BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
ただの人間クラウザーの死闘。楽しんでいただけたら幸いです。
ヒルダにとどめを刺す瞬間、ハープーンの狙撃による衝撃波で撃ち抜かれた、あの時。クラウザーは、意識を失うほどの重傷を負っていた。その前の戦いでハープーンとの近接戦で衝撃波で散々撃ち抜かれた時は、衝撃波が分散してダメージで済んでいたが、今度のは話が違う。集束され、より貫通力と威力を増した衝撃波だ。
外からは打撲にしか見えないが内臓が損傷し、肋骨にひびが入る重症。それでもクラウザーは、B.O.W.にだけは負けられないという意地だけで立ち上がった。ハープーンの位置を特定し、攻略してみせた。
その後、ボートの上でヨナにハーブによる治療を受けたが、あくまで応急処置。激痛が走る中、クラウザーは平然を装いボートの操縦すらこなして見せた。ヨナやメリカに隙を見せることを嫌がったのだ。ガンマがいれば謎の直感で気付いただろう。メリカが、周囲を警戒していなければ音から異常に気付けただろう。でもそうはならなかった。
クラウザーは、気力と根性だけで、戦っていた。
「一人で私たちを相手するとは、大きく出たな人間!」
「ただの人間が!私たち二人を相手にして勝てるなんて正気かしら!」
「くっ…!面倒だな、お前たち!」
ブレードとバイパーを相手にするクラウザー。ナイフとハンドガンを両手に持って、ブレードの突進とバイパーの両腕の海蛇を伸ばす攻撃を捌きながら反撃する姿はさすがの凄腕と言うべきか。しかし、一度も攻撃を受けてないのに、額に冷や汗がにじんで、動きが鈍り始めた。それを見たブレードは、突進しながら問いかける。
「お前、傷を負っているな?血の匂いはしない……内側か、骨が折れているとかか?」
「……だったらどうした」
「あははっ!聞いたかしらブレード!こいつやせ我慢してるわ!」
「さっきの仲間達、なんも心配してなかったし言ってないな。馬鹿め、それで私たちに勝てるつもりだとはなあ!」
「くっ…ぐうっ」
クラウザーの動きが止まった瞬間、刃を突き出して獰猛に笑ったブレードがクラウザーの頭部を串刺しにするべく加速する。さらにその背後から、もしクラウザーが避けても追い詰めるべく海蛇の両腕を伸ばすバイパー。しかしそれは。
「がっ……!?」
「……お前の速さは厄介だった。メリカほどではないが、今の俺では捉えきれん。だから、何処に攻撃するか誘発した。ああ、傷は本当だ。だが敵を騙すならまずは味方からと言うだろう。ブラフは戦場では基本だ」
ブレードの刺突を身を捩って、胸元スレスレで回避したクラウザーの突き出したナイフが、ブレードの胸に突き刺さっていて。クラウザーは容赦なくそのまま縦に振り下ろし、さらに上に振り上げる。
「ブレード!?ひ、ひい!?骨折れてるんでしょ!?バケモノ!」
「バケモノは、お前たちだろう」
三枚おろしにされて崩れ落ちたブレードの亡骸を見て悲鳴を上げたバイパーは海蛇の腕を伸ばして攻撃するも、恐怖からか勢いが落ちたそれを斬り捨てることは負傷を折ったクラウザーでも容易で。斬り裂かれて両腕を失い、戦意を失って背を向けて逃げようとするバイパーの後頭部に投擲されたナイフが突き刺さり、崩れ落ちる。
「……バケモノとは言え見た目が女になるのは効果的だな。気分が悪い。ぐっ……」
ナイフを引き抜き、腰に納めたクラウザーは衝撃波で撃ち抜かれた胸を押さえて壁にもたれかかる。ボートの上で撃ち抜かれた箇所をハーブで応急処置はして強がっていたが、骨の罅はさすがに治せない。クラウザーはハーブを丸めたタブレットの容器を取り出し口に放り込む。痛みは和らいだ。
「任務に、戻らなくては……」
「その必要は、ない。貴方はここで死ぬのだから」
「何者だ!」
なんとか奥まで進んだところでカツンカツンと足音が響き渡り、クラウザーがナイフを構えた先に、純白の鎧武者が現れる。アナ―ヒタの客将、雪姫だった。
「強き武人とお見受けする。私が、奴を超えるために……糧になっていただきます」
「ジャパニーズサムライか?ふざけるな!」
雪姫の引き抜いた刀と、突撃したクラウザーの振るったナイフが激突する。怪力のままに横に振るわれた刀のリーチの外に飛び退いて逃れるクラウザー。そのまま距離を詰め、高速で振るわれる斬撃を、ナイフ一本で受け止めていくクラウザー。
「随分と、やりますね。見た目だけかと」
「お前こそ、見た目だけ仰々しいだけじゃないらしい…!」
瞬間、雪姫が両手に刀を握って集中したかと思えば、地面を斬り裂くように振り上げた刀が描いた軌跡が、実体化した斬撃として下から剣山が発生。クラウザーは目を見開きながら跳躍して宙返り、壁を蹴ってショルダータックルをかまし、雪姫を怯ませる。
「なんだ今のは…お前も、B.O.W.か…!」
「違います。私は、そのような下賤の者とは違う。私は、完璧な人類です」
「ほざけ!バケモノめ!」
痛みでアドレナリンドバドバのクラウザーの蹴りが、刀を遠くまで蹴り飛ばす。しかしその瞬間刀が溶けるように消えて、雪姫の手に刀が瞬時に形成され、咄嗟にクラウザーはナイフの刃に掌を添えて受け止める。
「…マジックかなにかか?サムライ」
「今のにも反応するとは。正直驚きました」
力づくで押し上げ、そのまま上段で振るったナイフが、雪姫の面頬を斬り裂いた。縦一文字に傷が走り、ひびが入って砕け散る。エヴリンと瓜二つの顔が晒された。クラウザーの驚いた顔を見て、表情を歪ませる雪姫。
「こんな小娘が、このような力を持っているだと……?」
「だから素顔を晒したくないのです。この顔は、人を侮らせる。私はこの顔が嫌いなんです。勝つなら正々堂々と、力を示したい。……いいでしょう。その強さに敬意を示して。ここで手に入れた力を、解禁しましょう」
そう言った雪姫の甲冑の上半身が、中身の肉体ごとゴキンゴキンと音を立てながら大きく、変形していく。脇腹から新たに四本の節足が生えてワキワキと動き、元々の両腕は節足に巨大な籠手がくっついた様に変形し、鋭い二本の爪を軽く伸縮させ、面頬が新たに生成されて変形、蟲の様な形状となり十字型の複眼が赤く輝き背中が盛り上がりまるで前傾姿勢の様になった、上半身が蟲で下半身が武者鎧のままという異形の姿。通路を埋め尽くす巨体に、怯むクラウザー。
『……ふぅ。体の変形はさすがに痛いですね。これは……ダイオウグソクムシでしょうか?またマイナーな……本当に、海洋生物を網羅しているのですねあの水槽は』
目を光らせながらまるでエコーがかかったかのように話す雪姫の姿は、ロボットアニメのそれだ。クラウザーは気を取り直して、愛用のサバイバルナイフを手に構える。大丈夫だ、相棒さえあれば俺は負けない。そう自分に言い聞かせる。
『先ほどまでの少女の体躯とは訳が違いますよ』
「っ!?」
咄嗟に回避したクラウザーのいた床が、大穴を開けて吹き飛ぶ。ただ、腕を振り下ろしただけ。それだけでこの威力。ナイフで受ければ、どうなるかは明白だ。それでも、クラウザーは自分の技術を信じた。
「うおおおおっ!」
大腕二本、節足四本の連撃を、ナイフで逸らして弾いていく。真正面から受け止めるのではなく、力を逸らす。そんな神業を、クラウザーはそれに反射神経だけでこなして見せる。そして、逸らされた腕が壁に突き刺さり、抜けなくなる雪姫。
『くっ……』
「もらった!」
クラウザーは、渾身の力で甲殻を叩き割ろうとナイフを振り下ろす。次の瞬間、クラウザーの愛用するナイフの刀身がひび割れ、粉々に砕け散ってしまった。ただ、雪姫はもう片方の腕を振るっただけだった。
「なっ……!?」
そのまま籠手で殴り飛ばされ、通路を転がっていくクラウザー。腕を引き抜いた雪姫が、下半身だけ武者な足で歩み寄る。咄嗟にハンドガンを構えた右腕が、鮮血と共に宙を舞ってゴトッと音を立てて床に落ちる。クラウザーの右腕が、雪姫の爪に斬り飛ばされたのだ。
「う、うわああああああああっ!?」
その瞬間、クラウザーの心は、折れた。相棒のナイフと共に、砕け散った。肩口から斬られた右腕を庇い、叫びながら背を向け、血の跡を残しながら走って逃げる。白い体を鮮血で赤く濡らしながら、雪姫はまるで溶けるようにして元の武者姿に戻りながら歩いて追いかける。狼による兎の狩りの様だった。
「誇ってください。貴方は強かった。人にしては、ですが」
「来るな……やめろ……」
「おかげで新たな力を試せました。私は、まだまだ強くなれる」
そして引き抜いた刀を横一閃。どういう仕組みなのか斬撃が実体化されて、クラウザーの背を横一文字に斬り裂き、鮮血が飛び散り、俯せで崩れ落ちる。どくどくと、血が溢れ、見開かれたクラウザーの瞳から生気が失われていく。
誇り高き兵士は、ここに潰えた。
クラウザー、散る。ブレードとバイパーを一人で倒す大金星上げてたんですけどね。デバフありのボス戦後にそのままいきなりレイドボスに出くわした様なものである。
P‐ウイルスでダイオウグソクムシの力を手に入れた雪姫。フォルムは某具足武者です。2002年時は本当にマイナー。変形しなくてもクラウザーに勝てたって?それはそう。新しいおもちゃを試す子供みたいな感じで使ってました。ここで特筆するべき能力は、自在に作れる刀、菌根世界でもないのに実体化する斬撃、そしてP-ウイルスで変異したのに同じ姿に戻れる変形能力。これは全部、同じ能力を応用したものです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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