BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
クリスマス恒例の番外編ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
「ふわぁ……あれ、なんだろここ?」
寒い冬の丑三つ時。リサの体を借りて書類整理をした後、身体を返して空中で就寝した、はずだ。イーサンと一緒にいた時はイーサンが気を失うと一緒に意識を失ってたけど、こっちに来てからは依り代が菌根だからか好きなタイミングで寝れるのだ。でもまあ肉体はないってことはつまり脳もないわけで。
「夢は見れないはずなんだけど……なにこれえ?」
「お待ちしていました。エヴリン・ウィンターズ」
「誰!?……はへ?」
声が聞こえたので、振り返って件の人物を見て、呆ける。そこには、
「え?は?イーサン…?」
「ああ、貴方にとっての上位存在に当たるのがイーサン・ウィンターズだったようなので……微笑ましいですね」
「イーサンから出る声が女っぽいの気持ち悪い!」
「失礼な!?私は一応女神ですよ!?」
ぷりぷり怒るイーサンにしか見えない清涼感ある女の声を出すナニカに首を傾げる。女神?どゆこと?
「あー、またゼウみたいな自称神様?よくいるよねえ、アナーヒタってやつもそうだったらしいし」
「自称神なんかと一緒にしてもらっては困るのですが。それより、彼の顔がぼんやりとしか再現できないのですが」
「あ、イーサンはそういうもんだから」
「いやどういうことですか?」
そう首を傾げるイーサンの顔は影に隠れて見えない。いつもどおりだな、懐かしい!よし!
「……まあいいです。それよりも、まず自己紹介を。私はこの世界を見守る女神です。呼びにくいならそうですね……なんと名乗りましょうか」
「いや名前はどうでもいいよ。で?ものほんの神様だとして何の用?」
「お願いがあって参りました。実は、一刻も早く元の時代に帰還してほしいのです」
「はい?」
カミサマの言葉に首を傾げる。いきなりなんだ。いや確かにゼウに頼めばいつでも戻れるけど。
「貴女が時間を逆行できるのが問題なのです。意識だけとはいえ、貴女は過去の者たちに接触しすぎました。さらには、よりにもよってこの世界最大の分岐点である“ラクーンシティの惨劇”を、368回も繰り返してしまいました。おかげで因果律がハチャメチャです。「正史」「アウトブレイク」「ガンサバイバー」「オペレーションラクーンシティ」「サバイバルユニット」「ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」「北海の妖獣」「運命のラクーンシティ」「小さな逃亡者シェリー」「生きていた女スパイ・エイダ」「ディジェネレーション」「デスアイランド」……数多の可能性が既に潰えました。これ以上は看過できません」
「……よくわからないけど。もう繰り返すつもりはないし、クイーン達を見捨てて帰るつもりはない。少なくとも私の知ってる歴史で安定する2021年までは……帰る気は、ない」
「ダメです。断ることは許しません。どうしても帰らないというのなら、強制送還します」
そう言った女神の姿が、一瞬だけイーサンからミアによく似た印象の女性の姿にノイズが走る様に切り替わると、間髪入れずノイズが広がり姿を大きく変える。そこに立っていたのは、3mの巨体と右胸に露出した心臓、両手の鋭い爪、銀の長髪に金色の瞳、臀部に尻尾が生えているのが特徴の、タイラントの女性版みたいな怪物だった。
「ミレーニア。貴女が潰した歴史に登場する、北海の妖獣です…!」
「力づくってわけ…?ここは菌根の世界じゃなかったら、絶望してたなあ!」
前の自分だったらビビり散らしてたけど、今は違う。守りたい家族が増えたんだ。負けられない。両腕をモールデッド化して構える。
「かかってこい!」
「無駄です!」
突き出した拳を一瞬で伸ばして攻撃するも、ミレーニアは凄まじい反射神経で紙一重で回避。回り込んできて爪の一撃を叩き込んできて、咄嗟に硬化した左腕で受け止めるも体格差はどうしようもなく浮かび上がったところを一回転した尻尾で薙ぎ払われ、飛び石の様に菌根世界を跳ねて転がっていく。
「いったいなあ……」
「これが歴史の重みです。異物は即刻消えなさい…!」
そう言って突進してきて爪で薙ぎ払うミレーニア。私はその一撃をしゃがんで回避。懐に潜り込んでアッパーカットの要領で顎を打ち上げる。
「っ!?!?!?」
「耐久力は、タイラント程じゃないみたいだね…!」
目を白黒させてひっくり返るミレーニア。追撃に腹パンを打ち込むと、その姿がノイズに囲まれ、強烈な放電が襲い掛かってきて感電、バチッという音と共に吹き飛ぶ私。見れば、ミレーニアからまた姿を変えていて。今度は細身な体躯の、女性版タイラントみたいな姿になってた。
「モーフィアス・Ð・デュバル、またの名をT‐レディです……!」
「その名前覚えがあるな。たしか、ナイをアンブレラに盲目になる様に調教した変態野郎の名前だ…!」
「私も不服ですよ、彼の姿を借りるのは…!」
菌根世界を駆け抜けて、背後から拳を叩き込むが、電磁バリアの様なものが発生して弾かれる。さっきのもこれか。放電能力…!生物としては最上位の力だな!だけど、ここが菌根世界なら!
「私のイメージで書き換えられる!30年以上の経験を舐めるな!」
「なにを……ぐああああっ!?」
セカイを書き換えるのと同時に、感電して悶えるT‐レディ。私が変えたのは、G6と対決したあの下水道の底。水が溜まったそこで放電なんかしたらどうなるか、ショートするに決まってるよね!
「おの、れぇえ……」
「ガワが剥げたな女神様!自分の知らない歴史を作る私を排除したくて仕方ないんでしょ!でもね、私の答えはNOだ!なぜって、私は悪党、立派なラスボスだからね!神の言う事だって聞くもんか!」
「ならば、シンプルな暴力で沈めてやります……!」
そう言って変わったのは、真っ赤な軍服の様なトレンチコートに似た戦闘服を身に包み、赤い体表で額から一本の角が生えた禿げ頭の巨人。タイラントに似てるが、違う。なんだこれ…!?赤くて角が生えてるって完全に機動戦士のあいつじゃん!
「タイラントCと呼ばれる個体です。いくら貴女にどれほどの戦闘力があろうとも、これに勝つことは不可能……!私にとっての赤いヒーロー、正義は悪には負けないのです!」
瞬間、タイラントとは思えないとんでもない速さで肉薄し、私の顔面を掴み上げるタイラントC。私は躊躇なく何度も殴りつけるが、タイラントCは全く意に介さず後頭部から地面に叩きつけてきた。うぐぐ、なんてパワー……しかもいくら殴ってもびくともしない。頑丈さも、タイラントの比じゃない……どうすればっ。
「
「どんな力を借りようとも……!排斥されるべき世界の癌が…!」
「ヒーローじゃないと勝てない…?そらそうだ。精神世界ならなおさら、心が強い方が勝つに決まってる。なら、答えは簡単だ」
右手で拳を握り、見えない鎖で手繰り寄せるように私が引き出すのは、私のヒーローの残滓。菌根に由来するのは何も悪党だけじゃないんだよ!
「力を貸して、イーサン・ウィンターズ!」
「なっ…!?」
瞬間、顔面をヤクザキックで蹴り飛ばされるタイラントC。菌根世界だからか、それとも彼だからか。私を乗っ取ることなく、寄り添うようにそれは現れた。ブロンドの短髪を持つ、白いシャツ姿の長身痩躯の男。だけどやっぱり顔は見えない。思わず笑ってしまう。
「やっと呼んでくれたな、エヴリン…!」
「イーサン……本物?あはは、来てくれたや……」
イーサンの手を掴み、ひょいっと軽く持ち上げられて立ち上がる。ああ、イーサンだ。目の前の姿だけ借りてた偽物とは違う、本物だ。
「お前には長い説教があるが……それどころじゃなさそうだ。合わせろ」
「説教は勘弁……だけど、もちろんオーケーだよイーサン。目の前の、姿だけ借りてて中身が何もない空っぽの偽物を……」
「「ぶっ潰す!」」
「この、異端者たちが!なぜ、わからないのですか!!」
そう言ったイーサンが取り出したるはショットガン。なにもリュックも背負ってないのに、何処からともなく取り出したのは精神世界故か。次々と発砲し、タイラントCは見てから余裕とばかりに回避行動をとるも、その先には私が拳を構えて待っている。
「はいドーン!」
「こんなもの、効かな……っ!?」
「ならこれはどうだ」
もちろん私の体躯の一撃ではビクともしないが、一瞬気を逸らしたところに、その肩を掴んで振り返らせたイーサンのファミリーパンチが炸裂。よろめくタイラントCに、続けざまにイーサンが私の手を取ってグルグル回転。至近距離で勢いよく私を投げつけ、私は丸まってモールデッド化した脚でドロップキックをタイラントCのどてっぱらに叩き込む。
「があはっ!?」
速度を追加した鋼鉄の如き硬さはさすがに効いたようで、転倒するタイラントC。起き上がろうとするその顔面にイーサンのサッカーボールキックが炸裂し、さらに私が追い付いて、全体重とGも載せて振り下ろした拳を顔面に叩き込む。
「ば、ばかな……ただの人間が、死にぞこないの、既に死んだ残滓が呼び出されただけで、なぜこんな……っ」
「私とイーサンのコンビは最強なんだ!」
「お前は、エヴリンの介入で幸せな結末を手に入れた俺達も悪だというんだろう。だがな、俺達にとってはそれが真実で、正義だ。エヴリンは悪なんかじゃない、排斥すべき世界の癌でもない。大切な俺の娘だ」
「文句あるならこの世界線もハッピーエンドに変えてやる!もう、二度と過去に逃げたりなんかしない!神様だってのなら黙って見届けろ!」
そう言ってのけると、タイラントCの姿がノイズに包まれてさっきの女神っぽい姿に変わって。フッ、と微笑んだ。
「……そうですね。ここまで変わってしまえば、もうそれが真実ですか。いいでしょう、そこまで言うのなら見届けます。ですが一つだけ。「E型被検体」に注意しなさい。あれはもう、「エヴリン」ではありません。別のなにかです」
そう言って女神は世界に溶け込む様に姿を消して。イーサンと、私だけが残される。
「イーサン。私、まだやるべきことがあるんだ」
「ああ、ゼウから聞いた。ローズが待ってるぞ。俺も、ハイゼンベルクもだ」
「わかってる、だけど」
「お前がそう決めたのなら、誰も文句は言わないさ。やり遂げろ、エヴリン。その未来の果てで、俺達は待っている」
そう言って頭をポンポンと撫で、イーサンは笑った。
「お前は俺の自慢の娘だ」
目覚める。窓を見れば、朝日が差し込んでいて。明けない夜はないのだと、証明していた。
『うん、自慢できるように頑張るよ』
そんな決意を胸に、私はクイーン達のもとに向かうのだった。
神様が羅列したのはいろいろ破綻して繋げることができなくなった作品群です。そらこんだけ破綻してたら介入してくるよね。
女神様:バイオハザード世界を管理してる神様。悲劇は別にこの人のせいではないけど、間違った歴史に行くのを許せない性格。出るのは今回だけ
ミレーニア:小説「バイオハザード北海の妖獣」に登場するラスボスクリーチャー。珍しい女性の特徴が強いクリーチャー。女王ヒルとほぼ同じ経緯を持っており、ある意味クイーンのIFともいえる存在。
T‐レディ:外伝作品『ガンサバイバー4 バイオハザード HEROES NEVER DIE』に登場する元アンブレラ本社研究開発部所属の研究者であり「美」にこだわっているナルシスト「モーフィアス・D・デュバル」がT+Gウイルスを用いて変貌したクリーチャー。男から女性に変わっているという世にも珍しい存在。この小説では珍しくない。
・タイラントC:外伝作品「バイオハザード アウトブレイク」に登場する隠しボスであり、タイラントシリーズでも異質の存在。制御装置であるはずのコートを着ているのに凄まじいスピードを誇り、特に爪があるわけでもないのに即死攻撃の「メガスラッシュ」と呼ばれる技を発動するなど、非常に強力かつ凶悪。赤い個体だけあり三倍強い、かもしれない。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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