BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごでございます。今回は調子に乗って四千字を超える内容となりました。最後の展開まで行きたかった。

エヴリン(INシータ)&クリスVSポリポッド。楽しんでいただけたら幸いです。


fileCV:45【諦めた女と諦めなかった男】

 彼女はある大企業の社長の令嬢だった。生まれつき足が不自由で歩くことができず、自分と同じだと気に行った西洋人形を親におねだりして買ってもらい、100体以上もの数を集めて部屋中を埋め尽くしていた、“人形遊び”が大好きな子供だった。しかし、親の会社が倒産した。屋敷は奪われ、人形たちとも引き離された彼女は、一人路頭を彷徨った。彷徨った末に、人知れず力尽きた。そのままのたれ死のうとしていた彼女に、悪魔が手を差しのべた。少女は悪魔に心を売り、かつて心の底から欲しがった人形を操る力を手に入れた。それを手に入れた少女、パペッティアの顔は……当時一緒にいたラフネックとジャンブルを怖気づかせるほどの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここからいなくなれ……!私を寝させろぉおおおお!」

 

 

 次々と蜘蛛脚で壁を突き刺しながら迫るポリポッドに思い出すのは、イーサンと見た映画スパイダーマン2に登場したヴィラン、ドクター・オクトパス。蜘蛛の敵が蜘蛛のヒーローが戦ったヴィランと同じなのは何の皮肉だろうか、とそんなことを考えながら、エントランスを走り回って回避する。この身体、すごく動きやすい。イーサンの動きをイメージしたらその通りに動いてくれる。相当身体能力が高いんだろうな、ハンターΘ。

 

 

「速いけど、それだけだ!アトラナートに比べたら……」

 

「あぁあああ!あいつの名前を、出すなぁあああっ!!」

 

 

 複雑な軌道を描いて脚の鋭い先端で連続で斬り裂いてくるポリポッドの攻撃がきつかったので、挑発してみたらブチギレた。え、予想外の反応なんだけど。アトラナートの眷属なのは確定なんだろうけど、もしかしてアトラナートのことが嫌いなのか…?

 

 

「ぶっ殺す!」

 

 

 スタッと、本来の二本足で着地するポリポッド。その胴体と背中から飛び出した4つの蜘蛛脚が、ポリポッドを抱きかかえるように卍を描くように渦を巻き、その間から伸びた手が床に触れて、まるで蜘蛛の様に前傾姿勢を取る。瞳孔に2つずつ有する計4つの瞳が、ギョロギョロと動いて私を見据え、不機嫌そうに口から伸びた鋏角がカチカチと音を鳴らす。あ、やばい。今まで何度も乗り越えてきた窮地と同じ感覚。絶体絶命の4文字が、脳内を駆け巡る。

 

 

「し、ね!」

 

 

 ドン!と地面を蹴って爆散した音と、ギャリギャリギャリ!と身体を回転させて蜘蛛脚の爪で床を引き裂きなながら死の竜巻となったポリポッドが迫りくる。あまりの速さに、私は回避を諦めて、蜘蛛脚を盾の様にして腕を前で合わせる防御体勢を取って、それが悪手だとすぐ実感した。

 

 

「っっっ!?」

 

 

 全身がズタズタに引き裂かれる。ハンターΘの超再生能力で耐えてこそいるが、それを上回る速度で斬り刻まれていく。血が飛び散り、骨と肉が削ぎ落とされていく。こんな状態になってもこの身体は痛みは感じない。それでも、ごっそりと肉体の大半を削り取られた喪失感が、私に片膝を突かせるのには十分だった。

 

 

「ううっ、ああああっ……」

 

「きっしょ。なんで生きてんだよ」

 

「っ!」

 

 

 蜘蛛の脚で無理やり止めて、シャカシャカと動いて私を冷めた視線で見下ろすポリポッドの4つの瞳を見上げて、ああ、彼女も地獄を見たんだな、とそんなことを思っていると、蜘蛛脚の一本で鳩尾を貫かれた。痛みはない、だけどこみ上げてくる血流に、息が詰まる。まずい、ここで意識を失ったらアトラナートのところに連れてかれ………窒息、する………。

 

 

「私の眠りを妨げるお前も道連れだ。死ねなかったことを後悔しろ。……バケモノが見る世界は、悍ましいぞ」

 

「あ、ぐうっ……」

 

タンッ!!

 

「がっ!?」

 

 

 そのまま持ち上げられ、連れ去られようとしていた私の耳に飛び込む銃声。頭部に弾丸を受けたらしいポリポッドが私を突き刺したままふら付き、揺れた視界の中に、サムライエッジを両手で構えたクリスが立っているのが見えた。

 

 

「……ようやく追いついた。生憎と今の俺は相棒に裏切られて虫の居所が悪い。蜘蛛相手に手加減するつもりはないぞ…!」

 

「今、私のことを蜘蛛と呼んだか?」

 

「なんだ。対話できるのか。すごいな?蜘蛛じゃないならなんだ?虫けらか?」

 

「私は、人間だ……!」

 

 

 何故か煽り立てるクリス。私を蜘蛛脚の一本で突き刺したまま、蜘蛛脚二本で歩いてクリスに突進し、残りの一本の蜘蛛脚で鎌の様にして薙ぎ払うポリポッド。クリスはそれを、スライディングして紙一重で頭すれすれで回避しながら、サムライエッジを乱射。普通の肉体らしい胴体に弾丸が叩き込まれ、よろめいて蜘蛛脚でたたらを踏むポリポッドの地面についている脚の一本を、すれ違いざまにナイフを引き抜いて先端を斬り裂き、バランスが崩れて私の体が引き抜かれて空中に投げ出される。あ、顔から。そっかー。

 

 

「ぎゃーす!」

 

 

 普通に頸が曲がった気がしたけど、お陰で気道に溜まってた血を吐き出せた。痛くないこの身体に今は感謝だ。首の角度を戻しながら、なんとか立ち上がる。うーん、この曲がっちゃった腕一回ちぎった方が再生する手間がかからないかな。ごめんねハンターΘ。内心謝りながらねじ曲がってしまった右腕をむしり取っていると、サムライエッジを連射して牽制していたクリスが駆け寄ってきた。

 

 

「無事かエヴリン!」

 

「無事って言っていいかはわからないけど無事だよ」

 

「こいつの相手は俺が引き受ける。お前は回復に専念しろ!」

 

 

 言いながら、エントランスの階段を駆け上るクリス。その先の、紫色のドレスを着た金髪の女性の巨大な肖像画に、跳躍してきて肖像画を引き裂きながら張り付くポリポッド。斬り裂かれた脚は既に再生しているが、胴体の銃創の治りが遅い。弾丸が入ったままだろうか。その痛みもあるのかその顔は、憤怒に染まっていた。四つの瞳と鋏角が相まって鬼の形相だ。

 

 

「お前のどこが人間だ。言ってみろ」

 

「うるっせえええ!私は、人間だ!普通の人間に、なりたかった、だけなのに!目が見えなかっただけで、私は……こうなった!」

 

「!」

 

 

 痛みで意識が朦朧としているのか、涙目でぶちまけながらクリスに飛び掛かるポリポッド。クリスは自らを突き刺そうとした蜘蛛脚二本を、咄嗟に銃を手放して両手で受け止め、ぎりぎりと力比べするクリス。前に見た、洋館事件の時より筋力が上がっている。あれから鍛えてたんだ。強くなったのは、私やクイーンたちだけじゃなかった……!そうだ、人間は、成長し続ける生き物だから…!

 

 

「ぐっ……眼が見えなかった、それがお前の言い訳か?」

 

「お前にわかるか!?とことん不幸に見舞われ、絶望の日々を生きた私の気持ちが!知ったような口を利くな!」

 

 

 力任せに蜘蛛脚が振り回され、ぶんっ!と下まで吹き飛ばされるクリス。サムライエッジは肖像画の下に転がったままだ。あれを、届けないと……!フラフラの体で立ち上がり、階段をよろよろと登っていく。

 

 

「ああ、イライラする……どうして私を眠らせてくれないんだ、眼を背けるのを邪魔するんだ……!」

 

「っ…!」

 

 

 見れば、ポリポッドは縦横無尽に天井を壁を床を高速移動し、すれ違いざまに次々とクリスを斬り裂いて甚振っていく。クリスもナイフを再度引き抜いてなんとか防御しているが、人間の反射神経を軽く超えた速度で動くポリポッドに反撃できていない。

 

 

「諦めろ!おまえは、私には、勝てない!私と同じに、なれ!」

 

「お前は、諦めたんだな。普通に生きるという願いを、諦めたんだ」

 

「諦めもするさ!目が見えず闇しか見えない人生を送った挙句に家族に捨てられ!眼が見えるようになったかと思えばバケモノにされていた!死のうとしても死なせてくれない!ああうんざりだ!眠って逃避して何が悪い!」

 

 

 存分にクリスを斬り刻んだことを確認したポリポッドが、四肢を床に着けてさっきの体勢を取る。まずい、防御不能の必殺攻撃が来る…!

 

 

「諦めて、ここで死ね!」

 

「………最初から人じゃなかった奴も、人でなくなった奴も、俺は知っている。でもそいつらは、必死に人として生きていた。擬態ができるとか関係ない。あいつらは、諦めずに人として生き抜くことを選んだんだ…!」

 

「……クリス」

 

 

 クイーンと、アリサの事を、そう思ってくれていたんだ……。知ったことかと言わんばかりに回転しながら突き進むポリポッド。それに対してクリスは、ナイフを顔の横に構えていた。

 

 

「だったら、人知を超えた敵が相手だろうと、男の俺が諦められるかよ!」

 

「ぐっ、あぁあああああああああっ!?」

 

 

 悲鳴が上がったのは、ポリポッドの方。クリスは、なんと。ナイフをまっすぐ正眼に突き出すことで、ポリポッドの眼にナイフを突き刺すことに成功した。そうか、回転していて防御は不能だとしても、回転する中央には必ず突き刺さる。それは、目が見えなかったポリポッドだからこそ、敵をちゃんと見据えていたからこそ、その眼に突き刺さったんだ。回転により両目を斬り裂かれたポリポッドは、眼を両手で押さえながら脚の関節に生えた眼でクリスを睨みつけ、振り上げた蜘蛛脚を勢いよく振り下ろそうとしていて。

 

 

「クリス!」

 

「諦めなければ、道はできる…!必ずな!」

 

 

 私が投げ渡したサムライエッジを受け取り、クリスはS.T.A.R.S.随一の射撃スキルで、寸分違わず四つの脚全ての関節の眼を撃ち抜いて。そこが弱点だったのか、ポリポッドは眼を押さえたまま蜘蛛脚の力がなくなって、へたり込む様に崩れ落ちた。

 

 

「ああ、見えない……見えない、けど……ひどく、眩しいものを見た、様な……もっとはやく、あなた、に……」

 

 

 両手がだらりと垂れ下がる。その見開かれた傷ついた眼からは血が涙の様に滴り落ちていて。クリスはそっと、手袋を付けた右手で撫でて、眼を閉じさせた。

 

 

「……アトラナートが悪魔だとよくわかった。俺達で奴を倒すぞ、エヴリン」

 

「うん。ちょっと、私も許せないかなあ……!」

 

 

 怒りに燃える私達は、ポリポッドの死体を残してその場を去ろうと、して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケケッ、幕引きにはまだ早いわよ?」

 

 

「「!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 女の笑い声と共にギギギギッ、と音が聞こえて。咄嗟にクリスを押し出した私の背に鋭い激痛が走る。倒れる前に振り返れば、ふわりと力なく浮かび上がるポリポッドが、蜘蛛脚を振り上げていて。

 

 

「ケケケケッ。踊りなさいポリポッド。死してなおあなたは美しい私の人形よ。愛しているわ…」

 

「おまえは、誰だ…?」

 

「ケケケケッ。私としたことが申し遅れたわ。私の名は人形遣い(パペッティア)。以後、お見知りおきを。

 

―――――さあ、血生臭い大衆芝居(グラン・ギニョール)を始めましょう?」




覚悟ガンギマリで原作より強くなってたクリスの前に、ポリポッド敗死。できれば仲間にしたかったけど、狂い果ててて無理だったよ…。

そんなポリポッドの死を冒涜するアトラナートに迫る外道にして最後の眷属、パペッティア参戦。元が人間だった分こっちの方がアトラナートよりやばいかもしれない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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