BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
というわけで眷属大集合。楽しんでいただけたら幸いです。
その女は、軍人だった。国のために命を懸けて戦って、紛争地帯に率先して参戦し、数々の功績を上げた戦士だった。しかし、当時から秘かに取引され戦場に投入されたB.O.W.の登場でお役御免。それどころか、ラクーンシティ壊滅後の戦争にてハンターの手によって重傷を負わされ、退役を余儀なくされた彼女が担ぎ込まれたのは、政府のある人物と取引したH.C.F.。T-ウイルスを投与され傷が治ったと喜んだのもつかの間、その再生能力の耐久実験のために火達磨にされた。体は耐えれても精神は耐えられず黒焦げの状態で死んだものとみなされて廃棄された彼女は、アトラナートに見つけられてW-ウイルスを与えられ救われた。
ラフネックの名を与えられた彼女は人に絶望し、異形に救いを求め、アトラナートの信奉者となった。アトラナートの手足となり、率先してその障害を排除し、尽くしに尽くした。最初にW-ウイルスを与えられたパペッティアをライバル視し、側近の座を手に入れた。これからも尽くそう、そう決意を新たにし、自らに与えられた領地をアトラナートのための居城に変えようとしていたところで。
再び異形の手で、敗北を喫した。アトラナートを裏切った不届き物を成敗しようとしたら、逆に返り討ちに遭ったのだ。それでも負けない自信があった。己のタフさには自信があった。アトラナートのためなら、絶対に倒れないという確信があった。事実、それができる肉体を有していた。だがしかし、アトラナートに見限られたのは、本当に予想だにしなかった。自分は信頼されている自負があった。彼女の宣う世界を必ず実現させるという忠誠心があった。だがそれは、超越者であるアトラナートにとっては“当たり前”でありただの些事でしかなかったのだ。本当に信頼しているのはただ一人だけ、そう確信させるのに、燃やされて朧げな意識でも、糸で繋がれ立ち上がらせられた事実だけで十分だった。アトラナートが信頼していたのは、自分が初めて力を分け与え、そして人ならざる思考を有した狂人であるパペッティアだけだったのだ。
「ケケケケッ。かしこまり!」
「っ!?」
私の肩に顔を置いて笑ったそれの顔面に、爪を突き立てる。咄嗟の事で威力が調節できなかったそれは轟音を立てて訓練所の壁にぶつかってバラバラに砕け散るも、カタカタと音を立てて漆黒のボロボロのドレスを着ている金髪をふんわりロングにした、下半身のドレスの下から蜘蛛の脚が4本生えている女性の姿を形作る。
「ケケケケッ。まーたバラバラにしてくれちゃって。直すのも大変なのよ?」
「パペッティア……!」
立ち上がるかと思えば仰向けになっており、4本生えた腕のうち人間のものである二本は糸を操作しているかのようにワキワキと動き、もう2本のハルパーと廃材を繋ぎ合わせたモーニングスターのような武器になっているそれを頭上でぶつけて音を鳴らして威嚇する、生物と無機物の融合体は逆さまの体勢でこちらを見て、三日月のように裂けた口と左目は糸で縫い付けられ、右目は開いたままバツ印に縫われている顔で不気味に笑う。得体が知れなすぎる。確かに、ミランダが倒したはずなのに……!
「『はああ!』」
「ケケケケッ。無粋な方ね!」
そこに、空から飛び込んできたセルケトの右半身を武装し尻尾を巻き付けた右足による蹴りが突き刺さる。パペッティアは吊られるようにひらりと舞い上がり、そのまま体を揺らしてスイング。ハルパーとモーニングスターによる連撃を叩きつけ、セルケトを弾き飛ばす。
「セルケト、ミランダ!?」
「ケケケケッ。起きなさいラフネック。アトラナート様は満足なされてないわ」
「ううううっ……」
「嘘でしょ……!?」
パペッティアに飛び掛かり、攻撃を仕掛けるもハルパーで爪を弾かれ、着地したところに叩き込まれる六本の拳。黒焦げとなり倒れ伏していたはずのラフネックだった。まだ死んでないようだが明らかに意識を失っているのに、六本腕による連撃を叩き込んでくる。咄嗟に左手も菌根で覆い武装して両手で弾いていく。さっきまでの猛攻ではない。対処できる、そう思っていた。
「ケケケケッ。踊りましょう?狂いに狂った
瞬間、横からの体当たりを受けて吹き飛ばされる。右半身にごっそりと大穴が開いた巨体の人面蜘蛛だった。どう見ても生きていないそれに驚いている間に、続けざまに連続で襲い掛かる高速の斬撃。バラバラにされたはずのポリポッドがそこにいて。しまいにはラフネックと人面蜘蛛とポリポッドが引いたところに鉄くずに塊の雨が降り注ぎ、私はなすすべなく吹き飛ばされる。外壁を乗り越えて、機械仕掛けの重機の様な蜘蛛がそこにいた。
「なっ、なっ……!?」
「ケケケケッ。不肖パペッティア。ラフネック、ロイタラー、ポリポッド、ジャンブル。眷属全てを集合させましたわ、アトラナート様」
「ん。さすが、できるこだねぇパペッティアぁ」
頭上を舞うパペッティア、右前方に陣取るラフネック、その後ろにロイタラーと呼ばれた人面蜘蛛、左前方にポリポッド、その後ろにジャンブルと呼ばれた機械蜘蛛を侍らせ、その中心で、背中から伸びた蜘蛛の脚で歩くアトラナートが満足げに笑う。パペッティア以外はどう見ても致命傷か満身創痍で、ラフネック以外に至っては生きている様には見えない。パペッティアが全部操っているというの…!?
「オメガとグラたちと合流して追いついたぞ、エヴリン!…ポリポッドに、パペッティア?何故ここに……」
「エヴリン!これは、一体……ジャンブル、倒したはず……」
「待たせたのだ!……って、さっきの人面蜘蛛!?生きてたのだ!?」
「……あれだけ燃やしても立てるなんて、不死身か何かなのかしらラフネック」
「みんな!」
そこに、セルケトとクリス、それぞれ部下三人ずつ連れたオメガとグラが合流する。これでこちらも総勢11人。相手は六体。数は倍近くこちらが上だけど……今の言葉からして、それぞれのチームで一体ずつ対処してたってことになる。そんな奴らを纏め相手するのは、やばいかも……。
「多分、あの空飛ぶ蜘蛛のパペッティアと中央の子供、アトラナート以外はパペッティアが操ってる傀儡だ!クリスとタイローンとディランがタゲを分散、それ以外の人間組は援護に徹して!B.O.W.組で一気に仕留めるよ!」
「了解した」
「了解」
「了解なのだ!」
「タイローン、ディラン、やるぞ!」
「「ああ!」」
散開し、攻撃を始める私達。アトラナートはいつの間にか空中に張り巡らせた蜘蛛の巣の上で見物を決め込んだようで、私はパペッティアに斬りかかる。しかしポリポッドが回転しながら襲い掛かってきて妨害。私がそれに気を取られたところにモーニングスターが叩きつけられる。
「ぐうっ!?」
見れば、アトラナートの眷属たちは連携を取って対抗している。おかしい、明かにおかしい。私と戦いながら、他に糸を回す余裕まであるなんて。パペッティアはなにか変だ。
「『エヴリンの邪魔はさせない!』」
そこに、ラフネックの相手をしていたセルケトが尻尾でポリポッドを突き刺して宙に持ち上げ、そこに援護射撃が殺到。バラバラに飛び散るポリポッドの死体だが、一人で死骸が浮き上がって組み合わさって復活する。今のは……パペッティアは、なにもしていなかった……?
「ケケケケッ。あなた達に勝ち目はないわ!」
「……まさか!」
私の斬撃で斬り裂かれても、すぐくっついて復活しながらハルパーとモーニングスターを叩きつけてくるパペッティアに、ある考えが浮かんだ私は、空を見上げる。……アトラナートのさらに頭上で、月光に煌めくなにかが見えた。やっぱりだ。この島の上空に、蜘蛛の巣が張られている。私達が来たときヘリコプターが普通に降りれたってことは、作ったのはおそらく、そのあと。私達が探索している時。なんでそんなものを張るのか……私達を逃がさないため?それもあるだろうけど、違う。
「ジョージ!ハンドガンを貸して!」
「お、おう!エヴリンさん!」
「そこ、だあ!」
近場にいたジョージからハンドガンを左手で受け取り、右手でパペッティアのハルパーと鍔迫り合いながら、上空に向けて弾丸を放つ。
「ケケケケッ!?」
「見つけたよ、不死身のからくり!」
焦った声が、上空から聞こえた。今のに驚いて動いたから、わかった。それは、先端が人の手になっている六本の蜘蛛の脚が背中から生え、右目以外を縫われた顔の黒子の様な黒衣に身を包んだ姿の少女だった。あれが、パペッティアの本体……!闇夜に隠れて、ずっと上から本体だったと思われた人形である傀儡を操っていたんだ。
「ケケケケッ!見つかってしまったわ……」
「セルケト!上に炎!」
「『天から……堕ちよ!!』」
「ケケケケッ!?ギャアアアアアアアアアアッ!?」
私の言葉に頷いたセルケトが、翼を分離させて頭上で発火させた火球を上空に叩き込み、それは太陽に様に夜空を照らしてパペッティアの本体を飲み込んだのだった。
パペッティアのモチーフは、アニメケロロ軍曹の「スーパーマリオネットのメケケ」です。そういやアニメが復活するかもしれないそうで、おめでとうございます!放映当時ずっと見ていた人間だったので嬉しいです。
実は上空に張られた蜘蛛の巣の上から、人形である傀儡を操っていた、というのがパペッティアの真相でした。地味に八本の腕を持つので、最大八体操れるという規格外な力を持ってます。
次回ついにアトラナート戦です。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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