BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
VSゴルゴーン三姉妹戦その三。楽しんでいただけると幸いです。
高速でスイングし、高台の屋敷……アシュフォード私邸に移動することを提案したクイーン。しかし、ステンノーはそれを許さなかった。
「ござぁ~」
「モリアーティ!なにか策はないのか!」
「奴の六本腕はそれだけで範囲攻撃だ!まずはそれを封じる!私たちなら、それができる!」
体が麻痺して動けないプサイを抱えて、モリアーティと共に空を駆るクイーン。それを六つの眼で捉えたステンノーがその巨体を蛇の下半身で持ち上げ、身を乗り出して六本の腕で握ろうと伸ばしてきた。
「つかまえたぁああああっ!」
「プサイを頼む!」
クイーンはそれを見て、空中でモリアーティにプサイを投げ渡すとステンノーの伸ばしてきた右の三つの腕の周りをぐるりと回って粘液糸で縛り上げ、下に飛び降りながら引っ張ることで三本腕を一つに纏めて引きずりおろし、無理矢理ダウンさせる。
「あぁああああああ!?」
「そんな不安定な下半身じゃ踏ん張れないと思ったよ!」
「無茶をする……ふむ」
「え、なんでござるか?まっ、待つでござる!?拙者にその気は……あああああああああ!?」
クイーンの雄姿を、右手で糸を握りながら空中から眺めていたモリアーティ。何を思ったのか、左手で抱えているプサイを眺めると何を思ったのか、抵抗するのも気にせず首筋に噛みついた。
「動けないことをいいことに!エッチ!でござる!」
「…ぺっ。毒は吸い取ったぞ、これで動けるだろう」
「……へ?お?おおおおお?」
真剣な顔でモリアーティが吸いだした何かを吐き捨てて促すと、プサイは身動きができるようになった腕を見て感激する。蜘蛛の捕食方法……咀嚼ができないため消化液を放って獲物を溶かして啜ることで捕食する……を利用して、プサイの血液から毒を吸い出したのだ。器用である。
「馬鹿な……」
上空のモリアーティと抱えられたプサイを見上げ、絶句するメデューサ。まさか自分の必殺だったはずの唯一の取り得を簡単に攻略されて、唖然とするしかない。その横で、エウリュアレーとシータが殴り合いしていた。
「アッハハハハッ!やるじゃん蛇の癖に!」
「全身筋肉の蛇の拳を喰らって笑ってんじゃないわよ!」
「アハハ!蛇が拳とか矛盾過ぎて笑える!」
蛇であるために全身筋肉であり、自在に動く尻尾と鉄壁の防御力を持つ鱗を有するエウリュアレーと、無痛覚と再生能力を持つシータの殴り合いは千日手と言えるほど相手にまるで効果がなかった。殴り、蹴り、引っ掻き、尻尾で打ち、突き刺し、それでも両者にダメージは見られない。傍にいるスウィーパーは本能のまま危険すぎる対決から逃げている。その横に、ステンノーの蛇の下半身の巨体が薙ぎ払ってきて、シータはエウリュアレーとスウィーパーともども跳躍して回避した。
「小さいくせにちょこまかと…!」
「ステンノー!邪魔よ!そのでかい図体をどかしなさい!」
「うるさいわよエウリュアレー!アレクシア“様”の本性も知らないバカが姉に命令するな!」
エウリュアレーの文句に怒鳴り散らしながら、三本を縛り上げられた右腕で地面を支えて体勢を立て直しながら、次々と糸を飛ばして地べたを駆け抜けるクイーンに左の三本腕を叩き込むステンノー。
「…アレクシアの本性ってなんだ」
「おま、えなんかに言うわけないでしょ…!」」
しかしそれもぐるりと周りを回ったクイーンに縛られ、強みである六本腕を二本腕に封じられてしまい、モリアーティが投げつけたプサイが並外れた脚力で飛び蹴りを叩き込み、蹴り飛ばされ訓練所を破壊しながら倒れ込んでしまった。そのことにキレたステンノーは、尻尾の先端を握ると、力任せに引きちぎった。非常時に下半身をトカゲの尻尾みたいに自切する事が可能なのだ。
「なっ!?」
「ぶっ殺す!」
そのままちぎれた尻尾を鞭の様に振り回し、広範囲を薙ぎ払うステンノー。メデューサもそれに巻き込まれ、クイーンは全身を粘液で固めて吹き飛ばされた衝撃から身を守り、モリアーティも跳躍してきたプサイを回収して糸を巻き上げ空中に回避。しかし、空中に逃れたモリアーティとプサイを尻尾鞭が追撃。2人も薙ぎ払われてしまう。
「ちょっと、あたしが手伝ってるんだから負けないでよ!?」
「よそ見なんて余裕ね」
ステンノーの薙ぎ払いを跳躍して回避し訓練所に粉砕された壁から廊下に飛び移ったシータに、追いかけてきたエウリュアレーが頬まで裂けた口を開くとペッ!と液体を口から吐き出した。凝固剤だが、今度は量が違う。シータを丸ごと覆うほどの量の凝固剤が滝のような勢いで吐き出される。
「しまっ…!?」
まだ完全に固まっていない凝固剤で全身を固められてしまったシータ。こうなると不味い。まず、傷や欠損ではない上に一部だけなら斬り飛ばすという方法が使える再生能力でどうこうできるものじゃない。次に、顔を塞がれるとそもそも生物として必須な呼吸が封じられてしまい、酸素を取り込められず窒息してしまう。そのことに頭脳で気付いたシータは、まだ固まってないため両手で顔を覆う凝固剤だけでも引きはがそうとして、しかしそれは、エウリュアレーに手首を握られて止められてしまう。
「くっそ……」
「だめよ。そのまま固まって私の餌になりなさい」
そうして、完全に固まってしまったシータの腹部に胃液を垂らした牙で穴を開け、吸い付くことで体液を吸い取って捕食するエウリュアレー。しかし、そんな隙だらけのところに飛び込んできたのがステンノーの攻撃から復帰したモリアーティだった。背後では、クイーンとプサイにスウィーパーが加わってステンノーを翻弄していた。
「なっ…!?」
「そいつは気に喰わないが最高戦力だからな、返してもらうぞ」
ガシッ!と蜘蛛の脚でハグすることでエウリュアレーの腕ごと拘束。糸で巻き上げられた身体が舞い上がり、天高く持ち上げられて、急降下。パイルドライバーのような一撃で頭部を地面に叩きつけ、ダウンさせる。
「いつまで寝ている。ざこ」
そのまま頭の上に陣取り、口から吐き出した溶解液でシータの表皮を固めた凝固剤を溶かしていくモリアーティ。そもそもエウリュアレーの胃液で溶ける仕様なためか、あっさりと溶けて怒りに全身を震わせたシータが顔を出す。
「うがーっ!誰がざこだー!聞こえてるのよ、ざーこ!」
「油断して固められた方がざこだろ。命の恩人だぞ、敬え。ざーこ」
「ざーこ!ざーこ!」
「お前言い返せないからって語彙力なさすぎないか…?」
吠えるシータにモリアーティが呆れていると、モリアーティの身体がむんずと掴まれる。ステンノーだった。見れば既に尻尾は再生し、左手に尻尾鞭を持ったまま右手でモリアーティを掴んだらしい。
「生意気な奴は喰ってやるわ…!」
「ちい……!?」
「モリアーティ殿!」
プサイが飛び込むも既に遅く、ステンノーに丸呑みにされるモリアーティ。ステンノーは妹二人と違ってその巨体ゆえの丸呑みにして強力な胃酸で仕留めるのが強みだった。もともと嫌っていたモリアーティの安否を気にすることなく、何とか顔を出して女豹のポーズにも似た構えを取るエウリュアレーに、限界まで体勢を低くして飛び掛かる体勢となるシータ。
「……ふーん、なんとなくわかってきた。ざこね貴女」
「なにがかしら!固められといてよく言うわ…!」
瞬間、全身筋肉をバネにして飛び掛かるエウリュアレーの突撃を真正面から受け止め、がっつり組み合って無痛覚と再生力ならではの、筋繊維がちぎれることも厭わず全身の筋肉をフルに使った投げを敢行。しかし尻尾で支えてすぐに体勢を立て直すと首を伸ばして蛇の顔で肩口に噛みつき、上空に投げ飛ばしたところに尻尾を腹部に叩きつけてシータを地面に激突させるエウリュアレー。しかしシータは頭から血を流しつつも、不敵な笑みを隠さない。
「あー、真っ赤……でも、終わりよ」
「なに、が…!?」
エウリュアレーは眼を見開く。胴体に、シータの抜き手が突き刺さっていた。噛みついた際にカウンターを入れられたのだろう。そこまではいい。問題は、抜き手がポーチまで貫いていると言うことだった。中身の液体が、
「そんな……そん、な……!?」
「アハハハッ!ざーこ!」
更にシータは右腕を引き抜くとそのまま、腕が胃酸で溶けるのも構わず下腹部を貫き貫通させると一気に引き抜く。傷口から溢れだした胃酸が液体と混ざり合い、凝固剤となって狼狽えるエウリュアレーの胴体を固めてしまい、シータは容赦なく斬撃。エウリュアレーは胴体を両断され、固められたことにより再生することも叶わず、上下真っ二つにされて崩れ落ち、痙攣しながら虚空に手を伸ばす。
「あ、ぎっ、ぎぎっ……たすけて、アレクシアさまぁ……」
「自分も固まっちゃうなんて、貴方を作った人はとんだばかだったみたいね!ざーこ!」
口元に手を当てて嘲笑うシータに、エウリュアレーは蛇の顔を悔し気に歪ませ、その命を終えたのだった。
地味にMVPモリアーティ。尻尾をちぎる凶行を見せたステンノーに丸呑みにされる。活躍し過ぎてたからしょうがないね。
そして脱落、エウリュアレー。モリアーティという同じく強酸性の胃液を武器にする相性が悪すぎるのがいた挙句ステンノーには邪魔をされ、相手していたのが狂人のシータだったため敗北。少なくともクイーンとかならこんな戦法は取らないから本当に相手が悪すぎた。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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