BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。活動報告にも書いたけど、エヴリンレムナンツのスピンオフを投稿したその日、職場で足を滑らせ右足を強打するという事故をやらかしてまして。大したことないだろ思って病院に行ったら指の骨が折れてました。やっちまったぜ。そんなわけで当分不自由な生活を送るので、毎日更新が難しくなるかもしれません。それでも頑張るけども。

今回はセルケトSide。一応このクリス編はセルケト編です。楽しんでいただけたら幸いです。


fileCV:44【ヘイトレッド】

「にぃげちゃった。にげあしはやいねぇ。あなたのなかま」

 

 

 のしのしと訓練所内を歩くラフネックの肩の上で、アトラナートは拘束帯に覆われた両足をプラプラさせて傍に控えるセルケトに問いかける。セルケトは自分の左半身から生えた蜘蛛の脚を右手の蠍の鋏で触りながら、アトラナートと視線を合わせないまま口を開いた。

 

 

「仲間じゃないわ。私はそもそもあの二人みたいに正義感から動いてはいない。アルバート・ウェスカーとウィリアム・バーキン……私を生みだし、捨てた二人に復讐するためだけに生きているの。あの二人とは、利害一致してたから組んでただけよ」

 

「そうなんだ……かわいそうにねえ。うみだすだけぇうみだしてすてるなんてぇ、にんげんっていきものはみにくいよねえ」

 

「……それは同感ね」

 

「じゃあさじゃあさ、すごくいいていあんをしてあげる!」

 

「提案?」

 

「貴様、アトラナート様の言うことを遮るな!」

 

「…悪かったわ」

 

 

 黙々と歩いていたかと思えば、アトラナートの機嫌を損ねる行動をすれば即反応し睨みつけてくるラフネックに、セルケトは両手と蜘蛛の脚を上げて降参の意を示す。W-ウイルスを与えられた今の自分でも、勝てるビジョンが見えないから。

 

 

「まあまあラフネックぅ。あたらしいかぞくにいじわるしないの。それでね、せっかくうまれかわったんだから、そんなやつらからあたえられたなまえなんかすてちゃいなよ」

 

「!」

 

「んん-そうだなー。みーんなとくちょうのまんまでなまえつけてあげてたんだけど、あなたはなにかなぁなにかなぁ。あなたのいちばんつよいかんじょうなにかなぁ?」

 

 

 瞬間、ピンッ!と。アトラナートの指さした右の人差し指の先端から糸が伸びて、セルケトが反応する間もなくその脳に突き刺さり、張り巡らせていく。この糸はアトラナートの外付けの神経であり、直接他者の体内に繋げてW-ウイルスを撃ち込んだり、精神を同調させることが可能。セルケトの記憶を辿り、その悲惨な人生を垣間見て、人の心を持たない蜘蛛は嘲笑を浮かべる。

 

 

「なんでじぶんをうんだのか、なんでじぶんをすてたのか、っていうにく()しみ。そう、あなたはぞうお(憎悪)のほのおにもえている。それいがいどうでもいいとおもってるんだね。かなしいなぁ。そのこころをわたしたちでうめてあげたい」

 

「人の、記憶を勝手に……!」

 

「なにいってるのぉ?けんぞくのものはあたまのてっぺんからつまさきまでぇ、わたしのものだよぉ?」

 

 

 怒鳴ろうとするも、ハイライトのない紅い血の様な複眼で見つめられ、口ごもるセルケト。本能が警鐘を叫んでいる。生物として格が違いすぎる。目の前のこれは同類(B.O.W.)なんかじゃない。突然変異で生まれたバケモノだ。

 

 

「んんー、そうだなぁ。ん、決めた。あなたはヘイトレッド(憎悪)だ」

 

「さすがアトラナート様!素晴らしいお名前です!ほら、返事をしろヘイトレッド!」

 

「………名は体を表すっていうし、いい名前ね。ありがとう、アトラナート様」

 

「どういたしまして!」

 

 

 セルケトは、否ヘイトレッドはその名をすんなり受け入れて、満面の笑みを浮かべるアトラナートに笑みを返す。そうして辿り着く。目的地である、警備室へと。

 

 

「ここをわたしたちがせんきょしたときから、こそこそかくれているやつがいるんだよねぇ。そのとくちょうが、ヘイトレッドのいうウェスカーってやつにそっくりでぇ。ラフネックぅ、おねがい」

 

「アトラナート様のおおせのままに!」

 

「なんだと!?それは本当か!?」

 

 

 6本腕を駆使してすべての端末を同時に操りすべての監視カメラを稼働させるラフネックの肩に乗るアトラナートに掴みかかろうとして、ラフネックのプレッシャーからやめるヘイトレッド。視線をモニターに向けると、壁に張り付いて様子を窺いながら移動している見覚えのある金髪オールバックグラサン女が映っていた。

 

 

「ウェスカー…!ついに見つけた、見つけたわ……今の私なら、負けない!必ず殺して見せる!」

 

「あ、それはまってほしいな」

 

「なぜ?私は奴を殺すためだけに……」

 

「わたしのもくてきはねえ。このせかいすべてをわたしの()にすること。じんるいみんなわたしのかぞくになってしまえば、しゅぞくのちがいなんかきにならないしぃ?へいわだよねぇ」

 

「素晴らしい目的です!アトラナート様!人類すべてが、普く平等に手を差しのべんとする貴方様の偉大さと尊さを理解する日も近い!」

 

「……世界征服でもするつもりなの?」

 

 

 飛び出そうとしていたヘイトレッドだったが、アトラナートに止められ、語られたその野望に、呆気に取られる。途方もなさすぎる。そんなフィクションめいた目的を本気で叶えようとする存在がいるなんて。

 

 

「まさかぁ。せいふくなんてするつもりはないよぉ。みんなでかぞくになりたいだけぇ。でもそのためにはぁ、きょうりょくなけんぞくがたくさんほしいんだぁ。……だからさ、はんごろしはいいけど、ころしちゃだめだよ。いけどりにして?」

 

「……断るといったら?」

 

「ことわれるわけないよお。だってぇ………わたしがおねがいしてるんだよ?」

 

 

 瞬間、スッと片手をかざしただけで張り巡らされる糸の檻。ヘイトレッドが後ずさりしようとすると糸が外皮を斬り裂いて血がつつーと垂れる。動けばバラバラになる、そう確信し、動けないヘイトレッド。

 

 

「うごいてもいいよぉ?どうせぇ、いとでせつごうしてあげるしぃ?でもいうこときかないならぁ、エヴリンってことおなじでおしおきしないとね?おやぐもにさからうこぐもはちゃんとちょうきょうしないとぉ、しめしがつかないからさぁ」

 

「もとより、アトラナート様に逆らうなど愚行の極み!すべてはアトラナート様の望みをかなえることこそ我ら眷属の役目だ!頭を冷やせヘイトレッド!」

 

「ウェスカーを、殺すのは諦めろと……?あいつと仲良くしろ……?」

 

「かんけいないでしょぉ?わたしがあのこもかぞくにしたいんだからぁ、いけどりにしてここまでつれてきて?いうこときかないとぉ、こうだぞ?」

 

「っ、ぐあああああああ!?」

 

 

 愛嬌のある声と裏腹に、糸が絞められてセルケトだったころから自慢だった甲殻に覆われた右腕が肘先から切断。ごとりと重い音を立てて転がるそれが、ひとりでに浮かび上がる。まるで操演でもしてるかのように、ヘイトレッドの右手をくるくる空中で回転させるアトラナート。

 

 

だんがん(弾丸)つう()じないむてき(無敵)こうかく(甲殻)、だっけぇ?そんなことにあぐらをかいてるからかてないんだよぉ。ほらほらぁ、こぉんなかんたんにきれちゃうんだからぁ」

 

「うぐおおおおおっ……」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。すぐさいせいするからぁ。ひとめみたときからえびみたいでおいしそうだとおもったんだよねぇ。いただきまーす」

 

 

 そのまま、手を軽く振るって引き寄せて、耳元まで裂けた大口で一口で頬張るアトラナート。バリボリと音を立てて、セルケトだった自分のアイデンティティごと粉々に噛み砕かれていく光景を幻視するヘイトレッドは、そのまま膝が崩れ落ちて倒れそうになって、糸に絡まりぶらぶらと揺れる。今殺せたはずなのに、そうしなかった。まるでお前の命はこの手の中にでもあるとでも宣告されているかのようで。プライドという壁が、崩れ落ちる音がした。

 

 

「もういちどきくよぉ。あなたはだあれ?ウェスカーをどうしたい?」

 

「わたしは、ヘイトレッド……アトラナート様のもとに、ウェスカーを連れてくる……」

 

「よろしい!よくできました!」

 

 

 力なく糸に垂れ下がり頭を垂れるヘイトレッドの頭を、子供にするかのように満面の笑みで撫でるアトラナート。

 

 

「よしよし、あとはエヴリンとそのなかまたちぃ!ラフネックぅ、いばしょわかった?」

 

「カメラを確認したところ、エヴリンとクリスはポリポッドと、オメガと呼ばれていた少女が率いる部隊はジャンブルと、グラと呼ばれていた少女が率いる部隊はロイタラーと遭遇、戦闘してるようです」

 

「…あー、なんだ……ざんねんだなぁ。みんな、てかげんができないものねぇ」

 

 

 そんな会話を背に受けながら、ヘイトレッドは歩き出す。先ほどまでの、強くなったという高揚感は、すでになかった。




セルケトは心が折れた!セルケトはヘイトレッドに進化した!セルケトは目の前が真っ暗になった!

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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