BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
ロイタラー戦です。楽しんでいただけたら幸いです。
その女は、不幸のどん底を生きていた。親は借金を作ってその返済を押し付けて夜逃げし、学校にも通えず日銭を稼いで生き抜いても、悪い男に騙されて子をなしただけでなく、あっけなく捨てられてその子供も流産。過度の絶望から生きる気力を失い、喋ることすらできずに流産した赤子の死体を抱えて、あてもなく彷徨う末路を送っていた。他者を恨むことすらせず、ただただ己の不幸を嘆くだけの善人だった。アトラナートはそんな精神性を面白いと考え、W-ウイルスを与えた。女は人である要素を限りなく削いで「母性」という本能だけで動く
「だぁあああああっ!私が悪かったのだぁあああっ!?」
「ポッポァアアアアアアアアッ!!!!」
逃げたロイタラーを追いかけていたグラは、囚人棟と繋がっている洞窟に潜入。傷つけばすぐ引っ込むロイタラーにどう対応しようか考えながら脚を進めて、牢獄となっているエリアに足を踏み入れて、ぐしゃりと嫌な音が鳴った足元を恐る恐ると見て。それが、蜘蛛の巣に覆われた卵を踏みつけにしてしまったのだと気付いた時には、暗闇に潜んでいたロイタラーがブチギレて追いかけてきていた。
「いや、でも子供!?繁殖能力があるのだ!?ほっといたらとんでもないことになるんじゃ……いやその前に死ぬのだ!たぁああしぃいいけぇえええてぇええええ!?」
「ポッポァアアアアアアアアッ!!!!」
ロイタラーの素体は、子供を流産した不幸な母親だ。そのためなのか、W-ウイルスで開花する蜘蛛の力は、繁殖能力として顕現した。他の個体と異なり、異性とまぐわうことなく単体で産卵、繁殖することが可能という凶悪仕様に仕上がっている。唯一残った感情である「母性」は子に害をなす者を決して許さず、巣で守っている卵を勝手に触れられると凶暴・巨大化して敵味方見境なくどこまでも追ってくる凶暴な獣と化していた。こうなったロイタラーは、もう止まらない。それを野性の勘で察知してしまったグラは泣きながら、次々と背後に突き刺さる蜘蛛脚から逃げまどう。大の大人位なら簡単に丸呑みできる巨体は、特殊な能力を持たずともただそれだけで脅威だった。
「ポッポァアアアアアアアアッ!!!!」
「はっ、そうなのだ!ディラン!ディラン・ブレイク!聞こえるのだ!?」
すると何かを思いついたグラは、無線機を取りだし周波数を弄って連絡。返ってきたのは、囚人棟付近を捜索していた部下三人のうち一人、元アンブレラ社の下請け会社の民間軍事会社所属の武装義勇兵だった経歴を持つディラン・ブレイクだ。元兵士だっただけあって、判断力や指示能力は自分より頼りになると思っている部下である。
《「グラさん?どうしたんです?さっきからすごい音が……」》
「それ私!大型B.O.W.に襲われているのだ!たすけてえええええ!!」
「ポッポァアアアアアアアアッ!!!!」
《「ええ……いや、それなら……施設入口まで逃げるんだグラさん!なんとかする!」》
「恩に着るのだディラン~!」
言いながら、次々と蜘蛛脚を振り下ろし、噛みついてくるロイタラーの攻撃を回避しながら来た道を引き返すグラ。誰よりも頼りになる部下の指示だ、従わない理由がない。自分はアホだとわかっているからこそ、そこだけはぶれない。仲間は信頼するものなのだと、ラクーンシティでの激闘で痛感したのだから。
「陸上を走れる鮫を舐めるんじゃないのだぁあああああっ!!」
「ポッポァアアアアアアアアッ!!!!」
グラ、ここにきて渾身の走り。捕食者である己が食われる瀬戸際という極限状況が、グラを加速させる。筋繊維が千切れても気にせず再生に身を任せながら限界を超えてひた走るその姿は、エヴリンたちが相対した強敵たちを彷彿とさせた。
「うおおおおおっ!?」
「ポッポァアアアアアアアアッ!!!!」
ギャリギャリギャリ!と地面を擦りドリフトしながら、曲がり角を曲がるグラの目の前に、入り口の高台を陣取ってアサルトライフルを構える三人の部下の姿が見えて。
「跳んで!グラさん!」
「喰らいやがれ醜悪なデカブツ!」
「ほいっ!うぎゃっ!?」
言われるままに、飛び込むようにして跳躍。ゴロゴロ前転して壁にぶつかったグラの背後で、閃光と轟音が発生。それは、ワイヤーを使った簡単なブービートラップに引っかかったロイタラーが、複数の閃光手榴弾で怯んだことを指していて。
「俺は、お前を殺した罪から逃げない!見ていてくれ……JJ!」
グラのぶつかった真上に陣取ったディラン・ブレイクが、そう啖呵を切ると同時に部下三人の構えたアサルトライフルの一斉掃射がロイタラーに叩き込まれる。普段ならばダメージを受けたら即座に撤退を選んでいたロイタラーだったが、今は子供を殺された怒り心頭で冷静にものを考えられないらしく、弾丸の雨で全身を撃ち抜かれそのノックバックを受けながらも、ゆっくりと前進していく。その姿はまさに幽鬼のごとし。エヴリンが見たら泣き叫ぶぐらいには怖かった。
「ポッポァアアアアアアアア……ッ」
「これでも、倒れないのか…!?」
ディランが驚く中で、グラ目掛けて蜘蛛脚を振り上げるロイタラー。しかし次の瞬間、グラとロイタラーは同時に感じ取った。
「a」
「ポッポァ…?」
突如発生した、とんでもないプレッシャーと、全身を駆け巡る悪寒。同時に顔ごと向けた視線の先には、アシュフォード公邸があって。なにかとんでもないことが起ころうとしている、そう感じ取った二人だったが、我に返るのは激戦を駆け抜けてきたグラが先だった。
「……子供の事は、悪かったのだ。奪う命には最大限の敬意を、そう教わったのだ。――――いただきます」
そう、眼を閉じて手を合わせて告げたグラは開眼すると、目にも留まらぬ勢いで突撃。ロイタラーの背後に立っていて。その牙からは血がしたたり落ち、ロイタラーは信じられないとでも言いたげに、口をパクパク開閉させるが、声が出ない。それもそのはず。ロイタラーの半身は、まるで大穴でも開いたかの様に、ごっそりと抉り取られていた。
「ごちそうさまでした」
そう言って目を瞑り、合掌するグラの背後でロイタラーの巨体が崩れ落ちる。今の一瞬だけ擬態を完全に解いた大口と瞬発力でグラが“ひと噛み”した結果だった。
「……これが、B.O.W.の本気……」
「怖がらせてしまったならごめんなのだ。……みんなが心配なのだ。他の場所の援護に向かうのだ!」
「「「了解!」」」
グラは口の端についた血を親指でぬぐい取り、部下を伴い歩き出し、囚人棟跡地を後にした。
パペッティアは、たった今できたてほやほやの新たな死体を手に入れてどうやって遊ぼうか思案していた。倒れ伏したハンターΘの体に眼もくれず、健気に応戦するクリスの弾丸をハルパーとモーニングスターで弾きながら、考えて。
「……
瞬間、死体になったはずのハンターΘの腰から肩までかけて引き裂かれた傷が、黒い何かに塞がれて再生していくのを見て、ポリポッドと共に舞い上がり後退。距離を取る。
「ああ、エヴァ。私を呼び覚ましてくれて母は本当に嬉しいぞ……」
そればかりか、塞がった傷だった場所から溢れだした黒い何かが覆って、黒いローブ姿を形作り、カラスを模した仮面で顔を覆い、頭の後ろには目玉のような装飾が施された光背が形成。さらに4対8枚の黒い翼が生えて、ハンターΘだった、ついさっきまでエヴリンだったその人物は嘲笑を浮かべる。
「エヴァよ、母がお前の敵を屠りに来たぞ……!」
ハンターΘの体を依り代に、エヴリン最大の宿敵であるマザー・ミランダがこの世に顕現したのだった。
ロイタラーは特殊な能力を持たないのであっさり気味。今の方が幸せだってんだから皮肉だね。
グラの本気。オルタナティブとなったディラン・ブレイク。ロイタラーの敗北。そしてマザー・ミランダ復活。なんか様子がおかしいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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