BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
ウェスカーもといアルテとセルケトもといヘイトレッドの因縁の対決。楽しんでいただけたら幸いです。
とぼとぼと、警備室を後にして訓練所内を歩くヘイトレッド。自らの自信を噛み砕かれ、自らの目的を縛られ、自らの名すら捨てられ、もう何も残っていない空っぽの人と蠍と蜘蛛のキメラという“半端者”が、ただ歩く。
己が内で慟哭を上げる復讐心。しかし、アトラナートの意向を
「ああ、ウェスカー……貴方を殺せないなんて、耐えられない…決めたわ。私が私であるために、貴方を殺して私も死ぬ」
後ろ向きな決意を抱いて、女神から落ちた憎しみの化身はただ歩く。
「目覚めたかアレクシア。やはり、アイザックスから与えられた情報は本物だったか……」
コンソールを操作しながら、遠く南極基地の映像で本物のアレクシア・アシュフォードが目覚めた瞬間を目の当たりにし、ほくそ笑んでいる黒い戦闘服を身に着けた金髪オールバックにサングラスの女性がいた。アルバート・ウェスカーもといアルテ・W・ミューラーである。
「ふんっ、まさかだな。かの天才を量産するとは……愛とは実に不可解なものだな」
かつて、イブリースを始めとした取引をアイザックスと秘密裏に行っていたアルテ。その際与えられた情報の一つに、アルフレッド・アシュフォードとの取り引きのこともあった。そのためアレクシアが再び表舞台に現れても特に驚かなかったし、H.C.F.の命令でアレクシアを誘拐するように言われた時も、事実を知りながら特に指摘しなかった。だが、本物となると話は別だ。己の次の目標であるT-Veronicaを有している可能性が高いのだ。
「ロックフォート島の自爆に伴い南極基地に先行させた部隊は全滅か……やはり使えんな。お前を持ってきてよかったよ。」
何もない虚空にそう話しかけるアルテ。そうして、必要なデータを抜き取り去ろうとしたところで、部屋の入り口が開いた。咄嗟にサムライエッジの銃口を向けるアルテの視線の先には、覚悟を決めた顔のヘイトレッドが立っていた。
「見つけたわ……ウェスカアアアアアアアアッ!!」
「驚いた。見違えたぞ、セルケト。その姿は……この島を襲った奴のウイルスにでも感染したか?」
「しっねえええええええっ!!!」
左半身の蜘蛛脚を使って移動を行い、右半身の蠍の尻尾や手足のハサミでウェスカーを引き裂かんと襲い掛かるヘイトレッド。その姿はスティンガーを思わせた。だがしかし、アルテは一切焦らず。違和感をヘイトレッドが抱いた瞬間、見えない刃で引き裂かれて、ヘイトレッドの方が宙を舞っていた。
「があっ……なに、が……?」
「生憎だったな。偽アレクシアの作品がいるであろうこの場所に、何も対策をせずに来るわけがないだろう」
ゆらり、とアルテとヘイトレッドの間にいる透明な何かが、じわじわと姿を現していく。それは、今のヘイトレッドをして異形、と言わしめる異形の怪物だった。額からカブトムシの角が生えた、まるで複眼のような目を持つ女性の顔だが、トンボの様な翅が後頭部から生え、側頭部から生えたクワガタの顎、後頭部から生えた髪のようなサソリの尻尾、カマキリの鎌の様な右腕、ムカデの左腕、ハチの臀部の右足、バッタの左足、ダンゴムシの様な装甲のついた胴体、そしてナナフシの擬態能力。ヘイトレッドが確認できただけでそれだけある、虫のキメラだ。
「キメラ・アサルトを知っているか?ある研究者がアイザックスを出し抜くためにキメラという名のB.O.W.にクワガタ・カマキリ・バッタの遺伝子を組み込み生み出した戦闘特化型B.O.W.だが……もったいないと思わないか?どうせ混ぜるならとことんやるべきだ。そう思った私はハンターΘと同じく私の遺伝子を素体にして、生み出したクローンにありとあらゆる戦闘に特化した虫の遺伝子をRT-ウイルスで融合させた」
「……どけえ!」
呆気に取られたものの、目標を殺すべく薙ぎ払わんとするがしかし、瞬時に姿を消したかと思えば、太い針状の物が脇腹の甲殻を貫き、壁を蹴り砕いて外まで落下する。あまりの激痛に顔を歪ませるヘイトレッド。抉るような痛み、カブトムシの特徴的な角だ。
「ハンターΘは実に素晴らしい生物兵器だが、やはり心があるのはいただけない。お前で十分学んだというのに、私はまた繰り返した。反省したよ…だから此奴からは心をなくした。そうだ、お前のノウハウがあったからこそ生みだせた傑作B.O.W.だ。名を、ティターニア」
「………私は、あなたのとって……なん、なの……?」
ティターニアと呼ばれた顔だけ女の姿をした悍ましい虫のキメラが姿を現し、追いかけて落ちてくる。それを大穴の開いた部屋の中から見下ろすアルテに、ヘイトレッドは問いかける。ヘイトレッドの、セルケトにとっては、ウィリアム・バーキン含めて「親」である。せめて、せめてものと、微かな希望に縋りつくが、現実は非常だった。
「そう聞かれても困るな……すでに関心はない。その変異は興味深いと思っているが、それだけだ。なんとも……ああ、なんとも」
やめて。それ以上言わないで。涙を流しながら見上げて、サングラスをかけていてもわかる邪悪な笑みを、見てしまった。
「つまらないものを作ってしまった」
「ウェスカアアアアアアアッ!!!!」
心の底からの怒りと失望を宿し、蜘蛛の脚で跳躍して鋏を構えるヘイトレッドだったがしかし、胴体にムカデが巻き付いて引きずろ下ろされる。無表情に見つめるティターニアの左腕だった。
「邪魔をしないで!木偶如きがああああ!」
巻き付いたムカデをこじ開け、蜘蛛の脚で勢いよく薙ぎ払うヘイトレッド。しかしティターニアは一瞬でかき消えたかと思えば、背後に出現し右手の蟷螂の鎌を振るってきて。ヘイトレッドは横に倒れ込むようにして蜘蛛脚で支えて、回避。そのまま右足の蠍の鋏による回し蹴りを叩きこむが、ティターニアの後頭部から伸びた蠍の尻尾が絡みついて受け止められ、ぶん!と空中に投げ飛ばされる。
「なんの…!?」
蜘蛛の脚の先端と鋏の間から糸を飛ばして、空中で急静止するヘイトレッドだったが、次の瞬間飛蝗の脚力で跳躍してきたティターニアの右足、ハチの針が突き刺さる。激痛に顔を歪めたところに、ガシッとクワガタの顎で顔を拘束され、トンボの翅を羽ばたかせて急降下。自分もろとも地面にヘイトレッドを激突させるティターニア。ヘイトレッドはよろよろと立ち上がるも、ティターニアはどういう仕組みなのか、丸まったダンゴムシのような姿になって衝撃から身を守っていた。ゴキゴキと音を立てて元の姿に組み立てられていくティターニアに、ヘイトレッドはふらふらと後退する。
「や、やだ……こっちに来ないで……」
蜘蛛と蠍の力だけを宿した己など取るに足らない。アルテが傑作と称するだけはある怪物の、瞳が存在しない黄緑色の複眼の様な不気味な眼が己を睨んできて、ヘイトレッドは腰が抜けて尻餅をつきながら必死に逃げるがしかし、突然身体が動かなくなり涙がにじんだ目を白黒させる。これも、目の前の怪物がしているのか。理解できない恐怖と共に、姿を消したかと思えば一瞬で目の前に現れたティターニアのバッタの脚で腹部を蹴り飛ばされるヘイトレッド。咄嗟に受け身を取ろうとするも体が動かず、無様に地面に叩きつけられる。
「安心しろ。お前の役割はティターニアが受け継ぐ。ウィリアムによろしく言っておいてくれ」
そんな心ないアルテの言葉と共に、目の前に瞬時に移動してきたティターニアの右手、カマキリの鎌が振り下ろされた。
ウェスカーの傑作にして、常に擬態していたことでアトラナートたちの眼も欺いていた隠し玉、ティターニア登場。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場する妖精の女王から取りました。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
一番好きなロックフォート編オリジナルB.O.W.は?
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