BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はVS最強の蜘蛛。楽しんでいただけたら幸いです。
火球の直撃を受けたパペッティアから引火し、炎上していく夜空の蜘蛛の巣。幻想的な光景を背景に、高みの見物をしていたアトラナートは不気味に笑う。
「パペッティアまでやられるなんてぇ。せっかくあつめたのにぃひどいよぉお」
「嘘つけ嘘を。棒読みで嘆いてもバレバレだよ!」
「しつれいだなぁ。せぇっかくげんせんしたけんぞくがやられてなげいているのはほんとだよぉ?」
言いながら、アトラナートは袖に包まれた手で座っていた蜘蛛の巣の糸を掴み、「よっ」と掛け声を上げながらハンドガンを構えた私とクリスを始めとした銃を持つ人間たちの銃撃を宙返りで避け、両肩、背中、脇腹、胸部から計八本の蜘蛛の脚を生やしてシャカシャカシャカと高速で移動し回避していく。当たる気がしない。なんて速さだ。でも、糸の上の速さなら…!
「私も、負けていない!」
私もアトラナートにW-ウイルスを打ち込まれた身だ。糸の上の移動なら、自信がある!跳躍し、糸の上に乗って追いかける。あんな、自分の脚で歩けもしない奴に負けるかあ!
「はああ!」
「おっと」
右の爪で抜き手を繰り出し、袖に包まれた手で払いのけられる。そのまま蜘蛛の脚で身体を支えつつ、蹴りと刺突と殴打を連続で叩き込むも、八本の蜘蛛の脚と袖に包まれているはずの両手を巧みに動かされて一撃も入らない。こいつ、蜘蛛の複眼で私の一挙手一投足を見て対応している…!
「ラフネックのほうがぁたくみだったよぉ」
「え、ぐはっ!?」
蜘蛛脚突き出されたの先端から糸が伸びたかと思えば胸元に取り付けられ、引っ張られたと思えば一瞬で三回打撃を叩き込まれて蜘蛛の巣から叩き落とされる。落ちていく私目掛けて、蜘蛛脚八本の先端を突きつけて、次々と糸が射出される。それは、不可視の斬撃となって私を斬り刻み、私は頭部、四肢、胸、腰、とバラバラにされ、咄嗟に菌根で繋げながら着地する。あっぶな……バラバラ死体になるところだった。
「『はあああ!!』」
すると入れ替わりにセルケトが六枚の翼を羽ばたかせて上昇、身体ごと回転して尻尾を横にスイングして攻撃するもアトラナートはその場で宙返りして回避。糸の上に着地すると口から毒液の塊を発射。咄嗟にセルケトが展開した甲殻に覆われた翼を容易にドロドロに溶かして撃墜した。
「オメガ、私をぶん投げるのだ!」
「わかった…!」
するとオメガちゃんがグラを俵の様に持ち上げたグラを投擲。グラは回転しながら鋭い牙が覗く大口を開いて噛み砕かんとする、がしかし。アトラナートは頭上に八本の蜘蛛脚から伸ばした糸を集束。
「つぶれろ」
「a。んなぁああああっ!?」
巨大な糸の円柱を作り上げて落下させ、グラを叩きつぶしてしまった。あれだけの質量を一瞬で形作るなんて…!?
「はーあ。なんで、かてるとおもうのかなぁ」
「なっ……!?」
瞬間、クリス達人間組の中央にアトラナートは着地していて。八本の脚で着地し、人間の脚は正座した形のまま袖から露出した異形の両手に、糸を束ねた棍を握り、交差して振るう。ただそれだけでクリス達は薙ぎ払われてしまった。その手から零れ落とすと、ほどけて消えていく糸の棍。あの質量を一瞬で出したり消したり……物理法則軽く無視してんな?
「だけど、降りてきたのは失策だったね!」
「排除する…!」
「『飛んで火にいる夏の虫……!』」
「噛み砕いてやるのだ!」
爪を構えた私とオメガちゃんが、右手に翼を形成していた菌根を集束させて火球にしたセルケトが、大口を開けたグラが、四方向から攻撃を仕掛ける。だがしかしそれは、アトラナートが右掌を天に向けて構えた途端。その場で固められ身動きが取れなくなる。あの「結ぶ」糸の檻だ……!
「むすんでこていしたそれは、かんいてきな“せかい”。せかいをこわすのはふかのうだよね?」
「んぎぎぎ……動け、ない……」
「無念……」
「『馬鹿な、これほどなんて……』」
「おのれえ!卑怯なのだぁあああ!!」
「むーすーんで、ひーらーいてっ」
「「「『「!?!?」』」」」
アトラナートが右掌で拳を握ってもう一度開いた瞬間、糸が動いて私達は全身を斬り裂かれ、血を噴き出してその場に転がっていた。切断はされてないけど、強すぎる……!
「ねぇねぇ、おもいしった?わたしにしたがったほうがくるしくないよ、いたくないよ。みーんなかぞくで、へいわなせかいをつくろうよぉ」
糸が切れて崩れ落ちた眷属たちを背景に、両手を広げて満面の笑みを浮かべるアトラナート。それでも私は諦めずに、左手で握ったハンドガンで奴の胸部を撃つ。ブシュッと音を立ててバスローブ染みた衣装が赤く染まっていく。それを、目を丸くして無言で見つめるアトラナート。
「……いたいなぁ。ひどい、ひどいよぉ……ひどすぎるから………もっともっと、ひどくしてあげるねぇ?」
瞬間、一瞬真顔になったかと思えば、口が裂け端から牙が露出して目を吊り上げたアトラナートは邪悪な笑みを浮かべ、蜘蛛脚を動かして振り返る。
「まず、パペッティア。かえっておいで」
言いながら、地面に落ちていたパペッティアの残骸の頭部に右手を触れるアトラナート。と、数秒触れたかと思えば、パペッティアの蜘蛛の様な部位が石灰化して崩れ落ちてただの人間の姿となり、そのまま糸が切れて崩れ落ちた眷属たちの頭部の残骸にアトラナートは次々と触れていき、同じように人に戻っていく。
「ロイタラー、ポリポッド、ラフネック、ジャンブル―――それから、エヴリン」
「え?あぐああああああっ!?」
倒れ伏したまま、ポンッと頭に手を乗せられて、なにかを引きずり出される感覚と共に脱力感が襲い掛かる。見れば、私の蜘蛛の要素が完全に消えていた。セルケトがそうだったからもしかしてと思ったけど、まさか本当に……!?
「……感染を、なかったことにした……いや、取り返した?」
「ちょっとちがうかなぁ。わたしのW-ウイルスはねぇ、きぶんやさんなんだぁ。ひとそれぞれのいでんしとけつごうして、くものとくちょうをのこしながらも、多種多様な変異を起こすの。W-ウイルスは糸の様に広がって変異するから、それを引きずり出すことで私に還元することができるんだよ」
舌っ足らずな英語から流暢な喋り方に変わり、異形の指を立てて自慢げに説明するアトラナート。つまりそれって、つまりそれって、他人の金でガチャして、いいのがでたら「はいそれ没収ね」ってする感じってこと…!「支配種の意志で自在に移動できるウイルス」って、ただそれだけで脅威すぎる!
「これで、眷属に分け与えていた力は全部昇華して私の元に戻った。この意味が分かるかな?ついさっきまでの私にも勝てなかったのに、もぉっと強くなったってことだよぉ?」
そう言って、脚を覆う拘束衣を引きちぎって、アトラナートは二本の裸足で地面に降り立つ。背中から伸びた八本の蜘蛛の脚をせわしなく動かし、得意げに合わせた両手を叩き、二本の足でふらふらとおぼつかない足取りで舞い踊り、まるで巫女が神に捧げる舞いを踊るように、華麗なダンスを披露しクルクル回転しながら空に舞い上がっていくアトラナート。その背後で、島の施設だった残骸が、ラフネックたちの死骸が、糸で繋ぎ合わされて、上空に集束されていく。私達は何とか立ち上がりつつも、その絶望の光景を見上げることしかできない。
「これから先の世界、新世界で私と一緒に踊ろうよ!ねえ!全員殺して、私の力を分け与える!みんなみんな!私の家族だあ!そうでしょ!?エヴリン!!」
ジャンブルと言ったっけ。鉄くずを糸で組み合していた眷属。それから、パペッティアの操演。その、拡大解釈。アトラナートの八本の蜘蛛脚が突き刺さって合体し、下半身が取り込まれる。アトラナートに引きずり込まれた時に彼女の世界で見たあの姿に酷似した、異形の巨体がそこにあった。
「エーヴーリーンちゃーん、あーそーびーまーしょー!!」
死肉と残骸で形作られた、島ほどの大きさはある頭部がない巨大な蜘蛛の本来首があるところからぶら下がるように生えているアトラナートが狂笑を浮かべ、産声を上げた。
※これはベロニカ編のサイドストーリーです
モリアーティがなんだったのかってレベルの最強の蜘蛛ここに降臨。いろんな蜘蛛のキャラクターが混ざってます。ムシブギョーとか鬼滅とか。あと蜘蛛じゃないけどダビとかともだちとか。アトラナートのモチーフはアトラク=ナクアと下弦の伍の累、そしてオール・フォー・ワンです。
そして語られたW-ウイルスの脅威。他人の金でガチャして、いいのがでたら「はいそれ没収ね」ってする感じの「支配種の意志で自在に移動できるウイルス」。菌根とT-ウイルスとRT-ウイルスが混ざって蜘蛛の遺伝子と結合した結果こうなりました。H.C.F.とんでもないのを作ってました。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
一番好きなアトラナート編オリジナルB.O.W.は?
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アトラナート
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ラフネック
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ポリポッド
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ジャンブル
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ロイタラー
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パペッティア
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ヘイトレッド
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エヴリン(シータボディ)
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ティターニア
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モールデッド・アンタレス(セルケト)