BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はエヴリンが題名通り豹変…?楽しんでいただけると幸いです。
イーサンに殺されてから三年。三年もあれば、今のエヴリンの本体とも言える菌根を理解し己が肉体として使役することも可能となったエヴリン。ミランダに悟られることなく、ハイゼンベルクにだけ伝えている今の力はかつてのそれを上回る。
『えーっと、三姉妹は冷気から守って、ドミトレスクは無理やり回収して、ドナは幻影を利用して逃がしてあげてーっと』
ミランダが懇切丁寧に百年近くも育て上げ肥大化した菌根を肉体として得たエヴリンは、その力を利用してドミトレスクと三姉妹、ドナとアンジー、モローとハイゼンベルクを生き残らせてみんなでミランダを馬鹿にする、という行き当たりばったりも程がある計画を為そうとしたのだ。半ば無理やりでもみんな回収してしまおう、そんなことを考えながらイーサンが逃げたことをドミトレスクに知らせるべく城に入るエヴリン。
『あー、報告する前にもう会っちゃったんだ』
「ハイゼンベルクなんかのお遊びで殺しきれないのはわかってたわ。両腕を刺して吊りあげておいたからもう逃げられない。あとで娘たちの餌になる予定よ」
サン・ヴィエルジェというワインを運ぶドミトレスクについていきながらイーサンが既に捕まったことを聞かされるエヴリン。しかしここに来るまでの事を思い返して一言。
『でもここに来る途中で城の中を普通に歩いてたイーサンを見たんだけど』
「え」
『途中で会ったカサンドラに教えておいたから今頃追いかけているだろうけどさ』
「なら安心ね。私の娘はハイゼンベルクと違い優秀ですもの」
『イーサンをなめたら死ぬんだよなあ』
ドミトレスク相手じゃ埒が明かないと思ったのか、イーサンを探して城の中を飛び回るエヴリン。仲のいい三姉妹がやられないか心配だった。何せ、基本無敵の三姉妹やドミトレスクにだって冷気と毒という弱点があるのだ。弱点を看破してジャックやマーガレットを倒したイーサンの事だ、幸運かそれとも情報を得てか、弱点を突いて倒してしまいかねない。
「銃弾が私に効くとでも…」
「狙ったのはお前じゃない…窓だ!」
「え?キャアアアアアア!?」
するとそんな会話と絶叫が厨房の方から聞こえてきて、急行する。そこには、壊された窓から吹き荒れる冷気で凍り付き、分かりやすく弱っているベイラ・ドミトレスクとイーサンがいて。エヴリンは自分の本体ともいえる菌根を操り、咄嗟に割れた窓を覆うようにカビを展開、冷気を塞いだ。
「なに!?」
「アハハ!私達には最高の友達がついてるのよ!こうなればこっちのものよ!その喉を斬り裂いてミミズを詰め込んでやる!」
『待ってベイラ!一旦態勢整えよう!また窓を割られたらカビで塞ぐのも限界だよ!』
「っ…いいわ、体も冷えたしここまでにしてあげる!次遭った時は嬲り殺しにしてやるから覚悟しなさい!」
エヴリンの声を聞いて冷静に戻ったベイラは蟲に分散して去って行き、その場には立ち尽くすイーサンだけが取り残されたのだった。
「助かったわエヴリン。でも、あのまま奴を殺してもよかったのに」
『ダメ。あの部屋で戦うのは自殺行為だよ。冷気が入らない場所で戦わないと、もしかしたら死んじゃうかもしれないんだよ?もう私と会えなくなるんだよ?そんなの嫌だよ』
「私たちドミトレスクが死ぬわけないじゃない。偉大な菌根の力を与えられた一族なのよ?貴方が心配することないわ、今度は勝つ。そして奴の美味しい血を啜ってやるの。ああ、愉しみだわ」
『………聞き分けないなあ』
エヴリンの表情に影が差す。それを見てビクッと怖気づくベイラ。エヴリンから殺気を感じたのだ。逃げようと蟲に分散して離脱しようとするも、いつの間にか隙間すらない黒カビの壁に囲まれていて。徐々に迫りくるカビの壁に、人型に戻ったベイラは恐怖に怯えるしかなかった。
『私は大好きなみんなといつまでも一緒にいたいのに……そんなに死に急いでたんじゃまた私、1人になるじゃん』
「え、エヴリン…?私達、友達よね…?」
『ううん、家族だよ。だからさ………一緒になろう?』
「やめて、やめてエヴリン!私が消えちゃう…!?ァアアアアアアアア!?………」
そして流動体となった黒カビにベイラは飲み込まれ、そして消えた。
『どうせイーサンに殺されちゃうぐらいなら、私のものになれ!アハハ、アハハハハハ!おいしい、おいしいよベイラ!アハハハハハハハ!!』
狂った様なエヴリンの笑い声が木霊する。例え無害そうな子供でも、その本質は家族を追い求める悪魔そのもの。それを知らなかった故の末路だった。そしてそれを見ていた人物がいた。
「そんな…ベイラ…エヴリン、なんで……ヒッ!?」
『そんなところでなにをしているの?カサンドラお姉ちゃん』
イーサンを探していた、カサンドラ・ドミトレスクである。突き当りの壁からこっそりその光景を見ていたカサンドラは、首を百八十度後ろに曲げてこちらを見てきたエヴリンに恐怖を抱き、蟲に分散して逃走を試みる。しかし背中に顔を向けたままゆっくり迫るエヴリンとは裏腹に床を這う黒カビの波は高速で追跡し、カサンドラは逃げ道のない武器庫まで追い込まれてしまった。
「しまっ……許して、ねえ、なんで…エヴリン、なんでこんなことをするのよ?私達が何をしたって言うの…?」
『弱点なんかあったらイーサンに殺されるじゃん。ローズを奪われたイーサンが誰か一人でも生かして帰すはずがないもん。だったら一番安全なところに入れて安心したいじゃん、だってカサンドラたちのことが大好きだもん』
「大好きだって言うなら、また一緒にお茶会しましょうよ……ベイラを返しなさいよ!」
『安心して?貴方達は私の糧となって生き続ける。ベイラだってカサンドラの意識だってそのまま残すよ。体だって冷気に弱い不完全な蟲じゃなくて、不死身の菌の身体になるんだよ』
「それってwinwinじゃない?ねえ、カサンドラ。一緒になりましょう」
「そんな……ベイラ……?」
カビが蠢いて形成されたのは、ベイラ・ドミトレスクその人。しかし先程までの恐怖は感じられず、まるで受け入れたかのようにエヴリンに心酔した瞳を向ける。エヴリンの能力の一つ「転化」だ。エヴリンの「家族」として生まれ変わらせる力は、菌根という強大な肉体を得てさらに強力になっていたのだ。
『ベイカー家の時はせっかく作った家族を好き勝手させたからイーサンにやられたんだ。なら私に取り込んでしまうしかないよね。わかってくれるよね?家族を何より大事にしている貴方達ドミトレスク家なら』
「私達はこれから常にエヴリンと共にある!幸せよ、カサンドラもいらっしゃい」
「いや、嫌よ……正気に戻ってベイラ!」
『正気?いやだなあ……カサンドラ』
「むぐっ!?」
エヴリンは身体を回転させて首を元に戻すと、黒カビを流動体の様に操り、カサンドラの口元まで包み込んで拘束。口からカサンドラの内側に侵入し侵食していくエヴリンはベイラと共にニタニタ笑っていたかと思えば真顔になり、一言。
『この村に住んでいる人間で、正気な奴なんて最初からいないよ?』
「ムグゥウウウ!?」
そのままカサンドラは黒カビに取り込まれ、また一人消えた。
『ああ、同類の肉は美味しいなあ…マーガレットの料理とは比べ物にならないよ』
ベイラの構成を解いて黒カビを消し去り、お腹を擦って舌で口元を舐めるエヴリン。するとそこに、イーサンを捜しているのかドミトレスクがやってきた。
「エヴリン。ベイラを殺したクソッたれのイーサン・ウィンターズを見なかった?」
『イーサン?イーサンは知らないなあ』
「そう……城を徘徊しているはずのカサンドラの姿が見えないのだけど何か知らない?」
『それならさっき悲鳴を聞いたかな』
嘘は吐かないエヴリン。エヴリンが大好きな娘たちの事で嘘をつくメリットがないと知ってるのでそのまま信じるドミトレスク。
「まさかカサンドラまでやられたって言うの…?絶対に許さない、ウィンターズ…!」
『ところでドミトレスク、ダニエラどこにいるか知らない?』
「ダニエラだったらソラリウムにいると思うけど……ウィンターズに殺されないようにダニエラの援護をお願いできるかしら」
『ソラリウムね。おっけ、ダニエラの無事は保証するよ』
肉体の無事の保証はしないけどね。舌なめずりしながらエヴリンはソラリウムに向かう。狂気に満ちた村で、真の狂気が、人知れず本性を現した。
三年かけて菌根を乗っ取り、直接取り込むことで洗脳して家族にする力を得ていたエヴリン。もう家族を失いたくないと言う、イーサンへの恐怖から狂気が暴走。ベイラ・カサンドラのエヴリンへの認識は「友達」だったけど、エヴリンからしたら「新たな家族」だっていう認識の違い。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
アナザーエヴリン編、そろそろ小休止欲しい?
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本編コンビの話が見たい
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はよ終わらせて次の番外編書いて
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ハイゼンベルク生存ルート後の話が見たい