BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回は幻影エヴリンと何も知らないイーサンによるベイカー邸の珍道中となります。楽しんでいただけると幸いです。
『ガレージはこっちだよ』
ひょこひょこと前を歩いて先導してくれるエヴリン。でもなんだろう、違和感がある。地に足がついてないと言うかなんというか。
『ありゃ?』
食卓から廊下を挟んだ先にあるガレージへの道まで来ると、制御盤らしきものがダクトテープで完全にふさがれていた。素手では剥がせそうにない。俺を逃がさないためだろうけどこれじゃ不便じゃないか?
『ごめん、ジャックに先回りされてたみたい。さっきイーサンの車をガレージにしまってた時かな?』
「なんだって?なら入ることができれば脱出できそうだな」
『そうだねー』
問題はダクトテープを剥がすか切り裂くものか。一応持って来た食卓のナイフを突き立ててみるも歯が立たない。手入れされてなくて切れ味が悪いらしい。まあ武器にはなるから持っておくか。ミアを撃退した拳銃も没収されたみたいだからな。
「戻って切れそうなものを探すか……」
『急がないと戻ってくるかもね?』
「それは困る」
『急げ急げ頑張って生き残ろー!』
後ろから歩いてついて来るエヴリンに囃し立てられて食卓に戻ると、老婆が消えていた。いつのまに。まあいい、邪魔者が消えたと考えよう。
「冷蔵庫になにか…うん?」
食卓に隣接しているキッチンに入り冷蔵庫の中を漁ろうとすると扉になんか書かれたメモが付いているのを見つけた。【女 50代 肥満 ソテー】【男 30代 痩せぎす ガンボ】【男 20代 やや肥満 テリヤキ】?………深く考えない方がよさそうだ。冷蔵庫は開けてすぐ閉めた。中身は見なかったことにしよう。
『ねえねえ、痩せぎすってなに?』
「うん?ああ、痩せて骨ばっていてぎすぎすしているやつのことだ」
『じゃあガンボって?』
「カレーやシチューに似た南米独自の煮込み料理だな。ミアに作ってもらったことがある」
『そうなんだ。私も食べたいなあ、マーガレットの作ったのはみんな不味くって……』
「だろうな。あんなもの食わされて育っているなんて同情するよ」
『切実に、美味しい物が食べたい』
そう真顔でいうエヴリンに苦労してるんだなと納得する。あ、ゴミ箱にまだ新しいハーブ。もらっておこう。口直しもしたい。
『イーサン、さらっと懐に入れるなんて泥棒の素質あるね』
「うるさい」
茶化してくるエヴリンに辟易しながらキッチンの奥の部屋を見る。おっ、食器棚。フォーク………手入れしてからしまってくれ。使い物にならん。一応持っていくけど。
「うん?地下があるのか?」
『多分軒下にいけるだけだと思う。地下室は別の所にあるよ』
「なるほどな。…なあ、あれは…お前の家族なのか?」
『うん、今の家族だよ。私、三年前にこのベイカー家に拾われたの』
「ベイカー…じゃあ牧場の持ち主があいつらか。捨て子かなにかなのか?」
『うん、ママに捨てられたの』
「それは悪いことを聞いたな。それで拾われたのがこんな狂った家族とは……これはお前のか?」
部屋の隅に乱雑に置かれていたブーツを手に取ってみる。Evelineと名前が書かれていた。
『サイズが合わなくなって捨てた奴だねそれ』
「こんなところに捨てるなよ。……大きくなった?」
エヴリンを見下ろす。ちびっこい。よくて8歳とかそこらだろう。手に持ってるブーツを見る。………サイズ変わらなくないか?
「お前何歳だ」
『レディに年齢を尋ねるなんて失礼じゃない?』
「それは悪かった」
上手くはぐらかされた気がするがまあ気にすることでもないか。一度キッチンに戻り、廊下に出てから突き当たりにある扉に手をかける。施錠されていて開かないか。次は廊下の奥に……っ!?
『あっ』
「勘弁してくれ…」
小声でぼやきつつ来た道を戻る。廊下の先にジャックがいた。スコップを持っていたがあんなもの振るわれたら洒落にならん。エヴリンと共に小走りで戻り、ガレージへの道に隠れて足音を聞き様子を窺っていると、キッチンへ入って行ったようだった。チャンスだ、廊下の先を調べよう。
「ああ!?あいつ、どこに行きやがった!」
『節穴で草』
ちょっと黙れ。食卓に行き俺がいないことに気付いたらしい怒号が聞こえる中を小走りで廊下を進むと突き当りの小さな机の上に鍵があるのを見つけた。【under the floor key】…床下の鍵、か。あそこか……ジャックがいる中戻れっていうのか。
「この先はどうなって…」
先に進んで絶句した。なんかよくわからん仕掛けの大扉があった。なんだ、この…なに?
『いやほんとなんだろうねこれ。この屋敷こんなのがいっぱいあるんだよ…原理がよくわからない影絵ギミックとか。面白くないしめんどくさいし嫌になるよ』
「影絵ってなんだ」
このよく分からん扉に使うなにかを見つけないとこの先にいけないってことかクソッ。今まで見かけなかったから多分この先に玄関があるのだろうが…廊下にはガラクタの山と写真ぐらいしかないな。しかも尖ってるものがないからテープをどうにかできそうなものもない。床下に行くしかないか。
「すぐに見つけてやるからな…で、見つけた後はお楽しみだ…」
『怖いこと言ってるね。お楽しみってなんだろ……サンドバッグ?』
「それは殴らせてくれるって意味じゃないんだろうな…」
『そりゃサンドバッグにされる方だよ』
「知ってた」
ガタイがいい髭親父に殴られるとか嫌だな…。しかもあのパンチ、一度喰らってるからわかるけど死ぬほど痛い。あんなのもらうのは二度とごめんだ。
「エヴリン、廊下の曲がり角から先を見てくれないか?」
『ええ、子供にやらせるの。大人でしょ』
「ここの子供のお前ならひどいことはしないだろ?」
『あんな不味い飯しか食べさせてもらってないのに?』
そう言われて思わず押し黙る。…うん、そうだな。それは世間一般から見たら虐待だな…。
「わかったよ……」
『わーい、イーサン大好き』
「棒読みはやめろ」
おそるおそる曲がり角を見る。大丈夫…大丈夫だよな?続けて次の曲がり角も覗きこむ。キッチンの扉が開いてて先が見えなかった。さっきから轟音がするけどなにを……いそいそと急いでキッチンに入り込むと、ちょうど食卓の机をスコップで破壊していたジャックと目が遭った。
「あ」
『目と目が遭ったらバトルするのが常識だよ』
「まだディナーが終わってないのに出て行くつもりか?」
「それポケモ……いや待て待てジャック。たった今お前が食卓を壊してるだろ!?」
「なんだ!?俺の嫁の飯が食えねえって言うのか!」
『ジャックのこうげき!イーサンはかいひした!』
「話が通じてないようだ!」
振り下ろされるスコップの一撃を前転で避ける。エヴリンお前ちゃっかり床下の扉があった部屋に先に逃げ込みやがって。慌てて四つん這いで駆けながら入り、食器棚を倒して仮のバリケードを作る。今のうちに鍵を開けて床下に…!
「こんなもので俺を阻めると思ってるのか?」
『ビビった!すごいビビった!』
次の瞬間、ドゴーン!という爆音と共にバリケードごと扉を蹴り飛ばしてジャックが入ってきた。吹き飛ばされた食器棚は
「この家に来るべきじゃなかったんだ坊や」
『あっ、だめ!』
「があっ!?」
俺の顔を鷲掴みにされ無理やり振り返され、スコップで左肩を勢いよく殴られ倒れ込む。そして立ち上がることもできぬまま右足にスコップを振り下ろされ、激痛と共に血が噴き出てえぐられ、一度離したかと思えば勢いよく振り下ろして切断してきやがった。今度は足かよ、クソッたれ!
「ぐあああああああっ!?」
「可哀想にな?逃げ出さなきゃこうなることもなかったんだ」
「ぐっ!?」
そのまま顔を掴まれ床に叩きつけられる。くっそ…あと少しだったのに、こんなところで終わるのか……いや、まだだ。ミアにチェーンソーで手を斬り落とされてもなんとかなったんだ。
『イーサンの足が大変なことに!?どうしよう、あーもうジャックの馬鹿…え?』
視界の端でオロオロしていたエヴリンが、激痛に耐えながら這いずって斬り落とされた足を掴んだ俺を見て信じられない物を見た様な表情になる。それとは逆に愉しそうに嗤うジャックはポケットから瓶を取り出して足元に置いた。あれは…?
「ほら、この薬でお前の足も治せるんだぞ。ほらがんばれよ」
そんなわけがあるか馬鹿、とは言えなかった。俺の左腕が治っているからだ。なんとかジャックの足元まで這いずり、瓶を手に取る。それを確認するとジャックは去って行った。余裕のつもりか。なんなんだこの野郎。
『それ私の台詞だよ。少なくとも他の人は身体を斬り落とされたら泣き喚いて発狂死するよ?ホフマンとか』
「死んでたまるか…」
ミアに襲われてなければそうなってただろうな。足を添えて中の液体をぶっかけると信じられないことが起きた。足が元通りにくっついたのだ。
「おい嘘だろ」
『やだイーサン気持ち悪い』
立ち上がれる。元通りに動ける。どうなってるんだ。あとエヴリン、床下に入りながら言う事じゃないだろ。覚えとけこの野郎。
「おいどうした!さっさと逃げろよ!捕まえてやるぞ?」
『多分ジャック、今度は手加減しないよ』
廊下の方からスコップを叩きつけながらの怒号が聞こえる。俺はたまらずエヴリンが引っ込んだ床下に飛び込むのだった。ところでエヴリン、お前必要ないくせに四つん這いになるな。少し見えてる。
『イーサンのえっち!』
「不可抗力だ!?」
「うるせえぞイーサン!そこで大人しく縮こまってろ!あとで捕まえてやるからなあ!」
顔を赤らめたエヴリンからはけだものを見るような目を向けられ、上からは怒鳴られた。解せぬ。
興味津々で知らないことはすぐ尋ねるエヴリン。本編のと違って無知だと言うことがうかがえます。このエヴリンは何者なんでしょうね?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。