BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
人の心を失った人間と、人の心を得た怪物の終幕。楽しんでいただけたら幸いです。
「ダメ!クイーン!」
「なにを!クイーン殿!?」
連結器を外し、粘液で出入り口を閉じ進んでいく列車から、アリサとプサイの悲痛な叫び声が聞こえてくる。傍にい続けるエヴリンは……まあこいつは死ぬことはないだろう。死ぬのは私一人で十分だ。
「一人じゃ寂しいだろ?……最期の勝負だ、アネット。
「シェエエエエエエリィイイイイイイイイッ!!!!」
『クイーン……まさか』
エヴリンの泣きそうな声に笑いながら、前を見る。その巨大な四つの腕で車両に掴まり落ちそうになっているアネットがいた。アネットがどうしてこうなったのかは、エヴリンから共有された何巡目だかの記憶で見た。アンブレラを見限り逃げようとしたバーキン夫妻。U.S.S.の襲撃。ウェスカーが乱入し、アネットだけ凶弾を受けて致命傷を負ったこと。人の心を持たないウィリアムがもったいないという理由でG-ウイルスを投与したこと。怪物になり果てても心残りのシェリーを保護しようと、シェリーを誘拐したと思い込んだ私を狙っていたこと。究極の生物、と自惚れるようになったのは理解できないが……まあそう言う気質だったんだろう。そんなアネットの変わり果てた姿に、私はもう憐れみを向けるしかない。
「そういえば腹を割って話したことはなかったな、アネット。私はクイーン・サマーズ。エヴリンの共犯者で、アリサの相棒で、シェリーの育ての親。S.T.A.R.S.の一人である元警察官だが、人間ですらないヒルの塊。それが私だ」
「シェエエエエエエリィイイイイイイイイッ!!!!」
咆哮を上げながら巨腕の一つで薙ぎ払ってくるアネットの攻撃を、背後に粘液糸を飛ばして移動することで回避。粘液糸を次々と飛ばし、壁とアネットの巨腕を次々と繋ぎ留めて動きを制限させていき、跳躍。上から斜めに斬り裂くようにホットダガーを振るい、アネットの身体を炎上させるも、全身の眼から噴き出した体液の勢いで炎を消されてしまう。ホットダガーは完全に攻略されてるか。
「ああそうだ。お前と違って本来なら人権すらない。エヴリンが作った偽の戸籍でしか私は人権を得られない。今のお前に人権があるのかは
「シェリィイイイイイイイイッ!!!!」
「……まあ駄目もとだったがこれですむならこうなってないか」
宙返りで穿血を避け、粘液糸を飛ばして中央の人型の右手にくっつけ引っ張ることで合掌させないようにしながらミドルキックを腹部に叩き込む。ブシャッ!と体液を散らしながら複数の眼の一部が潰れる。再生していくその悍ましさは、元人間とは到底思えない。
「―――――こうなったのは私の責任だ」
『クイーン、いきなりなにを?』
言いながら、突き出してきた巨腕の拳の上に手をやって逆立ちして舞い上がり、天井に張り付いて量手からの粘液糸で上巨腕をX字に交差させて拘束させることで動きを止めながら、私は胸中に抱いていた本音を暴露する。別に倒さなくていい、スピードが完全に落ちて停車した後部車両にこいつを押しとどめさせておけば私の勝ちだ。
「私には大罪がある。始祖ウイルスを我が身に取り込み、T-ウイルスとして世に出してしまった罪が。RT-ウイルスも、G-ウイルスも……元を辿れば私が誕生の原因だ」
ジェームス・マーカスから投与された始祖ウイルスを取り込んだ私から生まれたウイルスから、T-ウイルスが作られ、それがリサやアリサに投与されることでRT-ウイルスが、G-ウイルスが生まれ………そしてこの大規模バイオハザードを引き起こした。この街を守る警官?笑わせる。この街を滅ぼしたのは、この私だ。
『でもそれは、マーカスが……ウェスカーが、バーキンが……アイザックスが!』
「そうかもしれない。だけど、私から生まれた事実は変わらないんだよ。お前も同じだろ?エヴリン」
『うぐっ……それは、そうかもだけど……』
エヴリンが、自分が過去に来たせいで運命がねじ曲がって苦悩していたことは共有した記憶から伝わった。苦悩したのがお前だけだと思っていたのか?言っただろう、エヴリン。私とお前は、共犯者だ。
『だからって……死んで責任を取ろうだなんて、無責任すぎるよ……』
「お前にだけは言われたくないな、エヴリン。ああ。お前と会っていなければこんなこと考えもせず、私はただアンブレラへの復讐をするだけで済んでいたのかもな」
エヴリンと出会わなかったら。この10年。そんな夢想をすることは一度や二度ではなかった。一番あり得るのは、マスターリーチの位置に私がいる状況だろう。何かを間違えれば私はああなっていたという確信はあるし、なんならアンブレラへの復讐だけを考えていた奴を羨ましくすら思ったこともある。そんなことを考えながら、下の巨腕で私を潰そうと合掌してきたのを、粘液を両刃の槍状に形成して、串刺しにすることで受け止める。そのまま粘液槍を粘液糸で繋げて天井に括り付ければ、六本腕すべて拘束完了だ。私はホットダガーを両手で構え、中央の人型の頭部に勢いよく突き刺した。
「シェエエエエエエリィイイイイイイイイッ!!!!」
「……だけどな。お前がいたから、私は生涯の相棒であるアリサと出会えた。敵の子でありながら愛おしいとすら思えたシェリーとも巡り合えた。クリスにレベッカ、ジルにバリー……ブラッド、ジョセフ、エンリコ、ケネス、リチャード、フォレスト、エドワード……S.T.A.R.S.やレオンにマービン……R.P.D.のみんなとも出会えた。似たような境遇のヘカト、オメガ、プサイ、ヨナ、グラ、リヒト、ガンマ、ネメシスと肩を並べることだってできたし、他にもビリーにクレア、ロバート……この10年で巡り合えた人間はたくさんいる」
しかし炎上しながらも、拘束している粘液糸を全身の眼から高速で射出した体液で弾き飛ばして、自由になったアネットが下の巨腕二本で身体を持ち上げながら上の巨腕二本を押し付けてきたのを、こちらは両手を床に押し付けて粘液の壁を作り上げて受け止め絡みつかせるが、力ずくで突き破ってきたそれに、身体を鷲掴みにされる。頭に突き刺さったままのホットダガーを中心に燃える傍から再生していくアネットに、イブリースを思い出した。
「ぐうっ、ううううっ!?」
『もういい、もういいよ!私が、なんとか止めるから……逃げてっ』
締め上げられる苦悶の声を上げる私を見て、エヴリンが指で掌印を結ぼうとしながら声が震えてるのを、感じた。エヴリンはアネットの存在がトラウマになっている。恐らく精神世界に引き込んで時間稼ぎをしようとしているのだろうが、そこでやられた傷は反映されるのを私は知っている。それを視線で止めながら、私は笑顔をエヴリンに向けた。
「ああ、エヴリン。礼を言わせてくれ。最高の人生だった。そうだ、私は“人”に、“クイーン・サマーズ”になれたんだ」
『クイーン……』
私の精一杯の感謝の言葉に、エヴリンはその場で立ち尽くした。そろそろか。私は、全身から粘液をにじませてドロドロにして、床まで滝の様に垂らしたそれで足場とアネットを固定する。鋼鉄より硬い粘度の粘液だ。もう、アネットは、ここから逃げられない。そして私の視界には、待ち望んでいた“瞬間”が迫っているのが確認できて、口角を上げる。
「もうすぐ9月も終わる。
「シェエエエエエエリィイイイイイイイイッ!!!!???」
煌々と光り輝く、炎がトンネルを飲み込みながら迫る。NESTの爆発がついにここまで届いたのだ。アネットを殺す唯一の方法、それは……爆発ですべてを纏めて吹き飛ばすしか、ない。だから誰か一人は、ここで奴を足止めする必要があった。なら死ぬのは、私しかいないだろう。
「エヴリン、アリサ………あとは、
神の名を与えられし究極の生物は、女王の覚悟の前にこうして潰える。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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