BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
アトラナートの脅威。楽しんでいただけたら幸いです。
ロックフォート島での戦いに、アトラナート一派が一切姿を見せなかったことには理由がある。まず、H.C.F.に存在がばれないようにしたかったこと。そのため、着陸したあとはずっと飛行機に籠って好機を窺っていた。第二に、アレクシア(娘)の傑作たる五体のB.O.W.の存在。特にゴルゴーン三姉妹の存在は天敵と言っても過言ではなく、狡猾に潜伏し滅ぶまで待ち続けた。そしてゴルゴーン姉妹と決着をつけたクイーンたちが飛び去り、それを追いかけるようにしてアルフレッドも飛び去り、H.C.F.も引き上げたロックフォート島は爆発。残されて生き延びたB.O.W.だけが跋扈する廃墟となったそこに、漁夫の利とばかりに姿を現して乗っ取っていた。「囚人棟」「訓練所」「公邸」「私邸」「空港」の五つある施設は、それぞれの眷属たちによって作り変えられた。クリス達が来た時点で既に“巣”は完成していたのだ。
そこに来訪した、オルタナティブの面々と、クリスとセルケト。蜘蛛は目ざとくそれを検知すると再び姿を隠し、罠を張り待ち構えていた。エヴリンたちは、捕食者の掌の上に自ら迷い込んだのだった。
「あ、危なかった…!」
「助かったぞ、エヴリン…どうした?」
「……なに?この、身体…」
ガレージが斬り刻まれる寸前。咄嗟にクリスとセルケトを抱えて外に飛び出した私は、
本当に、ガレージが斬り刻まれたのは一瞬の出来事だった。その一瞬で脱出したのだ。どうなってるのこの身体。明かに筋繊維とか千切れる勢いだったのに痛くもかゆくもないんだけど!
「なんだぁ?いきてるよぉ、しっかりしてぇよラフネックぅ。おなかすいたぁ」
「申し訳ありません、アトラナート様っ。かくなる上はこの腕でお詫びします…!」
すると、アトラナートと呼ばれた昔の私をどこか思い出す異形の少女を抱えたまま現れたラフネックと呼ばれた仮面ライダーに出てきそうな蜘蛛の怪人が予想だにもしてないことをしてきた。一番上の左腕で一番下の右腕を手に取ると、肘から先をもぎ取って赤い血が滴るそれをアトラナートに差し出したのだ。どこか無感情にそれを長い袖から伸びた蟲を思わせる甲殻に覆われた異形の手が受け取り、まるでフライドチキンを噛みちぎる人間の様に、齧りつくアトラナート。躊躇なく腕をもいだばかりか、それにドン引きすることなく咀嚼するってなんだ!?ミランダでもそこまで狂ってなかったぞ!?
「仲間の腕を…!?」
「正気か、こいつ…!?」
「おなかがすいたらなかまをたべればいいじゃな~い。ねえー?」
「我が血肉をアトラナート様の一部にしてもらえること、光栄ですッ!」
「わーお、大した忠誠心……」
いやドン引きだが。歪な主従関係だ。だが自分から隙を晒してくれた、腕が減った今なら…!この身体なら、いける…!横目にセルケトと視線を交わし、頷く。私が飛び出したと同時に、尻尾を伸ばしながら跳躍するセルケト。下から私、上からセルケト、その尻尾による三段攻撃。遅れてクリスも私たちの意図に気付いてハンドガンを構えている。今だ…!
「ハアアアアッ!…!?」
「もぐもぐ。しょくじちゅうぐらいしずかにできないの?」
しかしそれは、長い袖に隠れていたアトラナートの左手が姿を見せた瞬間、止まった。本当に、全てが止まった。奴の異形の腕。それ全ての指先五つから、糸が伸びていたのが、月光に煌めいてわかった。
「え?」
「なに、が…?」
「体が…?」
奴の五指から伸びた糸が、蜘蛛の巣の様に一瞬で張り巡らされて、私たちを絡めとったのだ。まるで人形劇の人形のように、ガッチリと固定されている。クリスの放った弾丸すら、空中で縫い留められている。見て、気付いた。この糸は
「くっそ、だけど!これならどうだ!』
だがそれは物理的なモノに過ぎない。私はハンターΘの体から抜け出して、空から突撃する。人型だから恐らくRT-ウイルスは使われている。なら、菌根も含まれているはずだ。私が見える、そうだろ!?額の赤い単眼5つがこちらをギョロリと睨み、不気味に輝く。このまま超至近距離鼓膜絶叫で意識を潰す!
「にげちゃだめだよぉ」
『え』
しかし、次の瞬間私は地面に投げ出されていた。なんだ、何が起きた?周りを見渡すと、私は巨大な蜘蛛の巣の上にいることに気付いた。その下は真っ黒な底が見えない深淵が覗いていて。周囲には蜘蛛の糸が張り巡らされている。まるで、菌根の世界の様だが違う。これは違う。そもそも私は疑似領域展開も、奴に飛びこんだりもしていない!
「しんえんをのぞくとき、しんえんもまたこちらをのぞいているのだ。わたしのせかいへようこそぉ」
「……嘘でしょ?」
そこには、頭部がない青黒い巨大な蜘蛛の本来首があるところからぶら下がるように生えている、アトラナートがいて。まるで悪夢のような光景に、頭を抱える。そんな馬鹿な。ここは、精神世界だ。菌根の世界じゃない、目の前の此奴が作り出している、新たな精神ネットワーク……!これが使えるってことはつまり、こいつは……私と同じだ!
「あなたもわたしとおなじなんだぁ、きぐうだねぇ。わたしはこーんなちいさなくもからうまれたんだぁ」
言いながら、手と手を合わせて、開いたそこに、小さな子蜘蛛を生み出したアトラナート。無感情に手と手を閉じてブチッと潰したかと思えば、再び開いた手の間から大量の子蜘蛛が湧き出てきて、ボトボトと下に落ちて行って、それは五つの影を作り上げる。一つの影は見覚えがあった。ラフネックだ。
「ともぐいしてわたしたちはぁうまれた。このよは
「そんなの、家族じゃない。家族は助け合うものだ。そんなの、ただの家族ごっk」
瞬間、振るわれた大蜘蛛の足に、蹴り飛ばされる。蜘蛛の巣の地面をバウンドし、ゴロゴロと転がって数十メートル転がったところでようやく止まる。
「またいったぁ。かぞくだよぉ?そうだよねぇ?そぉだよぉねぇ?そうだよねぇえええええっ!」
アトラナートが両手を振るい、糸が伸びて私の四肢を拘束すると持ち上げられる。踊るかのように勝手に動かされる。まるで操り人形の気分だ。それで、わかった。この子供は、中途半端に共喰いした蜘蛛の記憶と、人間の知性が合わさったせいで、家族という存在に飢えている。でも、本人は何も思えないんだ。無機質で無感情。それが此奴の本質だ。決して家族を理解できないから満足できない、まさに深淵の奈落の様な精神性。……ああ、鏡を見せられている気分だ。これは、かつての私と同じ存在だ。
「あなたもかぞくにしてあげるねぇ。さっきのさそりも、おとこのひとも。みんなみんな、わたしのかぞくにしてあげるぅ。きっときにいるよぉ、わたしのちから。あいつらはぁ、W-ウイルスだっていってたっけぇ」
「W-ウイルス…!?」
瞬間、糸から解放された私は蜘蛛の巣の床に落下し突き破るかのように落ちていき、意識を取り戻した時には吹き飛ばされるかのように、ハンターΘの体に戻されていた。
「ねぇねぇ。ラフネックぅ。やっぱりきにいったからぁ、みーんなかぞくにしよぉ?」
「素晴らしいお考えですアトラナート様!」
ラフネックに抱えられた状態で歩み寄ってくるアトラナートの異様に長い手が、私の…ハンターΘの頭に乗せられる。口を開いて怒鳴ろうとしたが、それすら糸を巻き付けられて封じられて。身動きが取れない状態で、頭に乗せられた手から糸の様なものが皮膚を貫き入ってきたのを感じることしか、できなかった。
「まずはひとり……なかよくなろうねぇ!」
アトラナートの容姿はオーバーロードのエントマから、とのこと。
共喰いした蜘蛛の中で、RT-ウイルスの中の菌根が突然変異を起こして生まれた未知のウイルス、W-ウイルス。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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