BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はネルトゥスの心の内。楽しんでいただけたら幸いです。
ネルトゥスの素体となった
―――――幸せなのは、義務なんです。だって、皆さんいつもいつも疲れ果てた顔をしています。殺気だった顔は見ていて辛いです。幸せじゃないのは、苦しいでしょう?戦うのは、辛いでしょう?生きるのは、疲れるでしょう?土に還ることこそが唯一無二の幸せなのです。きっとそうです。土は養分を与えてくれる。土は安らかに眠る布団です。どんな生物であれ、最後は土に還る。幸せなままそうなればどんなに素晴らしいことでしょう。
でももう大丈夫。私が来ました。ただの花であったこの私に、ネルトゥス……北欧神話に登場する平和と豊穣を司る女神の名を与えられたのは運命です。私を買い取ってくださったグランデ将軍は私の考えを話したら、笑顔で賛同してくださいました。世界のすべてを癒そう。彼が侵略し、私が癒す。完璧です。きっと、神は彼らを哀れに思ってこの私をこの世に遣わし、グランデ将軍という理解者と出会わせてくれたのです。皆様を癒して差し上げます。彼と私の元から逃げるのは許しません。
―――――幸せなのは、義務なんです。
モールデッド・ヘカトンケイルとカトプレバスの大怪獣決戦が始まって。意識を残していた者でその場から逃げ出さない兵士の方が少なかった。
「ば、バケモノだ……」
「も、もう将軍にはついていけない……」
「逃げよう!死にたくない!」
「将軍を敵に回すのは恐ろしいが命には代えられない!」
踵を返して逃走を試みる兵士たち。しかしそれは、足元から伸びた根っこの触手に足を絡めとられて転倒してしまう。振り返れば、体中から花を生やしたシスターがそこにいた。ネルトゥスだ。
「わたくしめは悲しいです……皆さま苦痛の顔でお倒れになって……全然幸せじゃありません。わたくしめが救済して差し上げます。普く全てを救いましょう」
「ま、待てネルトゥス!俺は……があっ!?」
「ぐっ!?」
「い、嫌だ……あんな風になりたく……っう」
足でもある根っこで引っ張って引き寄せた兵士に、次々と花粉をつけた手から吹きかけていくネルトゥス。花粉を取り込んで多幸感に満ち溢れた顔で倒れ伏した兵士たちが、倒れていた兵士たちが、ハンターπやタイラント含めて不気味なまでに笑顔で次々と立ち上がり、ネルトゥスの前に整列する。その姿はまるでゾンビの様である。
「幸せですか?」
「「「「「しあわせです!」」」」」
「幸せなのは義務なんですよ?」
「「「「「はい!」」」」
「将軍は世界を幸福に導くと約束してくれました。そんな人から逃げちゃ、めっ!ですよ」
指を立ててそうウィンクするネルトゥスは、背後に現れた二人の気配を感じ取って振り返る。クイーンとシータがそこにいた。
「さっきはよくもやってくれたわね、ネル……ネテル……えーと、ネギ!」
「ネルトゥスだ、バカ」
「先ほどは失礼しました。わたくし、自分で戦うのが苦手なんです。幸せな皆さんの力を借りないと、ね?」
「「「「「しあわせなのは!ぎむなんです!」」」」」
祈るように両手を握って胸の前に掲げながら笑うネルトゥスを守るように、兵士とハンターπとタイラントの群れが立ちはだかる。それを見て瞑目するシータ。
「……こわっ。え、あたしもあんなだったの?」
「あんなだったぞ。しかし不味いな、オルタナティブのほとんどがウールヴヘジンの相手をしているからこの基地の兵隊ほとんどと戦うことになりそうだ」
「幸せなみなさあん。安心してください、もし死んでも土の中で幸せになるだけです。死ぬ気で戦ってくださいねえー!」
「「「「「うおおおおおおおおおっ!!」」」」」
そう言って、自分の体に巻き付いている蔦の一本を動かして、ワイヤーアクションの様に壁に伸ばしてネルトゥスは飛び上がって逃走を図り、雪崩れ込んでくる〝幸せな皆さん”に、シータとクイーンは目配せして、それぞれ動き出した。
「そんなに死にたいなら殺してやるわよ!ざこが束になっても関係ないんだからあ!」
右手の爪を振るい、大きく踏み込んで振るうことで〝幸せな皆さん”を纏めて薙ぎ払うシータ。そのままアサルトライフルを奪い取って、右手で爪を、左手でアサルトライフルを振り回して蹴散らしていく。同時にクイーンは糸を伸ばして空中に舞い上がり、ネルトゥスを追いかけた。
「土の中に還ることこそ、全人類の幸せなのです!」
「幸せ幸せ五月蠅いぞ!幸せは、個人が決めるものだ!」
右手で蔦を操り逃げながら、左手で花に触れて粘着性の高い蜜の塊を投げつけるネルトゥス。クイーンは大きく足を開いて回避。そのまま足の先端に遠心力を加えてグルグル糸を巻くようにその場で回転、巻き戻る勢いで加速してミサイルの様に突撃。ネルトゥスに回転頭突きを叩き込み、ネルトゥスは根っこで咄嗟に壁に根付くことで回避。
「危ない危ない……」
「いらっしゃいませ!」
「なっ…!?」
しかしそれに気付いたシータにアサルトライフルで撃ち抜かれ、落下。敷地内の地面に叩きつけられ、ネルトゥスは胴体の銃痕を再生させながら、先に降り立っていたクイーンと対峙した。シータは再び〝幸せな皆さん”の殲滅に戻ったようだ。
「助かった。これで貸し借りなしだ。シータ」
「くっ…!土葬にしてさしあげます!!」
両手に蔦を握って地面に突き刺し、地中から伸ばして襲いかからせるネルトゥス。クイーンはそれを大量のヒルによる死角のなさで回避して逆に掴み、引っ張ることで地面に顔から叩きつけられるネルトゥスだったが、逆に蔦をゴムスクリューの様に巻いて、先ほどのクイーンの様に巻き戻る勢いを利用して回転しながら広範囲に花粉をばら撒く攻撃。それでオルタナティブも、何ならグランデ将軍も〝幸せ”にしてこの天敵を追い詰めようという魂胆だったが、それは薙ぐ様に放たれた水流で撃ち落とされてしまった。
「な、なあ!?」
「〝穿水”だ。さっきシータを起こすときについでに水を溜め込んできた。お前の花粉は通じないぞ」
「くっ……こうなれば最後の手段、火葬です!」
そう言って蔦を伸ばして転がっていたアサルトライフルを左手に握ると乱射して牽制。ポンポンポンポンと右手で全身の花を叩いて溜めに溜めた花粉の塊を投げつけて、そこに弾丸を撃ち込まんとするネルトゥス。粉塵爆発を引き起こそうというのだ。基地丸ごと吹き飛ばす量の花粉に弾丸が撃ち込まれ……
「一緒にみんなで幸せになりましょう!幸せなのは、義務なんです!!!」
「悪いが、お断りだ」
再び〝穿水”が放たれる。初速はマッハを超えるそれは、合掌した瞬間に放たれて花粉を撃ち抜き、その勢いでネルトゥスの顔面をも撃ち抜いた。……先ほどシータに撃ち抜かれた時にクイーンは胴体に核がないことを悟り、頭部を狙ったのだった。
「え……」
「それが死だ。今、幸せか?癒しの処刑人」
右目に風穴を開けたネルトゥスは信じられないように左目を見開き、背中から倒れ伏す。知能を司る核を破壊されたネルトゥスは空を見上げながら、緑がかった手を伸ばす。
「ああ、理解しました……死は幸せではありません。土に還ることは……幸せなはずなのに、怖いです。ああ神よ、貴方様はなぜこのように感じる〝心”なんてものを生みだしたのですか?理解できません、なぜですか…?ああ、将軍。怖いです、助けてください……」
「……私も、心を持っていなかったが、エヴリンに教えられた。きっと、心があるから人間なんだ。お前も、そうだったと思う」
「ああ、将軍……貴方と共に、幸福な世界を見届けたかった……」
その言葉を最後に力尽きたネルトゥスはしなびれていき、修道服と干からびた人型の植物だけがその場に残された。クイーンはそれを見届け、〝幸せな皆さん”相手に奮闘しているシータの方を向く。
「死んでもなお効力は残るか。将軍への忠義か……末恐ろしいよ、まったく」
少なくとも心の底から人類救済を願ったネルトゥス、将軍に利用されるだけ利用し尽くされた挙句に敗北。それは忠誠心だったのか、それとも……?
「幸せなのは義務なんです」は初音ミクの楽曲「こちら、幸福安心委員会です。」から。実は小説版を持っていたことに気付いて読んだらこうなった。タイムリーが過ぎる。小説ボカロは良いぞ。シスターなのは、趣味。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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