BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回はある男の生きざま。楽しんでいただけたら幸いです。
マリオ・フェルナンデス・カスタニョは限界だった。一撃でも常人は致命傷のエル・ソルの拳を数えきれないほど喰らったのだ。骨で無事なところは片手で数えられるほどで、全身から血を流し、眼は腫れてしまってロクに見えない。生きてるだけで奇跡である。なんとか逆転するための時間稼ぎを成し遂げ、プサイに抱えられて外に連れ出されるマリオ。
「マリオ殿、もう少しで武器商人殿のもとにつくでござる!あそこなら治療道具が……」
「……なあ、プサイさんよ」
「なんでござるか?気をしっかり持つでござる!」
「俺、あんたたちの役に立てたかな……」
村に来て以降、逃げて隠れてばかりで、戦った時も安全圏から撃つだけでしかなかったマリオ。相棒警官の仇を取ると誓ったのに、むしろ足手まといでしかなかった。そんな自分でも役に立てたかと、問いかけられて。マリオを担いだ体勢を立て直しながらプサイはしっかりと頷いた。
「当たり前でござる!マリオ殿がいなかったら、拙者はアリサ殿に手をかけていた!大恩人でござるよ!」
「へへっ、そうかい……そいつぁよかった」
「マリオ殿を休ませる場所を確保させないといけないでござるな。武器商人殿に聞いて、拙者だけでも離脱して警護を……」
「……残念ながら、そんな心配はする必要はもはやない」
「お前は……!?」
瞬間、投げ出されるマリオ。なにが起きたか、と考える間もなくグシャリと墓石に叩きつけられて力なく倒れる。おぼろげな視界で見れば、夕方に差し掛かっているのか夕焼けが照らす中で、プサイの首根っこを掴んだ帽子を被った牧師のような格好の大男の影が見えた。忘れるはずもない。リディアの決死の自爆でなお、倒しきれていなかった怪物。この村の村長、ビトレス・メンデスだった。
「プサイ…!」
『プサイちゃんを放せ筋肉達磨!』
エル・ソルを倒したのだろう、教会から出てきたアリサたちが鉢合わせして驚いた声を上げる。アリサの腕には気を失っているアシュリーが姫抱きにされており、ビリーたちが武器を構えるもあまりに隙だらけだった。
「遅い」
「ござるぅううううあああ!?」
プサイの首根っこを掴んで振りかぶり、ボウリングの如く投げつけてくるメンデス。咄嗟にプサイを受け止めようとしたアルベラがその勢いを殺しきれずにともに吹き飛ばされて教会の扉を開けて礼拝堂に転がった。そこに見えるのは、今まさに消滅していったエル・ソルの最期。それを見て、メンデスは怒気を強めた。凄まじいプレッシャーに、身動きが取れなくなるアリサたち。大気が震えるほど、メンデスは怒りに震えていた。
「……お前たちが殺したのか。私の娘を」
「え……」
「生きて逃げれると思うな」
「!?」
『アリサ!?』
瞬間、宙を舞うアリサ。アシュリーが奪い取られたうえで、殴り飛ばされていた。咄嗟にビリーがマグナムを構えて突きつける。弾丸が炸裂し、牧師の服の心臓部に穴が開く。しかし、貫通することなくその肌で受け止められていた。
「なんだと…!?」
「聖母は返してもらう」
顔面を掴まれ、後頭部から墓石に投げつけられるビリー。ルイスがレッド9で目を狙うも、掌を前に出されて防がれる。
「ちっ……相変らずバケモノだなあ、ビトレス・メンデスさんよ!」
「ルイス・セラ……いくらお前でも、敵対するのなら容赦はしない……!」
振るわれる拳。ルイスは咄嗟に腕を交差して受け止めるも、そのまま打ち上げられ、地べたに叩きつけられる。
「アルベラ殿!ともに!」
「致し方ございません!」
そこに、復帰したプサイとアルベラがそれぞれ爪と刃を振りかざして突進、斬りつけるも皮の一枚しか斬り裂くこと叶わず。その力とよく似たものをエヴリンの記憶で見たことあるプサイは青ざめる。
「タイラント・マスキュラーと同じ……質量のバケモノ…!?」
「生物兵器と一緒にするな、人間もどき」
振るわれる拳を、メンデスの腕を基点に宙返りして避け、肩車する様に飛びついて爪を振るう。しかしメンデスは近くの墓石を引っこ抜いて自分の頭諸共に容赦なく叩きつけ、眼を回して落ちてきたプサイを蹴り飛ばし、背後から襲い掛かってきたアルベラのサーベルを腕で受け止めた。
「っ……同じ支配種でも、ここまでとは……」
「アギレラのために裏切ったのはわかるぞアルベラ。お前のご主人様が何と言うかは知らないが……マヌエリタの死に加担したのなら許すことなどできん……!」
「ぐはっ!?」
頭を鷲掴みにされ、岩肌に叩きつけられるアルベラは崩れ落ちる。アシュリーを左手で担いだまま全滅させたメンデスは踵を返そうとして。
「アシュリーを返してよ」
ぞっとする悪寒に襲われ、振り返る。そこには、擬態を解いて異様に長くなった両腕を交差して前傾姿勢で構え、背中からイソギンチャクの様に触手を幾重にも伸ばし、右目だけ異様に大きく牙をむいた……十数年ぶりとなる本性を曝け出したアリサがいた。
『アリサ……』
「エヴリンはプサイを起こして。私がこいつを殺す……!」
「……聖母を守ったまま勝つのは無理そうだな」
アシュリーを下ろして墓石に寄り掛からせ、構えるメンデス。アシュリーに危害を加えないためにそれを黙ってみていたアリサが、両腕のリーチを生かしてナックルウォークの要領で跳躍して飛び掛かる。メンデスの拳と、アリサの手刀が交差した。
「ぐぬっ…!」
「ぐうっ…!?」
アリサの手刀はメンデスの胸部を穿ち、メンデスの拳はアリサの胴体を捉え、抉れたように吹き飛ぶ腹部。そのまま抱きしめ合うように取っ組み合い、アリサは触手を巻きつけたり突き刺したりで離れないようにし、やたらめったらに両腕を叩きつける。ビトレスは組み付いたアリサを持ち上げて教会に突進、壁に叩きつけ、粉砕してそのまま礼拝堂に雪崩れ込むと次々と柱に背中から叩きつけていく。
『どっちも未来から来た?』
エヴリンがそうぼやく程には人外同士の対決で。崩れ落ちていく礼拝堂の中で、アリサは顔を掴んで腕の力のみでメンデスの脚をもつれさせ、壁に後頭部を叩きつけさせると、膝蹴りで胴体の臓器を圧迫。渾身の肘打ちを頭頂部に叩き込み、メンデスの視界が揺らぐ。
「「バケモノめ……!」」
頭から血を流しつつも笑みさえ浮かべる両者。するとメンデスは恐るべき方法をとった。
「致し方ない……奥の手だ」
「なっ……!?」
メキメキと音を立てたかと思えば、異様に肥大化した背骨が伸びて上半身と下半身をパージ。背骨のみでアリサがしがみついている上半身を持ち上げ、バックドロップの要領でアリサを頭からロス・イルミナドスの紋章が描かれたステンドグラスに叩きつけたのだ。
「があっ……!?」
しなりを加えた威力に意識が飛ぶアリサ。そのまま背骨がグルンと回されアリサは外まで投げ飛ばされる。背骨をもとに戻し、それを追いかけようとするメンデス。しかし、それは転がってきた閃光手榴弾により足止めされる。
「ぐおぉおおおおっ!?」
「買っててよかったぜ閃光手榴弾……」
『マリオおぉおお!?』
「マリオ、あんた……」
よろめいて起き上ったルイスが視線を向けたのは、墓石に叩きつけられた状態で何とか上半身だけ起こした満身創痍のマリオ。ビリーとプサイも何とか起き上がるも、満身創痍で。これ以上戦えそうにない。アリサとアルベラに至っては大ダメージすぎて意識を失っていた。
「助かったでござるよマリオ殿…」
「……あんたらはアシュリー嬢とその二人を連れて逃げてくれ。レオンとショウの二人に合流できれば大丈夫だろう……」
「あんたらはって……」
「マリオ、お前…どうするつもりだ?」
「その顔。わかってるんだろう?ハァ……俺はもう助からない。ここで時間を稼ぐ」
軍役経験のあるビリーは気づいていた。その重症で生きていることが奇跡だということに。プサイは信じられない様にマリオとビリーの顔を交互に見る。
「マリオ殿?ビリー殿、マリオ殿は助かるでござるよな…?」
「隊長。マリオの意思を尊重しよう。どっちにしろ、アシュリー嬢とアリサとアルベラを運ぶならマリオは諦めないと無理だ」
「そんなこと……拙者が運ぶでござるよ!拙者は力持ちでござるゆえ!」
「その傷でか?」
「うっ……」
元気にアピールするも、マリオに指摘されて口をつぐむプサイ。正直立っているのがやっとの状態だった。人一人運ぶのが限界だろう。ルイスは黙ってアシュリーを担ぎ上げ、ビリーもアルベラを背負う。それでも、と諦めきれないプサイ。
「マリオ殿を見捨てるのは違うでござる。拙者だけでも残って……」
「俺だって見捨てる選択肢はないさ!だが、状況を考えろ隊長!隊長が優柔不断だと、全滅してしまうんだぞ!」
「っ……」
『プサイちゃん……』
「……俺はアンタの部下じゃないが言わせてくれ。男の覚悟に水を差すのは野暮ってもんだぜ?」
ビリーの激昂に黙ったプサイに、ルイスも続く。その言葉に、ビリーたちの隊長である以前に「侍」に憧れたプサイは、しぶしぶ納得するしかなかった。
「……マリオ殿。…………………恩に着る!」
「気にしないでくれ。でも、相棒と俺の仇を取ってくれよな」
「必ずや!」
そう言ってアリサを抱え、ビリーとルイスを連れて立ち去っていくプサイ。その場には、墓石に背を預けてハンドガンを構えるマリオと、見ていることしかできず唇を噛み締めるエヴリンのみが残された。スタンから回復し、教会から出てくるメンデスの頭部に弾丸が当たって弾けた。
「行かせないぞ、村長……」
『マリオ、無茶だよ……』
「死にぞこないに何ができる?」
マリオなど目もくれず、プサイたちが向かった方に歩を進める村長。その足元に何かが転がる。エル・ソルの身に着けていた太陽を象ったペンダントだった。殴られていた際に死に物狂いで奪い取っていたものだった。
「俺にできること?……アンタの娘が死んだ原因を作ること」
「そうか、お前が……!」
マリオの前に歩み寄るメンデスの拳が振り上げられる。マリオはハンドガンを撃つも、効果はまるで見られない。
「言い残すことは?」
「“正義”をなめるな」
『……マリオ、あなた……きっと、英雄になれたよ』
血飛沫が舞ったその生きざまを見届け、本心からの称賛を告げてエヴリンはプサイたちに合流するべく宙を舞った。
マリオ、退場です。アンケートでやってる人気投票でまさかの一位に食い込んでたので、もう少しあっけなく退場させる予定だったけどこんな形に変更しました。「英雄になれた男」この言葉こそが一番ぴったりかな、と。
娘代わりを殺されブチギレメンデスVS本性モードのアリサ。このメンデス村長、異能組を除くと作中でもトップクラスに強かったりします。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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