BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回は謎のメイドとの邂逅。楽しんでいただけたら幸いです。
「……セバスチャンさんは、死んだの……?」
「誰…!」
エル・トーレと乗っ取られたセバスチャンを倒した直後、姿を現したクラシカルなロングスカートのメイド服に身を包んだ、どこかボロボロな様子の謎の少女に銃口を突きつける。……変、と言えば変だ。こんな村で小綺麗なメイド服を着てる時点で異様だし、なんならなんか胴体にかかったベルトの背中に鞘に入ったサーベルを斜めに下げている。髪の色は色褪せた銀髪で白髪にも見えて顔の右半分をお下げにして隠しており、瞳の色は充血しているかのような赤。私に銃を突き付けられ、さらにビリーにもマグナムを向けられても平然としている少女は、佇まいを目にも留まらぬ速度で整えると毅然とした態度で告げた。
「誰だ、はこちらの台詞でございます。余所者がこの村で生きているなど普通ではありません。何者でございましょうか。返答次第では……」
「返答次第では、どうするっていうの?」
「ここは我が主の領地なれば。排除させていただきます」
そう言った瞬間、私とビリーは発砲した。ただの人間に見えても油断できないのがプラーガとガナードだからだ。しかし、予想は的中していて。メイドは、ロングスカートを翻して素早い動きで横に宙返りして回避していた。難なく着地し、背中からサーベルを引き抜くメイド。よく手入れされた白刃が煌めき、私とビリーはナイフを引き抜いて構える。右手でサーベルを握ったまま横に動いて牽制するメイドと、じりじりと構えながら横に歩いて正面に移動する私とビリー。隙が無い。下手に攻め込んだ方が負ける。
「その身のこなし、軍人でございましょうか?」
「そういう貴女はガナードかな?」
「私とガナードを一緒にしないでくださいませ。私は“アルカナード”が一人、ラ・ルエダ・デラ・フォルトゥナ」
「アルカナード……それが他のガナードとは違うコルガドたちの名称…?だけど、長いね!?」
「運命の輪、か。アルカナードって名前と言い、今までの「吊るされた男」「女帝」「塔」から見てもアルカナから名前を取ってるのは間違いなさそうだな」
「ビリーもよく分かったね!?」
そう叫んでから、やべっと気付く。思わずツッコんじゃったけど、隙にしかならないのは明白だ。瞬間、踏み込んできたラ・ルエダ・デラ・フォルトゥナ……長いからメイドでいいや!メイドのフェンシングの様な構えからの刺突が、私の胸の中央を貫いた。そこさっきも串刺しにされたんだよなあ…!
「ふんぬ!」
「っ…!?」
刺されながらもものともせずカウンターでナイフを叩き込むも、サーベルを引き抜かれたうえでバク転して避けられてしまった。血に濡れた刃の腹を撫でながら首を傾げるメイド。その隙をついたビリーの斬撃も軽くひらりと避けながら、疑問に首を傾げている。余裕だな。
「……いや本当になんなのでございますか?そこを貫かれたらガナードでも致命傷は免れないのでございますが?」
「うん、死ぬほど痛いよ?でも慣れた」
「私と同じなのでございますか?それはなんとも……よよよ……」
「なんで同情されてるのかなあ!」
本気で涙を流して同情するメイド目掛けてナイフをしまって拳を振るう。しかし右ストレートはサーベルを逆手に握ったメイドの右手に絡められて手首から先を斬り飛ばされ、さらに瞬時に順手に握りなおしたサーベルで首を狙われ、さすがにやばいので体勢を崩して回避、したところを振り下ろされ、しかしそれはビリーのナイフで弾かれる。こいつ、やばい!エージェントと言われた方がしっくりくるぞ!
「くらえ!」
体勢を立て直した私がハンドガンを撃って牽制するも、やはり宙返りで避けられ、その間に地面に落としていたハンマーを手にしたビリーの渾身の振り下ろしが叩き込まれるも、メイドはひらりと舞ってハンマーの上に着地。ビリーの顔面目掛けて神速の刺突を繰り出してきた。
「ビリー!……!?」
「……これは驚きました」
「ぐぬぬ……」
さすがに死んだと思って絶望しかけたが、すぐにそれは払拭される。ビリーがその歯で刃を噛み締めて受け止めていたのだ。言うなれば真剣白刃取りならぬ真剣白歯取り…!言ってる場合じゃないか!
「どりゃああ!」
サーベルを噛みしめられてそれを引き抜こうとしてその場から動けないメイド目掛けて、渾身のドロップキックを叩き込む。同時にビリーが口を開けて、サーベルごと蹴り飛ばされ、エル・トーレ跡地に転がるメイド。
「ビリー、大丈夫?」
「ふぐ……大丈夫じゃない。さすがに鋼鉄を歯で受け止めるのはまずかった……」
「あー……休んでていいよ」
歯を押さえて涙を流しているビリーを休ませて、私は警戒を緩めずハンドガンを構えながら歩み寄る。そこに一つの一戸建てがあったと示す、家屋の基礎だけしっかり残ってるそのど真ん中で、メイドはサーベルを握ったまま大の字になって空を仰いでいた。なんだ……?メイドは私に気付いて一瞥するも、動こうとしない。格好の的なんだけどなんか狙えない。なんだ、その表情は。なんで、そんな、悲しそうなんだ。
「……殺す前に、一つ聞かせてくださいませ」
「……なにかな」
「……セバスチャンさんを殺したのは、貴女ですか?それとも彼ですか?」
「っ」
そう言われて、さっきの後悔を思い出す。セバスチャンさんを救うことができなかった無力さ、悲しみ、怒り。その感情のままに銃を突き付けて、だけどすぐ思い至る。プラーガが、あの人の心を平気で踏み潰す怪物が、他人のことを想うだろうか。涙を、流すだろうか。
「……突き落としたのはビリーだ。だけど、セバスチャンを殺したのは……乗っ取ったのは、エル・トーレだ」
「………そう、ですか。アイツが……やはりアルカナードといえどプラーガなんかに任せたのが間違いでございました……もう一つ、お聞かせくださいませ。セバスチャンさんと貴女たちは、どういう関係なのでございましょうか」
「……短い間だったけど、人となりを聞いて、話して……友人だと、思ってる」
「…………あの人の友人なら、これ以上傷つけるわけにはございませんね」
そう言って、銃口を突きつけられながら起き上り、サーベルを鞘に仕舞うメイドは、佇まいを直して両手を腰前方で重ねてお辞儀した。
「失礼いたしました。私はただ、恩人であるセバスチャン・アギレラの様子を見に来ただけなのでございます」
「……じゃあ、セバスチャンさんの言ってた心残りって貴女のこと……?え、でも、人間……?でもさっき、プラーガって……アルカナードって」
「……誰が話したか知りませんがそこまで知られているなら話は早い。この身は異形なれど私の自我は、間違いなく人間なのでございます。隷属種たるガナードと、その上位種アルカナード。そのさらに上に位置する最上位をこの身に宿し自我を残すことを許された者「支配種」の一人なのでございます。ラ・ルエダ・デラ・フォルトゥナは偉大なる君主から与えられた聖名でございますゆえ」
「えっと……それを話してくれるってことは、敵対する気はないってこと……?」
「セバスチャンさんの友人を殺すなんて、私にはとてもできないのでございます」
銃を下ろすと、メイドは攻撃するそぶりも見せなかった。そのまま休んでいたビリーの元に戻り、話を促すことにした。メイドは佇まいを直し、丁寧にお辞儀して告げた。
「改めまして、初めまして。ごきげんようセバスチャンさんの友人たち。我が名はアルベラ。サラザール城に努める、しがないメイド長でございます」
遂に判明、改造プラーガたちの総称「アルカナード」。過去作の未完で終わった仮面ライダー作品の怪人の名前を流用してますが無関係です。由来はアルカナ+ナード、ガナードともかけてます。
アルカナードの一人、ラ・ルエダ・デラ・フォルトゥナことアルベラ登場。サラザール城のメイド長らしいです。セバスチャンが少しだけ言ってたのがこの子。多種多様な今作でも珍しいサーベル使いです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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アルベラ