BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
南極突入と言ってたけどイベント一つ素で忘れてました。今回は空での戦い。楽しんでいただけると幸いです。
「こいつが、アレクシア……じゃない?」
シータという犠牲を出したものの、アレクシアをウェスカーより前に攫って、アルフレッドの飛行機で脱出するという、おおよそ大勝利のはずだったが、私が飛行機に乗りスティーブの操縦で空に飛び立ったところでプサイから伝えられた言葉にそれは覆された。なんと、アレクシアが本物じゃないというのだ。しかもアルフレッドが用意した身代わりとかでもなく、アリサやプサイの様なクローンであり、本物は今でも南極で眠り続けているという。それで合点がいった。
「サクリファイスコヤンの素顔はそういう事だったか。あれはお前と同じクローンで作ったB.O.W.そうだな?」
「ええ、そうよ…」
「存外、素直だな。そっちが素か?まあいい」
カーゴルームでプサイとモリアーティを後ろに置きながらどっかりと腰を据えて座る。どこか落ち込んでいる様子のスウィーパーに手綱を握られ縛られて壁に寄りかかっているアレクシアの目をまっすぐ見る。そっぽを向かれた。
「どうした?抵抗しないのか?」
「お父様は貴方に縛られてあの爆発するロックフォート島に置き去りにされたのでしょう?お父様が死んだ以上、私に生きている価値なんてないわ……殺しなさい」
「復讐もしないのか?」
「何の力もない私があなた達に勝てるわけないもの……私はサクリファイスコヤンと違い“ベロニカ”の力を使えない失敗作よ」
「ベロニカ?」
アシュフォード家の始祖の力とは何のことだろう。サクリファイスコヤンが使えて、こいつが使えない力……サクリファイスコヤンといえばよくわからん燃える血が特徴だったか。まさかそれが…?
「モリアーティ、プサイ。こいつに利用価値はあると思うか?」
「難しいな。私の遺伝子の提供者でクイーンたちの敵だというアルテ・W・ミューラー……ウェスカーがこの事実をわかっているかどうかといったところか。本物のアレクシアだと思い込んでいるなら誘き寄せる餌になる。どっちにしろ此奴の頭脳は厄介だから殺してしまってもいいとは思うが」
「拙者は始末するのは反対でござるな。話が本当なら、こやつも拙者たちと同じアンブレラの被害者でござる。恐らくエヴリン殿も一考すると思うでござるよ」
「それもそうだな。もともとウェスカーの手から逃れるための策だったが、攻勢に打って出るのもありか」
「私は貴方たちの味方になる気なんてないわ。殺しなさい」
「いや、お前は償わないといけないはずだ。……何人殺した?」
「っ……」
頑ななアレクシアにそう尋ねると、口ごもる。そうだろうな、あの冷酷な態度はすべて演技で、本来は心優しい人間なのだろう。人がもとになっていないB.O.W.は純粋だ。人を疑うことを知らない。だからかつての私やガンマの様に、生みの親を妄信する。こいつもそうだろう。なら、償いのチャンスはあるはずだ。そう、説得しようしていた時だった。クレアとスティーブが慌てた様子でカーゴルームに入ってきた。
「クイーン!何かがおかしい!」
「自動操縦が勝手に起動して、南に進路を進めている!」
操縦はどうしたと聞こうとした質問が引っ込む。なんだって?どういうことだ?慌てて、プサイとモリアーティに見張りは任せてクレアとスティーブと共に操縦席に向かう。確かに、操縦桿が勝手に動いている。無理矢理飛行機の軌道を変えるしかないか。
「私が外に出て、無理矢理機首の角度を変えてみる。カーゴ―ルームのハッチを開けてくれ」
「そんな、危険よ!」
「待て。フロートに何かいる!くっついていやがる!」
「なんだって!?」
スティーブが指さした先、窓から見える飛行機のフロートに、人影が見えた。犬の顔の毛皮を被って顔こそ見えないが、黄金の毛皮に包まれた異様に長い四肢のあれは…!
「二人はここにいろ!」
カーゴルームに出ると、モリアーティとプサイが臨戦態勢で構えていて。無理矢理開いたのか開け放たれているハッチに、それはいた。
「みつけた……マガイモノ……!」
「サクリファイスコヤン…!」
「ちがう!わたしは、そんななまえ、じゃない!わたしは……アレクシア・アシュフォードだあああああ!」
壁にしがみついたスウィーパーに抱えられているアレクシア目掛けて、自ら右腕を裂いた爪から血液を飛び散らせて炎上させるサクリファイスコヤン。ハッチからの気流が荒れ狂い複雑な軌道を描く炎の渦を、プサイと黒い糸で武装したモリアーティが振り払う。同時に私は粘液糸を発射し、サクリファイスコヤンの胸元にくっつけると引き寄せ、蹴り飛ばすと外れた犬の毛皮が気流に乗って大空へ飛んでいった。
「グルルルッ…!」
「どうした?ケモノの様だぞ、サクリファイスコヤン!」
「うるさぁああああい!」
アレクシアと瓜二つの顔で獣の様に唸り、四つん這いでアレクシア目掛けて飛び掛かってくるサクリファイスコヤン。しかしそれは背を向けたモリアーティが張った蜘蛛糸の壁に阻まれ、横からプサイが飛び蹴り。壁に叩きつけられ、頭から流れる血も炎上させ炎の鬣を纏ったような姿で交差した手を勢い良く引いて両腕を同時に引き裂き、炎上して炎に包まれた両腕を振り回してくるサクリファイスコヤン。
「あついっ、あついぃいいいいっ!ウオオオオオッ!!」
毛皮まで炎上して火だるまの様な姿になって蜘蛛糸を焼き斬ろうとするサクリファイスコヤンをプサイが蹴り飛ばし、私が大量の粘液を振りかけて無理矢理鎮火させる。このまま炎上したら飛行機に燃え移って爆発する。そうなったら一巻の終わりだ。
「わたし、ベロニカのちから、ある!わたしが、ほんもの!そいつ、マガイモノ!おにいさまにも、みとめられた!わたしが、アレクシア!」
「お兄様が生きているの!?」
俯いていたものの、顔を上げるアレクシア。その瞳の煌めきが気に入らなかったのか、ガリッと嫌な音が響く。奴が牙で舌を噛んだらしい。だらだらと血が垂れていく中でサクリファイスコヤンは深呼吸。まずい。それに気づいた瞬間、私が粘液の壁を張りモリアーティが蜘蛛糸でそれを補強していた。
「ウォオオオオオオン!!!」
まるで火柱の様な火炎放射が吹き荒れ、粘液の壁が一瞬で蒸発。咄嗟に粘度全開にした己が身を盾にすることで、飛行機への飛び火を回避する。だが奴も口の中を大火傷したらしいし、何なら自分の出した炎に怯んでいる。炎を操れるが炎への耐性がない。そうか、犬か。奴の体の中の犬の遺伝子が炎に怯えているのか。……その能力と、肉体の性能が合っていない。再生こそしているが炎に怯んでしまってるため特に意味がない。皮肉すぎるだろう此奴の存在。
「わた、わたしが、いちばんつかいこなせる!」
「そう虚勢を張るなよワンちゃん。強い言葉を使うと弱く見えるぞ」
「ガウッ!」
挑発すると、わかりやすく炎を纏った両腕を振り回してこっちに攻撃してくるサクリファイスコヤンの胴体に粘液糸を繋げ、貨物の一つと繋げて逃げる。貨物の周りを一回転。そのまま貨物ごしに私に腕を振り下ろそうとしたサクリファイスコヤンを、プサイが蹴り飛ばす。ピンと伸びきった糸に繋がれたままよろめくサクリファイスコヤン。
「まだだ、まだわたしはまけていない……!」
「残念ながら、ダメだ」
レバーを入れる。固定されていた貨物のストッパーが外れて、張られた糸に従ってサクリファイスコヤンに引き寄せられていく。理解してしまったのだろう。その顔が、絶望に染まった。
「ギャウウウウウウウウッ!?」
ケダモノ染みた悲鳴を上げながら、貨物と共に夜空に投げ出され、吹き飛んでいくサクリファイスコヤンを見届ける。溜め息。
「……線引きは、難しいな……なあ、エヴリン」
アレクシアは殺さず、サクリファイスコヤンは殺す。自分勝手なエゴイストだ、エヴリンはこんな咎を背負っていたのか。そりゃあ、ヨナやグラでさえ味方にしてしまうはずだよ。これは、後味が悪すぎる。
「くそっ、ダメージが……」
「クイーン殿!」
さすがに、一瞬休んだとはいえ強敵との連戦は厳しかった。意識が薄れていき、転がり落ちそうになった体をプサイに受け止められるのを感じたのを最後、私は意識を手放した。
そして目覚めた時、私の視界には“白”が広がっていた。
「……ヒルの生きていける環境じゃないんだが?」
自動操縦は南を目指していたと言った。だとすればここは南の果て、南極だろう。最悪だ。
サクリファイスコヤン、敗死。ここらへんの線引きは明確でない分、難しい。自我があるからと言って絶対味方にならないイブリースみたいなのもいるし、かといって凶暴だったけど仲間になったリヒトみたいなのもいる。匙加減といえばそれまでなんですがね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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