風の姉妹と過ごした日々   作:零之悪夢

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原作第一話とは違った展開になっていきます。


デットエンドは風の様に吹いてくる

二人と再会して、数日。来禅では始業式が始まる。今日も同じように起きて朝食の準備をする。

 

 「~~~♪~~~♪」

 

鼻歌を歌いながら朝食を作る様を見ればただの変人だが、仕方ないのだ。何故なら愛しい彼女に再会したからである。その感情を抑えることはできなかった。

 

 「おにーちゃんおはよー!」

 

妹の琴里がリビングに入ってくる。

 

 「今日は気分いいのか~?」

 

少し爆弾発言して驚かせてみるか。

 

 「琴里……俺、言わなきゃいけない事があるんだ……」

 

 「え、え?どうしたの?」

 

さあ、驚く顔が見れるぞぉ!!

 

 「祝!彼女が出来ましたぁ!!」

 

琴里は口を開けたまま意識を飛ばしていたようだ。器用だなぁ……

 

 「はっ!!失神してた……おにーちゃん?冗談にも程があるぞ~」

 

やっぱり冗談だと思うよな……別に信じなくてもいいけどさ。

 

 「で、琴里も始業式で午前中に終わるんだよな?何食べたい?」

 

 「デラックスキッズプレート!!」

 

そこで、ファミレスの商品を出してくるあたり子供だなぁと思う。

 

 「当店ではご用意出来かねます……ファミレスな、分かったよ」

 

そうして、二人で学校へ向かうが途中で別れる。

 

 「絶対だぞ!火事とかテロリストが来ても空間震が起きても絶対だぞ!!」

 

 「無理だろ……流石に」

 

不吉なことを言っている琴里と別れ、学校に向かい教室に入る。

 

 「五河士道……」

 

後ろを振り向くと白い髪をした知らない人が居た。

 

 「覚えてないの?」

 

首を縦に振ると彼女は残念そうに自分の机に戻り分厚い本を読み始めた。

 

 「お~五河。彼女が居るのに浮気とは……最低な男だな……ぐふっ!!」

 

後ろから話しかけてきたゴミを沈めながら自分の席に戻る。本当にこいつと居ると面倒な事に巻き込まれる……

 

 「なんでこいつと一緒のクラスかなぁ……」

 

そして、その後のホームルームや始業式を終え、今後の予定を振り返る。

 

 「少しよろしいでしょうか?五河さん?今日ご予定はありまして?」

 

 「気持ち悪い、いつもの感じで良いから。今日は、ファミレスに行く予定がある」

 

妹の琴里とファミレスだが、可能性として二人と放課後デートと呼ばれることをするかもしれない。

 

 「誰と行くんだ?まさか……彼女?」

 

 「違げぇよ、妹だよ。もしかしたらお誘いがあったらそっち行くかもだけど」

 

そうするとあの時と同じサイレンが鳴った。

 

 「おっと、空間震警報か。避難だな」

 

殿町とシェルターに向かうが、そういえば妹は避難してるだろうかと電話を掛けてみるが出ない。GPSを確認するとファミレス前で止まっていた。

 

 「馬鹿すぎる、本当に……」

 

 「五河!?何処行くんだよ!?」

 

 「忘れ物だ!!」

 

そうして学校を出ると校門に耶倶矢と夕弦が待っていた。

 

 「お前ら……警報鳴ってるのに出てきたのかよ。でも、丁度いい。妹を連れ戻すの手伝ってくれ」

 

 「士道に妹居たの?初耳なんだけど」

 

 「士道に似て、優しいのでしょうか?」

 

俺の妹談義をする彼女たちもいいが誤解は解いておく。

 

 「俺は今の家に拾われたから、義理の妹になる。だから血は繋がってないぞ」

 

聞いてはいけないことを聞いてしまったことに二人は反省しているがあまり気にしている余裕はない。

 

 「二人とも、走るぞ!!」

 

三人で誰も居ない道を走り続ける……そしてファミレス前に着くと其処に琴里は居なかった。

 

 「いない……GPSは此処を示してるんだが……」

 

そうして辺りを見渡しながら探していると……目の前で空間震が起こった。人生で空間震を目の前で二回見ることになるとは……

 

 「きゃ……普通に強すぎ……」

 

 「困惑。私達もこんな風に登場していたのでしょうか?」

 

二人が話すが、その爆心には一人の女の子が居た。鎧のようなドレス、その後ろには巨大な玉座が出来ていた。しかし、”何処かで会った気がする”のは気のせいなのだろうか?

 

 「っ……ぁ……」

 

その女の子は”暴力的な美しさ”を持っていた。近づくことすら躊躇うくらいの雰囲気を出しながら。しかし、あの時と同じように目が絶望に満ちていた。

 

 「ん?……貴様は……」

 

彼女が気づいたようでこちらに向かってくるが、敵意は無いようだ。どちらかというと”彼女も俺の事を知っている”様な感じがした。

 

 「貴様……何処かで会ったことがあるか?」

 

 「君もか、俺も会ったことある気がするんだ」

 

二人で考えるが答えは出ない。そうすると後ろにいた二人が話に介入してきた。

 

 「何良い雰囲気出してるのさ……私達が一番じゃないの?」

 

 「憤慨。私達の事を忘れってもらっては困ります」

 

こういう時はどうすればいいんだ?不思議パワーを持った女の子が三人。敵に回ったら俺は塵も残らないで死ぬだろう。

 

 「当たり前だろ?二人は俺の中で一番だよ。でも、この子に会ったことがある気がするんだ……”すごい昔に一緒に過ごした感じ”がする……」

 

話していると一年前と同じように飛んでくる人影が向かってきているようだった。

 

 「はぁ……こんなものが無駄だと、何故学習しない!!」

 

彼女が玉座に刺さっていた大剣を抜き振るうと銃弾やミサイルが粉砕された。これが彼女の不思議な力なのだろう……今の所見たことがあるのは、俺の灼爛殲鬼と二人に教えてもらった、颶風騎士の穿つ者と縛める者だがこれは何という名前なのだろうか?

 

 「二人とも?あの子助けたいんだけど……いいか?」

 

二人はため息を付きながらも同意してくれた。

 

 「士道のお人よしは性分だもんね……」

 

 「本当に仕方がないですね……士道の為ですから」

 

二人は颶風騎士を出し、俺は灼爛殲鬼を出して彼女の援護に回る。

 

 「助けに来たぜ、お姫様」

 

 「何故、来た?」

 

そういう質問には答えずらいと言うか、何というか……

 

 「俺が勝手にしたいから、じゃダメか?」

 

 「ふっ。面白い、気に入った。なら私に付いて来い!」

 

そうして、殲滅戦を繰り広げた。今思うと派手にやったなぁと後悔してしまう。人相手にバカみたいな力を使って気絶させるとか、力の差が大きすぎるにも程がある。

 

 「終わったな……お前たちも中々やるではないか」

 

 「何もしてないよ……どっちかっていうとサポートに回ってただけだしな」

 

一人で突っ切って行って切り伏せる、それを繰り返す彼女は修羅の様だった。

 

 「そういえば、名前を聞いていなかったな……」

 

 「俺は五河士道、こっちの二人は八舞耶倶矢と八舞夕弦だ。関係はあまり聞かないで欲しい。頼む」

 

彼女は不思議な顔をしているがこれを他の人に言うのは恥ずかしすぎる。

 

 「そ、そうか……私は夜刀神十香だ」

 

困惑しながらも自分の名前を言う彼女は何処か懐かしく感じる。

 

 「む、時間か……また会おうシドーよ」

 

そう言った後二人の様に消えていった。やっぱり不思議パワーの代償なのだろうか?

 

 「はぁ……疲れたー!!これ使うとめっちゃ疲れないか?」

 

疲労とは違う体の中にあるありったけのエネルギーを使った感じだ。立つことすらつらい。

 

 「それは士道が慣れてないからでしょ?うちらはそんなの感じないけど……士道は人間だからじゃない?」

 

 「後は、士道の技量不足ではないでしょうか?人間でも扱えなくはないと思いますが」

 

そうなのかなぁ……と色々考えてみる。確かに、耶倶矢や夕弦よりもこの力を扱いきれてはいないが威力としては一番だろう。あとは本人の努力次第、といった所だろうか。

 

 「結局、琴里には会えなかったなぁ……家に戻るか……」

 

そうして家に戻ろうとすると案の定二人もついて来た。心の中では嬉しくてしょうがないが妹にどのような言い訳をしたらいいかを考えなければならなくなる。

 

 「どうするかな……ん!?」

 

よく分からない浮遊感に驚いた瞬間には何処か違う場所に立っていた。同じく近くに居た二人も一緒に飛ばされたようだった。

 

 「なにこれ!!SFってやつ!?すごーい!!」

 

 「耶倶矢。落ち着いてください……敵が襲い掛かってくるかもしれませんよ」

 

二人が談義している間に俺は周囲を見渡す。機械的に並べられた何か、配線、大きな機械etc……そうして見ていると扉から知った顔が出てきた。

 

 「こんの……阿保兄ぃ!!」

 

いきなり殴りかかってきた事に驚き咄嗟に防御姿勢を取るがそれよりも早く動いた影があった。

 

 「何うちの士道に殴りかかろうとしてるの?動いたら首切るよ?」

 

 「要請。今直ぐに敵意を無くしてください。痛い目を見ますよ?」

 

流石俺の彼女たちだ、一瞬にして無力化するとは……最速と言っているだけあるなぁと思う。

 

 「二人とも、もういいぞ。それが俺の妹だからな」

 

そうして武器を仕舞い、俺の所に戻ってくる。

 

 「士道……どういう事か説明してくれるんでしょうね?」

 

 「あー、えっとな……今朝話したって言えば分かるか?」

 

今朝話したことを思い出しているようだ……そして、気づいたらしい。

 

 「し、士道にか、彼女……しかも、二人……」

 

その事実を受け入れることが出来ないでいるようで、固まっていた。

 

 「二人ともさ……うちの妹ってこういう奴だから虐めないでくれな?}

 

暫く経ってから戻ってきた琴里に案内され、重要そうな場所に来た。周りには数名の人が機械の前に座っていた。

 

 「ようこそラタトスクへ……歓迎するわ」

 

そして、琴里は話した。さっきの少女が精霊と呼ばれる存在であること、それを殲滅しようとしている組織があること、そして俺に精霊を封印する能力があること。

 

 「で、そこの二人も精霊よ。封印はしてないみたいだけど」

 

へ?この二人も精霊?頭の片隅では分かっていたことだが聞かされると驚いてしまう。

 

 「まあ、封印するには好感度を上げてキス出来る位まで好きになってもらわないといけないんだけど……士道も二人も前代未聞のカンスト状態だから問題なさそうね」

 

話を聞いていると封印方法がキスとかいうギャルゲー設定なのは些か問題ではないかと思う。俺は彼女が居るのにそんなことを余りしたくはないんだが。

 

 「とりあえず分かった。要するに俺が精霊をデートしてデレさせろ、ってことで良いんだな?それだったら俺はやる。俺の信念を貫くさ」

 

 「それでこそ士道よ。で、何で<天使>を顕現できたのかしら?」

 

そして天使と呼ばれる形を持った奇跡について説明を受けた。封印した力を俺は使うことが出来るらしい、なら最初に封印したのは……

 

 「それについてはとても恥ずかしい事なのでノーコメントで……でも、俺が使ってる天使<灼爛殲鬼>を持ってるのは琴里じゃないか?」

 

 「そうね、私は精霊であり<灼爛殲鬼>を使える……でも、どうして分かったのかしら?」

 

説明はしずらいが……今の所キスをしたことがあるのは琴里だけという記憶と、天使を持っていると琴里を感じることが出来るから……と言った。

 

 「へぇ……士道も色々考えてるのね。何か感心したわ」

 

 「まあ、彼女のために何処行こうとか何食べるとか色々調べてると考える力も付くさ」

 

そうして話を終え、帰ろうとしたが二人に封印を施した方が良いと思ったのだ。二人の住む場所については暫くは家で、少ししたらマンションが出来るのでそちらに移るとの事だった。

 

 「耶倶矢?夕弦?ちょっといいか?」

 

休憩所でジュースを飲んでいる二人に話しかける。今着ている服は俺が買ってあげた服だ。気に入ってるようで、何かとそれを着ているのだ。

 

 「琴里から聞いたと思うけど、一応二人に封印しといた方が良いと思うんだ。力はあった方が良いかもしれないけど……無くなったら俺が、二人を守ってやる。約束だ」

 

 「ふふ、やっぱり士道らしいね」

 

 「微笑。士道は私達が大好きですから」

 

二人を抱き寄せる。この時間だけはゆっくりと過ぎている気がする……そして、二人同時にキスをした。キスと言っても頬にだが。

 

 「力が抜けていく感じ……これが封印?」

 

 「そうじゃないか?俺に流れてくる感覚があったし。後、ストレスが溜まると普通に天使とか霊装を出せるみたいなんだ」

 

でも、ファーストキスじゃなかった事に後悔する。何で精霊の封印方法がキスなんだと異議を申し立てたい。

 

 「えへへ、キス……しちゃった……」

 

 「ふふ……キス、しちゃいましたね……」

 

二人は俺とキスしたことに嬉しすぎて意識がどっかに行っているようだ。恐らく空想上の俺と戯れているのだろうと仮説を立てる。

 

 「おーい、戻ってこーい……仕方ない」

 

またこちらに体を寄せてキスをすると、こちらに戻ってきた。

 

 「ひゃ!!し、士道!?何してるの!!」

 

 「っ……士道?こういうのをする場合は同意を得てからですよ」

 

いや、貴方達が気づかないのが悪いですよ、とツッコミを入れたい。まあ、したかったのは嘘じゃないけど。

 

 「帰ってこないのが悪い……俺を一人にして帰らせる気か?一緒に居るって約束したのに……」

 

少し泣いてみると案の定俺を気遣ってくれる。そんな耶倶矢と夕弦が大好きだ。

 

 「ゴメンって……一人にしないから」

 

 「謝罪。士道を一人にはさせません」

 

そうして三人で家に帰る。これからの日常がこうなると想像するだけで幸せだと感じることが出来た。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「ん?んーーーー?」

 

今,目の前にある光景が幻覚ではないかと目を擦っている所である。何故なら、この来禅高校に転校生として耶倶矢と夕弦が俺のクラスに転校してきたのだ。恐らくラタトスクが裏から回しているのだろうが何か信じられない。

 

 「じゃあ皆さん仲良くしてくださいね~」

 

担任のタマちゃんがそう言ってホームルームが終わる。そうすると二人に大勢集まるがそれを難なく避けながら俺の元に避難してくる。

 

 「皆二人の話を聞きたいみたいだぞ?いいのか?」

 

 「何か怖いし、それだったら士道と一緒に居た方が楽しいし」

 

 「一緒に居て欲しいと言って、泣いて来たのは誰ですか?」

 

そういえばそんなこともあったなと笑う。そうすると、この雰囲気が理解できた者から退場し始める。

 

 「へぇ~、五河君にも彼女居たんだ~。でさ、どっちが本命?」

 

このクラスの三人組、亜依麻衣美衣が言ってくるが……

 

 「何ふざけた事言ってるんだ?本命は二人だろ?」

 

 「こいつ……出来る!?」

 

他の人たちの質問を避けながら、授業を受け放課後になった。人というのは慣れが来ると受け流せるものらしく、朝から続いた質問攻めも全て受け流せるようになった。

 

 「はぁ……終わった。二人は初めて学校どうだった?」

 

 「ちょっと疲れたかな。まあ、最初だから質問は多いだろうけどさ」

 

 「耶倶矢に同じくですが、勝負が出来る場所が多そうです」

 

相変わらず勝負好きな二人だが、前よりかは争わなくなったと思う。俺の影響を受けて勝負というよりかは協力に変わったと思う。二人は俺の嫌いな事を分かっているのでそうなったのだろう。

 

 「じゃ、買い物して帰ろうか。今日は何がいい?」

 

 「要請。夕弦は鱈が食べたいです」

 

 「私も同じく魚が食べたいな~」

 

と、二人のお嬢様が仰っているので今日の晩御飯は焼き鱈になるのであった。

 

 「シドー、会いに来たぞ」

 

と校門を出ると制服を身に纏った十香が居た。恐らく、前の二人と同じように空間震を起こさないで来たのであろう。

 

 「耶倶矢、夕弦?仕事だからさ、先帰ってもいいぞ?」

 

 「一緒に居た方が良いと思うよ。顔なじみだしさ」

 

 「警戒されないようにするのであれば私達もいた方が良いかと」

 

それも一理ある。知っている顔が居れば警戒も薄くなるし、大勢で楽しめるだろう。

 

 「分かった、じゃあ行こうぜ……俺達の戦争を始めよう!」

 

そこにもう一人付いて来ている人影に気づかずに……

 

 「……金が圧倒的に足りない……」

 

四人で商店街に来たのは良いものの十香が食べるのが好きなようで、片っ端から色々食べ始めているので俺の財布が空になりつつあった。

 

 「都合よく無料になったりしないかなぁ……」

 

そう考えながら道を歩いていると、話し声が聞こえた。

 

 「この先の場所、食べ放題なんですって……しかも、無料!!」

 

ん?都合よく無料って聞こえた気がしたので耳を澄ませる。

 

 「今なら、入場者特典もあるらしくて……ここら一帯の食べ物屋さんが無料で食べられるらしいですよ」

 

その噂を聞きながら先へ進むと見たことがある顔が居た。確か、ラタトスクの人だった気がする……要するに何処かでこちらの動向に気づいて何かしたのだろう。

 

 「十香?ここ全部食べていいぞ。どうせ無料だからな」

 

そうして食べ始める十香の姿は大食いの人という印象を持った。胃袋はブラックホール並みなのだろう、料理を沢山作っておかなければならないと頭の片隅に入れておく。

 

 「士道……ここからどうするの?」

 

 「んーー、いい時間だしあそこ行くか」

 

十香が食べ終わり、満足するとデートスポットとして有名な高台に向かった。時間も丁度良く日が沈みかけた時に来ることが出来た。

 

 「おお!!いい景色だな……」

 

相変わらずの景色、この場所に居るといい風が吹いて気持ちが良い。昔はよく此処に来て空を眺めて考え事をしていた。

 

 「お気に入りスポットの一つだからな……よく来てたんだ」

 

風が吹いてくる。いつまでも浸っていたいが、俺の使命を果たそう。

 

 「十香?此処には敵が居るけど全員が敵ではなかっただろう?」

 

 「そうだな……しかし、この世界を私は知らぬ間に壊していたのだな」

 

そう、彼女たちが出てくるときに町を破壊してしまっている。それが心残りとなっているのが分かった。

 

 「大丈夫だ。この二人だって最初はそんな感じだったけど今は前を向いて生きることを選んだ……十香もそうするんだったら俺は助けてやる……」

 

そうして手を差し出そうとしたが……何か強烈な殺気を感じた。これは、十香と耶倶矢、夕弦に対しての殺気だ……せめて、三人には生きて欲しい。

 

 「ゴメン!!」

 

そうして三人を吹き飛ばすと俺の体に何かが通り過ぎた。嗚呼、撃たれたんだと本能的に錯覚する。

 

 「あ……がぁ……」

 

血がどくどくと流れ、地面を汚す。これ、死んだな……

 

 「シドー!!大丈夫か!?」

 

 「はは……これは……もう、無理そうだな……ごほっ……」

 

血を吐き出しながら話すが意識が薄れていく……

 

 「士道!!……死なないで……行かないで!!」

 

 「士道!!……まだ、生きていて……置いていかないで……」

 

嗚呼……もっと、二人と過ごしたかった。もっと色んな所に行ってみたかった。精霊という可哀想な少女達を救いたかった。もっと……生きたかった。そうして意識は闇に落ちた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

死後の世界はよく、川とか天国が見えると言うが俺はそれに当てはまらず建物が破壊され燃え盛っている天宮市に立っていた。

 

 「俺……死んだんだよな……此処が地獄だったら、随分近代的だよな」

 

自分が知っている場所を地獄にするなど仕切っている人は近代的な物を取り入れたいのだろうか?

 

 「よう、五河士道。まだ居たみたいで良かった」

 

その声をする方を見ると、自分とそっくりな男が近づいて来た。

 

 「は?……俺?」

 

 「あー、何ていうのかな。取り合えずお前のドッペルゲンガーじゃない。一応、真士とでも名乗っとこうか」

 

真士と言った俺のそっくりさんは、燃え盛る炎をものともせず歩いて来た。

 

 「お前は、まだ心残りがあるだろう?精霊を救いたい、そして大事な彼女を護りたい。そのためには力が必要じゃないか?」

 

 「そう、だな。でも、強大な力は人を飲み込む。力が大きすぎると人間は戻ってこられなくなる」

 

力に溺れて失敗するなんて話はよくあることだ。

 

 「そう、だからお前に教える。お前は天使を扱える、それを自分が使いたいものにすればもっと強くなれる」

 

そうして真士は手を差し出した。其処には見たことのある小さな武器が有った。

 

 「お前は力を欲した。暴走することもあるだろうが、二人が止めてくれるだろう……お前と天使は表裏一体だから正しい心で使え。それが、俺から出来る最大限のアドバイスだ」

 

それを手に取り、願う。二人を守る力を。

 

 「そうだな……その天使に名前を付けるなら……<龍風騎士>『バハムート』か?その力で、お前が望む世界を見せてくれ」

 

そうして、世界は暗転した。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「ん……何でベット?」

 

あの時死んだはずの俺は高台で放置されていると思ったが、ベットに運ばれてるし体は傷一つなかった。

 

 「シン。起きたかい?」

 

よく分からないあだ名を付けてきたラタトスクの解析官でもあり、物理の教師でもある村雨令音さんがこちらに来ていた。

 

 「はい……俺死にましたよね?」

 

 「死んだことには変わりないが<灼爛殲鬼>の治癒能力で復活したんだ」

 

まさか、ゾンビもビックリの蘇生をしたようだ。

 

 「何か死んだ後に暴れてませんでしたか?特に、耶倶矢と夕弦が……」

 

 「二人は暴れるどころか君の死体の傍でずっと泣いていたよ。十香はシンが死んだことに絶望して反転してしまったが元に戻ったよ」

 

反転。一応説明の時に聞いたが深く絶望すると別人格の精霊となって降臨するという話だ。

 

 「その十香を生き返った”シンが”止めたんだ。何か話して、もとに戻ったよ。その時シンは鎧の様な物を付けていたね」

 

あの場所で真士が言っていた力がそうなのだろう。意識が無い中で本能的に行ったのだろう。

 

 「分かりました……まあ、心配かけた三人に顔を見せてきますよ」

 

 「ああ、それならもう来ているよ」

 

そうすると三人が扉から物凄い勢いで飛びついて来た。主に頭と腕と鳩尾に三人が抱きついて来た。苦しい。

 

 「シドー!!生きているのだな!?本物だな!?」

 

 「士道が……戻ってきたぁ……」

 

 「士道……ちゃんと戻ってきましたね……」

 

気にしないようにしているが、身体には女性の象徴が強く当てられているためどうにかしたい。恥ずかしいし、色々と問題なのだ。

 

 「あの……苦しいです。退いてほしいなぁって」

 

その言葉で三人は離れる。ようやくちゃんと息を吸える。

 

 「とりあえず……ただいま、皆」

 

 「「「お帰り、士道(シドー)!!」」」

 

その後念入りに検査をされて退院したのは良いが、仕事が残っていたなと思い出す。

 

 「十香~?今、いいか?」

 

今は家に二人っきりなので丁度いい。

 

 「目を瞑ってくれ」

 

そして、キスをした。力が流れ込んでくる感覚と共に、何かの記憶が流れ込んできた。

 

 「へ?何だ……これ?」

 

 「シドーもか?すごい昔に……私達は生きていたみたいだな」

 

昔の天宮市であることは間違いない。ある時、調べてみたことがあったので確定だろう。そして……

 

 「み、お……?」

 

 「私は……てんかという名を思い出したな。確かに、みおとも一緒に居た気がする」

 

感じは分からないが、てんかとみおと十香、俺で楽しく過ごしていたという記憶が流れてきた。

 

 「誰なんだ?一体?」

 

よく分からない記憶……これからどうなるのだろうか。




まあ、そういう事です。次から士道の天使が本格的に出てきます。

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