BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。九州在住なのですが現在台風が迫っているため、停電する可能性が高いとかで更新が数日途絶えるかもです。9月1日が誕生日なのに特別編書けるか不安だ……。

今回はアナーヒタSide。こうなる可能性しかなかったよね。楽しんでいただけたら幸いです。


fileDC:17【汚名を被った兵士(スティグマソルジャー)

 自信を取り戻した直後の、理不尽と言ってもいい強すぎる敵との邂逅。B.O.W.とはいっても年端のいかない子供に、完全敗北して、愛用のナイフも破壊され、右腕を失い、プライドはへし折れた。そして屈した。屈してしまった。あの時、ジャック・クラウザーは死んだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナーヒタ・ウェスカーは、雪姫が持ってきたクラウザーの瀕死の体を検診していた。雪姫は興味を失くしたのか近くに正座してどこから持ってきたのかお茶を啜っている。

 

 

「ふむ、重傷を負ってなお生きている。肉体だけは人類最高峰……もったいないな」

 

「……ぐうっ、ぐふっ……アナーヒタ・ウェスカー……」

 

 

 吐血しながら、アナーヒタの白衣に左腕で掴みかかるクラウザー。アナ―ヒタは力がろくに入っていないそれを払いのけ、白衣を整えて立ち上がり見下ろした。

 

 

「血まみれの手で触れるな、穢らわしい。だが、いいことを思いついたぞ。雪姫よ」

 

「なんですか?おや、まだ死んでなかったのですか。用がないならとどめを……」

 

「いいや、逆である。此奴をあそこに連れていけ。お前ほどではないが強靭な肉体だ。化けるかもしれんぞ」

 

「ミス・ポセイドンのお眼鏡に叶うとは幸運ですね。いいでしょう」

 

 

 そう言って甲冑を変形させ、ダイオウグソクムシの形態となると軽々と片手で持ち上げ、かつてヒルダが泳いでいた水槽の部屋までアナ―ヒタと共にやってくる雪姫。

 

 

「ぎざ、ま……なに、を……」

 

「特別だ。貴様にもP‐ウイルスを与えてやろう。それも、何も調整していない原液を。上手くいけばその失った腕を取り戻し、人間の力を超えることができる。眼を見ればわかるぞ。我と同じ、囚われた眼だ。我は海洋生物に魅入られたが、貴様の場合は……恐らく「力」。それを与えてやるのだ、悦べ。偉大なる海の力だ!」

 

 

 水槽の上に続く階段を上る雪姫に担がれたクラウザーを見上げながらそう大仰に手を振るい告げるアナーヒタ。水槽の上まで来た雪姫が、数多の海洋生物の死骸が底で眠るそれに、クラウザーを投げ入れる。掴むものがなにもなく、泳ぐ気力も残ってない。クラウザーはただ溺れながら沈んでいくしかなかった。

 

 

「ゴボガアアアアッ!?」

 

「ネプチューン・テティスとヒルダにしか原液のP-ウイルスは試してないが、貴様ほどの肉体ならば可能性はある。安心しろ、成功したら雪姫の力で我が配下に加えてやろう」

 

 

 深海の様に真っ暗な底に沈んで姿が見えなくなったクラウザーを見届け、雪姫と共に元の部屋に戻ろうとするアナーヒタ。すると次の瞬間、突如背後から襲いかかってきた刃を、雪姫が盾の様な手甲で受け止める。そこにいたのは、シュモクザメ型の槍斧を手にしたテティス完全体だった。

 

 

『ネプチューン・テティス…?なんのつもりですか!』

 

「私はただのテティスだ!何のつもりだとは、ご挨拶だなあ!ご主人様の傍にいるのは、私だけでいいんだよ!」

 

 

 そのまま槍斧を軸に身を捩り、大回転。背鰭による回転ノコギリの様な斬撃が火花を散らして雪姫の手甲と激突し、雪姫がもう片方の手で爪を振るったことでそれを飛び退いて回避、仕切り直しとなる。そのまま槍斧を構えて突撃しようとするテティスと、迎撃しようと大きく身を捩った雪姫が激突する。

 

 

『命を狙ってくるなら、容赦はしない…!』

 

 

 巨大な盾に爪が付いた手甲を振るい、さらに武者のままの下半身で蹴りを繰り出し、体術で圧倒する雪姫。テティスは肉体に物を言わせた立体的な動きで槍斧を支柱にしたダンスの様な動きで対抗。火花が散り、目にも留まらない斬撃が交差し続ける。

 

 

『むっ…!?』

 

「隙を見せたな!終わりだ!」

 

 

 しかし、雪姫も慣れない身体のせいか重心がずれて爪を思いっきり地面に突き刺してしまい、それを抜こうと動きが止まる。そこに、床に突き刺した槍斧を支柱にして宙返りで跳躍し、槍斧を両手で引き抜いて勢いよく空中から振り下ろすテティス。ダイオウグソクムシを模した兜に直撃し、叩き割る。しかし、その背後に刀を握った生身姿の雪姫が。

 

 

「空蝉…!それは外殻です、これで終わり…!」

 

「甘い」

 

 

 しかしその一撃は、テティスが後ろ手にかざした右掌の口から飛び出し右手に握られたノコギリザメの刀で受け止められ、失敗。咄嗟に甲冑に身を包んだ雪姫の胴体に左手に先端が握られた槍斧が叩きつけられ、吹き飛ばされる。体勢が崩れ転倒した雪姫の方に、テティスが勢いよく駆けていく。しかし、雪姫とテティスの間にアナーヒタが割り込み、慌ててブレーキするテティス。

 

 

「どいてご主人様。そいつ殺せない!」

 

「おお、ネプチューン……いや、テティス…!カリハリアスと合体したのか…!メイドのお前には強さが、カリハリアスには知能が欠如していると思っていたのだ。お前たちは一体化することで、遂に完全なる存在となった…!強靭な肉体と雪姫すら圧倒する身体能力、身体の一部を使って鮫を模した武器を作り出す能力、全てが美しい…!」

 

「え、そうかな…えへへへ……あ、ご主人様!聞いて聞いて!目障りだったチーム・アトランティスを皆殺しにしたんだよ!マヌエラも連れて来た、拘束して玉座の間に置いているよ!」

 

 

 雪姫を殺そうとしていたことも忘れて、褒めちぎられて頭を押さえて照れるテティス。そのまま意気揚々と、まるで主に褒めてほしいペットの様に告げて。アナ―ヒタは、特に悲しむことも怒ることもなく賞賛した。

 

 

「あのチーム・アトランティスを全滅させるとは、素晴らしい戦闘力だな、テティス。我も誇らしいぞ。だが……殺しきれてなかった様だ」

 

「え?っ!?」

 

 

 瞬間、衝撃波が叩きつけられて、アナーヒタの目の前から吹き飛ぶテティス。槍斧を使って急ブレーキしながら衝撃波の飛んできた方を見れば、城中に張り巡らされた水路の傍にハープーンがいた。よく見れば、頭部を始めとして全身に牙が突き刺さりどくどくと海水が溢れている。どう見ても致命傷だ。

 

 

「よくも……よくも、皆を…!」

 

「そう言えば、死んだところを確認してなかったな!」

 

 

 特注スナイパーライフルを破壊されたが、ハープーンはテッポウエビのB.O.W. 衝撃波を出す能力は健在であり、地面に衝撃波を放って飛び出したハープーンは至近距離から両手両足を振るって次々と衝撃波を叩き込むが、槍斧を手にしたテティスにすべて防がれる。身体能力では勝ち目はなかった。

 

 

「なんで、アナ―ヒタ様!」

 

「何がであるか?」

 

「なんで、私たちを襲ったそのサメを褒めるの!いくらお気に入りとは言え……」

 

「答えは簡単だ。我にとって、お前たちは愛玩動物(ペット)である。ペット同士が争って死んでしまうのは……よくあることだ」

 

「そん、な……私たちは、人間だ!」

 

 

 激昂し、アナーヒタに飛び掛かったハープーンの拳を、間に割り込んだ甲冑姿の雪姫が受け止める。あまりの衝撃によろめいているが、それでも防いだ。

 

 

「ご主人様に攻撃するとか、ふざけてるの?」

 

 

 そこに、飛び込んできたテティスの尻尾が叩きつけられ、入り口近くまで吹き飛ぶハープーン。なんとか立ち上がり、意を決して、右の拳に全身全霊を込めて突撃する。テティスに勝てないのは痛感した。狙うは、水槽の前に立つアナーヒタだ。

 

 

「ふざけるなあああああああああ!」

 

 

 拳を振るう。空間をきしませる衝撃波が発生する。間に雪姫とテティスが割り込み、アナーヒタへの衝撃を全部受け止めて、吹き飛ばされて。防ぎきれなかった衝撃波はその横を突き抜けて、水槽に激突。強化ガラスがピシッビシッ!と罅割れてP-ウイルスの原液が流れ出していく。

 

 

「なんと、勿体ないことを……」

 

 

 他人事の様にそれを眺めるアナーヒタに、ハープーンは殴りかかろうとして。水槽の中を見て、思わず「ヒッ」と悲鳴を零した。

 

 

「……ハァァ……」

 

 

 それは、異形だった。現代には決して存在してはならない古代種の海洋生物のキメラだった。右足がアノマロカリスをそのまま反らした様な形状で、左足はダンクルオステウスとその尾鰭をダイバーの足ヒレの様にした形状。腰からはウミサソリの尾が伸び、背中からはハルキゲニアの棘がいくつも伸び、テティスのそれに負けずとも劣らない胸は三葉虫で隠されていて、へそが見えている。右肩にはメガロドンの頭部がついていて、失われた右腕はアンモナイトをボクシンググローブにしたような形状で伸びた触手が指の様に。左腕はアーケロンの甲羅とメガロドンのヒレがブレードの様になっていて。頭部は上部を覆うようにカブトガニの兜を付け、隙間から確固たる意志を持った眼が覗いている。そんな異形の体を持つ褐色金髪女性が、海洋生物の死骸を踏みしめながらゆっくりと、ハープーンに歩み寄る。

 

 

「こ、来ないで!」

 

 

 ハープーンが拳を振るい、衝撃波を放つがそれはアーケロンの甲羅で受け止められて爆ぜて。一瞬で肉薄したそれは、アンモナイトの拳でアッパーカットをハープーンに叩き込んだ。

 

 

「がはっ……!?」

 

「先刻の返礼だ」

 

 

 そのまま左腕のヒレブレードを一閃。胴体を真っ二つに斬り裂かれたハープーンが崩れ落ちる。それを見て、称賛の声を上げるアナーヒタ。

 

 

「おお、素晴らしい…!ここまでとはな……!」

 

「……ああ、いいぞ。この力は……俺は、誰にも負けない力を手に入れた。感謝する、アナーヒタ・ウェスカー」

 

 

 それ……ジャック・クラウザーのなれの果ては自らの両手を見ながら満足げな笑みを浮かべた。




P-ウイルスの原液に落とされ適合して古代種キメラと化したクラウザー。モデルはBLEACHのハリベルと、先日最終回を迎えた仮面ライダーガッチャードに登場するアークワンマルガム。テティスの攻撃を受けて生きていたハープーンへの雪辱を晴らしました。ハープーンも悲鳴を上げるレベルの異形。

簡単に説明すると原液には実際の海の底から採取した海水が使われているため、古代種の遺伝子情報も溶け込んでいるって感じ。ヒルダが三葉虫だったのもそのため。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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