BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。アトラナートとその眷属たちピックアップ。ポリポッド視点での、ロックフォート島に来る前のお話。パペッティア先行登場。楽しんでいただけたら幸いです。

PS:2024/5/13
本作のスピンオフ「【急募】こちら菌根ネットワーク掲示板」を投稿したのでそちらもぜひご覧あれ。


fileCV:43.5【蜘蛛一家の日常】

 気が狂いそうな毎日だった。私はただ普通でいたかったのに。眼が見えない。ただそれだけで、私の人生は地獄だった。死んで楽になりたかったのに助けられ、眼が見えるようになって、最初に見たのが異形の自分だった。眼が見えないってことはつまり、私は自分の姿を見たこともない、なんなら「人間」の姿も知らないのは同義だ。それでも直感的にわかってしまった。これは本来の私ではない、目の前で嘲笑う悪魔に見たこともない私本来の姿と、人生を奪われたのだと。

 

 

「わたしぃ、アトラナートぉ。よかったねぇ。めがみえるようになったよぉ、ちょぉっとひとじゃなくなっちゃったけどもんだいないよねぇ?」

 

 

 アトラナートと名乗った悪魔を殺したかった。殺そうとした。だけど、手も足も出なかった。力を与えられた「子蜘蛛」でしかない私は「親蜘蛛」である彼女には決して勝てない。そう思い知らされた。そして私は、仲間の……アトラナート曰く「家族」のいるという、私が囚われていた研究所のある森の中にひっそりと存在する屋敷の廃墟へ案内された。

 

 

「アトラナート様のお眼鏡にかなったのだ!光栄なことだぞ!」

 

 

 もうなんか見た目からして人じゃない、蜘蛛を無理やり人型にしたような怪人(一応性別は私と同じ女らしい)、ラフネック。

 

 

【(; ・`д・´)】

《「んーんん、アンビリバボー!見たことない変異だ、それに言葉も喋れるとは興味深い」》

 

 

 胸部中央に取り付けられた巨大なモニターで感情豊かに表現し機械音声で喋るガラクタの塊、ジャンブル。

 

 

「ポッポァーッ!!!!」

 

 

 ものすっごく怖い顔で不気味な姿だけどどこか愛嬌がある巨大な人面蜘蛛、ロイタラー。

 

 

「ケケケケッ、かわいい子。よろしくね?」

 

 

 黒いボロボロのドレスを着た、口や目など身体の至る所が縫われていて病的なまでに白い肌でアラクネめいた姿で不規則な不気味な動きをしている少女、パペッティア。

 

 

「あなた、名前は?」

 

「……ラウr」

 

「それじゃぁー、あなたはー、ポリポッドねー。かわいいなまえでしょー?はい、はくしゅー!」

 

 

 アトラナートの号令に、六本腕の、鉄同士を、蜘蛛の脚を、肉と木を、打ち付ける音が響き渡る。自分の名前すら捨てられ、「ポリポッド」となった私は、こんな狂った奴らと家族だという事実に、心が折れそうになった。私を捨てたママやパパ、お兄ちゃんたち本当の家族よりはマシかもしれないけど。怪人とメカと人面蜘蛛と動く人形だ。あれ、もしかしてこの場で一番普通なの私なのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケケッ、なんでも似合いそうねポリポッド。お人形さんみたい。こんなのはどうかしら?」

 

「あ、もっとフリフリが少ないものをお願いします…」

 

 

 まず、服も何も身に纏ってなかった私は、パペッティアに連れられ彼女の部屋に保管された、明かに血がついていて強奪したのだとわかる服のコレクションで着せ替え人形にされた。わざわざ蜘蛛の脚を通すためのスリットまで作ってくれた服を、彼女の糸で操られて自らの手で着せ変えられたけど、正直嬉しかった。友達と、服をコーディネートしたいとは常々思っていたのだ。最終的に黒いフード付きパーカーに、黒いショートパンツとタイツを身に着けた落ち着いた格好となった。こういう普通の格好を楽しめるなんて、そこだけはアトラナートに感謝してもいいかも?

 

 

 

 

 

【Ξ(::ω::)Ξ】

《「「蜘蛛の脚はどこにでもくっつく。試してみるといい。落ちそうになったら私が支えよう」》

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ジャンブルに理論的に教えてもらいながら、蜘蛛の力を扱う訓練をさせられた。手足とは違う、私から生えている蜘蛛の脚に意識を寄せて壁に張り付く。小柄な私は脚に振り回される形になったが、ジャンブルが驚くスピードで移動できることが判明した。なんでも私は、アトラナートを除いた仲間内で一番速いらしい。見えるようになる前はおずおずとゆっくり歩くしかなかったから、今は開放的になって恐れもなく飛び出せるんじゃないかというのがジャンブルの言だ。最初は楽しかったが、落ち着いたらすぐ後悔した。もう完全に人じゃない移動方法が当たり前になっていた。自分の足で歩くことはもうないかもしれないと恐怖を抱いた。

 

 

 

 

 

「その一!アトラナート様の言うことは絶対!はい、復唱!」

 

「アトラナートさまのゆーことはぜったい!」

 

「ちがーう!アトラナート様の言うことは絶対!だ!はい、復唱!」

 

「あ、アトラナート様の言うことは絶対!」

 

「よろしい!では次だ!その二!アトラナート様は可愛い!はい、復唱!」

 

 

 ラフネックからは私達「眷属」の心構えを延々と教えられた。それはもううんざりするぐらいに復唱させられた。もう本当にうんざりした。お腹が空いたら自分を差し出せ言ってたしそのまま喰われて死なないかな……。

 

 

 

 

 

「ポッポァーッ!!!!」

 

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!?誰か助けて!?」

 

 

 屋敷で迷って彷徨っていると、憤怒の形相で巨大化したロイタラーに追いかけまわされることになった。廊下を全力疾走する、眷属の中で一番速いはずの私を、機関車の様な速度で追いかけてくるロイタラー。そしてそんな私たちを見守る他の眷属たち。

 

 

「死ぬ気で走れ!ポリポッドは細すぎるからな!」

 

「ケケケケッ、ロイタラーちゃんの部屋に入っちゃうから…」

 

【(-ω-)/】

《「説明しよう!ロイタラーは繁殖能力がある!巣で守っている卵にうっかり触ってしまうと凶暴・巨大化して敵味方見境なく追ってくるぞ!こうなったら恐らく死ぬまで止まらない!アトラナート様に助けを求めることだ!」》

 

「助けてアトラナート様ぁああああああっ!?」

 

「なぁにぃー?まぁたけんかー?」

 

 

 叫んだ瞬間、どうやっても止まりそうになかったロイタラーが、その場で動かなくなった。見上げれば、吹き抜けになっているバルコニーの上で手すりに腰かけたアトラナート様が異形の手をかざしていた。あれだ。襲い掛かった私を、空中に磔にしたあの糸の檻だ。ロイタラーほどの巨体と勢いでも止められるなんて……。そして、そんな怪物から逃げきった私も怪物なんだな、と。

 

 

「ポリポッド!よく逃げ切ったな!新入りでロイタラーを怒らせて死ななかったのはお前が初めてだ!」

 

「ケケケケッ、将来有望な眷属ねポリポッド」

 

【(*'▽')】

《「「素晴らしい!もっと鍛えて、共にアトラナート様の役に立とうじゃないかポリポッド!」》

 

「ポリポッドもぉ、みんなとなじんできたみたいでうれしいよぉー」

 

「………うるせえ」

 

 

 眼というものを、侮っていた。いや私は顔に四つ、足に一つずつ、計八つの眼がある身体とは思うけど、入ってくる情報量が多い。さらに元来の発達した聴力も含めてとんでもない情報量が私をぶん殴ってくる。限界だった。

 

 

「うるっさいんだよ!お前らは家族なんかじゃねえ!私は、人間なんだ…!」

 

「それはちがうよ?」

 

 

 振り向く。アトラナートの蜘蛛の眼と視線が合う。真っ赤なのに、底が見えない穴を思わせるどす黒い闇の様な眼がじっと見つめてくる。思わずたじろぐ私に、窘めるようにアトラナートは人差し指を立てつつ続けた。

 

 

「わたしたちはばけものだよ。それはかわらない。わかりあえるのは、わたしたちかぞくだけだよ?なにがふまんなの?」

 

 

 その言葉に言い返せず、私は踵を返して蹲り顔を隠しながら蜘蛛脚を動かし自室に閉じこもり、ベッドの上で丸くなる。こんな怪物どもとの生活に、居心地の良さを感じてしまっている私が一番いやだった。




ただの蜘蛛が素体のアトラナートの作った家族の方が、ベイカー家を乗っ取ったエヴリンよりよっぽど家族をしているという皮肉。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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