BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
アトラナート最終決戦。実は弱点は示唆されていたのだ。楽しんでいただけたら幸いです。
女は、ラクーンシティに住んでいただけの一般人だった。運よくゾンビの被害から逃れて、運よく脱出できた彼女は、アンブレラに恨みこそなかったが、滞在していたラクーンシティを逃げることになった怒りという、平々凡々な理由でオルタナティブに参加した。一般的なB.O.W.に嫌悪こそ感じているが、グラたち人型へはむしろ好意を抱いており、その感性を快く思って気に入ったグラの部下として活動していた。
今回の作戦にも大した覚悟もなく参加した、凡人だった。その凡人は、凡人なりにロイタラー撃破に貢献した。しかし、聞いてない。これは聞いてない。いつだったかの燃えるラクーンシティ。遠巻きに見える、暴れる巨人に雷撃が撃ち込まれる、神話の如き瞬間を視界に入れた記憶を思い起こす。あれよりも巨大な蜘蛛が、自分たちを見下ろしている光景に足が震える。それでも、銃を構えた先。蜘蛛の頭部が当たる部分から生えている少女が、彼女には。―――泣いているように見えた。
アトラナートの足の周りを飛びながら、カマキリの腕を振り回しムカデの腕を巻き付かせて表面を引き裂きながら、右足のハチの針を突き刺し抉っていくティターニア。普通に凶悪な部類のB.O.W.だなあれ。敵に回った時を考えるのが怖いけど頼もしいことこの上ない。それに一瞬嫌悪感を示したセルケトと、オメガとグラが続くのを見て、私も続こうとして背後からウェスカーに声を掛けられる。
「その身体は我々H.C.F.の傑作、ハンターΘだろう。貴様、他人の体だと思ってセーブしているんだろうが、遠慮する必要はない。使い倒せ。我々の傑作は、あのような木偶に負けるほど弱くない」
「その言葉、セルケトにだけは絶対言わないでよ。言ったら殺す」
言われた通り、後先考えず、脚に力を込めて跳躍する。ブチブチブチ!と筋繊維が千切れバキバキバキッ!と骨が砕ける音が聞こえる、が、痛くない。そうだった、この身体に閉じ込められる前、必死で使った時も、こんな……!
「エーヴーリーンー!!」
「でええええりゃああああああ!」
アトラナートが凄まじい速さで持ち上げ、振り下ろした交差した両前脚に、左手の拳を叩きつける。メキメキメキ!と腕が悲鳴を上げる。だがしかし私は気にせず、右手の爪を蜘蛛脚の表面に突き刺してさらに振りかぶり、もう一発叩き込んだ。脚の表面にひびが入り、その巨体が揺れてたたらを踏む。菌根で補強したうえで、壊れるのも構わずなりふり構わず全力で振るった拳。効いたぞ!
「ミランダァアアアッ!!」
「『ウェスカーの件について覚えてなさいよ!』」
文句を言いながら、セルケトが飛来。その翼のうち四枚が分離して火球を形作り、それを尻尾で引っ掛けて自らの右足に巻き付け、炎を纏った飛び蹴りを左前脚に叩きこむセルケト。セルケトの、ミランダの意志で自在に動く炎が蹴られた勢いで罅から入り込み、アトラナートの左前脚を焼いて炭にしていく。
「グラ!オメガちゃん!」
「いって……こい!」
「いただきまーす!」
そこに、再びグラを掴んだオメガちゃんが空中で振りかぶって、投擲。炭化した前脚の上腕部を、ごっそりとくりぬいて大穴を開けながら背後に抜けていくグラ。
「え、え、え?」
炭化して穴が開いた脚では島サイズの自重に耐え切れず、崩れ落ちて転倒するアトラナートの足元に、瞬間移動する黒い影。ウェスカーだ。
「体勢を崩したな、無駄にでかくなるからだ!」
そして、ウェスカーの
「今だ!撃て!」
「くううっ……人間の、人間の癖に……っ私達の蜜月を邪魔するなアア!」
そこに、クリス、ジョージ、タイローン、ジャン、ディラン、ユウコ、ルーサーたち人間組が銃撃を叩き込むも、よくわからない理由でアトラナートは激高。両手を振るい、糸を伸ばしてクリス達を操り、銃口を別の人間に向けさせることで同士討ちを狙ってきた。それを、オメガと私が飛び込んで糸を斬り裂いて解放する。なりふり構わなくなってきたな。余裕がなくなってきたらしい。いやまさか、等身大であの巨体の脚だけとはいえ粉砕できる奴がいるとは思わんよね。
「キシャァアアアアアアッ!!」
そこに、空からティターニアが襲来。アトラナートの本体に組み付き、鎌を何度も叩きつけ、バッタの足で何度も胴体を蹴りつける。アトラナートはたまらず、身体丸ごと巨体の中に埋もれることで回避。残った六本足で立ち上がり、糸に繋がった両前脚の残骸を振り回して瓦礫の雨を叩き込んでくる。
「『体内に逃げられた!どうするの?エヴリン!』」
「あの中を逃げ続けられたら、どうしようもない…」
「さすがにあれ全部喰らうのは無理なのだ!」
「ここまでやったんだ、なんとかしろエヴリン!」
セルケト、オメガちゃん、グラ、ウェスカーが尋ねてくるが、いや私にどうしろというのだ。この身体に閉じ込められてなければ、入り込んで居場所を探ることができるんだけど……
「どうしよう、こっちは物理攻撃しか手段がないのに………いい加減、うるっさいわよ!……え?」
瞬間、私の右腕が勝手に動いて、脳に爪を突き立ててきた。呆けている間に、視界がクルクル回る。え、追い出された……!?見下ろせば、自分の脳から糸を引き抜いている、今の今まで私の肉体だった彼女が目覚めていた。
「脳に糸なんかくっつけてさあ、知らない奴がずっと私の体を操って……ほんっと、キッショ!ここまでしないとあたしに勝てないとか、ざーこ!!」
『ええ……ってあれ、私、戻った?』
どうやら、シータちゃんの脳に糸で弄られて細工されて私が封じられていたらしい。というか口悪いなこの子。教育のしがいありそう。って、そうじゃない。
『これなら…!』
でたらめに暴れて抵抗するアトラナートの巨体に、意を決して飛び込む。すると着地したのは、例の世界。巨大な蜘蛛の巣の上。その下は真っ黒な底が見えない深淵が覗いていて。周囲には蜘蛛の糸が張り巡らされている、アトラナートの精神世界。
「うそ……ここまで、来たの?どうやって……自分の脳を破壊しない限り、解放されないはずなのに…!?」
振り返れば、外で暴れている巨体をサイズダウンしたような頭部がない青黒い巨大な蜘蛛の本来首があるところからぶら下がるように生えている、アトラナートがいた。すぐに気を取り直し、両手を合掌させて子蜘蛛の群れを湧き出させ、襲い掛からせてきた。ここは菌根世界と基本的に一緒だ。優先されるのがあちらだというだけで、私の力も使える!
「私の
あえて直進しながら、衝撃波を放って子蜘蛛を蹴散らしながら跳躍。衝撃波を纏ったパンチをアトラナートに叩き込む。虚を突かれたような信じられない顔で蜘蛛の脚でたたらを踏むアトラナート。今度は蜘蛛の脚で蹴り飛ばそうとしてくるが、ブレード・モールデッドの刃を形作って振りかぶってカウンター。相手の勢いを利用して右前脚を斬り飛ばし、転倒させる。
「ようやくわかった。なんで私を封印したのか。最初は虚を突かれてなにもできなかったけど、この世界では私に分があるんだ。そりゃそうだよね、経験値が違いすぎる。怖かったんでしょ?この世界で私と直接対決するのが……虫けら!」
「うう、うるさぁああい!!
私の指摘に顔を真っ赤にしながら、両手を絡めて動かし、両腕を引いて格子状の糸の檻で私を取り囲み、絞って私をサイコロステーキにしようとしてくるアトラナート。ネーミングセンスがガキだな。え、私も人のことも言えない?イマジナリーイーサンうるさい。
「ふん!」
「そんな……私と、こんなにも違うの……?こ、
衝撃波を全身に纏うことで防御、吹き飛ばして逃れると、今度は糸で渦を巻き横にした竜巻の様にして私を斬り刻まんとするアトラナートに、私は格の違いを見せつけるかのように、モールデッド化した両腕で糸を纏めて掴んで受け止めた。逆に引っ張り、ダウンしたアトラナートの顎に蹴りを叩き込む。
「があっ……かぞくに、なってよぉ……」
「ごめん、いつもなら救う道も考えるけど……ちょっと、余裕ない。だけどこの言葉は送るね。
そして、糸を掴んで手繰り寄せ逃げられないようにした上での、正拳突きが顔に炸裂。アトラナートは崩れ落ち、同時に排出された私が見たのは、遥か上空から見下ろす、瓦礫と化して崩れ落ちていく巨体の蜘蛛の光景だった。
――――崩れ落ちたアトラナートの巨体。ただアトラナート本体の死を確認できなかったため、手分けして散策するオルタナティブ一同。
「………あ、あぁ……いたい、いたいよぉ……なにを、まちがえたのかなぁ……」
海岸で力なく倒れ伏したアトラナートは、空に手を伸ばし、そして力尽きようとしたとき。その手は握られ、そっと抱え上げて抱きしめる人物がいた。
「一人ぼっちで死ぬのは、寂しいもんね。せめて私が、いてあげる。安心して」
「……ああ、わたしがほしかったのは……」
そうしてグラの部下の一人である日本人。
最後のキャラはオリキャラです。地味に実写版に出てた名前も出てますがそちらはアイザックスと同じで名前が同じだけのオリキャラです。
そして舞台は再び南極へ。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
一番好きなアトラナート編オリジナルB.O.W.は?
-
アトラナート
-
ラフネック
-
ポリポッド
-
ジャンブル
-
ロイタラー
-
パペッティア
-
ヘイトレッド
-
エヴリン(シータボディ)
-
ティターニア
-
モールデッド・アンタレス(セルケト)