BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。昨日は久々に新作「仮面ライダートラッシュ」を投稿しました。〝ゴミ”がモチーフのオリジナル仮面ライダーなんで興味があればぜひ。

今回はエヴリンたちに戻ります。楽しんでいただけたら幸いです。

※間違えてたので名前を修正しました


fileUC:15【名付け親】

 自分というものを認識したとき、アンブレラヨーロッパ支部パリ研究所の廊下で目覚めた。自分が誰かもわからなかったし、人の体と鼠の尾を持ちながらそのどちらにも疑問を抱く自分に首を傾げる。記憶喪失とかそんなものでもなく、私にはそれ以前の「自分」が最初からなかったのだ。

 

 監視カメラで素っ裸の私が廊下で困惑しているのを確認したヨーロッパ支部の研究員たちは、慌ててU.S.S.を派遣して私を拘束し、連行。病衣を着せられてパリ研究所の研究開発部で「美」に対して独自の美学を持つ男、モーフィアス・D・デュバルの前に連れてこられ、私は「身元不明の女(ジェーンドゥー)」と名付けられたこと、自分は事故から生まれたアンブレラの生物兵器であり最後の希望であること、故にアンブレラに尽くさなければいけないと教えられた。

 

 そういうものなのか、とすんなり受け入れる。アンブレラからすべてを与えられて幸せに過ごしながら知識を得ていく日々。しかし、数日を経て知識を得ていくにつれて、アンブレラは今破滅の危機に瀕していることを理解した。アンブレラに尽くして大丈夫なのか、元々頭がよかったらしい私がそういう結論に至るのは、当たり前で。アンブレラから逃げようか、なんてことも考えていたのだ。

 

 しかしそれを察知したのか、デュバルは私を連行してみぐるみを剥いで、扉以外何もない四角い鉄の部屋に閉じ込め、一週間もの間飲まず食わずで放置された。曰く、それはアンブレラに少しでも疑問を抱いた罰だと。私は最初の三日間は必死に弁明して許しを請うたが、その時点では口八丁手八丁でしかないのは見抜かれていて。完全に衰弱して今にも死にそうだった一週間後、決して開かなかった扉が開いたかと思えばデュバルが残飯と汚い水を手に立っていた。にやにや笑いながら「反省したならこれをやる」と言われ、これ幸いとばかりに飛びついた。しかし回復しきりそうなところで食事と水は取り上げられ、また閉じ込められた。それから半年間、その、繰り返しだ。

 

 あとから知ったが、その残飯や水には実験のために数多のウイルスが入れられていて、私はそれを体内に溜め込んで、その効能に左右されることなく濃縮させる保菌者の特性があると判明して。アンブレラの開発してきた数多のウイルスを保管する金庫ならぬ菌庫の様な扱いを受けていたらしい。私さえいればアンブレラは滅ばない、デュバルはそう笑っていた。

 

 いつしか私はアンブレラへ疑問を抱くことはなくなっていた。ただアンブレラのために生き、アンブレラのために身を粉にする。半年にも及ぶ調教の末、解放された私は早速、自発的にアンブレラのために働くことにした。独学で勉強して弁護士免許を確保。アンブレラの顧問弁護士となり、的確な弁護や被告人や検事の〝不幸な事故”で裁判の判決を後回しにしていった。全てはアンブレラのため、アンブレラに反するのは悪いこと。五年間もの間、そう考えていくうちに、私の頭脳は一つの結論に至った。私がアンブレラになればいい。それは、私をあそこまで苦しめたアンブレラへの無意識の反抗心からだったのか、アンブレラへの忠誠心からなのかはわからない。だけど、ただ、アンブレラのために。そんな強迫観念に追い詰められていた。

 

 

『お前も家族だ!』

 

「は、え?」

 

 

 ラムダの擬態に呆気に取られている時に声が聞こえて、振り向いた瞬間。一瞬だけ世界が切り替わって、殴られていた。書き換わる。私の認識が書き換わる。アンブレラへの忠誠が、消えていく。あれほど尽くしたアンブレラへの認識がリセットされ、代わりに流れ込んできたのは、エヴリンが実際に体験したアンブレラの非道の数々。アンブレラを見ていた色眼鏡が外されて、真っ暗なサングラスでもかけられたかのような感覚。すべて、思い出した。アンブレラへの忠誠心が、強迫観念が消えて。でも、それだけだ。なにも、ない。

 

 

『強制的に洗脳するのはもうやめたんだ。グラとヨナも、一度洗脳を解いて選んでもらった。だから、あえて聞くよ。これでも、アンブレラに尽くしたい?貴女は、こんなアンブレラになりたかったの?』

 

 

 ああ、なんて残酷な娘だと。心底私は、目の前の少女に恐れ慄いたのだ。オメガとラムダが他のジェーンドゥーを警戒し、エヴリンが憐憫の視線を向けて私を見下ろす。そんな目で、見るな。

 

 

「私は……ジェーンドゥーよ。右も左もわからない私に名をくれた、居場所をくれた、存在意義をくれた。どんなにひどいやつらでも、私にとっては…!」

 

『……貴女の記憶、見たよ。あんなの、許されていいはずがない。貴女がされたのは洗脳だ!私みたいな、私がかつて受けたそれよりひどい……』

 

「知った気にならないで!アンブレラに少しでも疑問を抱いた私が、悪くて……」

 

 

 そう思っていたのに。アンブレラへの忠誠心が消えた今、思うのは。本当にアンブレラ(こんなもの)になりたかったの?という疑問。

 

 

「……どうすればよかったのよ。誰も、助けてくれなかった!アンブレラしか、居場所はなかった!アンブレラに尽くすしか、なかったのに!なんで、なんで……今更、現れたのよ……」

 

「何を言ってるのかしらー?」

 

「エヴリン、なにしたの?私がおかしくなっちゃったんだけどー?」

 

「黙って!」

 

「邪魔するな!」

 

 

 私の吐露に疑問を抱いたジェーンドゥーたちが邪魔しようとするも、それはオメガとラムダに防がれる。そんな二人を控えさせながら、エヴリンは私の顔に近づいてきた。「いやっ」と拒絶しようとするも、すり抜けてしまう。顔を私の手がすり抜けている状態のエヴリンは一瞬顔をしかめながらも、笑顔を浮かべた。

 

 

『うん、うん……ごめんなさい。私たちは、アンブレラが売り出した子達にしか対処してこなかった。アンブレラの内部で、苦しめられている子達がいるとはわかっていたはずなのに。……リサにも言われたんだ、なんで今更って。……でも、知ってしまったら見過ごせない。今からでも、助けちゃ、ダメかな?』

 

「助けなんていらない、私がアンブレラになってしまえば非道も関係ないわ」

 

『もう一度聞くよ。本当に、アンブレラになりたいの?』

 

「っ、うう……でも私はジェーンドゥーだからっ」

 

『まずそれ。ジェーンドゥー(身元不明の女)だなんて、生まれたばかりの子にひどいよ!』

 

 

 ジェーンドゥー。何も知らない私に与えられた、大切な名前。だけどあとから、あまりにひどい名前だと知って。でもそれが私だからと諦めていたのに、貴女はそれを否定するのか。

 

 

『だから私が貴女に名前を付けてあげる。えっと、じゃあ、貴女の名前は……ジェーンドゥーじゃない。ナイだ』

 

「ナイ?」

 

『うん。そんな名前が浮かんだの。貴女にぴったりかなって。どうかな?』

 

 

 ナイ。ナイ。ジェーンドゥーじゃない、私の名前。私だけの名前。ああ、と顔を押さえる。掌から涙があふれて零れ落ちる。我慢ができない。生まれてから一度も流さなかった涙が、決壊する。

 

 

『ナイ。貴女の罪は私が、私たちがどうにかする。貴女に罪はないとは言わない。だけど、誰にだってやり直す権利はある。私がそうだからね。そのためには、救ってあげる誰かが必要なんだ。私が、この時代のみんなの、そんな存在でありたい』

 

「ええ、なれるわ。貴女ならきっと……」

 

 

 涙を拭いながら、笑顔で告げる。ああ、この子は私なんかと違う、本当の救いの女神だ……!

 

 

「ジェーンドゥーじゃなくなったなら用はないわ、オリジナルでもね」

 

 

 瞬間、鋭い尻尾が眼前に迫って。腰に舌が巻き付いて引っ張られることで、ギリギリ回避する。ラムダだった。

 

 

「ジェ、じゃなかった。ナイ!ぼけっとすんな!お前の生み出した、お前が!まだまだたくさんいるんだ!」

 

「そうよー?」

 

「一人取り込めば勝てると思った?」

 

「オリジナルだからって私たちを操ることはできないわよ?」

 

「私たちは偽物でも何でもない」

 

「全てが本体。全てが私」

 

「私たちはジェーンドゥー」

 

「それ以外の何者でもないわ」

 

 

 私以外のジェーンドゥーたちが、私ですら全体数を把握できていない悪魔たちが、私たちを取り囲む。

 

 

「それでエヴリン、次の作戦は?」

 

『え。ないよ。ナイさえ説得すればと思ったんだけど……』

 

「つまりなんだ?役に立たないネズミを一匹引き込んだだけか?」

 

「……悪かったわね役立たずで」

 

 

 ギラリ、と取り囲むジェーンドゥーたちの目が一斉に光る。逆転の余地は、ない。




ジェーンドゥーの過去。そしてナイ誕生。由来は……

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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