風の姉妹と過ごした日々   作:零之悪夢

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二人が会ったのは高校一年生の春。
再会したのは、高校二年生の始業式前。


風のような出会い

日本人として、桜を見るのはごく普通の事である。小春日和の今日だったら、お花見をしに来る人や桜を見るために外に出ると言う人もいるだろう。この俺、五河士道はただ単に春の風に当たる為に外に出ていた。

 

 「ん~~……風が気持ちいいな……」

 

俺は捨て子として今の家に拾われた。そこから自分の存在意義を捜す為に色々外に出て、自分には何が出来るのか、何をしたいのかを捜した。結果、家に居て家事をすることに落ち着いたが外に出て風に当たるという行為が趣味になってしまったのである。

 

 「あれから一年か……」

 

そう、あの事件から”一年”。いつも風に当たると思い出してしまう。あの高校一年生の春、衝撃的な出会いをした彼女らにもう一度逢いたい。

 

 「まあ、思ってても会えるわけないよなぁ……」

 

そう思い家に帰ろうとする。家に帰ったら、洗濯と今日の夕飯をどうするか冷蔵庫と相談しなければならない。その他諸々のやることはなかったか考えながら歩きだす。

 

 「誰に会えないって?」

 

 「そんなに寂しかったのですか?」

 

その声を聴いて、振り返る。あの時、去っていった双子。そして……俺の彼女。

 

 「ああ……寂しくて堪らなかったよ。”あの時”からずっと遠距離恋愛って……よくもまあ、耐えられたと思うよ。自分を褒めたいぐらいだ」

 

二人に会うと初めて会ったことを思い出す。そう、あれは一年前の今頃……

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

高校一年生というと、義務教育を終え中学校よりも難しい学業をすることになる。俺が行く理由は、自分のやりたいことを見つける為。自分が何をしたいのか、それをするには何をしなければならないのかを掴む為に高校入学をした。

 

 「来禅高校か……空間震の対策がされた試験的な高校だったか?」

 

この天宮市では突発的な災害、空間震が多発しておりこの市も再開発がされシェルターを常備した建物が多くなっている。

 

 「よう五河。お前も来禅だったとは……そろそろ運命感じるな」

 

こいつは色々と面倒な人間だが偶にいいことをする悪友、殿町である。腐れ縁になりつつあるくらい学校が同じでクラスも同じになるという運命共同体なのだ。

 

 「はぁ……クラス一緒だぞ。また、運命共同体なのかよ……そろそろお前と一緒に居られないかもな」

 

 「何!?まさか、彼女を作るとでも言うのか!?」

 

高校生になったら彼女の一人くらい作ってみたいと思う年頃である。思春期後半の男子高校生の性と言うものだろう。

 

 「頑張って作ってみるか……悪いな殿町。先、大人の階段上っとくな」

 

 「させん!俺はさせんぞぉ!!」

 

そう、それが本当になるとは思わなかった。

 

 「おお……美少女偏差値高っ」

 

 「そうか?……普通だと思うが」

 

自分のクラスに入って誰が居るのか辺りを見渡す。知っている顔や初めましての人がちらほらと居る。これから一年間過ごすメンバーなので名前くらいは覚えておこうと思ったのだった。

 

 「……………」

 

馴染めないわけではないが……本当に此処に居ていいのか、俺みたいな人間がと思ってしまう。過去の記憶が無い俺にそんな資格があるのだろうか?

 

 「五河、何考えてるんだ?気楽にいこうぜ」

 

 「……ああ、分かった」

 

始業式が終わり、帰りのホームルームもスムーズに終わったので思ったよりも早く帰れそうだった。

 

 「帰ったら……夕飯の準備と、洗濯物を取り込むのと、掃除と……」

 

家に帰った後の予定を一つづつ考える。そして予定を組み立て終えた時、その音は鳴った。

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――――

 

 「空間震警報!?こんな時に……」

 

自分が居るところはシェルターから最も離れている。どちらにせよシェルターに行く手段は無い。ならば家にダッシュで帰る一択である。

 

 「っ……目の前で空間震とか……よく生き残ったな俺」

 

走ろうとした時にはもう遅かった。そして、目の前に空間震が起こりその爆心地には二人の少女が立っていた。

 

 「はぁ?お、女の子が起こしてるって言うのか?」

 

一人、勝気な少女。一人、気怠げな少女。恐らく双子である、そこまでしか分からなかったが……

 

 「ぁ……ぇ……」

 

声を発することが出来ない。彼女らの異質なオーラによって、話そうとしても此処では話してはいけないと本能が言っている。でも、別の感情が流れ込んでくる。彼女らの目は”絶望に満ちていた”。

 

 「君らは……?」

 

意を決して話しかけてみる。

 

 「名前?……そんなの、ないかな」

 

 「同調。私達には、名前はありません」

 

その二人に出会った時、この子たちを助けたいと思ってしまった。”自分の様な人になって欲しくない”という身勝手なエゴが俺を支配した。

 

 「なんで、そんな顔するんだ?」

 

彼女らは悩んで、こう言った。

 

 「何も知らない。其処に変な人たちが来て私達を攻撃するの。貴方も、そうでしょう?」

 

 「貴方は、変な人たちの様に私達を殺そうとするのですか?」

 

変な人達は分からないが、この子らを助けたい。こんな顔をさせたくない。

 

 「いや。俺はお前たちを攻撃しない。お前たちに生きる道を与えてやる」

 

彼女達は驚く。知らない人が急にこんなこと言ったらそうなることは当たり前だけど。

 

 「来た。貴方も巻き込まれたくないなら逃げた方が良いよ」

 

 「貴方、死にますよ」

 

そうして空を見ると飛んでいる人が二人を攻撃し始めた。なんで、こんなことするんだ?会話が出来るのに対話もしようとしないなんて……

 

 「また、俺は何もできないのかよ!!」

 

もう、後悔はしたくない。それぐらいだったら死んでも彼女らを守りたい。力が欲しい、そう願った。

 

 「力を……二人を守る……力を!!」

 

頭の中に浮かんできたそれを放つ。

 

 「来いよ!!<灼爛殲鬼>……!!」

 

それは巨大な戦斧。使い方は何故か”識っていた”。

 

 「<灼爛殲鬼>……『砲』!!」

 

斧は巨大な砲へと変化しそれを俺は放った。

 

 「これで……いいのか?……はぁ……ぜぇ……」

 

その斧は光の様に消えた、まるで一時的に力を出したように。膝を付くと二人がこちらに来た。

 

 「貴方も私達と同じなの?」

 

 「違うと思う……俺はただの人間だよ」

 

さっきから分からないことが多い。彼女らはどういった存在なのか、それを攻撃していた人々、そして俺が使った戦斧。

 

 「そっか、名前聞いてなかったね」

 

 「俺は五河士道。まあ、あいつ等よりはましな人間だから困ったら俺に言ってくれれば力になるぞ」

 

二人は名前を聞くと、消えるように居なくなった。

 

 「帰ったのか?今日は、大変な一日だったなぁ……」

 

壮絶な一日を過ごした俺はいつもの様に家事をして夕食を作りお風呂に入り、寝た。今日一日で一年分の寿命を使った気がする。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

朝、起きて携帯を見ると殿町から「学校休みだってよ」とメールが来ていた。恐らく、昨日の空間震の影響で休校になったのだろう。あの二人はどれだけ壊したのやら。

 

 「今日休みなら買い物行こうっと……」

 

確か昨日で食材を切らしたはず、そして何か必要な物が無いか探そうと着替えて商店街に向かった。

 

 「ん~~……今日は安売りしてなかったな」

 

スーパーと商店街を巡り必要な食材や物を購入したのはいいが、いかんせんあまり安いものは得られなかった。

 

 「ちょっと寄り道するか」

 

何となく、公園のベンチに座り空を見上げる。いつか人間は空を飛び始めるのだろうか?空を飛んだ時、人類はどんな感情を持つのだろうか?そんなことを考えてみる。

 

 「こんな所で何をしているのですか?士道」

 

聞き覚えのある声が聞こえたので目線を下に向けると昨日の二人が左右に座っていた。

 

 「ん!?お前らどうやってこっちに?」

 

話を聞くと知らぬ間にこちら側に来れたらしい。原因は不明だ。

 

 「まあいっか。でも、何するんだ?」

 

 「士道と一緒に居ればなんか楽しいから」

 

楽しいと言う感情を持っているのは良いことだ。昨日の絶望した目から楽しそうにしている目に変わった。俺に出来ることは、この二人と一緒に過ごすことだ。

 

 「う~ん。とりあえずさ、服着替えられるか?目立つし」

 

二人はマゾヒストが好みそうな拘束具や鎖が付いているので非常に目立つ。不思議な力を持っている二人ならどうにか出来ると思ったのだ。

 

 「士道の服で良いかな」

 

そうすると彼女たちは俺の服になった。相変わらず不思議パワーである。

 

 「よし、なら付いて来てくれ。家でご飯を作ってやろう」

 

俺が買い物に出たのは午前中。今は昼過ぎなので昼食を作ってやろうと家に招待した。

 

 「いらっしゃい、何もないけどリビングでくつろいでくれ」

 

二人はソファーに座るとテレビを付けて見始めた。初めて見るものが多いようでそれに興味津々の様だった。

 

 「そうだな……サンドイッチとスープで良いか……」

 

パンを切り、野菜を切り、スープを作る……単純な作業だがこういう作業が俺にとっては好きなのだ。

 

 「二人とも~、出来たぞ~」

 

サンドイッチとスープとテーブルに置き、食べ始める。二人は目を輝かせながら黙々と食べていて、あっという間に食べ終わってしまった。

 

 「美味しかったか?」

 

二人はブンブンと首を縦に振る。どうやら、ご満悦の様だ。

 

 「なら、少し二人の事を聞かせてくれないか?」

 

二人は何も知らなかったが、一つだけ分かっていることがあったらしい。それは自分たちは元の人格から二つに分かれたこと。それをまた一つにしなければならないこと。

 

 「人格を……一つに……片方は消えるって事か?」

 

 「そうだね……でも、消えてもいいんだって思ってるんだ。片割れが幸せに生活できるならいいかなって、例えば士道と一緒に過ごせるとかさ」

 

そんなのは嫌だ。消させてなるものか。この想いは何だ?俺が二人に何を思ってる?これは、好き?そう、思うと顔が真っ赤になる。

 

 「士道?顔真っ赤だよ?」

 

 「熱でもあるのですか?」

 

今、急に意識してしまったので顔を隠したい。この顔を二人に見せたくない。

 

 「だ、だ大丈夫だ。問題ないから」

 

二人は不思議そうに首を傾げているが、これを言うわけにはいかないので話題を変える。

 

 「二人には名前が無かったよな……名前つけてもいいか?」

 

昨日、名前が無いと言われ考えていたのだ。二人は双子。苗字を同じして名前をどうするかを考えた結果……

 

 「八舞耶倶矢と八舞夕弦……ってのはどうだ?双子だし、何かこれがしっくりきたんだよな」

 

その名前を気に入ったようで何度も自分の名前を呟いている。

 

 「「ありがとう!士道!」」

 

その二人のハモった声が俺の脳にダイレクトアタック!!この映像は永久保存されるなぁと思うのだった。

 

 「どういたしまして。そうだな……二人とも時間あるか?」

 

二人は大丈夫そうだった、なので少し二人の買い物をしようと思ったのだ。何も知らないならばせめて服くらいは買ってやろうという俺個人の感情が出てきてしまったのである。

 

 「俺と同じ服だったら不思議がられるだろ?ちょっと服を見に行こうぜ」

 

そうして両手に花と呼ばれる状態で中心街方面に歩いた。二人の女性をエスコートしながら歩く……もしや、デートよりも高度なことをしているのではないかと思い始める。そうすると一番会いたくなかった顔に出くわす。

 

 「五河じゃん、何してる……ナニィ!!女の子!?しかも二人ぃ!!」

 

 「殿町、余計なことを言うと口を縫い合わせて海に落とす」

 

それを言えば大抵の人間は口を閉じ秘密を守る。

 

 「よしいい子だ。購買くらいは奢ってやる」

 

殿町と別れるとどっと疲れが来た。あいつは俺をストーキングでもしているのか?今度から気を付けて行動しようと思うのだった。

 

 「士道?さっきの人は誰?」

 

 「友達?みたいなもん。長い付き合いだけどさ」

 

そんな他愛も無い話をしながら三人で歩く。”何処かでこんなことをした”と感じるのはよく分からないが気にしないことにする。

 

 「着いたな……二人に似合う服を頑張って捜しますかぁ……あ、自分が興味ある服も着てみてくれよ?着るのは二人なんだからさ」

 

少し小さいファッションショーをしてみよう。まずは、耶倶矢から。

 

 「う~ん。可愛い系はあんま似合いそうにないな……どちらかというとボーイッシュ系なんだよな。スカートでもいいけどジーンズかな」

 

とりあえず持ってきた物を耶倶矢に渡し、着替えてもらい見てみる。

 

 「に、似合ってるかな?」

 

ジャケットとジーンズを着たその姿は可愛いしカッコいい。なんかこれが普段着じゃないかって思うくらい似合っていた。

 

 「俺のセンスも捨てたもんじゃないな……購入決定!次は夕弦だな」

 

夕弦は何となくゆるふわな感じがする。偏見だが。なので、ロングスカートとカーディガンなど……似合いそうな物を選んでみる。

 

 「はい夕弦。着てみてくれ」

 

渡した物を着た夕弦を想像してみる……鼻血が出そうになった。これは想像しない方が良さそうだ。

 

 「どう、でしょうか……変ではありませんか?」

 

夕弦の着てる服はいい所のお嬢様みたいな雰囲気が醸し出されている。所謂、清楚系という奴だ。

 

 「これも購入決定だな……何か気になるのあったら持ってきてくれ」

 

痛い出費だが、楽しい買い物だった。二人と居ると俺が此処に居ていいということに気づかされる。もっと二人と居たい。そう思った。

 

 「今日は楽しかった……また、会えるか?」

 

 「会えるよ、きっと。士道ともっと居たいもん」

 

 「同意。もっと士道と遊びたいです」

 

そしてまた消えるように居なくなった。真夏の夜の夢の様に。

 

 「恋、しちゃったなぁ……」

 

初めての恋、しかも二人。これは前代未聞だな……と思うのだった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

それから、何度か二人と会い遊んだ。三人でいろんな所に行った。楽しかったんだ。この日々が永遠に続けばいいとそう、願った。しかし、それは突然終わりを告げたんだ。

 

 「士道……今日で会えるの終わりかも」

 

その一言が心にぐさっと刺さった。

 

 「は?どうしてだよ……最近までこっちに来れてただろ?」

 

 「夕弦達は、話して……人格を一つにすることに決めました。なので、今日で片方が消えます」

 

そういう意味の類ではなかった。来れないではなく、一人消えるという意味だった。俺の頭にはどうして?の一言がこびり付いていた。

 

 「だからさ……士道が残った人と一緒に居て欲しいんだ。これが私達の最後の願い」

 

残った人と一緒に居て欲しい、というそんな願い。何で、どうして。

 

 「じゃあね。士道……私を助けてくれてありがとう……」

 

 「さようなら。士道……私を助けてくれてありがとうございました……」

 

そして二人は服装が拘束具に変わり空を飛んで何処かに行った。

 

 「何で……どうしてだよっ!!」

 

一人消える、そうすれば彼女たちは満足なのだろうが俺は嫌だ。それに、俺の思っていることすらも二人に言えなくなってしまう。

 

 「せめて、二人に……伝えよう!!」

 

自分の想いを、この二文字を二人に伝えたい。伝えられればそれで良い。自分の命が燃え尽きるまでこの想いを。

 

 「早く……行かないと……!!」

 

二人が恐らく向かったであろう場所に走る。其処は人気のない高台。二人なりの思いやりで被害を出さないようにするためだろうと思った。

 

 「ちっ!もうやり始めてる……」

 

空には台風のような風が巻き起こっていた。其処に光る二人が凄まじい勢いで動いていた。耶倶矢は槍を夕弦はペンデュラムを使い戦っていた。

 

 「どうすれば……二人に気づいてもらえる?」

 

考えろ、何が出来る?俺に存在理由を与えてくれた二人を生かすためには何をすればいい?その時、初めて会った時のことを思い出した。

 

 「なら、力を貸してくれ……<灼爛殲鬼>!!」

 

その戦斧は巨大な砲となって全てを焼き尽くす。これを撃てば気づいてもらえる!!

 

 「ふぅ……まだだ……もっと力を溜めて……」

 

精神を集中し、研ぎ澄ませる。この力を一気に放てば……

 

 「<灼爛殲鬼>!!『砲』!!」

 

この射程でこの威力ならいける。思った通り空を裂いた。

 

 「何!?今の……」

 

 「驚愕。すごい威力でした……」

 

二人がこちらを見てくる。今しかない。

 

 「二人とも!!もう、戦わないでくれ!!俺は二人が戦いあって傷つくのなんて見たくない!!俺は、二人が、大好きだっ!!」

 

その言葉に二人は驚く。まだ言い足りない。

 

 「俺に!!此処に居ていいって証明してくれた二人を!!俺が初めて好きになった二人を!!一つにするなんて駄目なんだよ!!俺は二人と一緒に居たい!!頼む……俺とずっと一緒に居よう!!」

 

その愛のコトバは二人に届いた。二人は俺の前に降りてきて言う。

 

 「馬鹿じゃないの?一緒に居たいって……私達人間じゃないのよ?」

 

それは知っている。だからどうした。

 

 「士道に嫌な思いをさせるかもしれませんよ?」

 

その思いも恋心だ。だからどうした。

 

 「別にいいんだ。俺は、二人と一緒に居たいんだ。俺が初めて、好きになった人にこんなことをして欲しくないんだ……傷つくのを見ると、頭がぐしゃぐしゃになって、何も考えられなくなる……それぐらい二人が大好きなんだ」

 

 「ふふ……はははは!!」

 

 「ふふ……ぷぷ……」

 

二人が笑い始める。おかしいな……人生最大の告白をしたのに笑われてしまった。

 

 「士道にそんなこと言われちゃったら、やめるに決まってんじゃん。私も士道が好き」

 

 「失笑。私も士道の事が好きです。三人で一緒に過ごすというのも悪くないですね」

 

告白は成功した。緊張が解けて、膝を付いてしまう。

 

 「はぁぁ……良かったぁ……」

 

知らず知らずのうちに体が限界に達していた様で身体全身が痛む。

 

 「三人で一緒に過ごすかぁ……いっぱいやりたいことが出来たなぁ」

 

 「耶倶矢は欲張りさんですね。士道が付いていけませんよ」

 

二人が楽しそうに会話する姿に安堵する。これで良いのだ。これで……

 

 「あ、時間みたい……会えるのは暫く後になりそう」

 

 「士道、さよならです」

 

その言葉は言うべきではない。それとは違う別の言葉を言ってほしかった。

 

 「さよならじゃなくて、また会いましょうだろ?それじゃあ永遠に会えないみたいじゃないか」

 

 「そうだね、じゃあ……

 

 「「またね、士道!!」」

 

二人は居なくなった。それと同時に俺の意識は途絶えた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「……………」

 

 「士道?どうしたの?」

 

二人に会ったことで昔を思い出していたようだった。

 

 「ああ、ゴメン。二人に会った時ことを思い出してた」

 

あの後、病院で寝ていて妹にこってりと怒られた。そして、2週間も入院生活をすることになってしまうとは思いもしなかった。

 

 「微笑。二人の魅力によって昔を思い出すとは……オオカミさんですね」

 

 「そんな意味じゃない!!俺にそんな趣味が無いってことくらい分かってるだろ?」

 

二人で桜並木を歩きながら会話する。この懐かしい雰囲気にずっと居たかった。

 

 「そうだった、士道に言ってないことあったなぁーって」

 

 「そうですね、忘れていました」

 

そうして二人は、ある言葉を言った。

 

 「「ただいま、士道!」」

 

その言葉に俺は……

 

 「お帰り。耶倶矢、夕弦」

 

春、その日から幸せが戻ってきた。




次回、デットエンドは風の様に吹いてくる
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