイルスの恩恵を受けていると言ってもいいだろう。力の差がわからないほどの愚か者でもないだろう?私の下につけば見逃してやらんでもないぞ」
「……それは死んでもごめんね。貴女みたいな胡散臭い奴の下についたらいつ切り捨てられるかわかったもんじゃない。私は私自身を求めてくれる人の、エヴリンの望むとおりに生きる!グラ、続けて!」
「え、でも……」
「私が何とかするから!私、お姉ちゃんだもの」
牙の連射を続けることを命じるヨナに二度見するグラだったが、ヨナの真剣な顔を見て頷き、それに反応したアルテが伸ばしてきた触手を、目ざとく気付いたヘカトちゃんがムカデ腕で防いでくれるのを尻目に大きく息を吸い込んで、肺活量のままに牙を再び乱射する。リヒトもそれに合わせて立ちあがり、爪を振るう。
「くらえぇえええええええっ!」
「うおおおおおっ!」
「愚か者どもが。無駄だ!」
アルテはその場で軽く跳躍しながら一回転。回し蹴りでリヒトの顎に足先を叩き込んで脳震盪を起こしつつ乱射される牙を両手で受け止め、弾込めの隙を突いて投げ返して攻撃するアルテ。牙のショットガンの様なそれはヘカトちゃんでも防ぎきれず、ヘカトちゃんとグラとヨナと、ウィリアムを食べ終わったガンマちゃんは切り傷を負ってダメージを負う。それでも負けじと牙を乱射するグラ。全てはヨナを信じての必死の行動だった。
「自分でものを考えられん低能の動物が人間の知能を得たところでこの程度か……む、うっ?」
リヒトを踏みつけながら牙を受け止め続けていたアルテ。そろそろ高速移動で全員仕留めるか、と考えていたところで違和感を感じた瞬間、気怠さと共に身体が重くなる。なにが、と違和感を感じた右肩を見る。そこには、鮫の牙とは明らかに違う湾曲した牙が突き刺さっていた。そして気怠さの正体に気付く。ただの人間では動くことすらままならないほどの猛毒だった。
「グラの牙に紛れて私の牙を投げたのよ。ただの牙だと思って全部受け止めていたのが仇になったわね」
そう言いながら、ゼーハーと肩で息をするグラをヘカトちゃんとガンマちゃんに押し付けつつ、牙の折れた口で笑みを浮かべながら姿勢を低くして高速で蛇行して迫るヨナ。アルテは重い体に鞭打って、リヒトを踏みつけていた右足を振り上げる。ネリチャギだ。近づいた瞬間に頭部を踏み潰して仕留める、そう言う魂胆だった。しかしネリチャギが炸裂する瞬間、左足が引っ張られて体勢が崩れる。根性で持ち直したリヒトだった。
「危なかった、助かったわリヒト!」
「やってくれ、姉さん!」
右手で拳を握りしめた上半身を天井近くまで持ち上げ、急降下するヨナ。この場で唯一、エヴリンと融合した記憶を持つヨナだからこそ芽生えた使命感。姉としての責務を全うすること。
「全力でお姉ちゃんを遂行する!」
そうして握りしめた右の拳が、体勢が崩れて宙を舞っていたアルテの顔面に突き刺さり、サングラスを叩き割りながらコンクリートの床に叩きつける。
「蠍女に自慢できるわね」
蜘蛛の巣状の罅が入った床に倒れ気を失ったアルテを見下ろし、ヨナは笑った。
今回のタイトルはダブルネーミング。ウィリアムからクイーンとアリサに受け継がれたシェリー、と、姉の生き様を受け継いだヨナ、という意味でした。7編やローズ編ではエヴリンがそうだったお姉ちゃんの意地(生まれた順ではヘカトちゃんがダントツお姉ちゃん)
悪魔にも人の心はちょっとだけ残ってた。だけど容赦ないガンマちゃんの必殺攻撃に脱落。アルテからも「まあしょうがない」とあまり気にされてないっていう。ウィリアムの身柄が目的だったけど、覚醒したアルテの能力があるから問題なくなりました。
そして四人の連携でアルテに勝利したヨナ達。セルケトは本当にこの場にいなかったことを後悔してそう。まさかアルテがいる本命だと思ってたアンブレラヨーロッパ支部にいないとは思わなんだからしょうがないね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
一番好きな3編オリジナルB.O.W.は?
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